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日銀の真の狙いは「緩和策の限界」隠し
キーパーソンに聞く
みずほ銀行 唐鎌氏、BNPパリバ証券 河野氏に聞く
2016年9月22日(木)
田村 賢司、武田 健太郎
日本銀行は21日に開いた金融政策決定会合で金融政策の枠組を変更し、政策の目標を資金供給量から短期・長期金利の水準へと転換することを決定した。同時に、現行のマイナス金利政策は維持し、必要があればさらに引き下げる可能性も表明している。
黒田東彦総裁は会見で「従来の金融緩和を強化する」と語ったものの、枠組変更が実体経済に何をもたらすのか、正直、解釈には難しい部分が残る。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストと、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストに見解を聞いた。
(聞き手は田村 賢司、武田 健太郎)
※記事は両氏に対して個別に行ったインタビューをまとめたものです。
日銀は21日開いた金融政策決定会合で、長短金利を誘導目標とする新しい金融緩和の枠組を導入することを決めた。(写真:都築雅人)
【みずほ銀行の唐鎌大輔氏に聞く】
効果があったのになぜ枠組を変えるのか
唐鎌 大輔(からかま・だいすけ)氏
みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
2004年、慶応義塾大学経済学部卒業後、JETRO(日本貿易振興機構)入構、貿易投資白書の執筆などを務める。2006年、日本経済研究センターへ出向し、日本経済の短期予測などを担当。2007年、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向。2008年10月、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)入行。国際為替部で為替分析を担当している。著書に『欧州リスク 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)などがある(写真:柚木裕司)。
長期金利を誘導目標とする新たな金融緩和策をどのように評価していますか。
唐鎌: とにかく分かりにくいという印象です。日銀は、(市中に供給する通貨量である)マネタリーベースの増大で物価押し上げを図る量の緩和と決別し、長短金利を誘導する政策に変えたわけですが、では量の緩和は効果がなかったのかといえば、効果はあったと言っている。
効果はあったが、2014年半ばからの原油価格下落や消費税引き上げによる消費停滞など外的要因がそれを消したというような言い方です。効果があったのならなぜ政策の枠組を変えなければいけないのか。
しかし、量的緩和の柱である年間80兆円の国債買い入れは持続すると言っています。
唐鎌: それも分かりにくい。長期債は購入を減らして長期金利をゼロに保つということでしょうが、購入額は前と同じだという。実際には、買い入れを減らしたり増やしたりするように買い入れ額に幅を持たせる形になるのではないでしょうか。それならそう言えばいいのに。
日銀は円安志向を脱するべき
黒田総裁は、金融緩和の縮小を意味するテーパリングではないと否定していましたが。
唐鎌: 長短金利を誘導目標にはしましたが、(国債の大量買い入れという)量の枠組は変えないのだから、当然でしょう。
今回は1月に導入を決めたマイナス金利の深掘りも追加緩和手段として挙げています。でも、実質的には(長期金利を上げるには長期債の買い入れを減らすことになるなど)同じ事だと、市場には受け取られかねません。
黒田総裁が就任して以来の大胆な金融緩和の狙いには、物価の押し上げだけでなく、円高是正がありました。
唐鎌: 確かに円安にはなりました。しかし、円安にしてGDP(国内総生産)は増えたのでしょうか。そうはなりませんでした。2012年末に安倍晋三首相が就任して以後、今年4〜6月期までの15四半期のうち、6四半期がマイナス成長でした。
円安になって家計の実質所得は減り、企業は収益を上げましたが、その分、法人税が増えて政府に行きました。結局、円安は所得移転に過ぎなかったとも言えます。日銀はもう、円高は日本経済の逆風、円安は歓迎という思考のくびきから解き放たれるべきです。
今年2月頃からは、一転して円高になりました。日銀はマイナス金利を導入して新たな緩和に踏み出したのに、逆の結果となったわけです。
唐鎌: その後確かにドル円レートは、円高になりました。しかし、ドルの(複数の通貨に対する実質的な強さを示す)実質実効レートは、その間、ほとんど落ちていません。
ドル円の関係だけ見ると、円高ドル安になったように見えますが、実際にはドルはまだ高いのです。まだドルは安くなり、円高が進む可能性があるわけです。
今回の金融緩和は円高材料になる
日銀の今回の新たな緩和策は、ドル円レートにはどういう影響を及ぼすでしょう。
唐鎌: 米国側の事情から言えば、大統領選を11月に控え、利上げはしにくい。ドル高円安にはなりにくいでしょうね。日銀の政策も、(マイナスになっている長期金利をゼロに維持するなど)全体としては円高材料になるのではと思います。
我々は年後半に1ドル97円、来年は同92円くらいまでいくと予想しています。
日銀は今回、2%の物価目標が実現し、安定するまでこうした金融緩和政策を続けると明言しました。
唐鎌: 日本は生産年齢人口の減少が既に始まっており、人手不足が顕在化しています。そのおかげで時給が上がり始めました。
この状況が長く続けば、やがてコストプッシュインフレになる恐れがあります。それは日本経済にとって良いこととは言えません。
大事なのは、需要を増やす構造改革を行い、その方向からインフレが起きることです。それは政府の役割であり、日銀が単独で物価押し上げを図ろうとするのはおかしいのです。
【BNPパリバ証券の河野龍太郎氏に聞く】
インフレ目標の柔軟化は評価できる
日本銀行が新しい金融緩和の枠組を導入しました。どのように分析されますか。
河野 龍太郎(こうの・りゅうたろう)氏
BNPパリバ証券 経済調査本部長チーフエコノミスト
1964年生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。1987年住友銀行(現三井住友銀行)入行。大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)エコノミスト、米国大和投資顧問エコノミスト、第一生命経済研究所を経て2000年から現職。
河野: 日本銀行は長短期の金利水準を誘導目標としました。(国債を年80兆円購入する)量的緩和策が実質的に限界を迎えつつある中で、「量重視」から「金利重視」へ方針変更するという演出で、政策の限界を意識させないように見せるレトリック(修辞技法)に徹したと捉えることができます。
大規模な金融緩和が実体経済に負の影響を及ぼしています。
河野: これまでの金融政策の影響で短期金利がマイナス水準に沈み、長期の金利も下押しされています。長短金利の差も小さくなっている状態です。銀行などの収益が圧迫され、金融仲介機能への悪影響という緩和政策の「コスト」の側面が強まってきたのは確かな事実です。
そもそも、日銀が目標としてきた2%の物価目標にも疑問を持っています。足下ではデフレとは言えない状況となっていますが、経済成長率は低水準のままです。少子高齢化が進む日本では、中長期的な高成長が見込みにくい環境です。デフレから脱却したところで大きな経済成長にはつながらない事が明らかになってきました。
その点、どのようなコストを払ってでも2%のインフレを達成するという厳格な方針では無く、(需給ギャップなどの経済情勢を考慮しつつ2%の物価安定を目指す)フレキシブル・インフレーション・ターゲットへの移行を日銀が今回明確にした点は評価できます。
追加緩和は抜かずの「宝刀」
今後の追加金融緩和の可能性はどのように見ていますか。
河野: フレキシブル・インフレーション・ターゲットへの移行によって、追加の金融緩和は当面無くなったと考えています。11月の政策決定会合での決定も当然あり得ないでしょう。足下の経済環境を見ると完全雇用にあり、日本経済の需要と供給の差を示す需給ギャップは穏やかに縮小しています。マクロ経済が悪くない中では、追加緩和に動く動機はありません。7月末の政策決定会合で日銀が上場投資信託(ETF)の年間買い入れ枠を6兆円と、従来に比べ約2倍に増やしたことで、多少円高が進んでも日本株が値下がりしにくい状況になったことも追加緩和を遠ざける要因となっています。
円相場が1ドル90円前後まで円高に進むなど、よほどの大きなショックが訪れない限りは、日銀が追加緩和に動くことは無いと見ています。マイナス金利の深掘りやETF購入枠の拡大、国債購入枠の拡大など量・質・金利での緩和策の可能性に日銀は含みをもたせていますが、当面は「抜かずの宝刀」として温存されることになるでしょう。金融政策には手詰まり感が出てきていますが、必要とあれば追加緩和を出して市場を下支えできるという存在感を演出できたことは評価できます。
このコラムについて
キーパーソンに聞く
日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/092100202
日銀の新緩和策、暮らしには明暗
年金利回り回復、住宅ローンは上昇も
2016/9/22 2:08
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長期金利のゼロ%への誘導などを柱とする日銀の新たな金融政策の枠組みは、人々の暮らしにどのように影響するのか。プラスとマイナスの両面がありそうだ。
プラス面は、保険や年金などの運用利回りが回復することだ。長期金利が今より上がれば、将来の年金や退職金などの給付に備えて積み立てられている資産が安定的に運用できるようになる。
国債利回りの急低下で運用が難しくなった貯蓄性保険などは現在、一部が販売停止に追い込まれている。こうした商品の販売が再開すれば、金融商品の選択肢が広がる。
一方、近い将来に住宅の購入を考えている人にはマイナス面がある。長期金利に連動して決まる固定型の住宅ローン金利は、長期金利が深いマイナスの水準にあった時点と比べると若干上昇する可能性があるためだ。
長期金利低下の影響で、各行の住宅ローン金利は8月まで2カ月連続で過去最低水準を更新していた。ただ、大手銀行が9月に適用する住宅ローン金利は5カ月ぶりに上昇した。日銀の新政策の影響を受け、10月のローン金利も上昇する可能性がある。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGF21H0Z_R20C16A9EE8000/
ドル・円は100円台で推移か、米金利見通し下方修正で円売り抑制も[FISCO]
配信日時 2016年9月22日(木)08:49:59 掲載日時 2016年9月22日(木)08:59:59
21日のドル・円相場は、東京市場では101円03銭から102円79銭まで上昇。欧米市場でドルは一時100円30銭まで反落し、100円32銭で取引を終えた。本日22日のドル・円は、主に100円台で推移か。米利上げは12月になるとの見方が広がっているが、米連邦公開市場委員会(FOMC)の経済予測で2017年と2018年の金利見通しは下方修正されており、リスク選好的なドル買い・円売りは抑制される可能性がある。9月20-21日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で、政策金利(FFレート)の据え置きが賛成多数で決定された。金利据え置きは予想通り。会合終了後に公表された声明では、労働市場における需給関係の引き締まりや経済成長の加速が指摘されたが、雇用、家計支出、企業設備投資、インフレに関する見解は前回(7月26-27日)とおおむね同じ内容だった。FOMC声明では、利上げについて「政策金利(FF金利)を引き上げる根拠は強まった」との判断が示されたが、当面は、「目標に向けた進展のさらなる証拠を待つ」としている。インフレ率が2%に向けてすみやかに加速する兆候は確認されていないものの、今回の会合では3名のメンバー(ジョージ米カンザスシティー地区連銀総裁、メスター米クリーブランド地区連銀総裁、ローゼングレン米ボストン地区連銀総裁)が0.25ポイントの利上げを支持した。ただし、FOMCの経済予測における金利見通しは、2017年末が1.1%、2018年末は1.9%、2019年末は2.6%と想定している。2017年-2018年の金利見通しはいずれも下方修正されており、リスク選好的なドル買いがただちに広がる状況ではないとの声が聞かれている。
<MK>
http://klug-fx.jp/fxnews/detail.php?id=332555
マイナス金利が及ぼすプラスとマイナスの影響(西岡純子)
日本経済は長期停滞、その要因とは?
日本経済は長期停滞が続いています。潜在成長率はトレンド成長率とも言いますが、この数字はその国の実質金利に収斂する傾向があります。
日本の場合、潜在成長率は80年代後半のバブル期には4%を超えていました。それがバブル経済の崩壊とともに落ち込み、2000年代に入ると中国経済の回復とともに持ち直す局面がありましたが、リーマンショックをきっかけに再び大幅に下がり、震災もあってさらに落ち込み、足元は少し上がってきていますが、達観してみるとほぼゼロという状況です。
潜在成長率は、毎四半期発表されるGDPのようにバタバタと上下に動くものではなく、その経済に存在する労働資本や生産設備等が平均的に稼働したときに達成される成長率です。そこには生産性も含まれます。それぞれを足し上げたのが潜在成長率となるわけです。
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そこで、就業者数と労働時間を合わせた労働投入に注目すると、90年代に入ってからずっとマイナス方向に定着しがちになっています。人が減り始めたのは2013年ですが、それ以前の段階で、まず90年代初頭から労働時間が減り、90年代後半からは労働参加率が下がり始め、そして働く人の数、つまり人口が減ってきて、トリプルパンチとなっています。これが長期に渡り成長率を押し下げる方向に効いてきました。
設備投資に関連する資本投資は、維持更新投資があるので基本的にはプラスが続いてきました。80年代後半はバランスシートの調整が進む中でもプラス成長を続けたわけですが、リーマンショックを境に0ないしはマイナスとなる局面もありました。設備投資がほとんど出なくなってしまったのです。設備投資をしない経済で生産性が上がるわけがなく、生産性も落ちてきました。当然、三つを足した潜在成長率はほぼゼロという状況です。
これを何とかしなくてはいけないということで、アベノミクスでは企業に設備投資をしやすいような投資減税を拡充したり、人を増やすための子育て支援等に非常に力を入れているわけです。ただ、労働投入の部分がこの先どうなるのか、2060年までの将来推計を見てみると、-0.2%をスタート台として、出生率が現在の1.4から1.8に上りそれが継続するとした場合、子供の数は増え、2030年あたりには労働人口が増える局面が現れます。その後、団塊世代ジュニアが抜け始めるので、労働市場はまた一旦落ち込みます。
ただ人口動態上、子供の数が増え続けると労働投入はじりじりとマイナス幅を縮小します。おそらく、この上昇圧力により潜在成長率も上がると予想されます。しかし残念ながら、出生率1.8のままをキープできたとしても、この労働投入はその後もマイナス圏から出ることができないのです。
一方、もし出生率が1.4のまま変わらないとした場合、団塊世代ジュニアが抜けて労働市場のパイがどんどん小さくなり、一瞬戻る局面はあるものの、またマイナス方向に押し戻されるという見通しです。その場合、ボトムでは労働投入は-0.5まで落ち込みます。
もし企業が設備投資を全くしない状態が続けば、日本の潜在成長率はもはやマイナスになってしまうのです。先進国でありながら、潜在成長率がマイナスであるような異常な経済はあまりありません。ただ、日本のこうした労働市場の状況から考えると、そうなる事は必ずしも否定できません。
マイナス金利が及ぼすプラスとマイナスの影響
そうした中、当局としてはひとまず日銀に頼り、即効性のある金融政策で何とかデフレ脱却を進めてもらおうと、2013年に異次元緩和が導入され、今年1月29日にはマイナス金利の導入がアナウンスされました。実際にマイナス金利が効いているのかどうかを検証してみます。
マイナス金利は、キャッシュを多く持つ企業にとっては、大口預金に将来もしかしたら手数料という発想が出てくる可能性があります。そうした発想があれば、大口預金を持つ企業は、コストが発生、つまりペナルティーを支払うことを想定するわけです。そうかもしれないと分かっていながら、手元流動性の売上高比率はどんどん上昇していて、上昇が止まる兆しも見えません。
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金利が下がり、イールドカーブそのものがフラットになりましたが、それでも負債比率は下降傾向をたどったままです。確かに、ごく一部には不動産業を中心に、負債を固定化したり、固定負債を長期化したりという動きがあるのは事実ですが、それはごく一部の産業に限られています。
その中で、企業の利益剰余金は上昇ペースが上がっているようにさえ見えます。直近の水準は367兆円で、日本のGDP、約500兆円と比べて、7割近くの内部留保が溜まってしまっているのです。確かに、自己株取得が増え、株主還元を増やすなど、企業改革が進んだことはアベノミクスの動きの一つではありました。しかし、自己株取得の増加は約4兆円程度にとどまっていて、利益剰余金の積み上がり方の方が圧倒的に多いのです。資金の有効活用がされていないのは明らかな事実だと思います。
一方、マイナス金利の影響もいろいろなところに表れています。銀行間で資金をやり取りする日々のマーケットであるコール市場の残高を見ると、これまでは20兆円前後が平均値だったわけですが、マイナス金利が導入されて大きく落ちてしまいました。コール市場は政策金利の水準に非常に近いので、いち早くマイナス化しています。
マイナス化すると、マイナス金利で調達できる金融機関がいる傍ら、その資金を出す(運用する)金融機関にとっては、わざわざマイナス金利分を払って運用するという異常なマーケットなので、さすがにその市場残高は落ちるわけです。ただ、残高はゼロでは無く、金融機関が調達できなくはないので、一応の市場機能は維持されていることが日銀の主張の一つでもあります。
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住宅ローン基準金利はどんどんと下がり、8月現在で1.1%まで低下しました。もちろん過去最低水準です。ここまで下がると、金利コスト自体も減税対象になるので事実上ゼロコストで住宅ローンを借りることができます。ただ、これは借り換え需要がほとんどで、新規の需要にはあまりつながっていないのが実態です。
マイナス金利政策が効くかどうかは、間に挟まる銀行が貸出を伸ばせるかどうかに全てかかっています。確かに、不動産向けの貸し出しは非常に伸びていますが、全体の貸し出しの残高はあまり伸びておらず、減速しているように見えます。
また、日銀の主張としては、中立的な経済の均衡金利はほぼゼロですが、自分たちの金融政策のおかげで、実際の実質金利(市場の名目金利−インフレ率)は過去最低水準まで落ち、このギャップが過去最大まで広がったと言っています。ここまで実質金利を下げているので、経済の刺激効果がないわけがないというのが日銀の主張なのです。
マイナス金利は確かに多少は効果はあると思います。ただその効果とコスト、金融機関に対する負担を比較すると、やはりそろそろ負担のことも真面目に議論しながら進める必要があるだろうと思います。
マイナス金利政策が続くことによって、いくつかの問題が発生します。深刻になってくると目に着くのが、例えば、予定利率や割引率がどんどん低下してしまうという問題です。
生命保険会社や年金基金などは、支払い期間が非常に長い負債を持っています。生命保険会社の場合には、保険支払いの準備金を負債としてたくさん持っており、一方、その負債に見合う資産を運用することで約束している予定利率がどんどん下がってしまいます。市場金利の低下で負債の評価額が一方的に膨らむと、今までであれば超長期国債などを中心に国債を買い入れて資産の時価を膨らますことができました。
しかし、超長期の金利そのものが0ないしはマイナスになってしまったことで、資産と負債のデュレーション・ギャップは広がり、さらに将来的にマイナス金利の国債を持ち切ってしまう投資家にとっては国債の償還の際に大きな損になります。
生命保険会社や年金基金といった、持ち切り前提で多くの国債を投資する投資家にとっては、こうした金利の大幅な低下とマイナス化は非常に深刻な問題なのです。金利が下がり投資が刺激されるという単純な問題ではなく、生命保険や年金など将来の国民の所得につながる分野にまでマイナス金利の影響が及んでしまうという自体は避けるべきではないかと思います。
講師紹介
ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 講師
三井住友銀行 市場営業統括部
チーフ・エコノミスト(日本)
西岡 純子
9月13日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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上昇気運にはない原油価格の在庫状況(近藤雅世)
http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/backnumber/20160921-2/
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