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「創業家同盟」誕生へ!トヨタとスズキ・提携の狙いと裏事情【緊急リポート】
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49945
2016.10.13 井上 久男 ジャーナリスト 現代ビジネス
■生き残りのための選択
トヨタ自動車の豊田章男社長とスズキの鈴木修会長は12日、共同記者会見を開き「両社の協力関係の構築に向けた検討を開始する」と発表した。
会見では両首脳から提携内容の詳細は説明されず、「まだお見合いの段階」(豊田社長)だとして、環境や情報技術などでの業務提携を検討し、これから具体的に何ができるか話し合うとの方向性が示されたに過ぎないが、今後、両社の提携はトヨタがスズキを傘下に収める資本提携に発展する可能性が高い。
今回の提携に向けての検討は、鈴木修会長が今年9月初め、豊田社長の父の豊田章一郎名誉会長と会って、「良品廉価のための車づくりなど自動車産業の伝統的な技術を磨くだけではこれからの自動車産業では生き残れないので、トヨタさんのご協力をいただけないか」(鈴木会長)と打診したことから始まったという。
スズキの経営規模では自動運転などの次世代技術の開発投資には耐えられず、こうした分野では他社の技術協力がなければ生き残れない状況にある。
鈴木会長と豊田名誉会長は年齢も近く、これまでにも定期的に食事などをする関係にあるうえ、創業家の看板を背負った者同士として馬が合う関係にあった。インド市場に強く、安い軽自動車を効率的に造るノウハウに長けたスズキは業績も安定しているが、自動運転や燃料電池車などの次世代の技術では後れを取っており、生き残りに一抹の不安があった。
しかも「カリスマ経営者」「タヌキおやじ」と呼ばれる、海千山千の鈴木会長は高齢なうえ、長男で後継者の鈴木俊宏社長が経営者として線が細いため、鈴木会長は自分がいなくなった後のスズキの経営に不安を覚えていたとされる。
さらに鈴木会長は昨年末から今年初めにかけて肺炎をこじらせて入院、体力の衰えが目立ち始めていた。こうした点からはスズキが将来の生き残りのためにトヨタに助けを求めたとも見て取れる。
記者会見では鈴木会長は「あらかじめ決まったことはない」と答え、これから何ができるのか検討していくことを重ねて強調したが、「今後の資本提携はあるのか」の問いに対しては、「ゆっくり考える」と答え、否定はしなかった。
鈴木会長は記者の質問をはぐらかすのは得意だが、意外と本音をぽろりと漏らすこともある。自分がいなくなった後のことを考え、トヨタに後ろ盾になってもらうために、トヨタからの資本の受け入れも十分に検討する、ということだろう。
一方トヨタも他社との提携戦略が苦手なため、自社の技術を世界に広めていく標準化戦略が弱点だった。その一例が、トヨタが誇るハイブリッド技術は優れていても、それを使う自動車メーカーは少なく、むしろ世界の潮流は電気自動車に傾きつつあったため、虎の子のハイブリッド技術が「ガラパゴス化」に陥る危機に直面していた。燃料電池車も同様の課題を抱えていた。
こうした中、世界で286万台の販売規模を持つスズキが「仲間」に加われば、標準化競争で利点になると判断、両社の利害関係が一致した模様だ。
さらに、トヨタはスズキのライバルのダイハツ工業を完全子会社化して上場を廃止し、トヨタの一部門としてダイハツのリソースを活用する戦略に打って出た。今後も成長が期待できる新興国向けの小型車の開発はダイハツに委ねる方針だ。トヨタがダイハツを完全に支配したという関係の変化も、スズキからの提携打診を受け入れやすくしたと見られる。
■三強時代に突入。生き残るのは、どこだ
もともとトヨタとスズキは似た者同士で、良好な関係を築いてきた。発祥の地はトヨタが現在の静岡県湖西市で、スズキはお隣の浜松市という「遠州つながり」であるうえ、共に祖業は自動織機の生産だ。しかも、これまでにスズキはトヨタに2度助けられている。
記者会見の様子(筆者撮影)
一回目は1950年頃、スズキは資金繰りに窮してトヨタの「親会社」である豊田自動織機から資金援助を受けたことだ。2回目は1975年、スズキのエンジンが環境規制をクリアできず、鈴木修専務(当時)がトヨタの豊田英二社長(同)に頭を下げ、トヨタグループのダイハツ工業からエンジンの供給を受けたことだ。今回の提携が実現すれば、スズキはトヨタから「3回目の支援」を受けることになる。
そしてスズキはこれまでにも単独の生き残りに危機感を覚え、まずは米GMと資本提携したが、GMの経営悪化により提携を解消した。その後、独VWの資本を受け入れたが、VWがスズキを子会社のように扱おうとしたため、鈴木会長が激怒して提携を解消、そのプロセスでは国際仲裁裁判所の裁定にまでもつれ込んだ。
VWとの紛争が解決して、次の提携先を模索していた矢先の今年1月、日本経済新聞が「トヨタとスズキが提携」をスクープしたものの、この報道に鈴木修会長が激怒して「そんなことは一切ない」とへそを曲げて、日経記者を出入り禁止処分にして、日経が社業で営む親睦組織の「日経懇話会」からも脱会してしまった。こうした鈴木会長の行動を見て、「修さんも大人げない。年を取った証拠だ」という浜松の財界関係者もいたほどだ。
現役の社長同士も相性がよいと見られる。鈴木俊宏社長は東京理科大大学院修了後、技術者としてトヨタグループのデンソーに勤務、課長まで勤めてスズキに入社しており、経営者としての線は細くて地味なものの、年上の部下を敬い、チームプレーを大事にするタイプだ。
豊田章男社長も、自分が前面に出ない俊宏氏のようなタイプを好み、可愛がる傾向にある。鈴木修会長が豊田章一郎名誉会長を「兄のような存在」と慕うように、今後は章男氏と俊宏氏も年齢の差などから見て親父同士と同じような関係に発展するのではないか。そうした意味で、今回のトヨタとスズキの提携検討は、「創業家同盟」でもあるのだ。
実現すれば日本の自動車業界はトヨタ、日産、ホンダの3つに分かれることになるが、トヨタ・スズキの両社が、新しい時代を生き抜くために意義のある提携となることは、間違いないだろう。
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