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日銀のETF買いもあり、日本の市場には漠然とした上昇期待がある。だが果たしてそうか(写真:ロイター/アフロ)
マイナス金利継続で金融波乱が起きる懸念 日欧の金融政策が米国に負の影響を与える
http://toyokeizai.net/articles/-/135554
2016年09月12日 近藤 駿介 :金融・経済評論家/コラムニスト 東洋経済
どうやら、「ファンダメンタルズ」(経済の基礎的条件)は大きく変化し始めているのかもしれない。
9月9日の米国株式市場は、利上げ観測の高まりを受け前日比で394ドル安と大幅に3日続落し、約2カ月ぶりの安値を記録した。
■FRBと投資家の「利害」は一致しない
米供給管理協会(ISM)が6日に発表した8月の非製造業部門総合指数は、生産や受注の落ち込みによって前月比4.1ポイント低下の51.4と、2010年2月以来およそ6年半ぶりの低水準に落ち込んだ。
市場予想を大きく下回る低調な結果によって、市場の利上げ観測は急速に萎んだはずだった。だが、利上げ観測を再び呼び起こしたのが、先週末のローゼングレン・ボストン連銀総裁の発言である。
FOMC(米連邦公開市場委員会)での投票権を持つ「ハト派」と目されているローゼングレン総裁による「緩やかなペースでの緩和策解除を続けなければ、この回復局面は長くなるよりも、むしろ短くなる可能性がある」という「タカ派」発言は、市場にFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げが依然として射程圏内にあることを思い出させるに十分な内容だった。
先月のダドリー・ニューヨーク連銀総裁が発した「市場は利上げの可能性を過小評価している」という警告に続く、「ハト派」と目されていたローゼングレン総裁による「タカ派」発言は、FRBが法定準備預金の15倍近く積まれている超過準備預金の存在を警戒し、「Behind the curve(政策が後手に回ること)」に陥らないよう、細心の注意を払っていることを感じさせるものだった。
投資家にとっては喜ばしい「利上げ先送り期待による株高」は、「金利の正常化」と「準備預金の正常化」という「2つの正常化」を目指さなければならないFRBにとって、歓迎すべきものではないということは意識しておく必要がある。
ローゼングレン総裁による「タカ派」発言によって利上げ観測が高まったことでニューヨーク株式市場は大きく下落したが、市場が織り込む9月の利上げは24%(CME=シカゴ・マーカンタイル取引所が算出する予想確率、通称「Fed Watch」)に留まっている。
「Behind the curve(政策が後手に回ること)」に陥ることを警戒しているFRBからすると、依然として「市場は利上げの可能性を過小評価している」といえる状況にあり、この先も利上げ先送り観測によって株価が上昇する局面で、FRB要人から「タカ派的発言」を繰り返される可能性は高い。
そんな中、市場の一部からは週明けの9月12日に行われるブレイナード理事の講演に注目する声が高まって来ている。それは、ブレイナード理事が「ハト派」であると同時に、民主党のヒラリー・クリントン候補に法的限度額の2700ドル(約29万円)を献金している唯一の理事で、「ハト派」の発言をする可能性が高いと思われているからである。
換言すれば、民主党政権に近いブレイナード理事が予想以上に「タカ派」的な発言をすれば、市場は利上げを急速に織り込みに行く可能性を秘めているということである。
「市場は利上げの可能性を過小評価している」と警告を与えて来たFRBにとって、市場が利上げを意識したことは歓迎すべきことだ。しかし、利上げを織り込みに行った市場の反応は、若干FRBの想定とは異なっていたかもしれない。
■日銀とECBの金融政策に、限界と失望感?
前週末の債券市場は、利上げ観測の高まりを受け10年国債利回りは前日比0.06%上昇し、1.675%と2カ月半ぶりの水準となった。しかし、利上げに最も敏感に反応するはずの2年国債の利回りは0.728%と、前日比ほぼ変わらずであった。
インフレが目標の2%に達していない中で徐々に利上げを市場に織り込ませ、金融市場への悪影響を抑えたいFRBにとっては、短期ゾーンの利回りが上昇せずに、長期ゾーンの利回りが上昇するイールドカーブのスティープ化(鋭角化)は想定外だったのかもしれない。
市場の反応が想定通りにならなかった背景として考えられることは、市場に日銀とECB(欧州中央銀行)の金融政策に対する限界と失望感が漂い始めていることだ。
日銀は、今月の金融政策決定会合で金融緩和政策の「総括的検証」を行うことを明らかにした。それに続いて、ECBのドラギ総裁も、市場の期待に反して金融政策の現状維持を決めた8日に開催された理事会後の記者会見で、量的緩和の手法を「再評価する」と語り、「総括的検証」をする方針を示した。
量的緩和の拡大とマイナス金利政策を採る日銀とECBがともに金融政策の副作用に言及するとともに検証に入るということは、市場に現在の金融政策に限界を感じさせる材料でもある。
先週末時点の日本10年国債利回りは−0.02%と、日銀が「総括的検証」を行うことを明らかにしてから「マイナス金利政策は深掘りできる」と繰り返す日銀総裁を嘲笑うかのように上昇基調に転じ、ゼロ%に近付いてきた。
また、ECBが金融政策の現状維持を決めた欧州でも、指標となるドイツ10年国債利回りが先週末に0.023%と、6月23日以来のプラス利回りに転じて来た。
デフレ懸念が根強く残り、マイナス金利政策を採り続ける姿勢を保っている日本と欧州の金利が上昇基調を示していることは、マイナス金利政策の限界を示すものだ。そしてそれは、中央銀行が超過準備預金に付利するマイナス金利と、債券市場の利回りの間に「裁定」が効かないことを露呈するものでもある。
■日欧マイナス金利政策の「負の影響」が米国へ?
マイナス金利政策と債券市場の利回りの間に「裁定」が効かない中で国債利回りをマイナスに維持するためには、債券市場で国債を買い続けるしかない。そうした中で「量的緩和」に限界が見えてくるということは、「マイナス金利政策の限界」が見えて来る、言い換えれば「量の切れ目がマイナス金利の切れ目」であるということだ。
日欧の国債利回りがプラス圏で取引されるようになれば、域内に留まる資金が増えることになり、それは国債消化の約半分を海外投資家に頼る米国の金利押し上げ、イールドカーブのスティープ化をもたらす要因になる。
景気回復、物価上昇という結果を出せずにいる日欧のマイナス金利政策の負の影響が、米国国債市場に及び、世界の金融市場の波乱要因となる可能性には注意が必要だろう。
投資家にとって最も重要なことは「ファンダメンタルズの変化」である。そして、最大の「ファンダメンタルズの変化」は、「金融政策の変更」である。
FRBが「金利の正常化」に向かうと同時に、マイナス金利政策を柱とした金融緩和策の強化を図る日欧の金融政策に限界が見えて来たということは、「ファンダメンタルズ」が大きく変化して来ているということだ。
「金融政策の限界」は「金融政策の変更」ではないが、政策効果が変わるという点において実質「金融政策の変更」である。投資家が認識しておかなければならないことは、FRBが利上げを先送りしても、日欧の金融政策が限界に達すれば、「ファンダメンタルズは大きく変化する」ということだ。
そして「ファンダメンタルズが大きく変化する」局面で重要なことは、これまでの延長線上で物事を考えないことだ。
特に、今回訪れるかもしれない「ファンダメンタルズの変化」は、これまで投資家が経験して来た「金融政策変更によるファンダメンタルズの変化」ではなく、誰も経験したことのない「金融政策の変更を伴わないファンダメンタルズの変化」かもしれないからだ。
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