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黒田日銀は長期戦の構え(撮影:今井康一)
日銀「新たな枠組み」に冷めた見方が多いワケ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160922-00137162-toyo-bus_all
9月22日(木)11時15分配信 平松 さわみ 東洋経済オンライン
日本銀行(日銀)は9月20・21日の金融政策決定会合で、追加緩和を見送る一方、金融緩和の新しい枠組みを示した。その名も「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」。なんとも複雑怪奇な名称だ。2013年4月の量的・質的緩和の導入から3年半、何をやっても2%の物価安定の目標は達成できなかったことの象徴のようだ。
日銀は2013年4月より「2年程度をメドに2%の物価安定目標を実現する」ことを目標に、量的・質的金融緩和を行ってきた。国債の大量購入によって市中におカネ(マネタリーベース)を供給して、金利を低下させると同時に、ETF(上場投資信託)やREIT(上場不動産投信)も買うことで、国債市場から追い出された民間資金を株や外貨建て資産などのリスク資産へ向かわせる(ポートフォリオリバランス)戦略をとった。企業や家計の投資や消費への意欲を喚起し、インフレ期待(物価が上がるという予想)を醸成させ、物価を引き上げるのが狙いだった。当初年間60兆〜70兆円だった国債購入のペースは2014年10月には年80兆円のペースに引き上げられた。
■短期決戦ではなく長期戦の構えに
2016年1月には「マイナス金利政策」を付加して「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」とした。日銀当座預金の一部にマイナス金利を課すことで、銀行が当座預金を持つインセンティブを減らし、企業や家計への貸し出しやリスク資産への投資に回すことを狙ったものだ。7月にはETFの買い入れをほぼ倍増し、日銀自らがリスクを大きくとって株価を押し上げる姿勢を見せた。
ところが3年半が経過した今も、2%の物価安定目標は達成できていない。
そこで今回、日銀は「できるだけ早期に2%」という旗は降ろさず、2年という短期決戦ではなく長期戦の構えに入り、金融政策の軸足をマネタリーベース(量)から金利に移した。いわば「戦うための武器を変えた」(東短リサーチの加藤出・チーフエコノミスト)といえる。
新たな枠組みの柱は2つだ。
■「新たな枠組み」とは?
まず、「イールドカーブ・コントロール」(長短金利操作)。短期政策金利にはマイナス0.1%のマイナス金利を適用。長期金利は買い入れる国債の年限や量の調節によって指標となる10年物国債金利が0%程度になるようにする。
もう一つは「オーバーシュート型コミットメント」。これは、人々が物価の先行きをどう見ているかを示す「予想物価上昇率」を引き上げるためのもの、としている。「消費者物価指数の上昇率が、安定的に2%を超える(オーバーシュートする)」まで、マネタリーベースの拡大を継続するという約束(コミットメント)をするとした。
欧米の中央銀行が掲げるインフレ・ターゲット(物価目標)という考え方の裏には、企業や家計の将来の物価予測は、中央銀行がコミットした目標に近づいていくだろうという考え方がある。ところが、日本では、そのような政策は黒田日銀以前には取られてこなかった。人々は実際に経験してきた、あるいは、足元で経験している物価動向が今後も続いていくだろうと考える傾向にある。日本では長期にわたるデフレがデフレマインドを形成してしまったというのが、「2%の物価安定」を達成できなかった主因だと日銀は分析している。
そのため、日銀は強い物価目標を堅持すること自体が、政策の一部であると考えており、「金融政策は効果が表れるまでに時間がかかる。実際に2%を超えるまで金融緩和を続けるというのは、きわめて強いコミットメント」(黒田東彦総裁)だと強調している。
■専門家は冷めた見方
だが、今回の新しい枠組みに対し、専門家は冷めた見方を示している。
JPモルガン証券の鵜飼博史・シニアエコノミストは「日銀が指定する利回りで購入する指値オペや、固定金利の資金供給オペを導入したことで、長期金利を0%近辺に維持することは可能」と見る。
しかし、「(2%の物価安定目標が)人々の期待に働きかける効果がないことは、これまでの経緯でわかっており、目標を上げたところで物価上昇が見込めるかは疑問だ。本当に早期に物価目標を達成したいとすれば今回、何らかの追加緩和策を取るべきだった」と話す。
今後については、「今年11月は新たな枠組みの効果を検証することを優先し、追加緩和には動かず、様子見ということになるのではないか」と鵜飼氏は予想する。
金融緩和の出口見えす
第一生命経済研究所の熊野英生・主席エコノミストは「量的緩和ではいずれ(国債の買い入れ額に)限界が来る。金融政策の主軸を金利にシフトしたことは、限界論に対するアンチテーゼを示すうえで好ましい」としながらも、2%を安定的に超えるという物価目標については「飛べないハードルをさらに上げたようなもの。(金融緩和は)長期戦になる」と先が見えなくなったことを危惧する。
東短リサーチの加藤出・チーフエコノミストは「市場にせっつかれるたびに追加緩和に対応せざるを得ないという状態から脱却するには、枠組みの変更は歓迎すべきこと」とする。
ただ、「長期金利ターゲットの一番の問題点は出口が難しいこと。インフレ期待が上がると、長期金利のコントロールは難しくなる。逆説的だが、日銀は当面2%の目標は達成しないと考えているのだろう」という見方だ。
■副作用大きく、マイナス金利の深掘りにも限界
加藤氏も「2020年の東京五輪前に出口はない」とみる。長期化することの弊害は、「それまでに米国が景気後退期に入り、量的金融緩和第4弾に踏み切れば、円高圧力への対処を迫られる」(加藤氏)ことであり、「そうなれば、おそらくマイナス金利の深掘り(マイナス幅の拡大)で追加緩和を行うことになるが、銀行、年金、生命保険には悪影響で、いつまでも続けられるというわけではない」と指摘する。
「金融緩和が効果を発揮するには、潜在成長率を高めていかなければならず、結局は成長戦略や構造改革が必要。地方の経営者と話すと、『”マイナス金利”というものをやらなければならないほど日本経済が危機的なら、しばらく投資を控えて様子を見る』という声が聞かれた。現状の金融政策は完全に裏目に出ており、かえって人々を不安にさせている」(加藤氏)
新たな枠組みにより、一歩踏み込んだ姿勢を見せた日銀。ただ、金融政策だけで物価目標を達成するためのハードルは依然として高そうだ。
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