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日銀の新機軸はポスト黒田も視野−緩和長期化、国債購入縮小にも布石
日高正裕
2016年9月26日 00:01 JST
異次元緩和の柱「マネタリーベース」に別れ、代わりに長短金利操作
際限ないマネー膨張に終止符−大幅な円高・株安の引き金は回避
日本銀行が新たに打ち出した金融緩和の枠組みは、異次元緩和を進めてきた黒田東彦総裁の任期終了後の金融政策の展開もにらんだもとのとなった。
2013年3月、任期より数週間早く退任した白川方明前総裁を引き継いだ黒田総裁を、市場は熱狂的に迎えた。就任早々の金融政策決定会合で、マネタリーベースを2年で2倍にする量的・質的金融緩和により、2年で2%の物価目標を達成すると宣言、これを好感して大幅な円安・株高が進んだ。それから3年半、黒田総裁は異次元緩和の柱だったマネタリーベース目標に別れを告げた。
代わりに、21日の金融政策決定会合で前面に打ち立てたのは、長短金利を操作するイールドカーブ・コントロール。これにより、現在保有残高が年間約80兆円ペースで増えるよう行っている長期国債買い入れの持続可能性をめぐる懸念には、一応の答えを出した格好だ。
日銀総裁の任期は5年。退任した白川前総裁の残り短い任期を務めた後に黒田総裁が再任されたケースを除けば、1960年代以降に再任された総裁はいない。2018年4月の任期切れまで19カ月足らずとなった今、黒田総裁は急激な円高や株価暴落の引き金を引くことなく、マネタリーベースの際限のない膨張に終止符を打つことができた。後任の総裁は、緩和路線を継続するにせよ、テーパリング(長期国債買い入れ縮小)を行うにせよ、相応の柔軟性を得た。
ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストは21日付リポートで「2%インフレでさえ全く視野に入っていない下で、それを超える水準まで安定的に推移するまで金融緩和をコミットすることは、事実上、黒田総裁の任期を大きく超えて半永久的に緩和を続けるとの意思表明に近い」と指摘している。
もっとも、黒田総裁の「何でもやる」路線からの撤退に失望を隠さないエコノミストもいる。三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は、今回の決定は「悪い兆しだ」と受け止め、「金融引き締めであり、非常に失望している」と話す。
時間軸の強化
日銀が金融緩和強化のための新しい枠組みとして打ち出した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」。その核は長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」と、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の物価目標を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」の二つだ。
特に後者は、2%の物価目標を「安定的に持続するために必要な時点まで継続する」としてきたこれまでのフォワードガイダンス(時間軸)を強化するものだというのが日銀の説明で、実際、緩和の長期化が約束されたとの評価もある。
SMBCフレンド証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは23日付のリポートで、見通しベースだった従来の時間軸から、実績値ベースで安定的に2%を超えるまで継続するとしたことで、出口に向かう「ハードルが高まったと言える。かなり強力な緩和の長期化宣言だ」と指摘する。
出口への「静かな第一歩」
野村証券の松沢中チーフ金利ストラテジストは21日付リポートで、「金利を抑制する効果やインフレ期待を刺激する効果はないだろう」という。目標達成前でもマネタリーベース拡大ペースの鈍化が許容されるためで、「実質的なテーパリングに当たる」と指摘。出口への「静かな第一歩」であり、日銀が巧妙に覆い隠しても、後で振り返った時に出口論の始まりだったと解釈される可能性が高いように思えるという。
日銀は総括的な検証で、「マネタリーベースと予想物価上昇率は、短期的というよりも、長期的な関係を持つものと考えられる」と指摘。会合後に会見した黒田総裁も、マネタリーベースと予想物価上昇率は「短期的には密接にリンクしていない」と述べた。
東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは21日付のリポートで、 「マネタリーベース目標の撤廃は量の拡大自体にはあまり目に見えるような成果はかったと日銀が認めているようにも見え、将来のテーパリングへ布石とも捉えられる」という。
史上最強だったはずだが
黒田総裁は4月13日の講演で、1月に導入したマイナス金利付き量的・質的金融緩和は「近代の中央銀行の歴史上、最強の金融緩和スキームと言っても過言ではないだろう」と述べたが、1年もたたずに「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に看板は書き換えられた。政策運営方針を示す金融市場調節方針からは、マイナス金利の文字も消えた。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは23日付のリポートで、「白川体制の『分かりにくさ』を全否定するところから生まれた黒田体制だが、ここにきて一段と手段が拡散し、理解が難しくなった」という。
発表文にはイールドカーブ・コントロール、オーバーシュート型コミットメントといった新語が踊っているが、マネタリーベースを2倍にして2年で物価を2%にすると、ことさら分かりやすさを追求していた3年半前と比較すると、「かなり遠いところへ来てしまったように感じられてならない」と唐鎌氏は指摘している。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-09-25/ODY0X26KLVRC01
日銀政策転換は銀行収益と無関係、「10年だけ急上昇は意味ない」
谷口崇子、Gareth Allan
2016年9月26日 00:01 JST更新日時 2016年9月26日 11:18 JST
銀行は一息ついた。しかし、それ以上のものではなかった−。日本銀行の新たな政策枠組みによる影響の評価をめぐり、専門家の見方はおおむね一致しているようだ。マイナス金利の深掘りが見送られ、銀行は収益の一段の悪化は避けられそうだが、恩恵も今のところあまり見えてこない。
日銀は21日の金融政策決定会合で、政策目標の枠組みを量から金利に変更。政策金利はマイナス0.1%に据え置いた一方で、マイナスに落ち込んでいた10年国債金利を0%程度に誘導する方針だ。「短期調達・長期運用」の銀行にとって、長短金利差拡大による収益機会創出につながる可能性がある。金融政策の「総括的な検証」でも、マイナス金利による貸出金利の低下は金融機関の収益を圧迫しているなどと配慮を見せた。
日本銀行
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
貸出金利が低下する半面、預金にはマイナス金利を適用できず、銀行の預貸金利差は記録的水準まで縮小していた。今回の日銀の決定を受けて、全国地方銀行協会の中西勝則会長(静岡銀行頭取)は、「金融機関に生じているマイナス金利の副作用を緩和するものと期待している」とのコメントを発表した。
しかし、10年債の金利誘導効果には懐疑的な見方がある。日本郵政の長門正貢社長は23日の記者会見で、銀行経営の収益改善は利回り曲線の形状次第だとし、「銀行融資の中心は3−5年であり、金利が底を這う形で10年で急上昇したのではメリットはない」と述べた。BNPパリバ証券の鮫島豊喜シニアアナリストも21日付のリポートで、銀行資産の平均残存期間は2ー3年だとし、「10 年国債の利回りと銀行の資産利回りは直結しない。収益にはあまり関係ない」と指摘した。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i8mPzATQoI1s/v2/-1x-1.png
深掘りの懸念残る
ひとまず安堵した銀行業界だが、日銀は21日の発表文で「今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる」と明記した。マネックス証券の大槻奈那チーフアナリストは、量的緩和より金利操作の優先順位が高まったことで「マイナス金利深掘りの可能性が高まった」とみる。短期金利の一段の低下があれば、銀行が海外事業や中小企業融資に向かうインセンティブがさらに高まると分析している。
また、長期金利操作が奏功して10年超の超長期国債の利回りが上昇していけば、「銀行融資の貸出年限の長期化はありうる」と大槻氏は話し、20年など超長期ローンや資本性のある劣後ローンが増えるとの見通しを明らかにした。ただ、収益には貢献する半面、「20年後の企業の健全性を予測するのは難しく、リスクがある」と懸念を示した。
米バンク・オブ・アメリカの佐々木太アナリストは、「新しい政策が出たからすごく良くなるという感じでもない。まだ利ざやは縮小していく方向にある」と述べた。貸出金利の指標となる3カ月物TIBOR(東京銀行間取引金利)は21日、0.05909%に低下、ブルームバーグのデータに記録の残る1995年以降で最低の水準となった。
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利回り曲線
年限1年ー3年の国債利回りは26日午前、日銀が政策決定した前日の20日に比べ2−4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度上昇した一方、20年債は3bp、40年債は8bp程度下落しており、長短金利差は縮小。現時点では必ずしも日銀の意図する方向とはなっていない。
みずほ証券の大橋英敏チーフクレジットストラテジストは、「このイールドカーブが続く限り、なかなか銀行は大変だ」と指摘する。日銀がマイナス金利の深掘りを見送ったことで銀行のコア収益へのさらなる悪影響は避けられたとしつつも、「今年の1月ごろに比べて引き続き環境は悪い。時間がたてばたつほど、収益の悪化が顕在化していくだけだと思う」と懸念を示した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-09-25/-10
家計金融資産1.7%減、株安で7年ぶり2四半期連続マイナス−6月末
高橋舞子、野原良明
2016年9月26日 11:26 JST
現預金は920兆円で過去2番目の水準−企業も現預金が過去最高
国債の保有残高は日銀、海外とも過去最高−日銀資金循環統計
家計の金融資産残高が6月末で1746兆円と1年前と比べて1.7%減少したことが、日本銀行が26日発表した資金循環統計(4−6月速報)で分かった。株安や円高などが要因。2期連続でマイナスを記録したのは2009年4−6月期以来。
家計の金融資産のうち、現金・預金は前年比1.2%増の920兆円と過去2番目で、全体の52.7%を占めた。一方、投資信託は11.7%減の87兆円、株式等は16.6%減の144兆円で、株価下落や円高による評価額減が響いた。
企業(金融を除く民間)の金融資産は4.6%減の994兆円で23四半期ぶりのマイナスとなった。うち株式等が19.2%減の258兆円と大幅に減少したが、現金・預金は前年比7.8%増の242兆円と過去最高となった。
政府などの借金である国債等(国庫短期証券と国債、財政投融資特別会計発行債券)は1105兆円。最大の保有者は日銀で、異次元緩和による大規模購入で残高(398兆円)、全体に占める比率(36.0%)ともに過去最高。海外の保有も111兆円と過去最高を更新した。全体に占める比率(10.0%)は前期を小幅下回った。
資金循環統計は家計や金融機関、法人、政府が保有する資産・負債を金融商品ごとに四半期毎に日銀が集計している。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-09-26/OE38EJ6K50XW01
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