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マツダの快進撃に陰り? なんと8ヵ月連続前年割れ継続中 いったい何がいけないのか…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49771
2016.9.24 ベストカー :現代ビジネス
次々に新しいSKYACTIVテクノロジーを投入し、急回復を果たしたマツダ。デザインと走りにこだわったクルマ作りで既存のメーカーのクルマに飽き足らない層の気持ちをガッチリとつかみ、国内販売も急伸した。
暦年の販売データをみると、'12年は前年比114.7%、'13年102.6%、'14年98.4%、'15年120%と、消費税が8%に上がった'14年以外、毎年前年比増を続けている(商用、輸入車を含む登録車)。
しかし、ここにきて潮目が変わったかのような状況だ。昨年の10月以来8カ月連続で前年割れが続いており、しかも今年5月は前年比62.1%という急減速。全体では106.6%と好調なのにもかかわらず、だ。
マツダに何が起きているのか? クルマ好きの気持ちを一番わかってくれているメーカーだけに、その販売動向は他社以上に気になってしまう。老婆心とは知りながら、心配なのです!
昨年1月から今年5月までのマツダの国内販売状況は右のとおり。昨年の快進撃とともに、今年のその反動具合がよくわかる数字になっている。全体では健闘しているのに、マツダだけが大きく前年を割っているのはどうしたことか。今年に入ってニューモデルはもちろん、特別仕様車などのリリースもなく新車不足が顕著なのは確かだが、それにしても急減速。マツダの神通力が消えかかっているのでは?と心配になってしまう。モデルサイクルの波による一過性の「踊り場」であればいいのだが……。
■2016年5月販売状況でみる
マツダ車の魅力は伝わっているか?
マツダ車vsライバル車の売れゆきを比べる
5月は前年比62.1%と落ち込んだマツダ。プレマシーが前年比103.7%となっている以外、全車単独の数字も前年割ればかりなのだが、特に目立つのがCX-3の前年比43.3%だ。
昨年2月に登場したばかりで、ちょうど1年前の5月は3282台と好調だったせいもあるが、発売1年3カ月でこの落ち込みは深刻。しかも昨年末には早くも改良モデルを発売しているのに、その成果が出ていないことになる。
上の表はマツダ各車とその競合車となる他社モデルとの5月の販売台数を比較したもの。トヨタ、日産、ホンダの大手3社とは販売規模の違いもあって劣るのもやむを得ないが、キャラがかぶっているスバルにほとんど負けているのは気になるところだ。
特にインプレッサとアクセラの差が大きい。アクセラはまもなくマイチェンするが、インプレッサも秋にフルモデルチェンジ。ほぼ同じ状況ながら約2.9倍差というのはマツダとしては苦しいところ。インプレッサが新型に切り替わればこの差はもっと広がりそうだ。
マツダ車にはクルマ好きの心を揺さぶる魅力がある。しかし、一般ユーザーにアピールする何かが足りないのだろうか?
スタイリッシュなデザインと独自のクリーンディーゼルで華々しいデビューを飾ったCX-3だが、ここにきて停滞気味。価格の高さがネックなのか?
■快進撃は止まったのか?
マツダの現状を探るために仮説と検証
一時の快進撃に陰りがみえている理由は何か? 編集部の仮説を渡辺陽一郎が検証
マツダの勢いに陰りが出てきた理由は何か? 編集部が提示する「仮説」に対し、自動車評論家の渡辺陽一郎氏が回答するスタイルで検証してみたい。
【仮説1】マツダ車はライバル車よりも価格が高い?(渡辺陽一郎の見解)
マツダ車の車両価格は額面こそ高めにみえますが、多くの人が装備する進化型のマツダコネクト(通信型カーナビ)が比較的安く、また、内装の上質感なども考慮すると決してライバル車に対して割高ではないと思います。ただ、そうした装備や質感にこだわらない人にとっては額面の高さがそのまま影響しますので、高く思えるかもしれません。
また、マツダ車のメインはクリーンディーゼルですが、CX-5やアテンザのディーゼルはガソリン車に比べて40万~50万円高の設定になっています。ドイツ車は戦略的にディーゼルを安くしており25万~30万円高で抑えているので、相対的に高くみえる場合もありますね。
【仮説2】魂動デザインが飽きられてきた?(渡辺陽一郎の見解)
飽きられてきたというよりも、マツダ車のデザインは明るさがないように思いますね。スポーティだしレベルも高いのでしょうが、すごく理屈っぽいんですよ。デザイナーの方と話をしても、あまりにも哲学的すぎて何か重いものをユーザーに押しつけているように思えます。
また、全車のデザインを統一テーマで構築するのは、欧州では常套手段ですが一長一短あって、下のクラスのクルマが高そうにみえるいっぽう、上のクラスが安そうにみえる場合があります。
マツダ車には、もう少し脳天気な明るさを感じさせるデザインのクルマがあってもいいかもしれませんね。
マツダ車のデザインがいいのは確かだが、底抜けの明るさのようなものがないと渡辺氏は指摘。確かに
【仮説3】一般ユーザーに魅力が伝わりにくい?(渡辺陽一郎の見解)
それは確かにそうですね。クルマ好きへのアピール力は高いのですが、不特定多数のユーザーにウケる要素、例えばリアシートやトランクの広さなど、わかりやすい魅力に欠ける面があります。
これも実はデザインに関連していて、魂動デザインを守るために居住性やシートアレンジを犠牲にしている面があるんです。また、ディーゼルのよさもわかる人にはわかるのですが、今の日本ではハイブリッドのほうがアピールしやすいですよね。ただ、これこそ今のマツダの個性であり信念のようなものとも言えますね。
【仮説4】クリーンディーゼル車の補助金が大幅に減額されたのが痛い?(渡辺陽一郎の見解)
例えばCX-3は13万円から5万1000円、CX-5は12万円から4万7000円になるなど減額されています。でも、この影響は限定的ではないでしょうか。
というのも、一般ユーザーは意外とこの補助金のことを知らなかったりするんですよ。もちろん、実際に買う時には販売店で説明を受けるんですが、事前に「補助金ありき」でクルマを選んでいる人はそんなに多くない。それに減額された分は販売店も値引きや用品サービスなどで対応していますからね。これは販売の減速にそれほど関係ないと思いますよ。
【仮説5】売れ筋ジャンルにクルマがない?(渡辺陽一郎の見解)
今の売れ筋でいうと、5ナンバークラスのミニバンとスズキソリオのような背の高いワゴンタイプのコンパクトカーはマツダにはありません。しかし、SUVもコンパクトカーもラインアップしており、決定的に車種が不足しているわけでもありません。
でも、気になるのはCX-3、CX-5、デミオという売れ筋モデルの中心がクリーンディーゼル車になっていることで、割安な普通のガソリン車のグレードが本流ではないということです。ディーゼルを選ぼうとすると競合車よりも高くなるし、かといってガソリン車は個性も魅力も不足気味。そのあたりのジレンマが販売に影響しているんだと思いますね。
マツダの他社とは異なるクルマ作りを歓迎しているファンはたくさんいる。そういうクルマが日本でも増えることを期待したいのだが……
※ ※ ※
マツダに対する渡辺陽一郎氏の見解は以下のとおり。
「マツダとしては今の売れゆきも織り込み済みなのでしょう。国内の販売が以前に比べて下がってもかまわないという考え方です。今後は国内の保有台数も減少しますので、各メーカーともに販売台数は下がります。そのなかで生き残るには"マツダ好き"を増やさなければならない。そこでSKYACTIVの新商品群以降、少数でも一定のシェア(あるいは売り上げ)を維持できるように商品の個性化にシフトしてきたわけですが、その戦略を安易に変えるわけにはいかないでしょうし、また"国内より海外重視"の方針がより明確になっていくでしょう」
■セールスマンは語る
「今は既存客を守ることに力を入れてます」
昨年2月にCX-3が出て、6月から新型ロードスターの販売が始まり、昨年の今頃はこれまでマツダ車に乗っていなかった新規のお客様からの受注が多かったですね。その反動が出ているのは確かだと思います。
ただ、営業マンはそれほど前年比何パーセントだとか、細かい数字には関知していないと思いますよ。商品力が落ちているとも思っていないし、いろんな新技術を投入しているので、当然モチベーションも下がっていません。
でも、今年に入って新車がひとつもないのは確かに痛いですね。マツダ車の商品力を認知していただけるようになっているなかでタイムラグが生じるわけですから、いい流れが途切れるのは惜しいです。今は顧客を守ることに注力しています。
■クルマを再検証する
この一年間、ニューモデルは一台もなし
マツダ車の評価一年前と今で変わった? 変わらない? TEXT/鈴木直也
ここのところ、国内の販売台数で見るとマツダの業績はあまり芳しくないが、これはあくまで「前年比」である点に注意。
カー・オブ・ザ・イヤーを2連覇するなど、直近までの快進撃があまりに鮮烈だったから、さすがに息切れもやむなし。失速したというより、次の飛躍のために必要な踊り場にいると評価すべきだろう。
もうひとつ、クルマ作りという面では「フルSKYACTIV」の商品ラインアップがひととおりの完成を見たという事実も大きい。
2011年に先代デミオのガソリンエンジンから始まったSKYACTIVの商品化は、矢継ぎ早の新車投入でイッキにマツダの新しいブランドイメージとして認知されたが、それが一巡したのが昨年。やはり、新車が出ないと話題性という面では弱い。
このあたりが、マツダ不振と言われちゃう原因と思う。
ただし、クルマ作りの本質的な部分では、今のマツダはますます自信を深めているとみて間違いない。デザインにしても、パワートレーンにしても、シャシーにしても、SKYACTIVという新しい旗を掲げてからのマツダ車は旧世代から大きく進化した。作り手側は当然「よかれ」と思ってやってるわけだが、こういうドラスティックな変化は時としてユーザーに理解されないケースもある。
■エンジニアの士気がさらに高まっている
しかし、結果は皆さんご承知のとおり。
遠目でも一発でマツダ車とわかる強いデザインキャラクター、ディーゼルが牽引車となったパワートレーンのユニークさ、従来から評価の高いハンドリング……。マツダならではの個性がユーザーに評価され、日本のみならずグローバルで手堅い販売実績を残している。
やはり大事なのは、結果がついてきたこと。これによって「オレたちの目指した方向は間違っていない!」と確信。エンジニアの士気がますます高まっているのだ。
最近のマツダのクルマ作りが非凡なのは、エンジニアたちの"こだわり"が半端ではないこと。彼らを見ていると、とてもサラリーマンとは思えない。まさにオタク集団が異常な執念でクルマを作ってる。
こういうクルマ作りの"情熱"は、上からの命令では決して生まれてこない。現場のモチベーションを高めるのは、やり甲斐のある開発環境とユーザーから支持されているという自信だ。
今はモデルサイクルの谷間のような状況だが、ぼくのマツダ車への評価は変わらない。あの熱いエンジニア集団が作り出す次回作に期待、という心境だ。
■CHECK
海外市場の販売状況は?
国内販売では前年比を下回っているマツダだが、海外販売では今年1~5月の累計販売台数で前年比+4.2%と売れゆきがアップしている。
特に伸びている地域が欧州とタイで、欧州はCX-3やMX-5(ロードスター)などが好調、タイはMazda2(デミオ)、MX-5が売れている。
■結論
いったいマツダ車は今もイケイケか?
TEXT/鈴木直也
ミニバンは人気カテゴリーだが、ビアンテなどの販売が伸びないのもマツダの弱さのひとつ
今のマツダ、変わらずイケイケだと思いますが、現実の販売戦線でライバルと戦うシーンでは、やっぱりマツダ車の弱い部分もある。
まず、国内市場で販売台数が伸びない理由だが、ぶっちゃけて言えば値引きが渋いのが最大の原因だと思う。
かつてのマツダは新車効果が途切れると値引き値引きで台数を確保する悪い癖があった。これをやると、回りまわって中古車相場も崩壊。いわゆる"マツダ地獄"という言葉はここから生まれている。
ところが、最近は値引きがじつに渋い。販売店を冷やかしに行ってみればわかるんだけど、ライバルと競合してもあんまりお得な見積もりが出てこない。
この方針は本社の営業トップから徹底されているようで、台数よりもきちんと利益を出すことを優先する方針。結果として、マツダ本体の決算は順調で、売り上げ3兆4000億円に対して、経常利益2235億円。4期連続の増益を果たしている。
こういう売り方をしていると、マツダ車にこだわりのないお客さんを逃がすことにはなるが、それでも敢えてやせ我慢をしているのが現状。価格だけで選ばれるクルマを作ってちゃマツダに未来はない、という危機意識が働いているわけだ。
いっぽう、国内市場でマツダ車が伸びないもうひとつの理由は、日本市場に特化した商品が弱いこと。具体的には、売れ筋の5ナンバーミニバンと軽のラインアップが貧弱なのは明らかな弱点といえる。
まぁ、マツダくらいの規模(年産150万台)では、日本専用車を開発するのは難しいところではあるが、プレマシー、ビアンテ、MPVなどの既納ユーザーをみすみす逃すのは惜しい。軽と同じくOEMでもいいから、なんとかならないもんでしょうか?
これ以外の点では、ハイブリッドやPHEVなどの電動化バリエーションや、自動ブレーキに代表される先進安全装備が少し弱いが、この辺は最先端を走らなくてもトレンドに遅れなければまぁOK。サプライヤーとうまくコラボしていけば問題はないと思う。
以上、現状でもマツダはおおむね問題なしというのが結論でございます。
■これから登場するマツダのニューカー
しばらく新型車はなかったが、改良を含めてこれからマツダは新車攻勢に入る。
まずアクセラが7月14日にビッグマイチェン。内外装のデザイン変更とともに、パワーユニットが従来の2ℓガソリンエンジンに代わって、1.5ℓディーゼルターボエンジンを設定するのが目玉だ。
8月11日にはアテンザが一部改良。内装をデザイン変更するほか、安全装備の衝突被害軽減ブレーキの検知機能をレーザー方式からカメラ方式に変更してさらなる性能向上が図られる見込み。
さらに、今秋にはロードスターの電動開閉式ハードトップモデルが追加される。
「ベストカー」2016年8月10日合併号より
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