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百貨店の大量撤退により地方・郊外の残存利益は誰のものに?写真は三越千葉店
百貨店崩壊で始まる地方・郊外の高齢富裕層争奪戦
http://diamond.jp/articles/-/104577
2016年10月14日 鈴木貴博 [百年コンサルティング代表] ダイヤモンド・オンライン
百貨店が大量閉鎖の時代に入った。今年閉店したのは、西武旭川店、そごう柏店、西武春日部店、マルカン百貨店(花巻)などの店舗。来年には三越千葉店、三越多摩センター店、西武筑波店、堺北花田阪急、西武八尾店なども閉店を予定している。
なぜこれらの百貨店が閉店していくのか。背景にある構造を整理してみよう。
昨今のニュースを整理してまずわかることは、閉店が発表されている百貨店はすべて地方店と郊外店だということだ。
大手百貨店の収益は旗艦店に偏っている。三越伊勢丹で言えば、グループの中で新宿伊勢丹、日本橋三越、銀座三越の3店が圧倒的な売上と利益を上げている。
1980〜90年代にかけての百貨店戦略では、この旗艦店の収益をテコに地方や郊外に進出して、新たな顧客需要を開拓するという考え方が「戦略的」だとされた。その目的で開店させたのがこれら地方店・郊外店だったのだ。その目的を果たせないまま、これらの店舗が今、閉店へと向かっているわけだ。
大手百貨店がこのように地方と郊外のリストラに踏み切った理由は、旗艦店に経営を集中する方針を決定したためだ。そのきっかけは旗艦店の収益に陰りが見えてきたことにある。
一番の象徴はインバウンド不振だろう。爆買いがブームになったと思っていたら、今年は銀座の百貨店の免税フロアが手のひらを返したようにがらがらという状態だ。きっかけは中国政府が海外旅行客の高級腕時計、酒、化粧品の関税を大幅に引き上げたことが大きい。
円高もあいまって中国人観光客の財布のひもが締まったということと、中国人旅行者がモノ消費から関税がかからないコト消費へと消費をシフトし始めたことで、百貨店の免税品売り場はさみしい状態になった。
それでは地方、郊外の立て直しまでは手が回らない。経営資源を集中させるべきは旗艦店だということで、地方百貨店や郊外百貨店の計画は「ここでおしまい」ということになった。
それにしてもなぜ地方、郊外の需要が開拓できなかったのか?
■地方・郊外の需要を
開拓できない3つの理由
理由を分析すると3つのキーワードが浮かび上がる。そもそもの消費不振、進まない構造改革、そして主力消費者セグメントの百貨店離れだ。それぞれの状況を見ていこう。
アベノミクス以降の経済の特長は格差の拡大にあった。シンプルに言い切ると富裕層が富み、中流層以下が潤っていない。また都市部が潤い地方は苦しんでいる。だから地方都市では消費不振が際立っている。
潤ったはずの大都市圏でも、郊外となると多くの住民は中流層以下だ。付加価値の高い高額品が得意な百貨店は、節約志向の住民が強く日々の生活に密着した消費中心の郊外では、消費の開拓が難しい。
そもそもアベノミクスの結果、地方の消費者、郊外の消費者が経済発展から取り残されたことが背景にあるわけで、そのような場所で新たな顧客層を開拓しようとしても無理というわけだ。国の現実的な(つまり政治家が口にしているのではなく実際の経済に影響している)政策の流れは、逆に向かっているのだ。
消費不振が外的要因だとすれば、百貨店の構造改革がもう20年も進んでいないという事実は、逆に百貨店経営の根幹問題である。
象徴的な部門はアパレルだ。地方の百貨店は収益的にはアパレル頼りになるのだが、このアパレル不振はある意味で百貨店の構造が自ら招いている部分がある。
大きな問題のひとつに売れ残りは自由に返品できるという百貨店独特の商慣行がある。在庫リスクは卸やアパレルメーカーが負っている。
この構造のせいで、百貨店のバイヤーは商品を選ぶ目がどうしても甘くなる。その一方で、納入はアパレルメーカー側の意向に左右されるため、人気商品は地方・郊外には回ってこない。だから、地方百貨店や郊外店のアパレルの品ぞろえは競争力がなくなる。
この状況は20年前から「問題だ!」と言われ続けたにもかかわらず、いまだに誰も解決できていない。百貨店の経営陣から見れば、誰にも解決できない問題なのだったら、閉店したほうが収益向上の早道だという判断になるのは当然だろう。
さて三番目の問題が、主力消費者セグメントの百貨店離れだ。それは、地方や郊外で潜在的な顧客としてターゲットにされていた40代から60代の富裕層。彼らが結局、百貨店よりもいい小売店を見つけて、そちらに消費行動が移ってしまっている。
想像してみてほしい。あなたが地方都市に住む40代のプチ富裕層だったとして、腕時計や衣服や靴をどうやって選ぶか。品揃えにしても利便性にしても、今ではインターネット通販やドン・キホーテの方が大きな競争力を持つようになっている。
以前は試着ができない、届いてみたら実際と違うなど課題も多かった通販だが、今では無料で返品ができたり、リピーターにとっては品質の問題がなかったり、最終手段としてはヤフオクで売ればよかったりということで、インターネット通販市場は拡大の一途にある。
また、地方の百貨店の人気部門は食品売り場なのだが、意外な強敵としてセブン-イレブンが立ちはだかるようになってきた。もちろん、百貨店の食品売り場に通う消費者層は基本的にそこが気に入っているのだが、ちょっとした惣菜が足りないときなど「次の選択肢」としてはセブン-イレブンでいいというくらい、セブン-イレブンの食品が充実するようになってきた。
念のため強調しておくと、この点ではローソンとファミマはダメである。現CEOの井坂氏が育てたセブンプレミアムが、今では地方百貨店や郊外百貨店の顧客層を取り込み始めたという現象が起きているのだ。
■取り残されたパイも意外に大きい
残存利益をどう刈り取るか?
こうして地方や郊外の40代〜60代富裕層の消費は、インターネット通販とドン・キホーテとセブン-イレブンに刈り取られてしまったのだ。
さて、このようにして地方と郊外で百貨店の大量閉店が始まると、実は小さくないビジネスチャンスが起きる。取り残されてしまった消費者のパイが意外と大きいのだ。
それはステレオタイプで言えば、60代から80代の富裕層。おせちやお中元・お歳暮は必ず百貨店で購入するし、衣料品も百貨店の品質でないと満足できない。こういった層が、百貨店の閉店した街では行き場を失う。
現実的には、今後それらの残存利益を拾っていけるのは、インターネット通販ではなく地方のショッピングモールなのではないか。
百貨店の閉店はもう起きてしまった問題なので、それ自体はどうにもならない。後は残存利益の刈り取りに目を向けるべき局面に入ったと考えるべきなのだろう。
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