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ついに40兆円を突破!医療費増大というニッポンの大問題 8年連続過去最高を更新…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49873
2016.10.05 磯山 友幸 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■企業の懐も直撃
医療費の増加が止まらない。厚生労働省の9月28日の発表によると、2014年度に国民が医療機関で治療を受けるのにかかった「国民医療費」の総額は40兆8071億円と前年度に比べて7461億円、率にして1.9%増えて、8年連続で過去最高となった。
医療費は健康保険などの保険料で48.7%、患者などの負担で12.5%が支払われているが、全体の33.8%に当たる15兆8500億円は国と地方の「公費」で賄われている。しかも公費負担は2014年度で国と地方を合わせて7461億円も増加しており、財政を圧迫する大きな要因になっている。
厚労省は「医療費適正化計画」などを打ち出し、医療費の抑制に努めているが、2015年度も概算をベースにした試算では42兆円を超える見通しで、医療費増加に歯止めがかかる気配はない。
医療費の増加が続いている背景には高齢化の進展がある。65歳未満の人が使った医療費は1人当たり17万9600円だったのに対し、70歳以上では1人当たり81万6800円と4.5倍もの開きがある。さらに70歳以上は1人当たりの金額は前年度に比べて0.1%の増加にとどまっているものの、人数の増加によって70歳以上の人が使った国民医療費の総額は2.9%も増加した。
薬局調剤医療費も65歳未満の総額は0.6%の増加にとどまったにもかかわらず、70歳以上では3.4%と大幅な増加になっている。これも1人あたりの増加よりも対象年齢層の増加の影響が大きい。今後も高齢者人口の増加は続く見通しで、医療費圧縮のメドが立たない大きな要因になっている。
医療費の増加は、公費負担として国や地方の財政にだけ影響を与えているわけではない。個人や企業の懐も直撃している。
医療費の財源のうち半分近い48.7%は医療保険や健康保険の負担だ。企業などが持つ健康保険組合の財政が悪化すれば、その穴埋めは企業(事業主)や社員である保険契約者(被保険者)が行うことになる。企業が供出金を増やしたり、保険契約者の保険料が引き上げられることになる。
そうでなくても足下の消費は低迷しているが、保険料負担が増えれば家計の可処分所得は圧迫される。医療費増加のツケは国だけでなく企業や家計にも及んでいる。
厚労省の資料によると、2014年度の国民所得(364兆円)に占める国民医療費の割合は11.20%。25年前の1989年度には6.15%だったので、5%ポイントも負担が増えたことになる。1998年度から2007年度は8%台で推移したが、2009年度には10%台に乗せ、2011年度以降は11%台が定着している。しかも毎年比率は上昇しているのだ。
■年間3500万円の薬が月額8000円?
厚労省は高齢者の入院期間を短縮させることなどで、高齢者医療費の圧縮を進めてきた。1人当たり医療費の抑制にはつながったものの、それでも医療の高度化に伴って医療費単価は上昇。高齢者の1人当たり医療費をマイナスにすることには成功していない。
最近、注目されているのが地域ごとの1人当たり医療費に大きな格差があること。最も高いのが高知県で42万1700円、次いで長崎県がが39万6600円、鹿児島県が39万600円だ。一方で、最も低いのは埼玉県の27万8100円で、これに千葉県の27万9700円、神奈川県の28万5700円と続く。
この格差を縮めることによって全体の医療費を引き下げようという動きもあるが、もちろん、高齢者の比率が高い県ほど1人当たり医療費が高くなるわけで、そう簡単ではない。
最近では、高額な薬剤の使用増による医療費高騰も問題になっている。厚労省が9月中旬にまとめた2015年度の概算医療費では、調剤費が9.4%の伸びと、大きく増えた。その要因を厚労省は高額の薬剤を使用するケースが増えたためと分析している。
10月4日に開いた財政制度等審議会の分科会では、この高額薬剤問題が議論になった。中でも焦点になったのは、肺がんなどの治療に使われる「オプジーボ」という薬で、薬価を決めた段階での想定患者数を大幅に上回る利用があったことから調剤費の増加に結び付いたとされる。
オプジーボは、体重60キロの人で年間3500万円かかるとされる薬剤だが、自己負担に上限がある今の制度では70歳以上の低所得世帯ならば月額8000円で済む。その差額は保険料や公費負担で賄うことになるため、財政審で緊急に協議されることになったわけだ。
通常は薬価改定は2年に1度で、次回は2018年の春の予定だが、財務省は臨時で薬価の価格引き下げを求める方針という。他にも高額の薬剤があり、厚労省内には薬価基準の見直しを2年に1度から毎年にすべきだといった意見があるものの、医薬品業界の反対は根強く、簡単には解決しそうにない。
厚労省が始めた「かかりつけ薬局」制度の定着などで、処方されても飲まずに無駄になっている薬剤や、重複処方の昨年に取り組む。
服薬指導を徹底し、病気の重症化を防ぐことで、結果的に医療費の高額化を抑えるなどの取り組みも始まっているが、成果が出るには時間がかかりそうで、医療費の劇的な削減にはつながりそうにない。高齢化がさらに進む中で、増え続ける医療費の圧縮は一段と大きな課題になっている。
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