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「130万円の壁」10月に制度変更、パート主婦にどう影響するか
http://diamond.jp/articles/-/101236
2016年9月8日 早川幸子 [フリーライター] ダイヤモンド・オンライン
10月から、パート主婦や派遣社員などの短時間労働者に対する社会保険の適用が拡大され、「130万円の壁」が見直されることになった。
これまで、短時間労働者が勤務先の健康保険や厚生年金保険に加入するかどうかは、「1日または1週間の労働時間、1ヵ月の労働日数が正社員の4分の3以上(おおむね1週間の労働時間30時間以上)」「年収130万円以上」などが判断基準とされていた。
この労働時間や年収などの基準が引き下げられるため、10月以降はこれまでよりも約25万人の短時間労働者が、社会保険に加入するようになると試算されている。
国は、なぜ短時間労働者の適用拡大に踏み切ったのか。また、この制度変更によって、個人にはどのような影響が出るのか。気になることはたくさんあるが、今回はまず、これまで「パート主婦の130万円の壁」と呼ばれていたものが、どのように変わるのかを見ていこう。
■適用拡大の対象になるのは
従業員501人以上の企業
パート主婦や非正規雇用の人で、勤務先の健康保険や厚生年金保険に加入するのは、これまで同様に、「1週間の労働時間と1ヵ月の労働日数が、正社員の4分の3以上ある」という条件は変わらない。ただし、これより労働時間が短くても、次の1〜5の要件を満たすと、新たに健康保険と厚生年金保険に加入することになる。
◆社会保険適用拡大の5要件
1.1週の所定労働時間が20時間以上
2.雇用期間が継続して1年以上見込まれる
3.月額賃金が8万8000円以上(年収106万円以上)
4.学生でない
5.従業員数501人以上の企業に勤めている
この5つの要件をすべて満たす人は、労働時間が正社員の4分の3未満でも、健康保険と厚生年金に加入が義務付けられた。
この制度改正によって、サラリーマンの夫に扶養されている妻で、従業員数501人以上の企業で働いているパート主婦は、「130万円の壁」が「106万円の壁」に引き下げられることになったのだ。
厚生労働省の試算によると、月収8万8000円(年収106万円)の人の健康保険料は月額8万8000円。これを労使で折半するので、本人負担は4400円だ(平成28年度協会けんぽ全国平均、保険料率10%)。1年分では5万2800円の負担となる。
40歳以上は、月700円(本人負担分)の介護保険料が上乗せされる(平成28年度協会けんぽ全国平均、保険料率1.58%)。
厚生年金保険料の本人負担は、月額8000円(2016年9月以降。保険料率18.182%)。1年分では9万6000円だ。
このほかに、雇用保険料、所得税・住民税も差し引かれるので、年収106万円の人の手取りは90万円程度になる。
一方、年収106万円未満の人は、健康保険料、厚生年金保険料の負担がない。たとえば、年収105万円の人なら、手取りは103万円程度だ。
2つの社会保険を負担することで、年収が低い人より手取りが少なくなる逆転現象が、従業員501人以上の企業で働くパート主婦は、年収106万円に達した時点で起こるようになる。
■夫が自営業のパート主婦は
社会保険料の負担が軽くなる
こうした手取りの逆転現象を避けるために、「年収106万円未満になるように働き方を調整する」「労働時間を週20時間以内する」「従業員数500人以下の会社に転職する」などで、「106万円の壁」を越えないようにしようとする人もいるようだ。
だが、同じように年収106万円のパート主婦でも、夫が自営業の場合は、今回の適用拡大で負担は軽減される。
というもの、保険料負担なしで健康保険や国民年金に加入できるのは、サラリーマンの配偶者の特権だからだ。同じパート主婦でも、夫が自営業の場合は、これまでは、国民年金保険料を月額1万6260円(2016年度)のほか、所得に応じた国民健康保険料も自分で支払ってきたからだ。
国民健康保険の保険料は、自治体ごとに計算方法は異なるが、世帯の収入に応じて決まる「所得割」をベースに、家族の人数によって決まる「均等割」、資産に一定料率をかける「資産割」、世帯ごとに一定金額を徴収する「平均割」を組み合わせて計算される。
「所得割」のもととなる収入は、原則的にその世帯の人の収入すべてが対象となるので、妻のパート収入も保険料計算に反映され、その分、世帯全体の保険料は高くなる。保険料は、世帯主にまとめて請求されるので、表面上は夫が支払っているように見えるが、実質的にはパート主婦の妻にも保険料はかけられているのだ。
また、保険料計算の組み合わせに使われることの多い「均等割」は、家族の人数によって、ひとりあたり年間3万円などと決まっており、これは専業主婦で収入がない妻、子どもの分も加算されている。
そのため、夫が自営業の家庭では、今回の適用拡大で妻の負担が軽くなる可能性がある。
健康保険料は自治体によって異なるが、国民健康保険よりも、労使折半で半分だけ支払えばいい勤務先の健康保険のほうが、保険料は安くなるのが一般的だからだ。また、年金保険料は月額1万6260円から半額の8000円でよくなる。
同様に、これまで労働時間や年収要件によって、社会保険に加入したくても加入できなかった非正規雇用の人の受け皿も広がり、セーフティネットの網の目は、ほんの少しだけだが小さくなりそうだ。
■実はメリットの大きい
社会保険の適用拡大
短時間労働者の適用拡大をすると、企業の負担が増えるので、負担増にばかり話題が集中しがちだ。だが、払った分給付も増えるので、従業員にとってはメリットは大きい見直しだ。
まず、健康保険では、会社員の健康保険に備わっている「傷病手当金」「出産手当金」が利用できるようになる。
傷病手当金は、病気やケガをして仕事を休んで、給料をもらえなかったり、減額されたりした場合の所得保障。1日あたりの給付額は日給(標準報酬日額)の3分の2で、最長1年6ヵ月の間に実際に休業した日数分が保障される。
出産手当金は、妊娠・出産で仕事を休んで給料をもらえなかったり、減額されたりした場合にもらえるお金で、給付額は傷病手当金と同じ日給の3分の2。産前産後の合計98日間が給付される。
さらに、勤務先に会社独自の保障を上乗せする付加給付があれば、通常よりも有利な給付を受けられる。保険料の負担はあっても、会社員の健康保険に加入できることは、病気やケガの備えをするうえで、民間保険に入るよりずっと頼りになる。
厚生年金保険に加入すると、勤続年数と給料に応じた「老齢厚生年金」を受給できるようになるので、老後の年金が増額できる。それだけではなく、病気やケガで障害が残った場合は、「障害基礎年金」に加えて「障害厚生年金」が上乗せされるので、万一のときに、より多くの給付を受けられるのだ。
社会保険の適用拡大は、保険料の負担をする以上にメリットが大きい。今回、適用拡大の対象になる人は、働き方を調整したりせずに、社会保険にきちんと加入して健康保険の給付や老後の年金の受給額を増やすことをお勧めしたい。
今回の短時間労働者への社会保険の適用基準の見直しは、実に23年6ヵ月ぶりのことで、ようやくその一歩を踏み出すことができた。だが、決して十分な措置とはいえず、本来はまだまだ社会保険を適用すべき人がいる。
週20〜30時間で働く短時間労働者は約400万人いるといわれており、そのなかで適用の対象となったのはわずか25万人だからだ。
それ以外の人は、老後に十分な年金を受け取れない可能性もあり、「下流老人」予備軍となる可能性がある。
次回は、これまでの短時間労働者への社会保険の適用の歴史をたどり、めざすべき社会保険のあり方について考えてみたい。
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