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コラム:潜在成長率引き上げの目標化を、現状のままなら債務急膨張も
田巻 一彦
[東京 14日 ロイター] - 安倍晋三政権は2020年ごろまでに名目国内総生産(GDP)を600兆円に押し上げる目標を掲げているが、潜在成長率を高めないまま、強引に600兆円を達成しようとすると、債務残高が急膨張するリスクも高まる。現在は0.3%程度まで低下した潜在成長率を当面、1%まで引き上げることを政策目標に掲げるべきだ。そのためには生産性の引き上げが必須項目であり、必要な政策課題を早急に詰めることを提案したい。
<潜在成長率0.3%の現実>
最近の日本経済の成長率は、ジグザグしながらも、ならしてみれば1%未満の低成長が続いている。
しかし、内閣府によると、日本の潜在成長率は0.3%程度まで下がっており、それに見合った「低成長」とも言える。
2016年4─6月期の名目GDPは、505兆3763億円。 今後、統計ルールの変更によって研究・開発費がGDPに上乗せされ、約20兆円が加算されるので、525兆円がベースになる。
だが、潜在成長率に見合った0.3%の成長にとどまると、2020年になっても600兆円はおろか、550兆円にも達しない計算になる。
<債務膨張の誘惑>
潜在成長率を押し上げないまま、600兆円に達する近道は何か。それは積極財政を20年まで継続し、財政の力で無理やり達成するということになるのではないか。
実際、世界の潮流を見ると、最近のG20などでの議論でも、金融政策一辺倒から財政を活用した経済浮揚の道を取るべきだ、との方法論が積極的に提起されている。
日本経済も財政を活用し、パイを膨らませるべきだ、との意見が通りやすくなる内外の政治・経済環境になるのではないかと私は予想する。
しかし、そうした財政出動が、生産性の向上や潜在成長力の引き上げに結びつかないまま、時間だけが経過すると、財政出動をやめた途端に、経済活動の水準が急低下する事態に直面しかねない。
言い換えれば、赤字国債の発行増などを伴って、財政支出を拡大する動きが、いつまでたっても止まらないという展開だ。
<潜在成長率引き上げへ、中長期的な計画が必要>
だが、そうならない道もあるのではないか。潜在成長率を10年から20年かけて着実に引き上げる長期計画を立て、2年、5年という短期、中期の目標に分割し、その実現のための工程表を作成して、着実に実行する体制を作ることが重要だ。
さしあたり、2020年までに潜在成長率を1%に引き上げる目標を掲げるべきだ。内閣府によると、11年前の2005年10─12月期の潜在成長率は1.0%だった。
政府が足元で強調している「生産性革命」の実現は、正しい方向性を打ち出している。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータの研究・開発に対し、政府の手厚い支援を打ち出し始めた。
ただ、具体的なプランによって、どの程度の生産性向上が可能なのか、その結果として潜在成長率がどの程度押し上げられるのかという「数字」にリンクした努力目標がない。
<メルクマールは業界保護規制の緩和>
潜在成長率の引き上げこそ、「閉塞ニッポン」にとっての活路であり、国民の実感を伴った経済成長につながると考える。
しかし、竹中平蔵氏がロイターとのインタビューで指摘したように、今後の進展が望めるシェアリングエコノミーの広がりを既存の業界保護を目的にした規制が阻んでいる。
この規制を突破する安倍政権の「意思」がどこまで強いのか──。そこが潜在成長率の引き上げとも密接に絡んでいると考える。
http://jp.reuters.com/article/column-jp-growth-idJPKCN12E0NN?sp=true
NYマンハッタン、第3四半期のオフィス賃料が過去最高
[ニューヨーク 13日 ロイター] - 米ニューヨーク市マンハッタンのオフィス賃料が第3・四半期、過去最高を更新した。不動産コンサルタント会社コリアーズ・インターナショナル(CIG.TO)が13日、発表した。全国平均を上回る同市の雇用創出にけん引され、賃貸が活発化した。
マンハッタンの賃貸は、10年間の同市平均を13.8%上回り、年初からの累計はニューヨークの商業不動産にとって当たり年だった2015年を11.1%上回った。
ニューヨークでは8月までの12か月間で、全国平均の1.9%を上回る2.4%増の8万9000件の新規雇用が民間部門で創出された。
同社のクレイグ・カッジャーノ取締役によると、このペースが第4・四半期も維持されれば、2016年は昨年を超え、10年間で2番目に高い賃貸件数となる見通し。
同氏は、需要は供給に追いついているが、間もなく変化する可能性があると指摘。少なくとも過去30年間で最大となる、約1000万平方フィートのオフィススペースがマンハッタンで今後数年で新たに供給されるという。
http://jp.reuters.com/article/property-usa-new-york-idJPKCN12E084
コラム:中国に秋波送るフィリピン政権の経済的打算
西濱徹第一生命経済研究所 主席エコノミスト
[東京 14日] - 今年5月のフィリピン大統領選挙で勝利したロドリゴ・ドゥテルテ氏は、当初は「泡沫候補」とみられていた。地方政府の首長としての経歴は長いものの、下院議員としての経験は1期(3年)にとどまり、外交など国家行政に関する手腕は未知数だったためだ。要するに、大統領としての資質に疑問符がついていたのである。
ところが、結果的に同氏は当初の下馬評を覆して勝利し、6月に大統領に就任した。ポピュリズム(大衆迎合)的な過激な言動が支持されただけではあるまい。結局、フィリピン国民は、ダバオ市長として、超法規的措置を駆使する強権的な政治手法で治安を改善させ、それを弾みに直接投資を呼び込むことで成果を上げた人物を選んだのだ。
金融市場でもドゥテルテ政権誕生からしばらくは歓迎ムードが続いた。為替市場ではフィリピンペソが堅調な推移を見せ、主要株式指数も一時は最高値をうかがう動きを示した。
ちなみに、ここ最近は、手のひらを返したように、ドゥテルテ大統領の政治手法が外交的な対立や政情不安を招きかないとの懸念から、ペソは急落している。ただ、株価は下落傾向にあるとはいえ、5月の水準で持ちこたえており、経済政策面での期待は潰(つい)えたわけではなさそうだ。
経済政策面での信頼が地に落ちずに済んでいる理由としては、同氏が選挙戦に際して掲げた8項目からなる「基本政策」に、著名な経済学者やビジネス関係者が「ブレーン」として関わっていることが大きいと考えられる。
政権発足後には、こうした面々が国家経済開発相や財務相、予算管理相といった経済政策運営の中枢に配置された。これが、海外投資家を中心に、穏当な経済政策運営がなされるとの評価(期待)につながっているようだ。
経済閣僚は金融市場に対して融和的であるのみならず、国際機関において国家開発プロジェクトに携わった経験を持つ人が多い。こうしたことから、フィリピン経済が抱える諸課題の克服に向けた処方箋が提示されるとの期待は依然として強い。
フィリピン経済の主要課題と言えば、他のアジア新興国同様、慢性的なインフラ不足、そして対内直接投資の足かせとなっている排他的な産業政策などが挙げられよう。また、国内における雇用機会の不足が優秀な人材(頭脳)の海外流出を招く悪循環につながっている。
ただし、ここ数年は同国の公用語が英語であるという特徴を生かし、ITやビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)関連を中心に投資流入が活発化する動きがみられる。ダバオはこの恩恵を受けた都市の1つであり、ドゥテルテ政権もこの流れを理解しているのだろう。投資環境の整備を通じて幅広い分野に海外マネーを呼び込む姿勢を強く打ち出している。
さらに、労働生産性向上策にも取り組んでいるほか、財政健全化に向けたプログラムを推進する姿勢も示している。こうした施策は同国経済の潜在成長率向上にもつながることが期待されている。
<ASEAN内でも健闘するフィリピン経済>
ここでフィリピン経済の足元の状況を整理しておこう。まず今年前半は前年同期比プラス6.9%、4―6月期に限れば同7.0%の高成長を記録している。他のアジア新興国が中国の景気減速をきっかけに軒並み減速感を強めているなかでは、健闘していると言えよう。
フィリピンの高成長を後押ししているのは、人口動態だ。同国の総人口は2014年に1億人を突破し、その後も年2%を上回るペースで増加している。これが、個人消費を中心とする内需の強さにつながっている。
1人当たり国内総生産(GDP)は2015年時点で2880ドルと、いわゆる「中所得国」に分類される。だが、上記のような人口の多さゆえに消費市場としての規模は東南アジア諸国連合(ASEAN)のなかでもインドネシアに次ぐ水準に達している。人口に占める若年層の割合は極めて高く、今後も高い人口増加が見込まれるなど、潜在成長率が高まりやすいこともフィリピンの魅力と言える。
ただし、足元で個人消費を支えているのは、人口の1割強に達する海外への移民労働者からの送金であり、その3割強は米国からの流入に依存するなど、海外経済の影響を受けやすい側面を有する。
また、フィリピンはASEANのなかでは輸出依存度が比較的低い国ではあるものの、輸出に占める中国向けの割合は香港・マカオを含めると2割を上回り、中国経済の影響を受けやすい側面もある。
さらに、中国向け輸出の7割近くは電子部品をはじめとする機械製品であり、中国国内における生産動向の余波を受けやすい。つまり、中国の構造改革やそれに伴う生産調整などの影響も懸念される。その意味でも、対内直接投資拡大による雇用機会創出はフィリピン経済の安定成長にとって急務と言えよう。
<ドゥテルテ大統領が過激な言動に走る訳>
ところで、主要格付け会社は数年前に、軒並みフィリピンの信用格付けを「投資適格」級に引き上げている。これは、アキノ前政権の下で反汚職に向けた取り組みが前進したことに加え、高い経済成長を実現したことなどが評価されたためである。
こうした格付け状況に加えて、世界的な低金利環境下で高い利回りを求める動きが国際金融資本市場で強まっていることも奏功し、同国への資金流入は活発化する展開が続いている。しかし、リスクを挙げれば、やはりドゥテルテ大統領による過激な言動がこうした好循環に水を差す可能性だろう。
それにしても、ドゥテルテ大統領はなぜ過激な言動に走るのか。それはやはり国民からの絶大な人気を誇る一方で中央政界における経験が乏しいなか、治安維持といった効果を得やすい分野を中心に大衆迎合的な姿勢に訴えざるを得ないためではないだろうか。
成果を急いでいると考えると、米国や国際機関などに対する強硬な態度と、中国やロシアなどに対する融和的な姿勢についても、納得がいく。つまり、外交的な深謀遠慮ではなく、直接投資など目に見える形での経済的な打算が働いている可能性がある。
むろん、フィリピンと中国の間では南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)をめぐる領土問題がくすぶっており、仮に投資などの実益を得る代わりに領土面で譲歩を迫られる事態となれば、「国益」に直結する問題だけに国民からの人気に陰りが出ることも懸念される。他方、米国などとの関係悪化はグローバル企業による投資の動きに悪影響を与える恐れもある。ドゥテルテ大統領が成果を急げば急ぐほど、経済面への副作用には警戒が必要となりそうだ。
*西濱徹氏は、第一生命経済研究所の主席エコノミスト。2001年に国際協力銀行に入行し、円借款案件業務やソブリンリスク審査業務などに従事。2008年に第一生命経済研究所に入社し、2015年4月より現職。現在は、アジアを中心とする新興国のマクロ経済及び政治情勢分析を担当。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-toru-nishihama-idJPKCN12E0FI?sp=true
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