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「そこどけ」とばかりに築地市場の寸前まで延びる環状2号線。かつて、大きな弧を描く市場棟では貨車による輸送が行われ、外側には船着き場があった(撮影/写真部・加藤夏子)
三つ星寿司店も築地市場移転に反対、仲卸業者は引っ越し費用に3千万円借金も〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160905-00000207-sasahi-soci
AERA 2016年9月12日号
11月7日に予定されていた築地市場の豊洲への移転について、小池百合子都知事は8月31日、移転の延期を表明した。白紙撤回の可能性は──。
普段、値切れば120万円で買えただろう冷蔵庫が、便乗値上げで200万円請求された。豊洲市場の店舗に必要な機材を揃え、引っ越し代などを加えると、合計約1500万円……。
マグロ仲卸業者の吉野悦松(よしまつ)さん(79)は、力なく話す。
「蓋を開けてみれば、豊洲の店舗は築地より狭い。今ある設備を入れると座るところもなく、新たに買うしかなかった。間口も狭く、幅は1.5メートルもない。これではマグロを切る包丁すら使えない」
周囲の了解のもと、通路などに荷物を置けた築地と比べて、豊洲は前後がシャッターで閉じられ、店の間も壁で仕切られる。数字以上の狭さになる。
そのため、市場内では豊洲移転を機に廃業を決めた店舗の売買が行われている。その店に割り振られた豊洲の店舗を居抜きで買い、店を拡大するのだ。最高2500万円で売買されているという。
漁港とダイレクトで売買する大手スーパーが現れるなど、流通構造が変わるなか、仲卸業界は厳しい状況にある。東京都が2009年に実施した都内の中央卸売市場の調査によれば、仲卸業者の約4割が債務超過の状況だという。移転を機に店をたたむところも多い。
吉野さんも廃業を考えた。
だが、跡を継いだ息子のために東京都から特別低金利で3千万円を借りた。息子に広い環境で働いてほしいと、廃業を決めた店を1500万円で買った。これに引っ越し代などを合わせて、借りた3千万円は消えた。
●アメ横の年末状態
5月半ば、吉野さんはようやく豊洲市場の見学会に参加した。施設に入る前、都の職員から施設内を撮影しないよう注意を受けた。見学できたのも、競り場と駐車場だけ。
事前に手続きし、実際に店舗を見た同業者に感想を問うと、
「監獄のようだった」
吉野さんは言う。
「春ごろから店舗場所を決める抽選が始まり、頻繁に都の職員が市場に来るようになった。店舗の賃料も決まっていないのに、早く書類を揃えないと営業権を出せないと急かし、『いやなら来なくていいよ』という感じでした」
4月中旬、築地移転に反対する市民団体が豊洲移転に関するアンケートを実施した。回答の8割が移転の延期・撤回を求める内容。フリーの記述欄には、こんな言葉が目立った。
「繁忙期である11月7日の移転を計画するなんて、現場のことをまったく考えてない」
東京中央市場労働組合の中澤誠執行委員長(51)はこう話す。
「不安は出入り業者も同じ。豊洲は都心に出る道が1本しかない。ある運送会社がシミュレーションしたところ、交通渋滞で午前中に渋谷や池袋へ荷物を運べないと嘆いていました」
移転反対の声は、場外からも聞こえる。築地で仕入れた生魚にこだわり、さつま揚げなどを製造販売する笹塚愛川屋店主の周東俊明さん(45)はこう話す。
「豊洲は道路をはさんで卸、仲卸、青果と建物が分かれていて、買い物が不便になる。築地は野菜にしても、果物にしても、折箱などの小物に関しても、ワンストップで買える」
また、周東さんはバブル期を思い出し、こう続けた。
「業者の数も車の量もすごかった。毎日が(上野の)アメ横の年末状態だったが、今は年々店も減り、そもそも移転する必要があるのかすら疑問だ」
『ミシュランガイド東京2016』に掲載されている寿司店28店にアンケートを実施した。8店から回答があり、移転賛成が2、反対が5、無回答が1だった。反対の理由の多くは、土壌汚染や施設に関する不安だ。
三つ星寿司店「すきやばし次郎」代表取締役の小野禎一(よしかず)さん(57)は、移転に反対の立場だ。魚はすべて築地市場から仕入れているという。
「産地直送の魚は使わない。30年以上毎日築地に通い、自分の目で見て、自分が納得した魚だけを仕入れている。今は自転車で通っているが、豊洲移転を見越して既に専用の車まで準備している」
移転問題について尋ねると、語気を強め、こう話す。
「何十年と毎日築地に足を運ぶことで、仲買人との信頼が深まり、納得できる魚が入るようになる。土壌汚染問題、費用の問題、これまでの経緯……知事は数年で辞職して、あとは知らん顔でいいのか。歴代の知事も含め、説明責任がある」
●築地再整備は可能
小池百合子都知事は市場問題プロジェクトチームを立ち上げ、問題に取り組んでいく姿勢を示したが、課題も多い。
豊洲市場のある土地は、元々は東京ガスの工場があった。08年の都の調査で発がん性物質のベンゼンが基準値の4万3千倍検出されるなど、汚染問題は深刻だ。この問題に深く関わる1級建築士の水谷(みずのや)和子さんは、その調査自体にも問題があると指摘する。
「都への開示請求などから約300の未調査箇所があることが分かっている。また、専門家会議が出した汚染対策費が1300億円なのに対し、その後に発足した技術者会議の汚染対策費は586億円。経緯が明らかになっていない」
日本環境学会元会長の畑明郎さん(70)も、08年の調査を元にした汚染対策に問題意識を持つ。
「東日本大震災時の液状化で、高濃度汚染地点が移動している可能性があります」
施設自体にも大きな問題を抱える。建築エコノミストの森山高至さん(51)はこう話す。
「トラックの側面から荷下ろしできない、床積載荷重が不十分など問題が多い。致命的なのは、商品を仕入れる卸売業者と、それを仕入れる仲卸業者の売り場スペースが別々の棟に分断され、アンダーパスと呼ばれる地下の細い道しかない。フォークリフトやターレと呼ばれる電動車両の渋滞は必至です」
当初計画の2.77倍に膨れ上がった2747億円の建設費にも大きな疑問を持つ。
「高く見ても900億円と考えます。また、築地を運営しながらの再整備も可能です。1日40万人近い人が利用する渋谷駅でも深夜の時間を使い、副都心線工事などを完遂させている」
パンドラの箱を開けた小池知事の前には数々の問題が。延期で生じる市場関係者の損害を都が補償する場合、都議会で補正予算を組む必要も出てくる。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫さん(58)はこう話す。
「たとえ年度をまたぎ、本予算への議会承認が必要となっても、対立は起きないと考えます。来年夏に都議選を控え、支持率の高い小池さんと対立するような姿勢は見せにくいでしょう」
●モノとコトを売る計画
白紙撤回の可能性も周辺で語られている。
「築地を豊洲に一時移転し、その間に築地を改修するという案が出ています。09年の鳩山政権時に、築地改修案が固まった。あのときのプランは今も生きている」(都議会関係者)
先日の会見で小池知事も白紙撤回の可能性について議論の余地を残した。ただ、その場合は新たな対案を示す必要がある。新国立競技場の建設問題が浮上した際、五輪後に新国立をスポーツ施設に分割する新計画を提案した後藤田正純衆議院議員はこんな提案をする。
「たとえばの話ですが、私が都知事なら渋谷の一等地にあるNHKを豊洲に移すとか、東京ガスがスポンサーのFC東京のスタジアムを造るとか、“コストセンター”を“プロフィットセンター”に変えるビジョンが必要。サッカーを見て、築地のすしを食べて帰る。モノとコトを売る都市計画が必要です」
豊洲が抱える問題が大きい分、有効な利用策があれば、一気に移転中止の道も見えてくる。(編集部・澤田晃宏)
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