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日銀が自分を総括の大笑い 止まらない狂乱緩和の先は奈落
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/189311
2016年9月6日 日刊ゲンダイ 文字お越し
やめたくてもやめられない(写真は黒田日銀総裁)/(C)日刊ゲンダイ
「これで一安心だ」「年内1万9000円もあるぞ」――。5日、3カ月ぶりに平均株価が1万7000円台を回復した株式市場は俄然、勢いづいている。
日本銀行の黒田東彦総裁が「異次元緩和」の継続を明らかにしたことで、一気にイケイケムードが広がっているのだ。
黒田総裁は5日、東京都内で開かれた講演で「マイナス金利の深掘りも、量の拡大もまだ十分に可能だ」と強気の姿勢を見せ、市場に広がっていた金融政策の限界論についても「限界という考えには距離を置いている」と明言。さらに、「金融緩和による副作用があっても、ちゅうちょすべきではない」「20、21日に実施する総括的検証は緩和縮小という方向ではない」と言い放っている。要するに、まだまだ派手に金融緩和をつづけるぞと宣言したのだ。
「日銀は20日、21日に開く“金融政策決定会合”で、3年半つづけてきた金融緩和について自ら“総括的検証”を行う予定です。市場は『緩和縮小もあるのではないか』と、心配していました。副作用が目立ちはじめ、収益が悪化している銀行から批判が出ていたからです。ところが、黒田総裁は、そうした見方を一蹴した。20日、21日の“総括的検証”も『金融緩和の成果は上がっている』という結論になるでしょう。もし、金融緩和が縮小されたら株価の下落は必至だっただけに、緩和見直し懸念が後退したことで、市場には安心感が広がっています」(経済ジャーナリスト・松崎隆司氏)
しかし「異次元の金融緩和」について日銀が自ら検証するなんてアホみたいな話だ。なぜ大手メディアが指摘しないのか不思議だが、日銀が3年以上つづけてきた自分たちの政策を「間違いでした」と総括するはずがない。
誰が見ても「異次元の金融緩和」は失敗である。景気は回復せず、副作用だけが拡大している。中立公正な第三者が検証するならまだしも、自分たちで評価するとは、これほど国民をバカにした話もないのではないか。
■「異次元緩和」やめたらクラッシュ
2013年4月、華々しくスタートした「異次元の金融緩和」が失敗に終わったことは、もう隠しようがない。
3年半前、黒田総裁は、市場への資金投入を2倍にし、2年で2%の物価上昇を達成すると胸を張っていたが、3年過ぎても物価上昇率はゼロ%。「追加緩和」まで行い、マネーの量は2倍どころか、3倍の400兆円を突破している。異次元緩和の結果が出ないと、苦し紛れに「マイナス金利」にまで手を出すありさまである。
さすがに、黒田日銀も、政策が間違いだったことは分かっているはずだ。それでも「副作用があっても、ちゅうちょすべきではない」などと、やめようとしないのは、やめたくても、やめられないからだ。
「恐らく、黒田総裁は“こうなったら行くところまで行くしかない”という気持ちなのだと思います。異次元緩和をストップした瞬間、日本経済はクラッシュするからです。日銀は毎年、国債を80兆円も買っている。全体の8割に達しています。もし、ある日突然、購入することをやめたらどうなるか。国債市場は急速に需給悪化が進み、国債価格が暴落し、金利が高騰してしまうでしょう。日本経済は破綻してしまう。いま、国債を大量に保有している日銀も巨額の含み損を抱えてしまう。だから、ひたすら買いつづけるしかないのです。ETFを年間6兆円購入している政策も、買うことをやめた途端、株価が暴落するから、買いつづけるしか道がない。どんなに“効果がない”と批判されようが、副作用があろうが、日銀は現在の政策をやりつづける以外ないのです」(筑波大名誉教授・小林弥六氏=経済学)
恐ろしいことに、黒田日銀は、やめたくてもやめられない“シャブ漬け”患者のようになっている。株式市場は、その日銀の「追加緩和」に期待しているのだから、もうグロテスクというしかない。
■いずれハイパーインフレに襲われる
このまま「異次元の金融緩和」をつづけたら、日本経済はどうなるのか。「ハイパーインフレ」の懸念は増すばかりだ。
日銀が国債を買いつづけ、市場にカネを流しつづけるということは、空からカネをまくようなもので、事実上のヘリコプターマネーである。コップから水があふれるように、ある時点で物価上昇が制御不能となり、ハイパーインフレを起こす恐れがある。歴史を振り返っても、量的緩和に足を踏み入れた国は、ハイパーインフレに直撃されている。1923年のドイツは年率2万5000倍、1988年のアルゼンチンは年率5000倍という悪性インフレに襲われた。
マイナス金利の継続も、すでに収益悪化で悲鳴を上げている金融機関が耐え切れなくなる恐れがある。
さすがに、外国人は常軌を逸した日銀の政策に呆れ返っている。著名な投資家、ジム・ロジャーズ氏は、新聞のインタビューにこう語っている。
〈アベノミクスは常軌を逸したようにお金を刷り続け、円の価値はわずか数年で一時3割も落ちました〉
〈自国通貨の価値を下げたり、インフレを起こそうとする手法で成功した国は過去どこにもありません〉
「そもそも、市場にカネさえ流せば、設備投資も個人消費も活発になり、景気が良くなるという発想が間違っています。企業は収益が上がるビジネスがなければ設備投資しないし、個人は欲しいモノがなければモノを買わない。マイナス金利は、預金に金利がつかず、年金の運用も難しくなり、将来を不安視させ、逆にモノを買わなくなる可能性だってある。経済は人の営みなのに、黒田総裁は、人間の感情をまったく分かっていない。これでは景気が良くなるはずがありません」(小林弥六氏=前出)
この狂乱緩和は、やめたら国債が暴落して金利が高騰、つづけたらハイパーインフレと、行くも地獄、退くも地獄が待っている。
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黒田日銀は戦前の大本営と同じ
なのに、黒田総裁は、「マイナス金利の深掘りも、量の拡大もまだ十分に可能だ」と無責任に楽観論をふりまいているのだから、ほとんど戦前の大本営と変わらない。このまま突き進んだら、破滅が待っていると分かっているくせに、失敗を国民に明らかにせず、「うまくいっている」と、平気でウソをつく。日本は焼け野原になるまで戦争をやめられなかった。黒田日銀の「異次元緩和」も、日本経済がクラッシュするまで止まらないだろう。経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「黒田総裁の発言は、支離滅裂になりはじめています。『もうデフレじゃない』と口にしながら、異常な政策をつづけている。異常な政策は、異常な結末を招くことは、歴史が証明しています。恐ろしいのは、3年以上、異常な政策がつづいたため、国民が“異次元緩和”や“マイナス金利”を異常だと思わなくなりつつあることです。特攻隊のような異常な作戦を受け入れてしまった戦前と同じです。最悪なのは、安易にカネをジャブジャブにする政策を取ってしまったために、コツコツとモノを作る日本の強みまで忘れさせてしまったことです」
もう国民は、この先に待っている奈落を覚悟するしかないのかも知れない。
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