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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第189回 なぜ日本はデフレ脱却できなかったのか?
http://wjn.jp/article/detail/5993854/
週刊実話 2016年9月29日号
来る9月20・21日に、日本銀行は金融政策決定会合において、2013年以降の金融政策について「総括的検証」を実施する予定になっている。
日本銀行は'13年1月、物価安定目標を消費者物価(※厳密には、生鮮食品を除く総合消費者物価指数)の対前年比上昇率2%と定め、可能な限り早期に実現するという約束をした。いわゆる「インフレ目標の設定」だ。
インフレ目標を設定し、日本銀行が(主に)国債を買い取り、日本円を発行し続ける量的緩和政策を実施。'13年春と比較し、すでに250兆円もの日本円が新たに発行された。
ところが、直近のインフレ率は▲0.5%−−。なぜこのような事態になったのか、さすがに総括が必要な局面である。
本稿執筆時点で、日本銀行の審議委員たちは「三派」に分かれてしまっている。すなわち、マイナス金利政策を推す黒田総裁派、量的緩和の拡大を主張する岩田副総裁ら、いわゆるリフレ派。さらには、追加的な金融緩和に反対する審議委員たちの三派である。
三者の意見がバラバラで、統一的な見解に仕立てることが困難であるため、総括検証では三者の意見を織り交ぜた「玉虫色」になるのではないかと噂されている。
もっとも、本質的な問題は、
「日本銀行の金融政策の効果」
「果たして、どの政策が的確なのか」
といった戦術的な話ではない。3年半かけて250兆円を超す日本円を新たに発行したにもかかわらず、なぜインフレ率がマイナスに戻ってしまったのかについて、日本銀行は「正直に」説明する義務があるのだ。
国民や政治家が、インフレ率が上がらない理由を正しく理解して初めて、わが国はデフレ脱却に向け、歩みを進めることができる。原因を正しく認識しない状況では、問題を解決することは誰にもできない。
しつこいほど繰り返したのだが、お金を発行する「だけ」でインフレ率が上昇するはずがない。インフレとは、われわれが生産者として働き、生産するモノやサービスの価格(=物価)が上昇することなのだ。そして、物価が上がるのは、モノやサービスが買われたときである。あるいは、「買われる」ときに、初めてわれわれは物価を引き上げることができる。
日本銀行が量的緩和政策により250兆円で購入したのは、主に国債である。国債はモノでもサービスでもない、ただの借用証書にすぎない。国債を日銀当座預金残高という「お金」で買うのみで、インフレになるわけはないのだ。
しかも、あまりにも日銀の量的緩和政策が長期化し、金融市場から国債が尽きつつある。すでに国内の預金取扱機関(銀行など)が保有する国債は、200兆円前後「しか」ないのだ。日本銀行は、毎年80兆円の純増という凄まじいペースで国債を買い入れている。このままでは近い将来、国内の市中銀行の国債がなくなり、日本銀行の量的緩和政策は強制終了になりかねない。
量的緩和政策の拡大は、もはや不可能である。
また、黒田日銀総裁は、マイナス金利政策の効果として「家計や企業にとって借り入れコストが下がる」ことを強調すると同時に、銀行の収益を悪化させるデメリットもあると説明した。相変わらず勘違いがあるとしか思えないのだが、そもそも日本の経営者や家計は別に、
「借り入れコスト(金利)が高いから、お金を借りない。投資しない」
などと考えているわけではない。単に、デフレの長期化で、企業にとってもうかる投資案件が存在しないのだ。あるいは、実質賃金が伸びず、雇用が不安定化しているからこそ、家計はお金を借りてまで住宅投資をやろうとは思わない。
現実の経済を知らない経済学者たちは、「実質金利」(※名目金利から期待インフレ率を引いた金利)がどうのこうのと机上の空論を言い出すわけだが、実質金利を見ている経営者など、現実には一人もいない。見ているのは投資利益と名目金利のみである。
この状況で日銀当座預金のマイナス金利の幅を拡大したところで、銀行からの貸し出しが増えるはずがない。単に、銀行の収益を悪化させるだけの結果となる。
そもそも、デフレ長期化の主犯は国民でもなければ経営者でもない。さらには、銀行でもなければ日本銀行ですらないのだ。
日本政府である。
安倍政権が「戦後最悪の緊縮財政」を強行したからこそ、日本経済はデフレに舞い戻ってしまったのだ。悪いのは、安倍政権であり、消費税増税をはじめとする緊縮財政である。
すなわち、日本銀行が金融政策の「総括」を実施するなら、結論は端から明らかなのだ。
「日本銀行は十分な金融緩和を実施したが、政府が消費税を増税するなど緊縮財政で需要を縮小させたため、物価目標の達成ができなかった」
これだけでいい。
しかしながら日銀は「政府の緊縮財政」という主たる問題から目をそらし、「物価が上がらないのは原油価格下落のせい」などと、少なくとも2015年後半以降は全く通用しない説明(※1年前と比べ原油価格は下がっていない)を繰り返してきた。
黒田東彦総裁は元財務官僚である。元財務官僚の立場として、財務省が推進し日本経済を「国民経済の崖」に突っ込ませた消費税増税等については沈黙を続けてきた。黒田総裁自身も、過去には'14年4月の消費税増税を推進する発言を繰り返していた。
ところが、驚くべきことに9月5日、黒田総裁は講演で、現在の物価低迷について「原油安や消費税増税、海外経済の減速が影響している」と説明した。ついに黒田総裁の口から「消費税増税」という言葉が出たのである。変われば、変わるものだ。
9月20日・21日の金融政策決定会合では、日本銀行にはぜひとも「消費税増税などの緊縮財政」により物価が上昇しなかったと正しく断じてほしい。原油安や海外需要縮小ではなく、「緊縮財政が諸悪の根源」との認識が広まって初めて、わが国は「財政政策による十分な需要創出」という正しい道を歩むことができるのだ。
みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。
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