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トランプ氏の減税案で貿易赤字が減らない理由
財政赤字拡大に支えられた減税なら貿易赤字拡大の恐れ
レーガン元大統領(左)は渋々、保護主義的政策を行った。しかしトランプ氏は違う。貿易赤字が深刻化した場合、トランプ氏が思いつくのは関税などの罰則だろう
By GREG IP
2016 年 10 月 7 日 07:03 JST
米共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏はこれまで数えきれないほどさまざまな政治的立場を取ってきた。その中で一番長続きしているのが、外国との不公正な競争のせいで米国が深刻な貿易赤字に陥っているとの主張だ。貿易協定の見直しや関税の課税による貿易赤字の縮小は今やトランプ氏の政策綱領の要である。
皮肉なことに、トランプ氏の残りの経済政策が実施されれば、狙いとは全く逆の事態が起きかねない。つまり、貿易赤字の縮小ではなく拡大を招く可能性が高い。
通常の経済学では、トランプ氏が提案する、財政赤字の拡大に頼った減税は金利上昇や外国資本の流入、ドル高を招くと予想される。その結果、減税が実施されなかった場合と比較すると輸入は多く、輸出は少なくなり、対外債務も多くなる。こうした事態はトランプ氏の保護主義的な衝動を強める可能性が高い。
トランプ氏の経済顧問の見方は違う。カリフォルニア大学アーバイン校の経済学者ピーター・ナバロ氏と投資家のウィルバー・ロス氏が作成した論文によると、トランプ氏の経済政策では貿易相手国との交渉で厳しい姿勢を取り、貿易赤字を解消するという。
https://si.wsj.net/public/resources/images/NA-CL826A_CAPAC_16U_20161005151210.jpg
80年代、レーガン大統領が実施した減税と軍事支出の拡大によって財政赤字が拡大し、ドルが上昇し、貿易赤字が膨らんだ。グラフは左から財政赤字の対GDP比率、主要通貨に対するドル指数、貿易収支の対GDP比率
経済学から外れた主張
しかしこの主張は、一国の貿易収支は関税ではなく、その国の投資と貯蓄の差によって決まるとする一般的な経済学の考え方から外れている。
トランプ陣営の主張は過去の経験とも一致しない。1980年代前半、当時のロナルド・レーガン大統領が実施した減税と軍事支出拡大によって国内貯蓄は吸収された。一方で連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ撲滅を目指して利上げを繰り返した。財政赤字と高金利を背景に外国資本が米国に流入し、ドルは1980年から85年までの間に49%上昇した。
貿易赤字の対国内総生産(GDP)比率は80年に0.5%だったのが85年には2.6%にまで跳ね上がった。レーガン大統領は自由貿易主義者だったが、議会の民主党勢力や企業からの強い圧力を受けて、日本による自動車の対米輸出自主規制など一連の保護主義的措置を実施した。しかしそのかいもなく、貿易赤字は拡大し続けた。
筆者は経済コンサルティング会社マクロエコノミック・アドバイザーズに依頼して、10年間で4兆ドルの減税の効果についてシミュレーションをしてもらった。10年で4兆ドルという前提はトランプ氏の経済政策によって失われるとみられる連邦政府の歳入の最低ラインである。最初の減税では失業率が若干低下すると予想されるが、同社はFRBがインフレ懸念から失業率の大幅低下を許さないとみており、最終的には10年間で金利を4%にまで引き上げると予想した。減税が行われない場合、FRBの利上げは3.25%までにとどまると予想している。
また海外の金利が変動しないことを前提とすると、ドルが急騰し、貿易赤字は2026年までに1兆ドル(約103兆円)近くに達するとの予想が出た。この赤字幅は減税がない場合の予想と比べて22%多い。一方、金利の上昇で米国が外国からの借り入れに対し支払わなければならない利息は増える。これによって経常赤字――貿易収支と所得収支などを合わせた経常収支における赤字――は1兆4000億ドル近くにまで上昇する。これは減税を行わなかった場合の予測より47%多い。
マクロエコノミック・アドバイザーズの予測でも、労働と投資の奨励を目的とした税率の引き下げを実施すれば、米国の潜在的な成長力が若干押し上げられることは分かった。しかし減税の恩恵は高金利によって相殺され、全体の成長率は減税がなかった場合とほとんど変わらず、財政赤字は減税がなかった場合の予測を80%上回るという。
もっとも金利は上昇しないかもしれない。FRBのジャネット・イエレン議長も、トランプ氏が大統領に当選した場合指名する後任者も、インフレを心配しなさそうだからだ。シンクタンクのタックス・ファンデーションは、外国は現行の金利水準で米国が必要な資金を喜んで貸し付けるとみている(議会予算局はこの見解に賛同していないが)。
金利上昇がなくても貿易赤字拡大
タックス・ファンデーションの分析によると、金利上昇がない場合、トランプ氏の税率引き下げ案は投資と成長に大きな効果があり、その結果、財政赤字は33〜40%減少する。ただしこのシナリオも外国からの借り入れ増加と貿易赤字の拡大が前提だ。分析を担当したアラン・コール氏は、法人税引き下げへの対応として外国からの投資を大幅に取り入れる必要があることは明らかだと話した。
トランプ陣営のナバロ氏とロス氏によると、規制緩和を行い、連邦政府がさらに多くの所有地で石油やガス、石炭の採取を認めれば、貿易赤字への減税の影響を相殺するのに十分な成長率を達成できるとしている。しかしこの結論は根拠がはっきりしない複数の想定に基づいている。例えば、 汚染軽減装置の費用など規制関連支出を減らせばGDPが増える、原油価格が低迷しているのに石油企業が大挙して掘削に乗り出す、どこかに大量の失業者が存在する、などがそうだ(規制関連支出の削減が長期的にGDPを押し上げる可能性はある。しかし短期的にはその可能性は低い)。
レーガン大統領は渋々、保護主義的政策を行った。しかしトランプ氏は違う。貿易赤字が深刻化した場合、トランプ氏が思いつくのは関税などの罰則だろう。
しかしこれまでの経験や経済学の理論から、関税などの罰則を導入すれば、貿易赤字は拡大する可能性があることが分かっている。メキシコペソの相場とトランプ氏の選挙情勢のこれまでの連動具合から判断すると、トランプ氏が大統領に当選した場合、ペソは急落する可能性が高い。貿易戦争が起きればメキシコは景気後退に陥る恐れがある。メキシコに製品を販売しようとしている米国企業にとって明らかに都合が悪い展開だ。
トランプ氏はほぼ間違いなく貿易に多大な影響を与えるだろう。本人が意図したような方向にではないかもしれないが。
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米連邦準備制度、誰が大統領になっても刷新は不可避か
Jeanna Smialek
2016年10月7日 06:31 JST
トランプ氏当選ならクリントン氏よりも抜本的な変革要求も
18年にはイエレンFRB議長、フィッシャー副議長が任期切れ迎える
11月の米大統領選の勝者が誰になるとしても、連邦準備制度は刷新を迫られるかもしれない。ただ、民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官が当選した場合よりも、共和党候補のドナルド・トランプ氏が選ばれたケースの方が、要求される変革は一段と抜本的なものとなる可能性がある。
クリントン氏は米金融当局における多様性の向上を求める一方、金融政策についてのコメントは避けるという民主、共和両党の大統領による最近の慣行は擁護してきた。トランプ氏は連邦準備制度をどのように変えるべきか明確にしていないが、金融政策の独立性を尊重するという伝統ははねつけている。同氏は米金融当局が金利を低水準に据え置いているのは、オバマ大統領のレガシー(政治的遺産)を確固たるものにしようとするのが狙いだと主張して批判している。
米Fedビル Photographer: Joshua Roberts/Bloomberg
トランプ氏は既に、自身が大統領に就任すれば、2018年に任期切れを迎えるイエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長に代わる人物を指名する意向を示唆している。バンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチの米経済担当責任者、ミシェル・マイヤー氏はこれについて、「誰が指名されるか不透明感」が生じることになると指摘。他方でクリントン氏が大統領になれば、連邦準備制度の大幅な見直しにつながる公算は小さく、「クリントン氏は現状維持の路線を取るだろう」とマイヤー氏は語った。
民主、共和両党の議員は過去数年、金融政策の監査を含め、金融当局の権限を制限する内容の法案を提出しており、これにはトランプ氏も賛意を表明している。連邦準備制度についての法改正には議会での超党派の支持か、いずれかの政党が11月8日の議会選挙で上下両院で支配的な地位を確保して、改革を強引に進められるようにすることが必要とされる。
このため、連邦公開市場委員会(FOMC)が直面するであろう最も明確な変革は、大統領による指名の形を取ることになりそうだ。イエレン議長のほかフィッシャー副議長も18年に任期切れを迎え、定員7人のFRB理事は現在2人が欠員だ。いずれの指名にも上院での承認が必要とされる。
BofAメリルリンチのマイヤー氏は同僚とともにまとめた9月29日のリポートで、トランプ政権人事の上院での承認に道を開くような「共和党圧勝の場合に、変革の最大のリスクが到来する」との予想を示した。
原題:Fed May Face Makeover Whether Trump or Clinton Wins White House(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-10-06/OEM7DQ6JTSEI01
米エクソンにチャドが7.7兆円の罰金命じる−GDPの5倍余り
Daniel N'doh Nadjitan、Paul Burkhardt、Joe Carroll
2016年10月7日 10:07 JST
ロイヤルティーを十分に支払っていないとチャド側は主張
チャドは罰金の大半を回収できない公算大と国際法の専門家
米石油会社エクソンモービルは15年間掘削してきたチャドでロイヤルティーを十分に支払っていないとして、740億ドル(約7兆7000億円)の罰金支払いを命じられた。裁判所資料で明らかになった。
罰金額は世界銀行が130億ドルと推計するチャドの国内総生産(GDP)の5倍余り。エクソンを中心とする企業連合が納税義務を果たしていないとの財務・予算省の申し立てを受け、首都ヌジャメナの裁判所が5日に判断を発表した。資料によると、同裁判所は未払いのロイヤルティー8億1900万ドルの支払いも求めた。
一方、ロサンゼルスのロヨラ法科大学院で国際法を教えるジェフリー・アティック氏はチャドが罰金の大半を回収できそうにないと予想する。「この判断執行についてチャド以外では誰も協力しないだろう。今回の措置でエクソンはチャド国内に保有するもの全てを失う可能性はあるが、金額が異例の水準であり、同社がチャドで保有する資産がそれに値するとは考えにくい」と話した。
エクソンの広報担当者トッド・スピトラー氏は6日に電子メールで、「チャドの裁判所の判断には異論があり、次の措置を検討していく。今回の係争は政府の課税能力ではなく、政府が企業連合に対して行ったコミットメントに関するものだ」と反論した。740億ドルの罰金額についてはコメントを控えた。
原題:Exxon Is Hit With Fine From Chad Five Times Country’s GDP (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-10-07/OENH6C6S972R01
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