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アメリカはTPPをどうするのか?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160908-00010002-wedge-int
Wedge 9月8日(木)12時11分配信
ワシントンポスト紙の8月3日付社説が、オバマ大統領がTPP支持の立場を改めて明らかにしたことを歓迎し、大統領選挙後のレームダックの期間に議会承認が得られるよう期待を表明しています。論旨、次の通り。
大統領選挙戦での議論の品位の低下は明らかであるが、政策面での被害は1つの大きな例外を除き概ね封じ込められている。その例外がTPPである。両党の候補ともにTPPに反対である。
トランプのTPPに対する敵意は、米国とそのパートナー諸国との関係に関する彼の疑惑と軌を一にする。クリントンとティム・ケインは解っているが、彼等はサンダース率いる反貿易派の民主党員を取り込むためにTPPに対する従来の支持を放擲した。とどのつまり、オバマ政権が苦労して交渉し、議会の超党派の多数が昨年その交渉権限を認めたTPPは、いずれが選ばれても支持しない。従って、唯一の望みは選挙後のレームダック期間に議会の表決を行うことであるが、共和党のマコーネル上院院内総務がいうように「そのチャンスは非常に小さい」。
8月2日のシンガポールのリー・シェンロン首相との共同記者会見におけるオバマのTPP支持表明は、2つの意味で好ましいものであった。第一に、過去の貿易協定の職へのインパクトについての懸念、また途上国に労働・環境基準を守らせる必要性に言及して、TPP反対論者とは対照的に、意見を異にする人々を、敬意をもって語ったことである。第二に、オバマは問題の争点については譲らなかった。彼はTPPの下では市場開放のほとんどは米国ではなく他国が行うことを指摘し、反対論者には「労働権や環境権のような問題への対応においてTPPよりも現行の貿易ルールの方がどうして好ましいか」を説明するよう求めた。
経済的重要性にとどまらず、TPPは枢要なアジア・太平洋地域における米国の戦略的関与の柱となり、中国の影響力に対するチェックとなるものである。これらの重要性を説明するのは、リー・シェンロンの役回りとなった。彼は他国の指導者、特に安倍首相がとった政治的リスクに言及し、TPPの拒絶は「今後長期にわたり」米国の海外における評価に深刻な害をなすことになろうと警告した。
議会がこの記者会見に耳を傾けることを希望する。オバマは「選挙が終わり、埃がおさまれば、協定の背後にある事実により注意が払われるであろう、それは政治のシンボルや政争の具ではない」と述べたが、オバマが正しいことを希望する。
出典:‘Obama rightfully stands firm on the Pacific trade deal’(Washington Post, August 3, 2016)
こういう社説は歓迎できます。オバマ政権が議会承認を得るため、僅かなチャンスを追求することが望まれます。「TPPは修正を要する部分があり、このままでは承認は困難」というライアン下院議長の発言が伝えられており、状況は良くありませんが、トランプが自滅でもして、その魔力から共和党議員が解き放たれるようなことがあれば、チャンスは少しは大きくなるのではないでしょうか。
この社説は、8月2日のオバマとリー・シェンロン首相の共同記者会見を受けて書かれたものです。この記者会見は一種異色のものでした。冒頭、同首相はTPPが大きな経済的利益をもたらすのみならず、TPPは米国のアジアに対するコミットメントの証であり、戦略的観点から枢要であるとして、その早期の批准を要請しました。
しかし、それでは言い足りなかったと見えて、会見の途中で同首相は更に発言を求め、TPPが真剣かつ厳しい交渉の結果作成されたこと、いずれの参加国にも利益をもたらすことを説き、「アジアへの関与の観点でTPPには米国の評価がかかっている。TPPは米国が進むべき大きな方向を示している」と述べました。米国をアジアに関与させ続けることを重大な国策とするシンガポールとしては、オバマ政権の間に是非議会承認に漕ぎ付けて欲しいということでしょう。
以上の過程で、リー・シェンロンは次の趣旨(後段は些か無茶な議論ではありますが)を述べています。
「米国のパートナーの諸国も政治的リスクを犯して交渉に参加した。しかし、待てど暮らせど花嫁が来ない(TPPが日の目を見ない)となれば、非常に傷つく人が出て来るであろう。例えば、安倍総理は、結局不参加を決定した前任者達と異なり、貫徹し、コミットすることを決断した。もし米国が批准しないとなれば、安倍総理を傷付ける一方、日本との安全保障の関係を傷付ける。日本は米国の核の傘に頼っている。もし米国が貿易について一貫しないのなら、緊急事態において誰を頼りにすればいいのかと問うこととなろう」
岡崎研究所
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