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ようやくOPEC加盟国は増産凍結へ向けて足並みをそろえることができた。価格推移やOPECに対する評価など、今のところOPEC加盟国にとって最も心地よい市場環境になっている Photo:新華社/アフロ
原油増産凍結でサウジが見せた絶妙な立ち回り
http://diamond.jp/articles/-/104172
2016年10月10日 週刊ダイヤモンド編集部
長引く原油安に歯止めをかけるため、石油輸出国機構(OPEC)がついに増産凍結で合意した。原油相場の底抜けを阻止し、さらにOPEC自体の存在意義を市場に誇示するという、盟主サウジアラビアの戦略が短期的には奏功した形だが、生産割当量を決める11月の総会までなお土壇場での神経戦が繰り広げられそうだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男、重石岳史)
市場やエネルギー業界の予想と反対の結果を出しがちなOPECが、今回も例外なく予想とは反対の一報を発した。
世界の原油価格動向に圧倒的な影響力を持つOPECが9月28日、アルジェリアで開催された臨時会合で、加盟国全体の生産量を、日量3250万〜3300万バレルを上限とすることで合意したのだ。11月に開催される総会で、正式に各加盟国の原油生産割当量が決められることになった。
市場では8月の生産量実績が日量3324万バレルだったことから、約70万バレルの事実上の減産合意と捉えた。国際原油価格(WTI)はすぐに反応し、1バレル当たり44ドル台で推移していた価格は瞬く間に48ドルまで上昇した。
実は、OPECは2月、4月、6月と直近3回の会合で、原油価格を上昇させるべく、減産合意に向けて調整してきたが、ことごとく失敗。特に4月の会合では、合意直前にサウジアラビアのサルマン国王の息子で、現在サウジ国内で絶大な人気と権力を誇るムハンマド・ビン・サルマン副皇太子の鶴の一声で破談になるという一幕もあった。
そんな経緯から市場では、「今回もどうせ何も決まらない」という見方が大勢を占めていた。
それが一転、明確な生産量の上限設定という結論を出したものだから、「市場の空気を変えただけでなく、OPECに再び注目しないといけないと思わせる効果もあった」(加藤健太・三井物産エネルギー第一本部燃料部石油営業室長)。
なぜ、「何も決められないOPEC」が、今回は増産凍結という結論に至ることができたのか。
まず挙げられるのは、これ以上OPECの存在意義を低下させるわけにはいかないという危機感がOPEC内にあったことだ。もし、今回も増産凍結へ向けて何も決められなかった場合、「世界からOPECとは名ばかりの、足並みのそろわない連合と捉えられかねない状況だった」と野神隆之・石油天然ガス・金属鉱物資源機構主席エコノミストは指摘する。
そしてこのまま増産基調が続けば、「原油価格は40ドルを切り、再び30ドル台まで急落する可能性もあった」(野神氏)。9月上旬、米エネルギー省やIEA(国際エネルギー機関)などが相次いで原油需要予測を下方修正し、2017年後半まで需要の伸びは弱いとしていたからだ。
OPEC加盟国は国家財政を原油の輸出に依存している。原油価格が16年2月に20ドル台に急落したことで、財政は急速に傷んでいた。ようやく40ドル台まで回復していたところへ、再び30ドル台まで下落すれば、財政に致命的なダメージを与える恐れがあったのだ。
実際、サウジは今回の増産凍結決定前の26日、閣僚の給与を20%カット、公務員の手当と賞与を大幅にカットすると発表するなど、緊縮策を断行せざるを得ない状況に陥っていた。
■狙い通りの市場環境を手にしたサウジ
市場では依然として、11月開催のOPEC総会で生産割当量を決められるのかという懸念がある。一方で、「11月に最終的に決めるという手順には、サウジの戦略的で絶妙な意図が見える」(新村直弘・マーケット・リスク・アドバイザリー代表)との指摘もある。
実はサウジの考える理想型は、具体的に減産のための生産枠設定などせずに、安過ぎず高過ぎないレベルに原油価格を維持することだといわれている。その理想型を実現させるために、11月に予定されている三つの重要イベントを注視しているのだ。
三つとは米国の雇用統計発表、米大統領選挙、そして米利上げの有無。結果次第で、為替がドル安に振れて原油価格は上昇する。もしかすると、OPECは11月の総会でわざわざ加盟国同士で骨の折れる生産割当量の折衝をする必要がなくなるかもしれないのだ。
一方、原油価格はできるだけ維持したい。そこで、国別の生産枠を決定せずに増産凍結だけを決めた結果、45ドルを超えるという原油相場の“底抜け阻止”に成功した。
高過ぎないというのは50ドルが一つの基準となる。というのも、50ドルを安定的に超えると米国でシェールオイルの増産が始まるからだ。OPECは自らの生産シェアを維持するのにシェールの生産を封じ込めたいため、50ドルはなるべく超えてほしくない。つまり45〜50ドルがOPECにとって最も心地よい相場ということだ。
実際はどうか。本稿執筆時、原油価格は48〜49ドルを推移しており、サウジの希望通りとなっている。
生産割当量の11月決定という絶妙な立ち回りで、サウジは思い通りの市場環境を手に入れたというのが、今回の増産凍結の本質といえそうだ。
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