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ケニアのナイロビで、アフリカ開発会議(TICAD)首脳会議に合わせて開かれたケニア保健省や世界銀行グループとのイベントで演説する安倍晋三首相(2016年8月26日撮影)。(c)AFP/SIMON MAINA〔AFPBB News〕
マイナス金利を利益に変える錬金術師 ドル円スワップ市場に注目、円金利が突如正常化したらどうなる?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47926
2016.9.20 Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年9月16日付)
利回りがマイナスの債券を買う人がいるのは一体全体なぜなのだろうか。こうしたマイナス金利債券が大量に積み上がっていく中、グローバル金融市場ではこんな「12兆6000億ドルの疑問」が関心を集めている。この問いを投資家にぶつけると、普通は2種類の答えが返ってくる。1つは「仕方ないから」(資金を置いておくところがほかに思いつかない)。もう1つは「規則だから」(金融監督当局が定めたルールや投資家と交わした契約に従って債券を買わなければならない)である。
だが、実はもう1つ答えがある。利回りがマイナスの債券から利益を得る方法を見つけた投資家がいる。それも、単に債券の「回転売買」でトレーダーから手数料を稼ぐというものではない。
実は、低迷する景気を活気づけようと政府が行っている介入が市場を非常に奇妙な形に歪めてしまっているため、錬金術を駆使して抜け目なく利益を得るチャンスが生まれているのだ。
その一例としてドル円スワップを見てみるといい。いささか風変りなこの金融の分野は通常、一般の人々に気づかれないが、現時点では、普段以上の関心を集める価値がある。理由は2つある。
第1の理由は、日銀がマイナス金利の効果に関する待望の報告書を9月21日に発表すること。第2の理由は、ドル円スワップ市場での最近の展開が明らかに奇妙であることだ。
後者の話のポイントはスプレッド――日本円の短期金利をドルの短期金利に変換する事実上のコスト――にある。30年前には、このスプレッドはほぼゼロだった。ドルと日本円に対する需要が拮抗していたからだ。
ところが1997〜1998年に日本で金融危機が勃発した際、日本の銀行は次第に汚名を着せられるようになり、1年物のスプレッドがマイナス35ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)にまで拡大した。これは、円をドルに変換すると事実上ペナルティーを科せられることを意味している。
1999年以降、スプレッドはゼロに戻った。その後は、金融危機によってドルの需要が世界的に急増してスプレッドが大幅に拡大する場面が2回訪れている。2008年には、スプレッドがマイナス70bpになった。2011年のユーロ圏債務危機のときには、マイナス50bpを付けるときもあった。
市場が穏やかで普通に機能しているとき、スプレッドは小さくなると考えられる。実際、2008年と2011年の間にはスプレッドは縮小した。
しかし、足元では奇妙なことが起こっている。このスプレッドが2015年以降拡大しており、現在は、かつて記録した水準――スワップ1年物でマイナス70bp――で推移しているのだ。この動きは、日本の金融機関がドルを入手したがっていることにも関係している。日本円の金利がマイナスであることから、プラスのリターンが得られる可能性のある資産を購入できるようにしておきたいのだ。
また、米国が短期金融市場のルール改革に取り組んでいるせいでドル市場への資金供給が減っていることも、理由の1つに上げられる。そしてさらに困ったことには、新興国も債務の返済に充てるドルを調達したがっている。スプレッドが広がった状態が続くと、日本の銀行と生命保険会社の利益は圧迫される。
だが同時に、ドルを豊富に所有する世界各地の金融機関は大きな収益機会を手にしている。世界最大の債券運用会社ピムコしかり、中国の政府系ファンドしかりだ。
そのため、ドルを大量に保有するこれらの金融機関の多くは、通貨スワップ市場で取引をしている。具体的には、カウンターパーティー(取引相手)にドルを渡して円を受け取り、その円で短期国債を購入しているのだ。
こうした円建て債券を買うことは、一見愚策に見えるかもしれない。何と言っても、円建ての短期国債の利回りはマイナスだからだ(現在はマイナス25bp前後)。だが、決定的に重要なポイントはここにある。実は、円での損失を補ってあまりある利益がドルから生まれてくる。つまり、利回りがマイナスの債券を保有していても得られる利益というものがあるのだ。
これなら、外国人投資家がたくさん押しかけてくることにも合点がいく。ブルームバーグによれば、今年6月には、中国勢が買い集めた日本国債が累計で10兆円という記録的な水準に達している。
事態を楽観的に見たい読者は、この話は中央銀行の政策が機能していることを示しているだけだと言うかもしれない。中国と米国の投資家が円建ての短期国債を買い続けてくれれば、円建ての金利は低位に保たれるからだ。
そうなれば――理論的には――借り入れの増加が促され、実体経済も刺激される公算が大きい。しかし、マイナス金利が本当に効いているのかについて(筆者と同様に)もっと懐疑的でありたい読者は、こうした市場の混乱は普通に考えられる状況から大きく逸脱しており、意図に反して市場に対する信頼を蝕んでいると指摘できるだろう。
いずれにしても、問題は日銀が(もし動くとすれば)次にどんな手を打ってくるかだ。筆者自身は、大したものは出てこないと踏んでいる。こうした混乱は市場に深く染みこんでしまっており、投資家は(そして政策立案者も)ほとんど慣れっこになってしまったように見受けられるからだ。
それでも、こうしたマイナス金利のことを疑いたくなることがあったら、ドル円に関するこの奇妙な話の裏側にある錬金術のことを考えてみていただきたい。少なくとも、我々の金融システムがこれほど不思議なものになってしまったことに、そして、例えば円建ての金利が唐突に普通の水準に戻ったときにはショックが発生し得ることに気づいてもらえるはずだ。
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