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日本円は「蚊帳の外」に、仮想通貨が独自の経済圏を形成
http://diamond.jp/articles/-/104448
2016年10月13日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] ダイヤモンド・オンライン
前回述べたICO(イニシャル・コイン・オファリング)のほとんどは、OpenLedgerという分散市場で行なわれている。
これは金融取引の大きな進歩だ。なぜなら、カウンターパーティーリスクがほとんど消滅し、手数料が従来の株式市場の取引に比べて飛躍的に低下するからだ。
新しい技術を開発した企業のスタートアップ資金は、これまでは株式市場におけるIPOによって行なわれてきた。しかし、今後は、分散市場におけるICOによってなされるだろう。
仮想通貨はすでに独自の経済圏を形成している。問題は、日本円が蚊帳の外に置かれていることだ。
■リーマンショックで大問題となった
カウンターパーティーリスク
これまでの金融取引において、カウンターパーティーリスクが大きな問題であった。
「カウンターパーティーリスク」とは、決済の前に相手方が倒産して、契約不履行になるリスクである。
カウンターパーティーリスクは、2008年のリーマンショックで大きな問題となった。CDSというデリバティブでの取引を大量に行なっていた投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻し、デリバティブ契約が実行できなくなった。さらに、保険のAIGが経営危機に陥り、同社が引き受けていたCDSが実行できなくなる危険が生じた。
金融機関は他の金融機関を信用できなくなり、疑心暗鬼に陥って、マネーに走った。それが連鎖して、金融システムはメルトダウンの直前までいった。
この問題は、デリバティブを取引所取引(市場取引)で行なうという形で対処された。
金融取引では、相対取引と取引所取引とが区別される。相対取引の場合には、カウンターパーティーリスクが存在する。それに対して、取引所取引では、中央清算機関(クリアリングハウス)が売り手と買い手の間に入ってリスクを集中的に管理する。取引相手先が中央清算機関に一元化されるため、カウンターパーティーリスクが回避され、契約不履行が他の主体に連鎖するリスクがなくなる。
しかし、その半面で、決済完了までに時間がかかり、手数料も増加するという問題が発生する。
■仮想通貨取引における
カウンターパーティーリスクは?
仮想通貨そのものの取引は、管理者のいないP2Pがブロックチェーンに記録することで行なわれるため、カウンターパーティーリスクはない。
しかし、周辺サービスまで含めると、カウンターパーティーリスクが存在する。ビットコインの場合、ドルや円などの現実通貨とビットコインの両替や取引で発生する。
実際、ビットコイン交換所であるマウントゴックスが2014年2月に破綻し、預けられていたビットコインが回収不可能となる事件が生じた。これは管理者が不正を働いたことによるもので、広い意味でのカウンターパーティーリスクだ。
こうした問題が起きるのは、マウントゴックスが従来型の集中管理組織であるからだ。マウントゴックス後も、仮想通貨の取引所や交換所の破綻事件がいくつか発生している。
問題はそれだけではない。集中型システムでは手数料が高い。ビットコインそのものの送金コストが低くても、現実通貨との交換にコストがかかってしまって、全体としてのコスト削減にはならない可能性がある。
しかし、こうした問題を回避する手段がつくられつつある。それが分散市場だ。
■デンマークの取引所CCEDKが開設した
世界初の分散取引所Openledger
「分散市場」(または、分散型取引所、Dex:Decentralized Exchange)がすでに誕生している。世界最初の分散型取引所は、デンマークの取引所CCEDKが開設したOpenledger(オープンレジャー)だ。
Openledgerでは、ビットコインやEther、ドルにペッグしたBitUSDなどの取引を行なっている。また独自トークン(仮想通貨)であるObitsの発行も行なっている。
また、ICOO(Initial Coin Offering Openleger)というICOのためのファンドを立ち上げ、毎月のように新たなDAC(分散型自律企業)が資金調達のためのICOを行なっている。これまで行なわれたICOのほとんどは、Openledgerで行なわれたものだ。
決済はほぼ即時で行なわれるので、カウンターパーティーリスクはほとんどない。
取引が分散取引所で行なわれていたら、リーマンショックやマウンドゴックス事件は起こらなかっただろう。
Openledgeでは、手数料収入などを使って、自らのトークンであるObitsを購入するBuy-back(バイバック)が行なわれている。これは、上場企業の自社株買いと同じようなものだ。
OnalyticaのFintech 2015: Top 100 Influencers and BrandsのTOP 100 BRANDSで、CCEDKは世界第31位に選ばれている。このランキングでは、Nasdaqが第23位で、総資産120兆円のスイス最大の銀行UBSが第36位だ。分散市場は、もはや限界的な存在ではなく、金融市場でのメジャーな存在になろうとしているのだ。
■プラットフォームとして
使われるのはBitShares
OpenLedgerは、プラットフォームとして、BitSharesを採用している。
BitSharesの仕組みは、やや複雑だ。これについては、拙著『仮想通貨革命』(ダイヤモンド社、2014年)で説明した(第5章の5「分散市場と自動化企業が作る未来社会」、補論「分散市場の仕組みと自動化された通信社」)。あらためて説明すれば、以下のとおりだ。
BitSharesのシステムには、いくつかの資産がある。まず、BTS(BitShares)と呼ばれるものがある。これは、BitSharesにおける取引で使われる基軸通貨であり、BitSharesで取引をするには、BTSが必要となる。また、BitSharesを株式会社と見た場合の株式のようなものである。BTSはブロックチェーンで運営される。
さらに、SmartCoin(当初はBitAssetと呼ばれていた)がある。これは、価値が他の金融資産の価値に追随する仮想通貨だ。
SmartCoinには、いくつかのものがある。BitBTCはビットコインの価格をフォローする。つまり、BitBTCは、ビットコインとほぼ同じ価値を持つ資産だ。BitUSDは米ドルの価格をフォローし、ほぼ1ドルの価値を維持する。BitGoldは金の価格をフォローする。
BitSharesのシステムで、以上の資産の取引を行なうことができる。取引の方法も、「Buy(現物買い)」「Sell(現物売り)」の他に、SmartCoinについては、BTSを証拠金とする「Short(空売り)」も行なえる。また「Swap(スワップ)」「Loan(ローン)」などもある。
SmartCoinは、通常で行なわれている商品購入時の決済にも利用しやすいという利点がある。
■IPOからICOに
仮想通貨が現実の通貨を駆逐する可能性は?
今後、多くの企業が、事業の一部で自律的な運営に適している部分を切り離して、DAO(自律的組織)にするだろう。とりわけ革新的な新技術が開発された場合には、それをDAOとして運営するだろう。
ICOして資金調達をし、その後は、トークンがいまの株式のように取り引きされるだろう。
未公開で時価総額が10億ドルを超える企業は、ユニコーン企業と呼ばれる。こうした企業はいずれIPOするのだろう。しかし、従来型のIPOでは手数料がきわめて高い。今後は、IPOではなく、ICOを行なう場合が増えるのではないだろうか。
ICOが急激に増えたのは、前回述べたように、EthereumのコインであるEtherの価格が、ICO時からわずかの期間で60倍以上に上昇したのに刺激されたためと思われる。こんなことは、株式の世界では滅多に起こらないだろう。
このように、技術開発資金の調達法が一変しようとしている。いま起こっていることを見ると、2004年にまだ小規模な企業であったGoogleがIPOしたことを思い起こす。
その後、グーグル(正確には、その持ち株会社であるアルファベット)の時価総額は、アメリカで第2位にまでなった。それと同じようなことがいま生じようとしているのだ。
分散市場は、『仮想通貨革命』を書いたときには構想段階だったので、夢のようなものとして紹介した。それがいまや利用されており、巨額の資金を調達することに成功しているのだ。変化は想像した以上に速いスピードで進んでいる。
これからどういう世界がつくられるか。仮想通貨が現実の通貨を駆逐する可能性はなくはない。
■ビットコイン経済圏が誕生しているが
日本円は蚊帳の外
分散市場ではビットコインが用いられる。ビットコインは、すでに独自のエコシステムを形成しているわけだ。
ビットコインの価値は変動する。しかし、それは、リンクしたスマートコインを買うことで避けることができる。
現実世界の支払いはどうするか? 取引相手がビットコインを受け付けてくれれば、ビットコインで出金して払えばよいわけだ。仮想通貨なら簡単に国境を越えられる。銀行の支店がないところでは、とくに使われるだろう。
受け付けてくれないのであれば、ドルにすればよい。
スタートアップ企業のCircleは、ビットコイン口座を無料で提供し、その口座と銀行口座とのお金の出し入れや、コイン送金が即時にできるサービスを2105年暮れから米国で開始した。
今年9月7日にiPhone 7の発表があったが、近日中にリリースされるiOS10では、iMessage内でCircleのビットコイン決済が利用可能になるようだ。
初期アプリのiMessageから利用できるので、わざわざアップストアからダウンロードし、初期登録などを行なう手間をなくすことができる。ただし、Circleの公式ブログによると、利用できるのはアメリカとイギリスであり、日本で利用が可能になるのは、先のようだ。
OpenLedgerの場合も、取引できる通貨としてホームページに示されているのは、ビットコイン、米ドル、ユーロ、中国人民元、BTS、OBITSなどだ。
その中に日本円はない。日本はすでにビットコインシステムから外れてしまっているのだ。
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