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米国の利上げはいつか。FRBイエレン議長は雇用情勢的には十分と認識しているようだ Photo:Federal Reserve
FRBの利上げを「12月」と予想する3つの根拠
http://diamond.jp/articles/-/101025
2016年9月7日 宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト] ダイヤモンド・オンライン
現在、金融市場において最も注目されているトピックは、米国の中央銀行:連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board:FRB)の利上げである。それは、為替・株式をはじめ、金融市場、そして世界経済に対する影響が極めて大きいからだ。筆者はFRBの利上げは12月と予想している。それを詳しく解説したい。また、出席したFRBの会議で出た内容や、FRBの友人たちからの情報も織り込んでいる。
世界各国には中央銀行がある。一般の方には分かりにくいと思うが、実は中央銀行の目標はそれぞれ違う。一般的な経済学・金融論の教科書には、中央銀行の目的は「物価の安定」と書いてあるはずだ(ちなみに経済成長[景気]は政府の目標[責任]だ)。しかし、物価の安定のみを目標としている中央銀行は、日米欧においては、欧州中央銀行(European Central Bank : ECB)だけだ。また先進国の中央銀行では、個人的には疑問であるが、経済の基礎的な条件がどうであれ、物価上昇率の目標は“2%”で、統一して決められている。
■FRBは他国の中央銀行と違い
「雇用」を重視する
日本銀行は「物価の安定」に加え、「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう」(日銀法第4条)となっている。政府の経済政策に配慮しななければないが、現在のように、主導的に景気対策をするというのは本来の目標ではない。米国のFRBはさらに特別で「物価の安定」と「雇用の最大化(完全雇用)」と、雇用の目標も“同格”で持っている。これは各国の中央銀行で極めて珍しい。つまり、FRBの行動を予想するには「物価と雇用」がキーとなる。ここで、経済成長率(GDP)をいう向きもあり、確かに物価と雇用に関連が深いものの、それ自体が目標ではない。ということは、GDPは参考にしても、重視する必要はない。
組織を見る際時には資本構成も重要だ。ECBは、参加している欧州各国の中央銀行だけが出資している。その各国中央銀行、例えば、ドイツの中央銀行(ブンデスバンク)やフランスの中央銀行(フランス銀行)は100%政府からの出資である。日本銀行は55%が政府からの出資で、45%は民間からの出資である。また出資証券(株券とは言わない)はJASDAQ(ジャスダック)市場の上場銘柄として買うことができる(ただし配当に制限があり、議決権はないなどの制限もある)。FRBの場合は政府からの出資は全く入っておらず、大手銀行を中心とした銀行団が出資している。
資本構成は多かれ少なかれ、組織の行動を規定すると考えられる。欧州や日本ではマイナス金利政策で金融機関が瀕死の状況になっているが、米国の場合は、金融政策の「正常化」が進行することによって、銀行経営も改善する。実は「正常化」とは、経済ではなく、銀行などの金融システムが正常化することなのである。
FRBにおける雇用の重視は人事にも表れている。世界の金融政策のヘッドであるFRBの議長のジャネット・イエレンは、労働経済学が専門の経済学博士である。副議長のスタンレー・フィッシャーは金融政策が専門の経済学博士で、前職はイスラエル中央銀行の総裁であった。しかも、彼の博士号を取得した研究のベースとなる考え方は「金融政策が雇用拡大につながる」というものであった(ちなみに、現在の日本銀行の政策委員会[役員]には経済学博士はいない)。
■米雇用状況は「完全雇用」
利上げは時期の問題
米国の状況を検討すると、経済成長率も高いため、物価上昇率は先進国にしては極めて高く、7月のコア物価上昇率は1.6%もある。10〜12月も上昇することが予想されている。経験からいって、物価よりも雇用の方が金融政策に与える影響は大きい。8月の失業率は4.9%ということで、イエレン議長もフィッシャー副議長も「完全雇用」としている。
為替など市場分析でよく使う、景気動向を敏感に映す非農業部門雇用者数は8月15.1万であった。7月改定値27.5万人、8月改訂値27.1万人となっている。3ヵ月平均では20万人を超えている。一般的には雇用回復の目安は20万人を上回ることであったが、イエレン議長はすでに完全雇用であり(完全であるからにはもう増えず)、すでに10万人で十分、とコメントしている。つまり、金利の引き上げは時期の問題と認識できる。また、雇用が政治に与える影響は極めて大きい。
■実施時期のカギを握る
「大統領選」と「記者会見」
経済政策は、経済指標などの数字だけで単純に決まるわけではなく、総合的な判断がなされる。今回その時期を決めるのに重要な要因が「米大統領選挙」だ。その前に利上げを行うことは選挙に悪影響があるため、筆者は行わないと考える。選挙の直前3ヵ月で株価が上がっていれば、与党候補が当選する確率は8割といわれる。1964年に現在の体制になってから10回の大統領選挙があったが、その中で直前3ヵ月以内に利上げしたのは2004年の1回しかない。2004年はかなりの好景気で、利上げが毎回継続的に行われていたため、逆に継続することが自然であった。
米大統領選挙は11月8日に実施される。日銀の金融政策決定会合に当たるFRBの「連邦公開市場委員会(Federal Open Market Committee:FOMC」は年8回開催され、近い日程では、9月20〜21日、10月なし、11月1〜2日、12月13〜14日、2017年1月31日〜2月1日に開催される。そうであれば、利上げは11月9日以降で最初の12月13〜14日か、次の2017年1月31日〜2月1日となるのではないか。
FOMCは3月、6月、9月、12月の回には議長の記者会見があり、大きな政策変更は声明発表だけでなく、記者会見で詳しく解説することになっている。この点から、来年1月に延ばすよりは12月に行う可能性が高い。
このように解析を行い、筆者は、「利上げは12月」と考えている。
【著者紹介】
しゅくわ・じゅんいち
博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
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