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財務省庁舎(出所:Wikipedia)
日本と投機家たちの戦い 為替市場への積極的な介入を
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47783
2016.9.7 浜田 宏一 JBpress
なかなかデフレから日本経済が脱却できない状況で、世間では、アベノミクスの成否を問う声が聞かれる。しかし、いままでアベノミクスは経済論理通り順調に運航してきており、安倍政権の前と現状を比べて前に戻りたい人がどれだけいるのだろうか。
今、日本経済が胸突き八丁に見えるのは、つまり、アベノミクスに障害となっているのは、もっぱら為替市場における継続的な円高と、それに影響された日本の株式市場の低迷であるからである。
アベノミクスが開始されて以来、雇用、企業収益に対する貢献は著しい。失業率はほとんど3%近くに減少し、150万人の新雇用が創出された。企業収益は歴史的に見てもまれな盛況にあり、国と地方の歳入も21兆円増加した。
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しかし、私が恐れているのは、今のように円高の投機が続いているところでは、大型と言われる第2次補正予算案の効果も限定される心配があるということである。過去12カ月の間に円は他通貨に対して24%も高くなっており、日本経済に対して大きな向かい風となっている。
つまり円高が、日本経済のアキレス腱となっている。日本政府は9月に強力な財政刺激を計画しており、これが(1回きりではあるが)ヘリコプターマネーに似た政策と解釈される向きもある。
しかし、継続的な円高が続く中では、財政拡張政策も掛け声だおれとなる心配も皆無ではない。私が恐れているのは、今のように円高の投機が続いているところでは、大型と言われる第2次補正予算案の効果も限定されてしまう恐れがあることだ。
8月18日に、金融庁、財務省、日銀の三者協議が行われ、浅川財務官は「投機のしるしが見られれば、断乎として必要な対応を行う」と記者会見した。しかし、市場には1、2円ほど円安への傾向を生んだが、口先だけでの効果は限定的なのも当然である。
マイナス金利後の市場の動揺の際、そしてBrexitの際という、相場の乱高下(6月26日には7円も動いている)への介入の機会を二度見送っている財務省は、張り子の虎、イソップ物語で言えばオオカミを叫ぶ少年のように思われているといっては言い過ぎだろうか。
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今、円が1ドル100円のマークを超えつつある瞬間は、三度目の介入のチャンスとも思えるが、いつ、どのレートで介入するかは財務官が諸般の事情を勘案してその判断と責任で具体的に決定すべきことである。
言うまでもなく、少なくとも国内市場ではマイナス金利も働いており、ファンダメンタルズは円安になってよいのに、投機等がそれを妨げているとしか思えない。
通貨当局が行うべきなのは、一方的に円高にかけるインセンティブを崩すための介入である。市場参加者は為替の乱高下によって資源配分上迷惑を受けるので、これをならすのも通貨当局の役目である。
アメリカ政府がこれに強く反対することは確かである。めったに会見できない私にも、FRBの高官や財務省の元国際金融担当者は、為替介入でなく金融政策で為替に影響を与えよという変動為替制の原理論を説いてきた。経済学者の中には、「介入」という言葉を口にしたらすかさず、それは公の場では口に出せない言葉だと語気を荒らげてきた。
しかしヘッジファンドや投機家は、金融政策による為替誘導を困難にしている。円高に賭ける投機家には、思惑が当たれば大儲け、当たらなくとも元々という一方的な投機の妙味が与えられている。逆に、日本は介入しないと皆が予想している場面で意表をついて介入すれば、一方的な投機ポジションをとっている者を有効に懲らしめることができる。
外人投資家は、このままではまた1ドル80円台、70円台が戻ってくると恫喝してくる。現実的な脅しとは思えないにせよ、市場心理が嵩じると、 そのような事態を生じさせないとは断言できない。そうなるとアベノミクスも挫折である。
もちろん、日本が円高に対処するには、介入でなくても、日本銀行が外債を買ってもいいが、外国はこれにも反対であろう。
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日本が為替操作国だというレッテルが張られて、TPPが実現しないというのがアメリカの殺し文句ある。円高が嵩じると今までこれほどうまくいてきたアベノミクスが失敗する恐れのある時に、外国の財務省のいうことばかりに従ってよいのだろうか?
2つの可能性がある。
シナリオ1:じっくり我慢する。アメリカは喜ぶが、TPPが批准されるとは限らない。このままではアベノミクスは挫折の可能性は皆無ではない。このシナリオの唯一の希望は、アメリカ景気が勢いづいてFRBが利上げしてQEの出口から出れば、円高が反転しうる。財務省の家康型の政策が成功することになる。
シナリオ2:介入する、ないし日本銀行が外債を買う。アベノミクスの第1の矢は生き返る。TPPは霧散してしまうかもしれない。しかし日本経済には障害がなくなる。そもそも今の政治情勢で介入しなくてもTPPにどれくらい可能性があるのかも微妙な判断ではあるが、ある国際学会で、ある中央銀行の元高官は、「介入は予想外に、断固として行わなければならない」と語ってくれた。市場を驚かして、投機筋に負けないようにという意味であろう。「相手国が怒ったら」と尋ねると、「財務省や外務省を通じて怒らないように根回しをしておくのだ」という答えが返ってきた。
ヘッジファンドは勝手なもので、自分で為替市場に投機を仕掛けてアベノミクスを妨害しておいて、もっと強い薬を使えとせびってくる。言ってみればヘッジファンドは今やアベノミクスの失敗にかけているのである。彼らも、儲けるためにはそうするしかないのであろう。
そして、このような投機業者を懲らしめることのできる手段を使えるのは日本の通貨当局だけなのである。
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