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コラム:
国債購入の柔軟化目指す日銀レトリック
河野龍太郎BNPパリバ証券 経済調査本部長
[東京 9日] - 5日の黒田東彦日銀総裁講演、8日の中曽宏日銀副総裁講演から見えてきたのは、長期国債ターゲットを柔軟化させるための理由づけだ。金融緩和のコストを強調することで、物理的な限界論とは異なる、金融政策の枠組み変更のためのレトリックが固まってきたように思われる。
想像力を働かせながら講演を読み返すと、以下のような解釈が可能なのではないか。
<レトリックとしては金融仲介機能への配慮>
●「量的質的金融緩和(QQE)」「マイナス金利」はともに効果は大きいが、今後も強力な政策を追求していくと、その副作用として、イールドカーブの大幅なフラットニングなどで金融機関の収益に悪影響が及び、金融仲介機能が損なわれる懸念がある。金融緩和の効果を最大限発揮させるには、こうしたコストにも配慮する必要があり、今後、イールドカーブの極端なフラットニングを避けなければならない。
●その対応策として、具体的には、長期国債購入ターゲットを柔軟化させる必要があり、長期国債の購入量や購入年限を機動的に変化させる。購入量や購入年限を柔軟化させるのは、あくまで金融仲介機能に配慮するためであって、長期国債購入ターゲットが物理的な限界に近づいたからではない。
●それゆえ、大幅な円高など大きな総需要ショックが生じる場合、必要になれば、マイナス金利の深掘りや上場投資信託(ETF)購入の増額だけでなく、長期国債購入量の拡大も可能であり、今後も、量、質、金利の三次元での金融緩和が可能である。
もちろん、執行部の本音は、長期国債購入が物理的な限界に近づき、量的ターゲットから金利ターゲットへ移行せざるを得ないということだ。しかし、それをストレートに説明すると、マネタリスト的な見方に郷愁を覚えるボードメンバーからの賛同が得られないかもしれない。
また、それ以上に厄介な問題は、為替市場を中心にマネタリー・アプローチの有効性を信じる外人投資家が存在するため、量的ターゲットから金利ターゲットに明確に転換すると、期待が剥げ落ち、円高が進むリスクがある。このため、長期国債購入ターゲットの柔軟化は、あくまでレトリックとしては、金融仲介機能の毀損を避けるための配慮でなければならない。
<1ドル=90円割れリスク浮上ならマイナス金利深掘りも>
今のところ、9月20―21日の金融政策決定会合では、長期国債購入ターゲットの柔軟化、具体的には購入額のレンジ化(70―90兆円)が行われ、追加緩和は実施されないと考えている。そもそも経済が完全雇用に入っており、失業率が3.0%まで低下しているのだから、マクロ安定化政策として、追加緩和は不要だ。
仮に、こうした枠組みへの変更に対し、為替市場がテーパリング(緩和縮小)、金融引き締めだと考え、円高が進んだ場合、10月以降、マイナス金利政策の深掘りが行われるかもしれない(長期金利の急騰については、長期国債を柔軟に購入することで対応可能であり、それは事実上の長期金利ターゲットの嚆矢になるだろう)。
ただ、マイナス金利の政治的なハードルはかなり高いと思われる。その一方で、7月末に決定したETFの購入倍増によって、株価の下値はサポートされている。このため、1ドル=100円を割り込んでも、直ちにマイナス金利の深掘りは行われないと考える。マイナス金利政策の深掘りは、1ドル=95円を割り込み、90円割れのリスクが出てきた時ではないか。今後の米国金融政策次第では円安進展の可能性もあり、当面、日銀は様子見が可能だ。
9月は追加緩和はなし、10月も可能性は小さい、というのが筆者の日銀の金融政策に関する見通しである。ただ、黒田総裁は新たな次元の対応に言及している。それは貸出支援基金オペを通じたマイナス金利での資金供給のことではないか。また、購入額のレンジ化として70―90兆円ではなく75―95兆円とすれば、それを金融緩和と呼ぶ可能性もある。
*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-ryutaro-kono-idJPKCN11F10N?sp=true
日銀、中短期金利重視の緩和強化検討へ 具体策も議論=関係筋
[東京 9日 ロイター] - 日銀は9月20─21日に議論する総括検証を踏まえ、金融機関の収益減や生保・年金の運用難など副作用の要因になっている利回り曲線(イールドカーブ)の平たん(フラット)化の修正策を検討する。
弊害が目立つ超長期金利の大幅低下に比べ、景気刺激効果の高い中期金利などの抑制を重視。緩和強化を前提に国債買い入れ手法の工夫や、マイナス金利の深掘りなどが議論の対象になるもようだ。複数の関係筋が明らかにした。
イールドカーブ・フラット化の修正を目指すのは、今年1月のマイナス金利政策導入以降、量的・質的金融緩和(QQE)による国債買い入れとの組み合わせによって、想定以上にフラット化が進行。期間によっては副作用も顕在化し始めたためだ。
黒田東彦総裁は5日の講演で、マイナス金利と国債買い入れの組み合わせがイールドカーブ全体を押し下げたと分析。
貸出金利など企業・家計の資金調達コストという効果を強調する一方、金融機関収益の減少を通じて金利低下効果が減衰する可能性や、年金・保険の運用利回り低下などに伴う「広い意味での金融機能の持続性に対する不安」という副作用に言及し、マイナス金利付きQQEの推進はイールドカーブと金融仲介機能への影響を踏まえて判断していく必要性を強調した。
日銀内では、期間に応じた利回り押し下げの効果と副作用の分析も進んでいるもよう。景気を過熱も引き締めもしない中立金利(均衡実質金利)の水準と比べて押し下げる場合、金融機関の貸し出し期間や需給ギャップへの影響などの観点から、年限1年や3─5年など10年以下の短期・中期金利の引き下げが相対的に効果的で、超長期債の買い入れによる景気刺激効果が限定的との意見に傾きつつある。
桜井真審議委員は2日のロイターとのインタビューで、イールドカーブのフラット化によって「いろいろなコストも出てきた。それも踏まえて今後の政策の組み合わせを考えていきたい」とし、「本来、教科書的なイールドカーブの姿はあるわけであり、それを含めていろいろなことを考えていく」と述べている。
だが、イールドカーブの形状修正をどのように実現するかは難題だ。技術的な対応を含めた国債買い入れの修正や、短期金利のさらなる低下を促すマイナス金利の深掘りなどが検討対象になるもよう。
ただ、現実にこうした手法でイールドカーブが、スティープ化するのか日銀内にも様々な見通しが併存しているもようだ。
また、イールドカーブの形状修正は、国債買い入れのあり方全般に直結する可能性があり、9人の政策委員の間で見解の相違が大きいとみられている。
このため具体的な政策対応は、依然として極めて流動的な状況だ。
一方、首相ブレーンの浜田宏一・内閣官房参与がロイターとのインタビューで提案した外債購入に関しては、中曽宏副総裁が8日、記者団に対して為替安定の外国為替売買は財務省の所管であると指摘。日銀による外債購入の議論は、目的を知らないのでコメントしないと語った。
(竹本能文、伊藤純夫 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/boj-policy-idJPKCN11F12K
コラム:
日経平均株価「3万円」への道
武者陵司武者リサーチ代表
[東京 9日] - 2016年の相場は、ナンバーワンのポジティブ(米国経済)と、ナンバーツーのネガティブ(中国経済)の綱引きによってどうなるかが決まると年初に述べた。私の予想は、ポジティブがネガティブに勝るというものだったが、実際、ここ数カ月の状況はそうした方向になっていると思う。
過剰債務問題を抱える中国経済は体質的には脆弱なままだが、当局のなりふり構わぬ金融緩和と資本コントロールによって、曲がりなりにも危機は封じ込められている。一方、米国経済は、連邦準備理事会(FRB)による9月の追加利上げが視野に入るほど堅調な拡大を続けている。英国民投票での欧州連合(EU)離脱選択に伴う混乱(ブレグジット・ショック)もひとまず鎮静化し、目先はリスクテイクに適した市場環境になっていると言えよう。
実際、主要国市場での長期金利の歴史的低下を背景に、イールド(利回り)を求めて世界中を徘徊している空前の余剰資金は、株式などリスク資産へと回帰し始めている。米国株は過去最高値圏で推移し、ブレグジット・ショック震源地の英国株ですら年初来高値圏にある。
このような状況下、イールド・ハンティングの新たな行き先として注目されるのが日本株だ。世界的なサマー・ラリー(夏場の株高)に出遅れた分、挽回余地は大きい。日経平均株価で、1万8000円から1万9000円への回復も年内に見込めよう。
根拠の1つは、年初来の円高基調に歯止めがかかる可能性が高まっていることだ。そもそも今回の円高局面は、ドル高加速による新興国経済危機シナリオを警戒した米FRBが利上げ休止(一時的なドル安)を選んだためと思われるが、新興国市場が落ち着きを取り戻したことから、そうした緊急避難策をとり続ける必要性も低くなっている。
振り返れば、1995年から2002年までの長期ドル高局面でも、アジア通貨危機に続いてロシア財政危機が起きた1998年にドル安傾向が一時強まったことがあったが、今回のケースに似ているのではないか。昨年8月の人民元切り下げショック後の世界経済混乱が収まりつつある今、再び緩やかなドル高基調に復する可能性は高い。
むろん、ドル円がすぐさま110円台を超えて120円台に戻るとは思わないが、100円を割り込むような極端な円高に進む可能性も低い。年初来の日本株一人負けの背景に、円高があったことを考えれば、円安が進まずとも、円高に歯止めがかかるだけでも、大きな株価サポート要因となろう
<裁定買い残の歴史的低下が示す反発余地>
日本株高を予感させる、もう1つの理由は、歴史的水準に低下した裁定買い残である。周知の通り、裁定取引(先物売り、現物買い)が解消されるときには現物株が売却されるので、売り圧力は裁定買い残が増えれば強まり、減れば弱まることになる。
現在、東証一部時価総額に対する裁定買い残の比率は0.1%。実は0.2%を切ったときは、程なくして必ずと言っていいほど大幅かつ鋭角的な上昇が起こった。日経平均は、アジア通貨危機・ロシア財政危機後のボトム(1998年10月)以降1年以内に43%上昇、リーマンショック後のボトム(2009年3月)以降にも1年以内に61%上昇した。
今回はリーマンショック後よりも大きく裁定買い残が落ち込んでいる。つまり、需給的には売り方が干上がっている状況だ。日本経済のファンダメンタルズがこのところ上向いていることを考えれば、株価反発の需給条件は整っているということである。
さらに、公的バイヤーの存在も大きい。日銀による上場投資信託(ETF)買い入れ倍増、政府が主導する貯蓄から投資への資金誘導(公的年金の株買いなど)は株式需給を一層好転させよう。いったん売り抜けた外国人投資家が再び日本株市場に戻る「呼び水」ともなり得る。
日米の株式バリュエーションを振り返ると、バブル心理が崩壊した後に深刻なデフレ(リスクテイク拒否)心理が定着するまでの関係は概ね「株式予想益回り=10年国債利回り」だった(日本は1998年から2007年、米国は2009年から2016年)。つまりデフレ脱却後の日本株式のフェアバリューは、「配当利回り=10年国債利回り」となる水準と考えられる。そして長期金利が1%まで上昇し1株当たり配当額が変わらないとすれば、現在の配当利回り2%が1%に低下するところが日経平均のフェアバリュー(適正価格)であり、それは現在の2倍の3万円と計算できる。
足元の水準からは遠い彼方にあるように見えるが、アベノミクスが挫折せず、かつ中国経済のハードランディングが回避され続ければ、2020年の東京五輪前後に視野に入る可能性はあると考える。
<構造改革よりも有効なデフレ脱却策>
こうしたなか、政府・日銀には、アベノミクス批判に屈せず、日本経済にとって最大のボトルネックである人々のデフレマインドを転換させることに集中してもらいたい。
日本はバブル崩壊後の株価や不動産価格の異常な低迷で、不必要な重荷を背負ってきた。日本以外、どの国もバブル崩壊後に株価や不動産価格が半減したままということはなかった。今度こそ、政府・日銀が徹底的にリフレ政策を遂行し、この負の流れを一変させなければならない。
またぞろ「日銀のETF買い=市場操作」という批判も高まっているが、当局者は意に介す必要などない。確かに、過去の株価PKO(当局による株価維持操作)は、収益悪化により価値を失った株式の値段を押し上げようという非合理的なものだったが、今回のイニシアティブは、収益拡大により価値を高めている株式を評価できていない市場価格の非合理性を是正しようとするものだ。
これは、正しいオペレーションであり、成功する見込みは大きい。かつて私は1990年代の株価PKOを批判したが、今回は強く支持する。市場機能を取り戻すための公的介入は「悪」ではない。
同じことは、賃金についても言える。政府はより強い決意を持って、賃金上昇に向けて財界に働きかけるべきだ。国際通貨基金(IMF)は5日に公表した調査報告書で、日本に対して3%前後の賃金上昇目標を設定すべきと提案したが、私も同感だ。それは、デフレ宿命論者たちがこぞって口にする「構造改革」よりも、はるかに迅速かつ効果的に日本経済の活性化に役立つはずである。
ちなみに、日本では資産所得を高めようとする政策は「格差拡大」という批判を受けることが多い。だが、米国家計の可処分所得を見ると、労働賃金と資産所得の割合は3対1となっている(対して、日本はほぼすべてが労働賃金)。投資に対する日本人の消極姿勢は、所得の選択肢を狭めるだけでなく、家計の行動が企業資本家に対して影響を及ぼせない、つまり資本主義のチェック・アンド・バランス機能が働きにくいことを意味する。この点を改めることもまたアベノミクスの責務である。
*武者陵司氏は、武者リサーチ代表。1973年横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券に入社。87年まで企業調査アナリストとして、繊維・建設・不動産・自動車・電機エレクトロニクスなどを担当。その後、大和総研アメリカのチーフアナリスト、大和総研の企業調査第二部長などを経て、97年ドイツ証券入社。調査部長兼チーフストラテジスト、副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーを歴任。2009年より現職。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
*本稿は、武者陵司氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-ryoji-musha-idJPKCN11E0RG?sp=true
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