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[写真]8月末の日韓財務対話で日韓通貨スワップの議論再開で合意した(ロイター/アフロ)
日韓通貨スワップ復活へ議論 日本にメリットはあるの?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160924-00000002-wordleaf-bus_all
THE PAGE 9月24日(土)16時10分配信
「日韓通貨スワップ」が再開へ向けて議論されるようです。3年前にいったん終了したものがなぜ再開なのか。日本にとってのメリットはあるのか。韓国経済をめぐっては、世界有数の海運会社である韓進海運の経営破綻が報じられました。韓国経済の現状と合わせて、岡山大学経済学部教授の釣 雅雄氏があらためて解説します。
■あらためて通貨スワップとは?
韓国ソウルで8月27日に日韓財務対話が行われた際、日韓通貨スワップ再開の議論開始が決まりました。日韓通貨スワップとは、日韓どちらかの国の通貨に危機が生じた時に、通貨(米ドル)を融通・交換するというものです。ただし、日韓通貨スワップは、主に韓国ウォン危機への対応といえます。日本側がドル不足に陥ることはまず考えられず、一方で、韓国ウォンは世界経済の情勢からの変化を受けやすいからです。
日韓通貨スワップは、かつても最大で700億ドル規模で行われていましたが、2013年7月に協定満期により終了しました。日韓財務対話前の記者会見(8月24日)で、麻生財務大臣は、「向こう(韓国)は要らないという話だったので、それではいいのではないですかというので切ったというのが経緯ですから、必要というのであれば向こうからその話が出れば検討します」と述べているので、再開の議論は韓国側の要望によると考えられます。
通貨スワップ協定とは、どちらかの国が通貨危機等に陥った場合に一方の国がドルを貸し出すもので、通貨への信用を強めるための協定です。かつての日韓通貨スワップの額が30億ドルから700億ドルに引き上げられたのは、欧州危機(ギリシャ財政危機)の時で2011年10月でした。ウォン安は11月で止まっているので、効果はあったと考えられます。
現在の状況は、このような協定を結ぶことで、通貨危機を未然に防ごうというものです。実際により深刻な通貨危機が生じた場合のドル不足に十分な額というわけではありません。2016年の外国為替の取引額は1日で約5.1兆ドル(BIS, Triennial Central Bank Survey, Foreign exchange turnover in April 2016)にも上ります。700億ドルという規模で韓国ウォン危機を解決できるものではありません。そのため、日韓通貨スワップには、スワップ(交換)による損失リスクが日本にもあります。
■通貨スワップのメリットは?
メリットは主に韓国にあります。韓国のウォンは世界経済の影響を受けやすく不安定です。図1は韓国ウォンのドルおよび円についての為替レートの推移で、2008年からの世界金融危機の時に韓国ウォンが急激に下落(図では上方向)したことが分かります。韓国は、日本と似て製造業や輸出産業が中心の産業構造です。ただ、GDP(国内総生産)に占める輸出・輸入は日本よりも非常に高く、輸出の対GDP比率は45.9%(2015年,The Bank of Korea統計)です。日本も高まってきているものの、17.7%(2014年、国民経済計算確報)ですので、韓国経済がいかに世界経済に依存しているかがわかります。
[図1]韓国ウォンのドルおよび円についての為替レートの推移
日本人の感覚ではウォン安になっても輸出には有利なので、韓国にとって良いのではと思うかもしれません。けれどもそうではなく、ウォンへの信用が失われるので、韓国企業の貿易取引が難しくなったり、また、輸入価格が上昇するので生産のために必要なものが手に入らなくなったりします。また、韓国国内の物価が上昇するので生活が苦しくなります。
日本も戦後直後は外貨がなかったので、外国の物資を輸入することができませんでした(なお原油輸入は1949年まで禁止されていた)。それが1950年からの朝鮮戦争で、米軍が日本から戦争物資を調達しドルで支払ったことで、ドルを獲得できたのです。そこから、原油輸入の再開、石炭から石油への転換があり、高度成長が始まったのです。日本人には気が付きにくいのですが、外貨があって海外との取引が円滑に行われるというのは経済にとって重要なのです。
韓国の外貨準備は3577.6億ドル(韓国銀行統計、2016年第2四半期)で、まだ十分にあるようにみえます。たとえば比較すると、世界金融危機の時に韓国の外貨準備は246.4億ドル(2008年第4四半期)で、2006年第4四半期の1486.4億ドルから大きく減少しました。今、当時と同様な状況に陥っても外貨準備が底をつくまでには至りません。
[図2]韓国の輸出額とその変化率と輸出先
■いまなぜ再開の動きがある?
では、なぜ日韓通貨スワップ再開の議論が始まったのでしょうか。韓国はGDPでみるとそれほど減速感は強くないものの、韓国経済の中心である貿易が不振なためだと考えられます。輸出低下の背景に、構造的な問題(たとえばコスト高や国際競争力の低下、スマートフォンへの依存など)があるとすると、韓国企業に多く入っている外国資金が他へ出ていく可能性が高くなり、金融面でも通貨安圧力が生じることになります。米国の金利利上げも影響するでしょう
図2は韓国の輸出額(ドル)とその変化率を輸出先地域別について要因分析したものです。これをみると2012年ころから韓国の輸出は伸び悩み、さらに2015年以降減少していることが分かります。よく指摘される中国への輸出だけではなく、東南アジアやEUへの輸出の減少も大きな要因となっています。このことから世界経済の減速のほかにも、韓国は輸出産業における構造的な問題を抱えていることが示唆されます。
例えば韓国で1位、世界でも7位の海運会社である韓進海運が経営破綻に直面しています。さらに現代商船の業績悪化も報じられています。価格下落があったとはいえ、海運の低迷は輸出力の低下を表しています。
現在のところウォン安とはいえず、むしろ今年の2月頃からはややウォン高傾向です。けれども、構造的な問題を抱えているため、韓国政府は将来の通貨危機の可能性を深刻に感じて、今回の議論再開要請となったのではないでしょうか。
■日本は再開すべきか?
以上から分かるように、日韓通貨スワップは日本による韓国ウォンへの保証協定です。日本側のメリットは韓国通貨危機発生が、日本経済に影響を与えることを防げることですが、必ず再開すべきというほどには大きくはありません。世界金融危機後にシャープなどの日本家電メーカーと韓国企業との競争が厳しくなりましたが、為替については、ウォン安は一時的だったので、どちらかといえば円高の影響でした。
日本にはメリットもデメリットもそれほどないため、通貨スワップ再開は政治判断となります。韓国の反日・親中的な政策の流れで満期終了した経緯もあるため、再開には日本国民の納得のできる条件も必要でしょう。少女像の撤去、竹島、不透明な為替介入、二股外交などさまざまな問題がありますので、私は単に以前行っていたものを再び行うという流れでの再開は必要ないと思います。議論の中で、これらのような広い範囲の利害関係を日韓双方で確認してからにすべきでしょう。
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■釣 雅雄(つりまさお) 1972年北海道小樽市生まれ。一橋大学経済研究所助手などを経て、現在、岡山大学大学院社会文化科学研究科教授、日本経済などの授業を担当。専門はマクロ経済学や経済政策。著書に『入門 日本経済論』(新世社)など。博士(経済学)
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