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日銀の今回の緩和を名付けてみよう──それは「永久緩和」 - 小幡績 転機の日本経済
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160926-00177497-newsweek-int
ニューズウィーク日本版 9月26日(月)13時39分配信
今日の追加緩和は、追加緩和なし、という解釈が主流のようである。そんな馬鹿な。
意見がほぼ同じであると思っているBNPパリバ証券の河野龍太郎氏も、今回は予想通り追加緩和はなかった、と述べている。
確かに、テーパリング(量的緩和の縮小)と解釈されないように、日銀の黒田東彦総裁は最大の注意を記者会見で払った。そこが今回の山場であっただろう。記者会見での質問はテレビ東京の大江麻理子アナウンサー、読売新聞の越前屋知子記者が頑張っていて、アベノミクスの女性活躍はここでは実現されていたが、終盤のテーパリングじゃないんですか、という別の記者による、人畜無害のようなとぼけた声の質問の罠に、黒田氏はもっとも慎重に対処していた。
今回の措置で緩和縮小と受け取られかねないのは、量が減る可能性があることと、10年超の金利、超長期債の利回りがどうなるか不透明で、大幅上昇もありうることだ。
緩和縮小は永久にできない
10年超の金利を上昇させ、イールドをこの領域で立たせることと、国債買い入れ総量を減らすのが、今回の一つの目的ではある。しかし、テーパリングと思われてはいけないので、最大限のサービス、10年物の金利のターゲットはゼロ%として、ほぼ現状維持とした。これで、テーパリングの可能性があり、緩和縮小じゃないか、と解釈されないようにしたのだが、そうなってしまうと、要は緩和とは金利であるから、長期金利はほぼ永久に0%に張り付くことになる。なぜなら、安定的にインフレ率が2%を超えるまで、緩和を続けるという、もう一つのサービスをしてしまったからだ。これは、超長期金利の上昇で引き締めという解釈に対して、以前よりもコミットメントが強い、長期に低金利を約束する強力な措置で、超長期金利の上昇を抑える効果があると主張できるようにした可能性がある。
しかし、この2%超のコミットメントは強すぎる。これが今日の素晴らしい枠組みを台無しにしてしまった可能性がある。
なぜなら、2年で2%は無理であることはもはや明らかだが、同時に、通常の経済状態において、2%超が継続することが想像できないことも明らかだからだ。今後、財政破たんによる名目金利上昇はあり得ても、インフレ率上昇はあり得ないから、永久に緩和を縮小はできない。すると、長期金利は永久にゼロ%となる。
これまでは、いつか出口が来るものだと思っていたが、今回の枠組みを素直に解釈すれば、テーパリングだろうが、国債の買い入れ額がいくらになろうが、10年物の金利は永久にゼロ%なのであり、「永久緩和」になってしまう。
額から金利にシフトしたのはいいが、それは金融緩和の限界から抜け出すためであるにもかかわらず、緩和縮小と思われないため、市場の解釈にビビって、長期金利をゼロとし、強力な時間軸政策を復活させたため、出口を抹殺してしまったのである。
したがって、これは絶対に緩和拡大である。もし、以前はいつか出口を目指すと日銀が真面目に思っていたのならば。
もう一つの解釈は、2%まで緩和を続けるのならば、出口はない、それは現体制が崩壊したときだ、だから、どうせ現在の枠組みでは出口はない、だから、今日、出口がなくなったのが明白になったからと言って、何も変わっていない、というものだ。
これは確かにその通りだが、一つだけ問題がある。現体制が崩壊したときに、次の体制では、出口を目指す可能性があったわけだが、その場合の具体策は、金利ターゲット、もしくはイールドカーブコントロールしかなかったからだ。
すなわち、現体制の崩壊後の選択肢を、現体制によって費消されてしまい、次の策がなくなってしまったのだ。
残されているのは、あからさまに、長期金利ターゲットをゼロから0.2%にします、という金利引き上げ、最も直接的な引き締めしか選択肢が残されていないからだ。
国債暴落まで続く
そして、これはインフレが起きない以上、財政破たんあるいはその懸念による国債暴落のときしか、実行することはできないだろう。
したがって、現在の枠組みは、財政破たんまで継続することが決まったのである。
こうなると、ヘリコプターマネーを否定したところで、結果は同じ、財政破たんによる国債暴落までは、過剰金融緩和の病から抜け出せない、ということなのだ。
私は、今回のレジームチェンジを高く評価するが、ちょっとしたマーケットへのサービス(あるいは恐怖)のために、これは追加緩和となってしまったし、その追加緩和とは、これまでのどの追加緩和よりも強烈で、すなわち、最も後戻りができない状況に追い込まれてしまったということだ。これまでの追加緩和は、木内委員がいうように量をもとに戻せば済んだからだ。それでも金利を低く維持すればよかったからだ。
いまやその道は存在しない。
永久緩和。
日銀は最後の河を渡ってしまったのである。
もちろん、理論的には橋を渡すことはできる。
長期金利ターゲットを引き上げる勇気を持つことだ。
それができなければ、永久緩和。
それが新しい現実だ。
*この記事は「小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記」からの転載です
小幡績
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