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ファミリーマートの店舗(撮影=編集部)
セブンに危険な異常事態、急失速でファミマが逆転間近…セブン、主力商品を一斉大幅値上げ
http://biz-journal.jp/2016/09/post_16585.html
2016.09.08 文=編集部 Business Journal
9月1日、ユニー・ファミリーマートホールディングスが誕生した。ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングス(GHD)が経営統合して、新会社に生まれ変わった。
複数あるコンビニエンスストアのブランドは「ファミリーマート」に一本化する。9月1日に東阪名の「サークルK」と「サンクス」の3店舗がファミマの看板を掲げた。ブランドの統一は2019年2月末までに終わる。ポイントカードもファミマが採用しているTポイントに一本化する方針だ。
「新会社は東京、大阪、愛知など15都府県のコンビニの店舗数が1位になる。規模の拡大が商品やサービスの質に直接つながる」
持ち株会社の社長に就任した上田準二氏(ファミマ前会長)は、こう強調した。
■稼ぐ力の差は縮まっている
日販(1日の売上高)の差が大きく取り上げられることも多いが、16年3〜5月期の全店の平均日販はセブン-イレブンが64万5000円。前年同期より3000円減った。注目したいのは、新規に出店した店舗の日販である。52万7000円で同1万8000円の大幅減になった。
これに対してファミマの平均日販は51万4000円。前年同期より7000円増えた。新規出店した店の日販は50万8000円で2000円増加し、セブンとファミマの差は1万9000円である。全店平均日販の差(13万1000円)に比べて、かなり縮小しているのだ。
店舗数で3位に転落したローソンの全店の平均日販は52万8000円。前年同期より4000円減った。新規出店した店は50万5000円で同7000円のマイナス。新規出店の平均日販では、ファミマがローソンを上回り、セブンとの差も大きく縮まったことがわかる。新規出店の稼ぐ力で、ファミマはセブンを追い上げていると数字が物語っているのだ。
■セブンとローソンは平均日販が前年割れ。明らかに一強に陰り
3〜5月には、セブンもローソンも全店の平均日販が前年同期を下回った。もうひとつの稼ぐ力のバロメーターである既存店売上高をみてみよう。
セブンの既存店売上高は、1.7%増とプラス成長は維持したが前年同期の3.5%増から1.8ポイントも低下した。客数の伸びはゼロである。独走状態だったセブンの成長が明らかに鈍化してきた。
ローソンの既存店売上高は1.0%のマイナス。前年同期は0.4%増だったが前年実績割れとなった。客数も0.8%減少した。ファミマも客数は1.6%減ったが、既存店売上高は1.1%増だった。
■ユニーGHDは統合を控え事業の整理を断行
ユニーGHDは8月1日、16年3〜5月期の連結決算を発表した。ファミマとの統合に伴い8月29日に上場廃止になったため、ユニーGHDとしての決算発表はこれが最後となった。
売上高にあたる営業収益は、前年同期比で微増の2509億円。コスト削減に取り組み営業利益は88億円とほぼ倍増。スーパーマーケットなど総合小売部門の営業利益は3.6倍の50億円、コンビニ部門の営業利益も25%増の26億円となった。
しかし、最終損益は114億円の赤字(前年同期は26億円の赤字)だった。ファミマとの経営統合で、使わなくなるコンビニの店舗システムの廃棄や収益性の低い店舗の閉鎖などの減損損失を171億円計上したためだ。
ユニーGHDはファミマとの経営統合に向け、事業の整理を進めている。すでにホームセンター事業から撤退したほか、総合スーパーの内部で展開する書店事業も縮小を決めた。総合スーパーのアピタ、ピアゴは全店舗(216店)の1割にあたる25店を閉鎖。コンビニのサークルKとサンクスは全6251店のうち1000店舗を閉める。
子会社でジャスダック上場の婦人衣料専門店チェーン、パレモの売却交渉を投資ファンドのフェニックス・キャピタルと行っている。パレモはユニーGHDが61.6%の株式を保有している。主にユニーGHD関連の店舗に出店し、16年2月期の売上高は273億円、最終損益は3億円の赤字で3期連続の赤字を計上した。不採算事業の整理の一環としてパレモを会社ごと売る。
ユニーGHDとして最後の決算になる16年3〜8月期(6カ月)の営業収益は微減の5095億円、営業利益は35%増の139億円を見込んでいる。店舗閉鎖関連損失や収益性の低下した店舗の減損損失、棚卸資産評価損を合計で720億円計上する。
■ファミマは経営統合を機に加盟店との契約を全面的に見直す
ファミマは、ユニーGHDとの経営統合に合わせて、コンビニのフランチャイズ(FC)加盟店との契約を全面的に見直した。
全国1万1000店のすべての加盟店と9月1日付で新しい契約を結んだ。ユニーGHD傘下のサークルKサンクスについても、ファミマへの看板の掛け換えに合わせて契約を見直す。
新しい契約では、水道光熱費について、本部が年360万円までの9割を負担する。弁当などの廃棄に伴う損失も月10〜30万円未満では10%、30〜50万円未満では50%、50万円以上では15%を本部が負担する。
支援策を拡充する原資を確保するため、加盟店から徴収するロイヤリティー(経営指導料)は引き上げる。加盟店が本部に支払うロイヤリティーは1割程度増える。
経営統合によって店舗数は全国で約1万8000店となり、セブンと肩を並べる。契約の見直しで加盟店の運営を手厚く支援することによって、加盟店が弁当などの発注を増やすことを期待、日販は最低1万円の上積みになると見ている。加盟店の売り上げを底上げすることで業界最大手のセブンを追い上げる体制を整える。
■夜間の売り上げをどうやって増やすかが課題
セブンは、ファミマやローソンなど競合チェーンと比べて夜間の売り上げが大きい。水道光熱費や廃棄損失の本部負担が手厚いセブンの店舗は、夜間も弁当などを十分にそろえ、販売機会を逃さないようにしているからだ。
ファミマは統合を機に、セブンに近いFC契約にすることによってオーナーのやる気を引き出し、夜間の品ぞろえの充実につなげる。
サークルKサンクスの全店の日販は42.5万円。統合前に不採算店を1000店舗整理し、日販をファミマの水準(51.4万円)にまで引き上げる。
首位のセブン、2位に浮上する新生ファミマ、3位に転落するローソンの顧客争奪戦は熾烈を極めることになる。
■ローソンは値下げ、セブンは値上げ
消費者の節約志向が鮮明になり、デフレ脱却の道筋が見えなくなってきた。それどころか、小売業界では一段とデフレ色が強まったといえる。
長らく定価販売のビジネスモデルで成長してきたコンビニだが、デフレ時代に対応するためローソンは先陣を切って値下げを決断した。6月末に地域別価格を導入、飲料や調味料、洗剤など90品目を対象に、全店舗の75%に当たる9000店舗で地域ごとに異なる価格を設定した。
コンビニは店舗ごとにオーナーがいるので価格に差をつけることは困難とされ、全国どこの店でも同じ値段が当たり前だった。ローソンはこの原則を崩したことになる。
「コンビニは食品スーパーより高い」というのが消費者の一般的な受け止め方だ。客足を取り戻すための試みが、ローソンの地域別価格の導入なのである。
王者セブンはどう出るのか。14年5月末までに弁当やおにぎり、総菜など主力の中食の600品すべてを刷新した。実質値上げした商品も多い。消費増税で値上げをやりやすかった時期だったことも、セブンにプラスに働いた。
今回、セブンはプライベートブランド(PB=自主企画)の冷凍食品のハンバーグなど60品目を刷新する。中心価格は従来より100円高い200〜300円に引き上げる。中心価格帯100〜200円の商品を100円値上げするということは、50%増から最大2倍になるということを意味する。顧客はこの大幅値上げを受け入れるのか、またはほかのコンビニに乗り換えるのかが焦点となる。
セブンは値上げ、ローソンは値下げと反対の方向に走り出した。新生ファミマはどのような価格戦略を取るのであろうか。
(文=編集部)
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