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日本銀行(撮影=編集部)
日銀の「際限なき」金融緩和、金融機関の経営と日本経済を圧迫…「死活問題」に
http://biz-journal.jp/2016/09/post_16581.html
2016.09.08 文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授 Business Journal
9月20、21日に日本銀行の金融政策決定会合が開かれる。注目を集めているのが、物価や経済の情勢、そしてこれまでの金融政策の効果に対する“総括的検証”だ。検証という言葉を素直に解釈すると、国債の大量買い入れ、マイナス金利政策など日銀の積極的な緩和策の効果を冷静に判断することになるはずだが、黒田東彦日銀総裁はこれまでと変わらず、「さらなる金融緩和に限界はない」との強弁を維持している。
そうした黒田総裁のスタンスが大きく変化しない限り、9月の日銀決定会合では追加金融緩和措置が打ち出される可能性が高いと見るべきだろう。一段の金融緩和が実施されると、株式や為替などの金融市場に相応のインパクトを与えることになる。初動動作としては、株価はしっかりした展開になり、為替市場では日米金利差の拡大によって円が売られ、ドルが買われやすくなるだろう。その場合には、年初来の円高傾向に一旦、一服感が出ると見られる。
■日銀の金融機関への配慮
注目を集める日銀の総括的検証について、経済専門家やストラテジストらはさまざまな見方を持っている。そうした専門家のなかで共有されるひとつの手法は、日銀が国債買い入れ額をレンジで示す可能性だ。今まで日銀は、「長期国債について、保有残高が年間約80兆円に相当するペースで増加するよう買い入れを行う」としてきた。具体的な数字を明言してきたのである。それを、『70〜90兆円』というように一定のレンジで示し、柔軟で機動的な国債買い入れを行うことができるようにするのである。
1月29日の会合におけるマイナス金利導入以降、投資家は利回りの確保に躍起になり、短期から超長期まで国債の流通利回りは大きく低下した。その結果、期間ごとの利回りを結んだイールドカーブ(利回り曲線)の平たん化が進んだ。
また、多くの国債の利回りがマイナスになったこともあり、銀行や生命保険会社は、国債に投資しても十分な金利収入を確保できなくなっている。それらの業界からは日銀の政策に対する批判は強い。金融庁も、そうした状況を憂慮する姿勢を示している。
この状況を放置することは、日銀の信認にかかわる問題になりかねない。よって、日銀が市場動向を見つつ、市場に配慮した国債買い入れを重視することは相応の意味がある。政策により国債の利回りをプラス圏に押し上げれば、金融機関は国債への投資で収益を稼ぎ出すことができるようになる。金融機関、特に中小の金融機関にとっては大きな福音だ。投資家の間で、「日本銀行は金融機関のために、期限の長い国債の流通利回りを正常化しようとしている」との憶測にもつながる。
■マイナス金利深掘りの可能性
マイナス金利の深掘りに関しては、エコノミストらの間でも意見が分かれている。多くの市場関係者の本音は、「できることなら、マイナス金利の引き下げはやめてほしい」ということだろう。マイナス金利の深掘りが進むと、金融機関、年金基金などはさらなる運用難に直面する。それは彼らにとって、死活問題にも当たる重要なポイントだ。
一方、日銀の黒田総裁は7月の決定会合以降も一貫して、「マイナス金利深掘りの余地が十分ある」「ほかにも金融政策にできることがいくらでもある」との考えを強弁してきた。そうした一辺倒の態度に対して、最近では専門家の間で「市場との適切なコミュニケーションができない」との批判の声が高まっている。
ただ、黒田総裁の基本的なスタンスが短期間に変化することは考えにくい。恐らく、9月の総括的検証の内容は、「マイナス金利政策には物価上昇に相応の効果がある。それでも物価が上昇しないのは、原油価格の下落など海外要因の影響が大きい。さらに金融緩和を進め、デフレ脱却を目指す」との内容になり、決定会合ではなんらかの金融緩和措置が発表される可能性が高い。
マイナス金利の深掘りが実施される場合には、金融機関からかなり厳しい批判が出るはずだ。日銀は、その批判を覚悟しなければならない。その意味では、さらなる金融緩和が進むことは、日銀が金融政策正常化への出口を一段と困難にすると考えるべきだ。
■際限なき金融緩和のリスク
日銀は、なんとしてでも金融緩和の効果を加速したいと考えているはずだ。特に、金融政策を通して間接的に円安圧力を高めたいとの考えは根強いはずだ。アベノミクスは金融政策を過度に重視し、強力な金融緩和を通して円安圧力を高め、企業業績のかさ上げと株価上昇、景気への期待を演出した。
しかし、冷静に世界経済を判断すると、基本的には円高が進みやすくなっている。米国政府の本音は、ドル高よりも緩やかなドル安を欲しているはずだ。ドル高が米国の大手企業の業績を圧迫し、景気の足かせになってきたからだ。為替レートに影響を与えやすい実質金利(名目金利−物価上昇率)を見ると、デフレ圧力が残る日本の実質金利は米国よりも高い。金融緩和にもかかわらず需要が高まっていないことは確かだ。そして、日本の経常収支の黒字も増えている。需給面からも円は買われやすい。
中国の景気減速、欧州の政治リスク、テロなどの地政学リスクを考えると、投資家はリスクを取りづらい。それはリスクテイクの一環として進んだ円キャリートレードの巻き戻しにつながり、円高圧力を高めるだろう。
円の為替レートは、日本の事情で決まるのではない。それは、米国を中心とする世界経済の潮流に左右される。そのマグニチュードを日銀の金融政策でコントロールすることには無理がある。本来であれば、日銀は金融政策の限界を認め、政策を正常化し、市場とのコミュニケーションを重視すべきだ。それが長期的な中央銀行の信認と市場の安定につながる。
ひとつ確かな点は、マイナス金利などの過度な金融緩和には大きなリスクがあることだ。すでに、金融庁からもマイナス金利が大手行の収益を圧迫させているとの見方が示された。さらなる金融緩和が金融機関の経営を圧迫し、経済にもマイナスの影響を及ぼす可能性があることは冷静に考えるべきだ。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)
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