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ふるさと納税による寄付金で修復された古い町並み(佐賀県嬉野市提供)
「ふるさと納税」の足引っ張るマイナンバー制 事務簡略化のはずが、自治体の作業が殺人的に
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47845
2016.9.13 大島 七々三 JBpress
ふるさとチョイスやさとふるをはじめとしたポータルサイトの登場によって、小さな自治体がネット参加できるステージも整い、いよいよ自治体が「ふるさと納税」への取り組みを本格化していくことが予想される。
しかし実はそこに、死角が潜んでいる。
日本にもいまだネットを利用しない人は一定数いるのである。特に、高齢者ではその割合が高くなる。
■電話での問い合わせ殺到
ポータルサイトは確かに「ふるさと納税」にかかる手続きを簡略化したが、ネットを利用しないという人にはそれも意味をなさない。彼らには今も、電話での問い合わせやファックス、紙を媒介にしたやりとりが発生するのだ。
昨年、佐賀牛を中心にした返礼品で7万3000件を超える寄付を集めた嬉野市では、電話による問い合わせが殺到したという。ファックスや郵送での申込書のやり取りに担当の坂田氏を始め、複数の職員がその業務にかかりきりにならざるを得なかった。
「12月に入ってからは、1日中電話が鳴りっぱなしでした。毎日その対応に追われて、本来の仕事が全くできないほどでした。有り難い気持ちはあるものの、正直、大変でした」(嬉野市・坂田千夏主任)
翌年の確定申告で控除を受けるためには、前年の間に寄付をしておく必要がある。お歳暮の時期とも重なり、12月には特に寄付が集中するのだ。
電話での申込みが12月だけで450件。7万3000件を超える年間の件数と比較すればわずかな割合だが、ネットによらない寄付の申込みには、職員の手間は何倍、何十倍かかると言っても過言ではない。1カ月で数百件の申込みが入れば、ほかの仕事ができなくなるのもうなずける。
こうした昨年の経験から、嬉野市は坂田主任のほか、もう1人専任の担当者をつけ、2人体制に替えたという。だが、それにしてもネット以外で申し込みをする納税者の手続きを、いかに簡略化していくかは、これからの大きな課題である。
ところで、ネットを使わないユーザーの問題以上に各自治体が頭を痛めている問題がある。それは、マイナンバー制度によって発生する手間だ。
昨年の制度改正によって、確定申告が不要な給与所得者に限り、寄付先が5団体以内なら確定申告が不要になるという「ワンストップ特例制度」が設けられたことは、前々回触れた。
■マイナンバー制の泣き所
この特例制度によって、寄付を希望する人にとって、「ふるさと納税」はさらに手軽なものになっだのだが、マイナンバー制度が施行されたことにより、ふるさと納税の申請書にマイナンバーを付記することが義務づけられたのだ。
ところが、マイナンバーは電子データでやりとりすることが法令上禁止されているため、ポータルサイトがシステム化することが現状ではできないのである。
するとどうなるかというと、ワンストップ特例制度の申請者は、紙の申請書に免許証とマイナンバー通知書のコピーを同封したものを郵送で各自治体に送るしかないのである。
これにより寄付者に手間が増えてしまうのだが、申請書を受け取る側の自治体の作業は、それとは比較にならないほどの負担を生むのだ。
1通ごとに開封して名前とナンバーを照らし合わせて間違いがないかをチェックする作業は、何万件もの申込みが入ってくる自治体にとっては、気の遠くなるような手間と労力だ。
もし嬉野市に昨年同様の7万件の寄付の申込みが入ったとしたら、そのうち約3万件分で紙の申請書が市役所に届くことが予想されているという。それをいちいち手で開封して確認作業をするというのは、悪夢だ。
「今でさえ少し間を空けると処理が溜まってくるので気が抜けない状態なのに、これが12月になったらどうなることか・・・」(嬉野市・坂田主任)
「1月中には寄付者が住所を置く市区町村に控除のための報告書類を送らなければならず、年末年始に寄付が集中した場合、果たして間に合わせることができるのか、今からとても心配です。それについてはぜひとも政府に制度の改正をしてもらいたい」(同)
■いままさに必要な対策
地方創生が国家戦略の主軸の一つとしていながら、一方ではマイナンバー制度を振りかざして、自治体の足を引っ張っているのである。
地方の活性化が急務と言うなら、一般納税者や自治体の職員に無駄な労力をさせないためにも、早急に制度を改正するべきだ。
それができなければ、「ふるさと納税」は地方創生どころか、自治体を疲弊させ、機能停止に追い込むだけで、せっかく地方に少しずつ広がってきた活気の芽は枯れてしまう。
今さらマイナンバー制度のおかしさを一つずつあげつらう気はないが、せっかく盛り上がっている地方創生に水を差すことがないように、少なくとも政府はこの制度改正に対応を考えるべきだろう。
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