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サムスンのスマホ発火対応、豪州の洗濯機問題の二の舞に
By JONATHAN CHENG AND MIKE CHERNEY
2016 年 10 月 14 日 18:45 JST
エマ・ジョーダンさんは、結婚してオーストラリア・ゴールドコーストの夢の新居に引っ越した3週間後、サムスン製の洗濯機に何枚ものシーツを放り込み、裏庭のプールにひと泳ぎに行った。
約15分後、火災報知器が鳴り響いた。洗濯室から黒煙が立ち上り、オレンジ色の炎が吹き出していた。消防士が火を消し止めたものの、家には5カ月間、住むことができなかったという。
ジョーダンさんは友人に「サムスンは携帯電話機に専念すべきかもしれない」と冗談を言っていたという。民事裁判所はその後、サムスンに対し、ジョーダンさんの主張通りに損害賠償の支払いを命じた。
サムスンは2013年4月、10年以降に販売した洗濯機約15万台を対象に、豪州で最大級のリコール(回収・無償修理)を開始した。サムスンの洗濯機が原因と考えられる住宅火災が相次いだことを受けたものだった。
サムスンは今、新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」の発火問題に直面している。同社は世界的なリコールにもつまづき、生産・販売を打ち切った。そうした中で、豪州の出来事から再び教訓を得ている。安全問題の解決を急ごうtろすれば、何年にもわたって企業イメージを損ない続ける恐れがあるということだ。
サムスンはいずれのケースでも、火災の危険があるとの報告に迅速に対処したものの、それがうまくいかず、ブランドイメージをさらに傷つけてしまった。
ギャラクシーノート7はリコールで交換後の端末も過熱・発火の報告が相次ぎ、散々な批判を受けている。豪州の洗濯機のケースでは、消費者数万人を対象に、ビニール袋とテープなどを用いた修理をするという解決策を施した。だがこの修理はさらに、2件の住宅火災を含む少なくとも30件の事件を引き起こした。
サムスンのスマホリコールの不手際は豪州の洗濯機問題を連想させる(写真はギャラクシーノート7返品用包装セット)(英語音声のみ) Photo: XDAMedia
製品のリコールは確かに厄介で、計画通りに進むことはほとんどない。だが消費者の権利に関する専門家は、豪州での洗濯機リコールはやり方がお粗末だったと指摘している。パースにあるカーティン大学法科大学院の消費者法専門家、アイリーン・ウェブ氏はこの問題について、サムスンは何から何まで間違ったことをしていたようだと述べた。
サムスンの広報担当者は、豪州のケースとギャラクシーノート7のケースは「全く別だ」としている。洗濯機の修理は「完璧な解決策」だったものの、「一部のケースでは」修理が「適切に行われなかった」と説明した。それでも修理は「消費者に提供する解決策としては最も効率的」だとの見解を示した。
ギャラクシーノート7については、同社は「迅速な行動」をとり、それぞれの段階で対処するために規制当局と緊密に協力したと説明した。
サムスンは9月前半に実施したギャラクシーノート7の最初の世界的リコールについて、消費者に安心してもらうための断固たる行動だったと説明した。だが、それはさらなる不満を引き起こすことになった。
関係筋によると、創業家3代目の李在鎔(イ・ジェヨン)氏は11日、ギャラクシーノート7の2回目のリコール失敗がブランドをさらに傷つける恐れがあるとの結論に達し、生産を完全に中止したという。
アナリストは、豪州ではサムスンが相次ぐ洗濯機の不具合についての報告を直ちに食い止めようとしたことが同社の評判を悪化させ、問題を増幅させたとみている。
サムスンによると、リコールから4年近く経過した今になっても、3万台近くの洗濯機の所在を把握できていない。監督官庁は、未修理の洗濯機は現在も豪州の消費者に危険をもたらしていると指摘、これまでに扱った白物家電のリコールでは最大規模だと述べた。
サムスンは、消費者の安全が「最優先」だとして、リコール対象の洗濯機すべてを見つけ出すと約束している。
エマ・ジョーダンさんの家でサムスンの洗濯機が発火、住宅は全焼を免れた ENLARGE
エマ・ジョーダンさんの家でサムスンの洗濯機が発火、住宅は全焼を免れた PHOTO: A PICTURE OF EMMA JORDAN'S LAUNDRY ROOM IN TERRANORA, AUSTRALIA, AFTER HER SAMSUNG WASHING MACHINE CAUGHT FIRE LAST YEAR, NEARLY BURNING DOWN HER HOUSE.
同社は、さまざまな方法を通じて消費者にアクセスするため多額の資金を投じており、リコールの早い段階から交換または返金を選択できるようにしていたと述べた。リコール開始から2年間で数千人の消費者が交換または返金を選択したという。
だがオーストラリア競争消費者委員会(ACCC)は昨年8月、交換または返金を拒否されたとの苦情を消費者から寄せられたことを明らかにした。そこで、サムスンに対し、法律上のあらゆる選択肢を消費者に提供するよう求めた。
同社は翌9月、洗濯機内部の電気コネクターをビニール袋で覆うという当初の対応に不満を持つ顧客を対象に、交換・返金の期間を延長することで合意した。
オーストラリア消費者協会(ACA)はサムスンのリコールのやり方を、ホールオブフェイムならぬ「ホールオブシェイム(不名誉の殿堂)」入りだと批判した。
サムスンの洗濯機問題は米国にも飛び火しているようだ。同社は、洗濯機が脱水時に激しく振動し、ふたが高速で飛んでいく恐れがあるとの報告を認めている。
米消費者製品安全委員会(CPSC)は先月、米国の問題と豪州の問題は異なるように見受けられるものの、「衝突によるけがや物的損害」を避けるために、場合によっては弱水流だけを使うよう消費者に呼びかけている。
豪州でのサムスンのブランドイメージは大きく傷ついた。調査会社ユーロモニター・インターナショナルによると、同国での洗濯機販売は14%減少し、「市場が大幅に縮小した」という。
ユーロモニターのアナリストは「サムスンの洗濯機を買うよう勧められても、買う気になれるかどうかは分からない」と話した。
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欧州経済の最大リスクは政治−内外当局が懸念
イタリアのレンツィ首相(ローマ、12日) ENLARGE
イタリアのレンツィ首相(ローマ、12日) PHOTO: REUTERS
By SIMON NIXON
2016 年 10 月 14 日 17:54 JST
重要なのは政治だ、愚か者め。1992年の米大統領選挙で民主党のビル・クリントン陣営が掲げたスローガンの「経済」を「政治」に置き換えるとこうなるが、これこそが、国際通貨基金(IMF)が先週ワシントンで開いた年次総会に集まった各国の財務相や中央銀行関係者が示した欧州についての共通認識だ。ユーロ圏経済の基本的な見通しは、緩やかな景気回復の継続だ。IMFはユーロ圏の2016年の経済成長率予想を1.7%前後としており、17年には失業率が低下し、銀行融資が増え、インフレ率が徐々に上昇するとみている。多くのエコノミストは英国の欧州連合(EU)離脱決定を自滅行為と考えているが、この決定が他の欧州諸国へ直接大きな経済的影響を与えるとの意見はほとんどない。
エコノミストらが心配しているのは政治的影響の波及だ。つまり、さまざまな政治イベントの影響で、他の国々がそれぞれの合理的な経済利益に反するように思われる行動を取る恐れがある。
実際のところ、一部の政策担当者はユーロ圏があと1回ショックに見舞われれば大惨事になる可能性があり、新たなショックが起きる危険性は驚くほど高いと懸念している。リスクの火種はたくさんある。多くの人たちの頭にまず浮かぶのはイタリアだ。レンツィ首相は12月の国民投票で憲法改正案が否決されれば辞任すると表明しているが、世論調査では反対派と賛成派が拮抗(きっこう)している。
市場では、否決されてもレンツィ首相は早期の解散総選挙を避けるため辞任を見送るとの見方が増えつつある。選挙を行えば、ユーロ懐疑派の新興政党「五つ星運動」が支持を拡大する可能性があるからだ。だが、大差で改正案が否決された場合、レンツィ氏が首相の座を維持するのは難しいかもしれない。たとえ辞任を免れたとしても首相の政策推進力は弱まり、ひいてはイタリアの長期的な成長が疑問視され、銀行の資本増強は一段と難しくなるだろう。そうなれば、同国の財政安定性や政府債務の持続可能性について懸念が広がりかねない。
IMF総会ではポルトガルが抱える問題も活発に議論された。ポルトガルの政府債務は対国内総生産(GDP)比130%超で、政府は前政権が行ってきた経済改革を巻き戻したとの見方が大勢だ。同国の運命は現在、カナダの格付け会社DBRSが握っている。DBRSは政府が来週発表する予算案を吟味し、ポルトガルの投資適格級の格付けを維持するかどうか判断する見通しだが、判断の結果次第で欧州中央銀行(ECB)が同国国債の買い入れを続けられるかが決まる。
この試練を切り抜けたとしても、ポルトガルには同国最大手の国営ポルトガル貯蓄銀行(CGD)による10億ユーロ(約1140億円)の劣後債発行を皮切りに、国内銀行システムに対する最大200億ユーロ規模の投資資金の誘致という次のハードルが待ち受けている。これが失敗すれば、経営破綻したバンコ・エスピリト・サント(BES)の優良資産を引き継いだノボ・バンコの政府による売却や、ミレニアムBCPの資本増強は危うくなる恐れがある。銀行危機でポルトガル政府が新たな支援要請を余儀なくされれば、同国国債の保有者が損失を負担すべきか必ずや疑問が持ち上がるだろう。
一方、ギリシャは今でもリスクの源であり続けている。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)は10日、同国に対する28億ユーロの追加融資を承認した。だがギリシャ政府は来年、再び資金が枯渇する可能性が高い。さらに、次回融資を受けるためには支援プログラムの審査に再び合格しなければならず、ドイツ連邦銀行(中央銀行)の承認を得る必要もあるだろう。
そうなると、ドイツとIMFがまたしても対立する展開が予想される。IMFはこれまでのところギリシャについて、大幅な債務免除を行わない限り支援融資に参加しない考えを示しているが、ドイツは債務免除を依然拒否している。ドイツのショイブレ財務相はすでに2度、ドイツ連銀の説得に成功し、ギリシャ向け融資の承認にこぎつけた。だが、3度目もうまく行くとは考えにくい。このため、来年秋のドイツ総選挙を前に新たな危機が発生する可能性が高まっている。
これらのシナリオのうちどれが現実になったとしても、ユーロ圏は悪循環に陥りかねない。政策担当者らは脆弱(ぜいじゃく)な現行情勢や、フランス、ドイツ、オランダで来年に総選挙が実施されることを踏まえ、ユーロ圏全体としてのショックに対する政治的対応能力は低下しているとの懸念を抱く。
同時に、ECBの金融政策は効果よりむしろ害を及ぼしているのではないかと懸念される中、ECBの支援能力も弱まっている。IMF総会に出席したECB関係者らは、マイナス金利や平たんな利回り曲線が銀行融資の利ざや縮小などを通じて銀行の事業モデルに有害な副作用をもたらしていることを認めた。
こうした状況が長く続けば続くほど、一部の銀行が融資を減らしたり融資の金利を引き上げたりする恐れは一段と強まる。資本増強が一層難しくなる銀行も現れるかもしれない。一方、超緩和的な金融政策は政治に副作用を及ぼす。特にドイツでは、ECBの緩和がユーロ懐疑派の新興政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持率上昇に寄与していると懸念する向きもあり、政治への影響が深刻だ。
もちろん、ユーロ圏が来年の一連の政治イベントをうまく乗り切れば、悪循環が好循環に変わる可能性もある。消費者や企業の信頼感は改善し、銀行は資本を調達しやすくなるだろう。そうなれば、銀行の不良債権処理が加速する中、企業は投資を積極化し、政府が必要な構造改革を実施しやすい経済環境が生まれるだろう。
だが、そのようなプラス効果を生む政治ショックでさえ、中期的なリスクを伴う。結局のところ、ドイツはすでに最大雇用の状態に近く、賃金は上昇しているため、ユーロ圏のインフレ率が予想よりも早く目標水準を回復し、ひいてはECBの量的緩和政策の終了時期が想定より早まる可能性がある。そうなると、域内重債務国の国債にとって欠かせないECBの支援が失われる。政治について道理をわきまえたユーロ圏は、このリスクをどう軽減すべきか思案することになるだろう。
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