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ヘリコプターマネーとは?
ヘリコプターマネーの手法と導入した場合の影響は
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160908-00010001-manetatsun-bus_all
マネーの達人 9月8日(木)5時12分配信
ヘリコプターで上空からお金をばらまくかのごとく政策、「ヘリコプターマネー」が話題になりました。その「ヘリコプターマネー」について考察してみましょう。
■ヘリコプターマネーとは
現在、日本銀行は、市場に出回る資金の「量」を増やす量的金融緩和策を続けています。しかしながら、その効果が企業や家計に行き渡らず、量的金融緩和の限界が囁かれています。
デフレ脱却に向けた日銀の金融緩和策に手詰まり感が漂う中、米国の経済学者フリードマン氏が1960年代に提唱した「ヘリコプターマネー」が、かねてから金融市場関係者などの間で囁かれてきました。
そんな中で、先の参院選では自民党が圧勝し、アベノミクスを加速させるという安倍首相の発言に、市場関係者の期待が膨らみました。
また、参院選翌日の7月11日には前米連邦準備制度理事会(FRB)議長のベン・バーナンキ氏が来日し、黒田日銀総裁、安倍首相と会談しています。
ベン・バーナンキ氏は、需要が不足しているなら、中央銀行が政府に返済不要の財政資金を無償供与する政策(ヘリコプターマネー)が効果的との考えを示したことで、「ヘリコプター・ベン」の異名を持ちます。
これらを受けて、日本がヘリコプターマネー政策の準備を始めたとの憶測を呼んだ訳です。
■平時には検討に上がらない政策
ヘリコプターマネーには、具体的な定義はありませんが、消費や投資を促すために、政府や中央銀行が企業や家計に資金を供給することを指します。
企業や家計に直接お金を配れば、消費が増えて経済が活性化し円安とインフレが進むはずなので、デフレを克服出来るという訳です。
通常日本銀行は、民間金融機関が保有する国債などの資産買い入れを対価として、市場に資金を供給します。これを買いオペレーションと言います。
ヘリコプターマネーは、そのような対価を取らずに貨幣を発行するため、日本銀行のバランスシートは債務が増え、それに見合う資産は計上されません。
すると、日本銀行や貨幣に対する信認が損なわれてしまうため、平時には検討に上がらない政策と言えます。
実際にヘリコプターから、お金をばら撒くことはできません。
■現実的な方法(1) 日銀による国際の直接引き受け
現実的な方法の1つとしては、政府が発行した国債を日本銀行が直接引き受けて現金化することが考えられます。それは、国の借金である国債を中央銀行が肩代わりするのと同じです。
そのため、国債を発行する政府は、財源を気にせず国民に現金を給付したり、公共投資を拡大したりできるようになります。
一方で、貨幣を大量に供給することに伴い、財政規律が失われ、貨幣の価値が下がり、極端な物価高、つまり悪性のインフレになる恐れがあると言われています。
そして、政府がいくらでも借金できるようになったことを、市場が「財政が破綻した」と受け取めると、国債が暴落して金利が上昇します。
暴落を防ぐために、さらに国債を買って日銀がどんどんお金を発行すれば、ハイパーインフレが起る可能性も皆無ではありません。「目標の2%程度でインフレは止められる」と主張する識者もいますが、インフレ率2%で日銀が引き受けを止めた場合、国債が債務不履行(デフォルト)になる可能性もあります。
このような恐れがあるため、日本を含めた先進国では、中央銀行が国債を直接引き受けることを禁じています。(日本では、財政法でこれを禁じていますが、国会が決議すればできます。)
現在、日銀は市場から国債を買っているので、形の上では日銀の直接引き受けではありません。ただし、日銀が市場で流通する国債の大半を買っているので、実質的には直接引き受けと同じだと言う人もいます。
■現実的な方法(2) 「永久国債」
もう一つ、現実的なヘリコプターマネーの手法を確認しておきましょう。
日本銀行が市場から購入した大量の国債が満期を迎えたら、政府が新たに発行する「永久国債」と交換する方法です。「永久国債」とは、償還期限がなく無利子の国債を言います。
政府にとってみれば、日銀に利息も元本も払わなくていいので、財政負担が減ることになります。永久国債への借金の付け替えも、国債の直接引き受けと同様に、国の借金の丸投げなので、日銀の財務は悪化することが想定されます。
中央銀行である日銀の信認が著しく低下するため、実現に向けたハードルは高いでしょうし、現在のところ、日銀の黒田総裁もヘリコプターマネーの導入に否定的な考えを示しています。
■導入した場合の影響は
もしも、ヘリコプターマネーを導入すれば、どの程度の影響があるのでしょうか。
7月は、日本がヘリコプターマネーに踏み切るとの憶測が広がり、経済対策の規模が当初の10兆円から20兆円を超えたことも併さって、一時1ドル107円台半ばまで円安が進む場面がありました。
参院選の直前には、1ドル100円前後でしたから、僅か数日の間に約7円以上も円安が進行しました。その後、黒田総裁がヘリコプターマネーを明確に比定したことで、市場のヘリコプターマネー期待が後退し、円高が進みました。
7月29日は、日銀の追加緩和が年間約3兆円のETF(上場投資信託)買い増しに終わったこともあり、「ヘリコプターマネー的大規模緩和」期待は後退し、円高のトレンドは続いています。
これで、ヘリコプターマネーが市場与える影響の大きさが計り知れます。
■「参院選直後・日銀会合前」の会談の意味とは
バーナンキ氏と安倍首相・黒田総裁との会談が、参院選直後・日銀会合前という微妙な時期に行われたことは、どういった意図があったのでしょうか。
今回の騒ぎで、市場関係者だけでなく、永田町関係者にも「ヘリコプターマネー」という、デフレ脱却の最終兵器の仕組みが知られることとなりました。敢えて、「ヘリコプターマネー」を想起させて、市場の反応を探ったようにも見えます。
無から有を生む金融緩和マジックによって通貨価値は下落し、為替市場では円安が進むことが確認できましたので、その先にあるインフレに一点の光が見えたなら、充分な実験成果でしょう。
「ヘリコプターマネー」の採否については、国内外の有識者や有力政治家の間で、
・ 制御できないインフレを引き起こす
・ 1回だけなら副作用は抑えられる
・ 1回やると歯止めがきかなくなる
・ もし、ハイパーインフレの兆しがあれば止めればよい
・ 日本経済を臨床試験に使うべきではない
など、意見が錯綜しています。
このように、政策論争が熱を帯びるほど、日銀の異次元緩和が物足りなく感じることになります。これを政策論争が引き起こす弊害と捉えるか、「ヘリコプターマネー」導入への導線とみるか…。
前回会合で日銀が提示した「総括的な検証」をめぐり、金融緩和の縮小観測がささやかれる一方で、ヘリコプターマネー政策のような緩和拡大を期待する声も大きくなっています。
9月の日銀会合で、ヘリコプターマネー政策が採用される可能性は低いと思いますが、実験による成果は確認済みです。
あとは、「インフレ」、「通貨価値の下落」、「金利上昇」に向けて、タイミングを計っているのかもしれません。(執筆者:渡辺 紀夫)
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