★阿修羅♪ > 経世済民113 > 390.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
注目の日銀金融政策「総括的な検証」を先取り検証する(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/16/hasan113/msg/390.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 9 月 19 日 10:11:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

注目の日銀金融政策「総括的な検証」を先取り検証する
http://diamond.jp/articles/-/102315
2016年9月19日 原英次郎 ダイヤモンド・オンライン


注目の日銀「金融政策決定会合」が、目前に迫ってきた。そこでここでは一足お先に、金融政策の総括的な検証にトライしてみる。キーワードは「予想物価上昇率」である。(「週刊ダイヤモンド」編集委員 原英次郎)

 日本銀行「金融政策決定会合」が、目前に迫ってきた。9月20日、21日に開かれる同会合がことさら注目されるのは、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の「総括的な検証」を行うからだ。

 そこでここでは、一足お先に総括的な検証にトライしてみる。結論から言えば、金融政策の効果ははげ落ちつつあり、その効果自体も、当初の期待ほど大きくないということになる。その意味で、日本経済復活のバトンは、日銀から安倍政権に引き継がれたとも言える。

■なぜ物価上昇が必要か
物価が上がれば給料も上がる

 9月に入り、黒田東彦総裁は、「金融緩和政策の総括的な検証─考え方とアプローチ」と題した講演を行った。そこで黒田総裁は以下のように述べている。

「2013年4月に『量的・質的金融緩和』を導入しました。その後3年余りの間、わが国の経済・物価情勢は大きく改善し、デフレではないという状況になりました。一方で、これだけ大規模な金融緩和を行っても2%の『物価安定の目標』は実現できていません。この間に金融政策がどのように機能し、何が2%の実現を阻害したのか、この点が検証の第1のポイントです。そして第2の検証ポイントは、導入から半年が経過した『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』についてです」

 2013年4月に、日銀は消費者物価上昇率2%の達成を目標に、「量的・質的金融緩和」政策、いわゆる「異次元金融緩和」政策を導入した。俗に言う「黒田バズーカ砲第1弾」である。

 日銀は金融緩和する際に、銀行などから国債を買い上げてマネーを供給し、市場のマネーの量を増やす。「量的」とは国債の買い入れ額を飛躍的に増やしたこと、「質的」とは償還期限の長い国債とETF(上場投資信託)やJ−REIT(不動産投資信託)など、国債以外にも買い入れ対象を増やしたことを指している。それ以前から続いている超金融緩和で短期金利はゼロ%近辺まで低下しており、日銀は金利を動かす伝統的な金融政策が使えない「ゼロ金利制約」に直面していたため、こうしたいわゆる非伝統的金融融政策を強化した。

 そもそもなぜ物価の上昇が、日本経済の回復にとって重要なのだろうか。アベノミクスでも物価の持続的な下落であるデフレからの脱却を、“政策の一丁目一番地”として掲げている。

 日銀のHPにある「5分で読めるマイナス金利」では、「デフレで物価が上がらないということは、会社の売上げも増えないので、給料も上がりませんでした。日銀が『異次元緩和』をやってきたこの3年間で、会社はかなり儲かるようになって、春のベースアップ(給料アップ)も復活しました。デフレでなくなれば、給料も毎年上がるようになります」と説明している。

 逆に言えば、マイルドな物価上昇は、企業の売上増加→企業の設備投資・賃金アップ→個人消費の増加→企業の売上増加という好循環の前提になっているということだ。

■消費を刺激するカギは
予想物価上昇率

 では、日銀は「量的・質的金融緩和」政策が、どのような波及経路でこの循環を実現できると考えているのだろうか。黒田総裁が講演で述べた説明を図式化すれば、次のようになる。

 日銀が2%の「物価安定の目標」に対する強く明確なコミットメントを出し大規模な金融緩和を実施→人々の予想物価上昇率が上昇+長期国債の買い入れによって名目金利を押し下げ→2つの効果で実質金利が低下→企業や家計の経済活動を刺激→実際の物価上昇率が上昇→予想物価上昇率がさらに上昇――である。

 この循環のカギは予想物価上昇率が握っている。なぜなら日銀の「量的・質的金融緩和」政策は、予想に働きけるものだからである。

 実質金利は「名目金利−予想物価上昇率」で計算される。名目金利が一定なら予想物価上昇率を引き上げ、予想物価上昇率が一定なら名目金利を引き下げれば、実質金利は下がる。日銀の狙いは名目金利を押し下げ、予想物価上昇率を押し上げるという両面作戦で、実質金利を下げることにある。

 例えば、預金金利が3%で予想物価上昇率が5%なら、3−5で実質金利は▲2%になる。この場合、1万円を1年預けると1万300円になるが、いま1万円で買える商品は、1年後に1万500円になっていると予想されるので、いま買った方が得というということになる。つまり消費が刺激されるわけだ。

 この日銀が想定する波及メカニズムが実現するには、二つの前提が成り立つことが必要だ。第一に日銀の金融緩和が予想物価上昇率に影響を与えうること、第二に実質金利が企業や家計の行動に影響を与えうることである。

 黒田総裁は講演のなかで、予想物価上昇率の推移について次のように述べている。長くなるがそのまま引用してみよう。

「第一のフェーズは、『量的・質的金融緩和』導入以降、2014年夏にかけての1年強の期間です。この時期は、各種の予想物価上昇率指標は、いずれもはっきりと上昇しました。『量的・質的金融緩和』の導入が、予想物価上昇率の上昇に大きな影響を与えたと考えられます。

 第二のフェーズは、14年夏から15年夏までの1年間です。この時期は、多くの予想物価上昇率指標が横ばいとなっています。14年夏以降の原油価格の下落と同年4月の消費税率引き上げ後の需要の弱さが、予想物価上昇率の下押しに寄与したものとみられます。日本銀行は、14年10月末に、それまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクの顕現を未然に防ぎ、期待形成のモメンタムを維持するために『量的・質的金融緩和』の拡大を行いました。この政策対応によって、大きな逆風にもかかわらず、予想物価上昇率は何とか横ばいを保ったということかと思います」

「第三のフェーズは、その後、足もとにかけての約1年間です。この時期は、多くの予想物価上昇率指標が弱含んでいます。新興国経済が減速し、そうしたもとで国際金融市場の不安定な動きが続くとともに、原油価格が一段と下落しました。日本銀行は、本年1月にマイナス金利政策を導入しましたが、国際金融市場の不安定性が続く中で、その悪影響を跳ね返すには至っておらず、予想物価上昇率は弱含んだものとみられます」

 黒田総裁はもう一つ重要な指摘をしている。予想物価上昇率がどのようにして決まるかについてである。黒田総裁の説明によれば、人々の予想物価上昇率は「フォワードルッキングな予想形成」と「適合的な予想形成」の二つの要素によって形成されている。前者はいずれは中央銀行が設定した物価目標に収束していくという見方であり、後者は実際に経験している物価上昇率と同程度の物価上昇率が将来も続いていくという見方である。

 そして「日本の場合は、長期にわたるデフレのもとで目標となる物価上昇率が実現できていないこともあって、『適合的な予想形成』の影響が大きいことが知られています。『これまで長年にわたって物価が上がってこなかったのだから、今後も物価は上がらないだろう』との見方が人々の間に根付いているということです」と指摘している。

 予想物価上昇率の推移と決定要因についての発言からは、次のような常識的なことが見えてくる。

 第一に予想物価上昇率は金融政策の影響も受けるが、それ以外の要因にも大きな影響を受けるということ。第二に日本の予想物価上昇率が過去の実績の影響を大きく受けるとすれば、なぜ現実の物価上昇率が高まってこないかが、問題であるということだ。

■社会保障制度などの
将来不安が個人消費を抑制

 黒田総裁は現実の物価上昇率が高まってこない要因として、大幅な原油安と消費増税による個人消費の弱さ、新興国経済の減速を挙げている。原油安は供給サイドのコストを下げる要因であり、後の二つは需要が弱いために、市場価格を押し下げる要因になる。

 しかしである。GDP(国内総生産)で、約6割を占める最大の需要項目である民間消費支出(個人消費)の増加率は、四半期ごとの実質ベースで13年4月の量的・質的金融緩和政策導入以降も、14年4月からの消費増税前後の駆け込み需要増・反動減を除けば、年率で−0.8%〜+1%の間を行き来しており、16年に入っても微増・横ばいが続く。つまり、消費増税だけが、個人消費低迷の要因ではないことを示唆している。

 黒田総裁は雇用者数の増加、失業率の低下、ベースアップの実現をアベノミクスの成果として挙げているが、日本総研の分析によれば、雇用者報酬の増加に比べて、実際に使えるおカネである可処分所得の増加率は、雇用者報酬の増加率を大きく下回っているのだ。消費増税に加えて、毎年のように医療保険や年金といった社会保険の料率が引き上げられているためだ。

 これが短期的に需要を弱めている要因だとすれば、長期的な要因として需要を抑制しているのが将来不安である。医療・年金を問わず日本の社会保障制度は、基本として現役世代が高齢者を支える「賦課方式」を採っている。12年には現役世代2.4人で1人の高齢者を支えているが、50年には1.2人で1人を支える構図になると予想されている。

 現在の20歳代から40歳代の間では、政府がいくら「年金は100年安心」を叫んでも、「自分たちは年金はもらえないのでは」という不安が強い。所得のうちいくらを消費に回したかを示す消費性向は、年代が若くなるほど低くなり、反対に貯蓄性向は年代が若くなるほど高くなる。将来不安に備えていると推測される行動だ。これでは個人消費は盛り上がらない。

 需要項目で約1割強を占める民間企業の設備投資も、実質成長率は消費増税前後の大幅な変動を除けば、−0・8%から+3%の間を行き来している。16年に入ってからはむしろ微減の状態だ。企業が設備投資をするかどうかは、必要な資金の調達コストだけでなく、将来の予想収益率にかかっている。要は、将来、儲かると判断しなければ、調達コストがいくら減っても設備投資はしないだろう。

 例えば予想収益率が2%のプロジェクトがあったとして、調達金利が2%から1%に下がったとして設備投資を決断するだろうか。金利が反騰して2%以上になれば金利負担だけでこのプロジェクトは赤字。将来の期待収益率が低いと、なかなか投資に踏み切れないだろう。

 もう一つ見落とされがちなのが、絶対額の大きさである。例えば、設備投資資金が1億円で借入を予定していたとして、金利が4%から2%に下がると、引き下げ率は50%(2÷4×100)で年間の支払金利も、400万円が200万円へ、200万円も減る。これに対してマイナス金利導入後である16年6月の長期の新規貸出の平均金利は0.778%。3年前の13年6月は1.155%だから低下幅は0.377%。低下率は33%(0.377÷0.778×100)に達しているものの、支払い金利の減少額は約37万円でしかなく、インパクトは小さい。

 このようにマイナス金利を導入したといっても、一般企業向け貸出や住宅ローンの金利をマイナスにする、つまり、借入をすると金利がもらえるか、元金が減るという政策は採りえないという「ゼロ金利制約」にぶつかる。とすれば、貸出金利が1%以下まで下がっている現状では、さらに貸出金利を低下させても、設備投資を金融面から刺激する効果は小さい。これも常識的に考えれば予想がつく。

■中途半端なデフレ脱却策
社会の仕組みを作りかえよ

 以上をまとめてみよう。(1)量的・質的金融緩和政策のカギを握る予想物価上昇率は、金融政策以外の要因の影響を受け、緩和の効果を減殺するように動くことがある。(2)黒田バズーカ砲第1弾の効果は大きかったが、現実の物価上昇率を金融政策だけで上げるには限界があるため、予想物価上昇率は現実の物価上昇率に影響されて低下しており、結果、実質金利を低下させる効果も小さくなっている。(3)マイナス金利は名目金利を下げる効果があるとしても、金利がゼロ近辺まで下がっている現状では、名目金利の絶対的な低下幅は極小にとどまる。つまり、名目金利の低下を通じた実質金利低下の効果は小さい。また、ゼロ金利制約がある以上、調達コストの絶対金額の減少も小さく、設備投資など実物経済に与える影響も小さい。

 今後、日銀が政府の国債を直接引き受けるヘリコプターマネー政策や貸出金利に金利を支払うマイナス金利政策といった超過激な政策でもとらない限り、小手先で「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」政策を拡大しても、その効果は小さくなっていくばかりだろう。 

 では、どのような政策が求められるのか。要は、個人消費が増え、これによって企業の予想収益率が高まり、設備投資が増え設備が更新されて生産性が高まり、結果、給与が増えてさらに個人消費が増えるという循環を実現するような政策である。周知のように、アベノミクスは(1)大胆な金融政策、(2)機動的な財政政策、(3)民間投資を喚起する成長戦略の3本の矢から成り立っている。これまでも何度も指摘されてきたように、これから一層、重要なのはアベノミクス第二、第三の矢である。

 だが、すでに失敗の兆しがある。一つが消費増税の延期である。安倍首相は17年4月から予定されていた消費増税を再延期したが、19年10月に実施する期限を切ってしまった。わずか2年半後に増税が予定されているのに、人々は消費を増やすだろうか。金融ではアクセルをガンガンふかし、財政ではブレーキを踏む。要はデフレ脱却の戦略が中途半端なのだ。補正予算などによる財政支出の増加で、一時的にGDP成長率は高まるだろうが、カンフル剤が切れた後は、国債残高の増加だけが残ったということになりかねない。

 二つ目は長期的な将来不安を払しょくできていないことである。いま求められている政策は、急速に進む少子高齢化社会に適合した社会の仕組みに作り替えることである。第一が医療・年金・介護の社会保障制度の改革であり、第二が年齢や正規・非正規といった雇用形態にかかわらず、働きに応じて賃金がもらえるような雇用関係をつくる労働市場改革であり、「働きに応じてもらい・必要に応じて受け取る」ようにするための「所得再分配・税制改革」である。

 現在のように「年金はもらえないかもしれない。医療制度は維持できないかもしれない」といった不確実な状況が一番まずい。国民一人ひとりの平均的な負担が増えたとしても、子育てから老後まで、どこまで公が面倒を見て、どれだけ私が備えなくてはいけないかが明確になるだけでも、家計は消費と貯蓄を計画的にコントロールできるようになる。

 だがこれは「言うは易く行うは難し」だ。社会の仕組みを作りかえるということは、現在、利益を受けている既得権益者との戦いになるからだ。医師会・製薬業界、官僚、労働組合、富裕な高齢者層などなど。その意味で日本経済再生のバトンは安倍政権、ひいては政治そのものに手渡されていると言える。金融政策の総括的な検証だけでは、未来は拓けてこない。

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
1. 2016年9月20日 19:06:12 : qiLbRRQKeU : hAQCU@xjPJg[56]
総括で 嘘誤魔化しを 洗練し

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民113掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民113掲示板  
次へ