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年金が「最低10年加入」に短縮へ。専門家が分析した衝撃の受給額
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2016年9月28日 まぐまぐニュース
無年金者対策として、年金受給資格期間をこれまでの25年から10年に短縮する法案が先日閣議決定されました。これにより64万人が新たに受給資格を得ることになるのですが、一体月額にしてどれくらいの年金を受け取ることができるようになるのでしょうか。そしてその財源は? 決して分かりやすいとは言えない年金のあれこれを、無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者・hirokiさんがわかりやすく解説してくださいました。
■年金受給資格の加入期間が25年から10年に短縮へ。一体どういう事?
9月26日に、平成29年9月分から年金受給資格期間が25年以上なくても、10年以上で受給資格が得られるようになるという事が閣議決定されました。施行日は平成29年8月1日。8月1日に受給権発生だから、翌9月分から年金が発生します。
年金というのは受給権発生月分の年金は貰えません。だから初回支払いは平成29年10月から、まず9月分の1ヶ月分を。その後は偶数月に前2ヶ月分を支払う。12月なら、10、11月分の年金支給。
この年金受給資格期間を10年に短縮というのは、平成24年8月に成立した年金機能強化法により実施される事が決まったものです。
年金機能強化法は、少子高齢化が進む中でも年金が生活の機能を果たせるようにという事でできた法律。消費税を上げて社会保障への財源に充てる事で実施されるものでした。
で、「受給資格期間が10年に短縮」について、元々は平成27年10月に消費税率を10%までアップする事を条件に、10年以上に短縮される事になっていましたが、消費税10%アップが平成29年4月に再延期され、更にまたも消費税アップが平成31年10月まで再々延期された事で、また年金も延ばされるのかと思われましたが、平成29年9月分からの支給という事になりました。
消費税という財源を確保出来ない中での、年金受給資格期間10年への短縮、という訳です。
さて、今現在は年金を貰うのに必要な期間は原則25年間です。つまり、この25年間に1ヶ月でも足りなければ1円も年金は出ないシステムです。
※注意:原則25年以上無くても、いくつかの特例により年金を貰える人もいます。例えば昭和28年4月2日生まれの人であれば厚生年金期間のみ、もしくは共済組合期間のみ、または厚生年金期間と共済組合期間合わせて22年あれば年金を貰うための受給資格を満たします。
■知っておきたい、「カラ期間」の仕組み
25年間という内訳は、未納期間は除いた期間です。未納期間が多くて25年間に足りなくて年金が貰えない人を、10年に短縮して貰えるようにするのが今回の改正の目的。
これにより年金機能強化法が議論され始めた平成19年当初、無年金者が118万人も居ると推定されていた内、65歳以上で無年金者の人は42万人も居て、その42万人の内17万人が期間短縮により年金が貰えるようになると試算されています。つまり普通は65歳になれば年金(老齢基礎年金)が支給されるものなんですが、それすら支給されていないんですね、25年に足りなくて。老齢基礎年金を貰う資格が無いって事は、当然、厚生年金とかも貰えていないって事です。
118万人というのは60歳未満の人も含んだ数字ですが、つまりそういう人が年金保険料を納める事ができる最高の70歳まで納めたとしても、25年の年金受給資格期間を満たせない人達の数字です。
その期間を10年に短縮する事で、年金の受給資格が得られる人は64万人と推計されているようです。必要な予算は650億円との事。
さて、国民年金が出来たのは昭和36年4月1日からで、20歳から60歳までの人は強制加入となりました。そして、最低25年間の年金加入期間がある人に年金を支給しようという事になりました。
25年間というのは、民間企業の厚生年金期間とか公務員の共済組合期間、自営業の人等が納める国民年金保険料納付期間、国民年金保険料を免除した期間と、そして、カラ期間を合わせた期間が25年以上ある必要があるという事です。
国民年金保険料をちゃんと納めた期間や厚生年金保険料を納めた期間等は保険料納付済期間といいます。
ちなみにカラ期間というのは、例えば年金が大改正されて昭和61年4月1日以降は国民年金に誰もが強制加入になりました。昭和61年3月以前は国民年金に強制的に加入しなくてもいい人がいました。
厚生年金とか共済組合に加入している人の配偶者のような人(専業主婦とか)は、国民年金保険料を納める必要はなかったのです。つまりこういう配偶者は国民年金に加入してもしなくてもよかったということ。
昭和61年3月まで国民年金に加入して居なかった人は、昭和61年4月からいきなり強制加入と言われても期間が足りなくて年金を貰えない場合も出てくるので、国民年金に加入していなかった昭和61年3月までの専業主婦(主夫)だった期間も25年に加えよう、というのがカラ期間です。
カラ期間というのは年金受給資格に必要な原則25年の期間にプラスするだけの期間で、年金額に反映しないからカラ(空)期間と呼ばれています。
あと、20歳から60歳までの海外に在住していたけど国民年金に加入せず、国民年金保険料を支払わなかった期間なんかもカラ期間となります。この海外に在住して国民年金に加入しなかった期間は、今現在も海外在住してる間もカラ期間として扱われます。
まあ、カラ期間は他にもいろいろあるのですが、書くとキリがないので今回はこれだけ紹介しておきます(^^;;
■ならば、年金保険料は10年だけ支払えばいいということになるのか?
で、25年間が10年に短縮されるわけですが、この10年という期間は何もすべて保険料を完璧に納める期間ではありません。
保険料納付済期間+保険料免除期間+カラ期間≧10年であれば足ります。
でも、10年になったからって、「じゃあ10年間、年金保険料を納めたりした期間があるから、それ以上は保険料を納める必要はない」ということなんでしょうか?
年金受給資格を得るのは10年でOKにはなりますが、20歳から60歳までは誰もが国民年金に強制加入して年金保険料を納めなければならない事は今までと変わりありません。
まあ、国民年金は保険料を支払うのが困難な場合は保険料免除にする事も出来ますが、厚生年金に加入している人は強制的に厚生年金保険料が給与から徴収されます。
そして、20歳から60歳までの厚生年金に加入してる人や共済組合に加入してた期間というのは、実は国民年金にも加入しています。イメージとしては、一階部分に国民年金があり、その上の二階部分に厚生年金が乗っかっているイメージです。この場合、厚生年金保険料と国民年金保険料を二重に支払っているわけではなく、厚生年金保険料の中に国民年金分も含まれています。
だから、厚生年金に加入してた人は将来、国民年金から老齢基礎年金が支給されますし、厚生年金から老齢厚生年金が支給されるんですね。
■「10年に短縮」で受給資格を得た人の年金額はいくらか?
ところで、今まで25年必要だったのが10年になった場合の年金額を見てみましょう。
今は例えば原則25年以上の期間がある人は65歳からは老齢基礎年金が貰えます。
20歳から60歳までの40年間は国民年金に強制加入だから、仮に40年間(480ヶ月)完璧に国民年金保険料を納めている人であれば、国民年金から老齢基礎年金が年額780,100円(月額65,008円)支給されます。
じゃあ25年間(300ヶ月)納めた人はいくらになるのか。
満額の老齢基礎年金が780,100円なので、780,100円÷480ヶ月×300ヶ月=487,562円(月額40,630円)。
そして10年だけの人だとどうなるか。
780,100円÷480ヶ月×120ヶ月=195,025円(月額16,252円)となり、とても低額な年金になります。とてもじゃないですが、生活できる年金額じゃありません。満額の老齢基礎年金月額65,008円でも生活は厳しいはずです。
だから10年に短縮されたからって安心してはいけません。
仮にこの10年が国民年金保険料免除期間(全額免除の場合)なら更に少なくなります。全額免除期間であっても老齢基礎年金の半分は税金から支払われているので、780,100円÷480ヶ月×120ヶ月÷2=97,512円(月額8,126円)の年金となります。
また、今の老齢厚生年金は1ヶ月でも厚生年金を納めていれば65歳から老齢厚生年金が支給されます。
ただし、これも原則の25年間の年金受給資格期間がある事が前提で、なおかつ、厚生年金期間が1ヶ月以上ある人でないと老齢基礎年金と合わせて老齢厚生年金は貰えないですが、全体で10年以上あればこの1ヶ月分の老齢厚生年金も貰える事になります。
ちなみに昭和36年4月1日以前生まれの男性、昭和41年4月1日以前生まれの女性は、生年月日により65歳前から老齢厚生年金を貰う事が出来ますが、65歳前から老齢厚生年金を貰う場合は最低1年以上の厚生年金期間(厚生年金期間と共済組合期間合わせて1年以上でも良い)と全体で25年以上の年金受給資格期間が必要でしたが、全体で10年に短縮される事により65歳前からの老齢厚生年金を貰う事も可能になります。
● 厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)
なお、過去に未納にした期間(今なら過去最大5年まで遡って納められる)がある場合、とりあえず60歳から最高70歳までは国民年金に任意に加入して保険料を納める事が出来ます(厚生年金加入中は不可)。ただし、65歳から70歳までは原則の25年以上(来年の改正で10年以上)足りない人のみ国民年金保険料を納める事が出来ます。
また、過去に国民年金保険料を免除にしている部分は、25年以上や改正後の10年以上の期間には含まれますが、過去最大10年以内の免除期間の保険料を支払って年金額を増やす事が出来ます。
■少子高齢化の中、「10年に短縮」は正解なのか
先日の敬老の日にあった総務省統計局の発表によれば、65歳以上の高齢者は3,461万人で全人口の27.3%になったそうです。
高齢者の割合はまた上がりました、高いですね。でもこれ、2050年には38.8%になり、2060年からは40%ちょっとでずっと推移していく見通しですから、まだまだ高齢化率は上がります。もうだいぶ昔からシミュレーションされてた事なんですけどね。それを踏まえ、年金は様々な改正に追われてきました。
2060年の高齢者40%になる頃、全人口約8,500万人のうち3,400万人が65歳以上人口になり、2100年には全人口が約5,000万人に対し2,000万人ちょっとが65歳以上人口となると推計されています。
25年から10年に短縮する事は重要だと言われてはいますが、それよりも少子高齢化や雇用の問題が遥かに重要ではないでしょうか。
特に少子高齢化は年金問題に直結します。
年金保険料は年金受給者の年金として支払われていますが、その年金受給者を支える生産年齢人口が減っていき、高齢者が今後もますます増える中で、10年に短縮する事がそこまで重要な事だとはあまり思いません。
従来なら25年以上に足りなくて年金が貰えなかった人が、10年に短縮されることで年金が貰えるようになり、その650億円という財源を消費税に頼らないで支給されるわけですが、この支給開始までまだ約1年間あるので、今後の動きに注目しましょう(^^;;
image by: Takkystock
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