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トヨタとスズキの奇妙な提携会見、真の狙いは何か
http://diamond.jp/articles/-/104579
2016年10月14日 ダイヤモンド・オンライン編集部
トヨタ自動車とスズキは10月12日、共同で会見し、提携すると発表した。環境、安全、情報技術などの複数分野で連携して協力するというが、具体的に合意した項目が何一つないのに、その席にはトヨタとスズキの両トップが並ぶという超豪華な会見だった。その会見の背景には何があるのか、狙いは何か。真相に迫った。(ジャーナリスト 井元康一郎)
■会見をやること自体が目的!?
「何をやるか」は未定の提携会見
10月12日、急遽開かれたトヨタ自動車とスズキの共同会見。トヨタ東京本社に設けられた会見の席に姿を現したのは、40年にわたってスズキの“最高指導者”として君臨し続けてきた鈴木修会長。迎えたのはトヨタの創業家出身である豊田章男社長。
88歳と60歳。親子ほど年齢の違うこの2人が相まみえた会見の内容は「業務提携に向けた検討の開始」というものだ。会見では環境、安全、情報技術といった大まかな分野について言及はあったものの、何をやるかについては全部「これから考える」だった。
妙な会見である。普通であれば、少なくとも何らかの項目について合意に至った後に発表するのが提携というものであるからだ。
トヨタは昨年、マツダと提携関係を結んだ。そのときも具体的なことは決まっておらず、これから考えるとしたものの、包括提携を行うという基本合意には達していた。今回はその段階にすら達せず、あくまで“検討”。仮に会見をやるとしても、役員が出れば事足りる話だ。その席にトヨタとスズキの両トップが並ぶというのは、どうみてもオーバークオリティである。
ある業界事情通は言う。
「今回の会見は、この会見をやるということ自体が最大の目的なのでは。鈴木会長は先にトヨタの豊田章一郎名誉会長と話をしたと言っている。最初に話をしたのは今年の9月と言っていたが、本当はずっと前から話をしていた可能性がある。スズキはそれまで絶対に呑まないと言っていた軽自動車増税を受け入れた。また、トヨタ傘下の軽メーカー、ダイハツとの販売競争が激化する中で、自分から“お行儀の悪い売り方はもうやめにする”と、自ら退いた。それらがトヨタとの提携の地ならしだったと考えれば、スズキのここ2年ほどの行動は全部つじつまが合う」
■スズキの修会長への気遣いか
会見でのトヨタの章男社長のコメント
章男社長は会見で静岡西部を指す「遠州」という言葉をたびたび口にした。
「トヨタとスズキは共に遠州(静岡西部)を発祥とする企業で、自動織機を源流としている。また遠州の気質である“やらまいか(とにかくやってみよう)”の精神が根付いている」
トヨタの始祖、豊田佐吉翁が生まれたのは、スズキの完成車工場がある湖西市。渺茫たる遠州灘が広がる地だ。その意味ではトヨタは確かに遠州の流れをくんでいるといえる。
しかし、首脳から一般社員に至るまで、トヨタが「トヨタの源流は遠州だ」と言うのを、筆者はこれまで聞いた記憶がない。あくまで三河に本拠を構え、三河と共に生きた企業というのがトヨタの意識なのだ。
そのトヨタのトップである章男社長が遠州という言葉を連発したのは、いずれグループ内に迎えることになるかもしれないスズキへの気遣いにほかあるまい。
一方の鈴木会長も、これまでおそらく一度も言ったことがない言葉を口にした。
「良品廉価というやり方はいずれ行き詰まる」
スズキはこれまで、連綿と軽自動車やコンパクトカーなどの低価格商品を主軸にビジネスを展開してきた。鈴木会長は「大企業は美味しくないビジネスはやりたくない。そこを狙えば、ウチは大企業と競合せずにビジネスができる」と言い切っていた。鈴木会長にとって、良品廉価は自らの経営哲学そのものだったと言っていい。それがダメだというのは、自己否定に近いものがある。
■「良品廉価」の戦略に限界?
「ケチりすぎた」と反省した修会長
スズキは今年の初夏に、燃費審査に使う走行抵抗値の測定を国交省の定めた規則どおりに行っていなかったというスキャンダルに見舞われた。先に問題が発覚した三菱自動車のように、燃費を実力値よりよく見せるためのデータ改ざんをやったわけではないが、不正は不正だ。そんな不正に手を染めた理由は、テストコースが海の近くでデータを取るのが難しかったというものだった。
風が強ければ、防風柵を設置するなどの対策を取るものだが、スズキはそれをやらなかった。鈴木会長は釈明会見で「ケチりすぎた」と反省の弁を述べた。経費を徹底節減すれば良品廉価で押し通せるという戦略は、すでに相当な無理を来たしていたのだ。
フォルクスワーゲンとの提携の失敗、走行抵抗値の違法測定など、さまざまな問題が起こる一方で、グローバル市場におけるコンパクトカーの競争環境は厳しさを増すばかり。軽自動車は日本が主体で、世界への広がりを持つことは難しい。
スズキは鈴木会長のワンマン経営でここまで生き延びてきた。しかし、前述のように鈴木会長もすでに齢88歳。ワンマン経営の弊害で後継者が育たなかったため、身を退こうにも退けない。「豊田章一郎名誉会長との会談の裏には、そういうプレッシャーもあったのかもしれない」(ライバルメーカー幹部)
■過去、スズキの危機を助けたトヨタ
遠くて近い鈴木家と豊田家の仲
トヨタとスズキは、元々は近しい仲だ。1970年代、大気汚染防止のために当時としては厳しい排出ガス規制が実施されることになったとき、パワーはあるが排ガスでは不利な2サイクルエンジンを主体としていたスズキは規制をクリアできず、致命的な打撃を受けかねない事態に陥ったことがある。そのときに救いの手を差し延べたのは当時のトヨタ社長、故・豊田英二氏で、ダイハツ製の4サイクルエンジンをスズキに供給し、スズキは危機を乗り越えることができたのだ。
以来、鈴木家と豊田家は遠くて近い間柄だった。軽自動車税制でトヨタとスズキが対立するといった歴史の流れで一時的に疎遠になったこともあったが、「ようやく収まるところに収まった」(前出の業界事情通)格好である。
さて、今回の提携“検討”劇だが、環境、安全、情報技術など複数分野での連携強化がうたわれている。
だが、それはあくまでも名目にすぎない。今日の自動車業界でウケのいい言葉を並べただけだ。もちろん今後、それらについて協力し合うこともあろうが、第1の目的はトヨタとスズキが今後、運命共同体になると意思表示すること。スズキは社の行く末が安泰なものになり、トヨタは競争の厳しい低価格車分野で疲弊しないで済むというメリットがある。スズキにとってはゼネラルモーターズ、フォルクスワーゲンに続く3度目の結婚になるが、その結婚生活は果たして末永いものになるか。
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