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東芝のメモリはどうすれば生き残っていけるのか?
東芝のメモリが生き残る最も効果的な方法はこれだ 設備投資効率は他社に負けていない
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47766
2016.9.6 湯之上 隆 JBpress
東芝が、サンデイスクを買収したWestern Digital(WD)と合計でNANDフラッシュメモリに約1.5兆円の設備投資を行うと発表した。
1.5兆円という数字は凄そうに見えるが、東芝が投資するのは8600億円で、しかも2016〜2018年の3年間の合計だから、1年平均では2867億円である。この投資額は、メモリメーカーとしては、何ら驚くことはないように感じられる。
これは、東芝のライバルであるサムスン電子の投資額と比較してみることにより、一目瞭然となる。サムスン電子は、NANDだけでなくDRAMもロジックも製造しているが、NANDだけで2.25兆円の投資をすると発表した。しかもこの投資は2年間で行われるため、1年平均では1.125兆円になる。この投資額は東芝の約4倍、東芝とWDの合計額の2.25倍になる。
このような比較をすると、今後、東芝のメモリが生き残っていけるか、不安になる。しかもこの8600億円にしても、東芝メディカルを売却してやっとの思いで確保した虎の子のキャッシュなのだ。
そもそも、なぜ、これほどの差がついてしまったのか? そして本当に東芝のメモリは生き残っていけるのだろうか?
本稿ではまず、東芝、サムスン電子、マイクロンテクノロジー、SK Hynix、以上の大手メモリメーカー4社について、1990年から現在までの売上高および設備投資額の推移を示す。次に、売上高と設備投資額には直線関係があることを検証する。この結果から、1億ドルを設備投資した場合の売上高を算出したところ、東芝が最も投資効率が高いことを発見した。この発見を基に、どうしたら東芝のメモリが生き残ることができるかを考えてみたい。
■メモリメーカー4社の売上高ランキングの推移
まず、メモリメーカー4社の半導体売上高世界ランキングの推移をみてみよう(図1)。
図1 メモリメーカー4社の半導体売上高の世界ランキング の推移
Electric Journal 『半導体データブック』を基に筆者作成
1990年代から2001年までは、東芝が世界ランキング2〜4位に位置し、メモリメーカーの中ではトップだった。
ところが、DRAMで急成長してきたサムスン電子がランキングの順位を上げていき、2002年に東芝に替わって2位になると、それ以降は1位のインテルに次ぐ2位の座を不動のものにした。
マイクロンとSK Hynixは、1990年代の初旬は20位台だったが、乱高下しつつもランキング順位を上げていき、SK Hynixは2005年に、マイクロンは2010年にトップ10入りした。そして、SK Hynixは2013年に、マイクロンは2014年に、それぞれ東芝を抜き去った。
かつてランキング2〜4位の常連だった東芝は、2015年には9位まで順位を落とし、このまま行くとトップ10から脱落しそうな気配だ。そうなると、トップ10に日本メーカーは皆無という事態になる。
■ここ20年でほとんど成長していない東芝の半導体事業
次に、メモリメーカー4社の半導体売上高の推移をみてみよう(図2)。
図2 メモリメーカー4社の半導体売上高
Electric Journal 『半導体データブック』を基に筆者作成
当たり前だが、前述した売上高ランキング通りの結果となっている。驚くのは、2001年以降のサムスン電子の売上高の急成長ぶりである。サムスン電子があまりに凄まじいため、東芝がまるで成長していないように見えてしまう。
各メモリメーカーの成長度合いをより鮮明にするために、1995年の各社の売上高を1に規格化したグラフを書いてみた(図3)。1995年はWindows95が発売された年であり、半導体メーカーはどこも大増産したため、各社ともこの年にピークがある。
図3 95年を1としたメモリメーカー4社の半導体売上高
Electric Journal 『半導体データブック』を基に筆者作成
図3から、1995年から2015年までの20年間で、サムスン電子は4.8倍、マイクロンは5.5倍、SK Hynixは4.2倍に売上高を増大させている。
ところが、驚くことに東芝の売上高は、1995年以降ほとんど成長しておらず、2010年にやっと1.2倍になった程度で、その後は緩やかに減少し、2015年には0.9と1995年の売上高以下になっているのである。
東芝の最大の問題が明らかになった。それは、ここ20年間でほとんど売上高が増えていないということである。一体、それはなぜなか?
■メモリメーカー4社の設備投資額の推移
単一品種を生産するメモリでは、その売上高が設備投資額に大きく左右されると考えられる。そこで、メモリメーカー4社の設備投資額の推移をグラフにしてみた(図4)。
図4 メモリメーカー4社の設備投資額
Electric Journal 『半導体データブック』を基に筆者作成
やはり、売上高を急拡大しているサムスン電子の設備投資額がずば抜けている。1999年以降は、乱高下しながらも、東芝を大きく引き離していることが分かる。特に2010年以降は、毎年100億ドルを超える投資を行っており、これはインテルやTSMCと世界1位を争う規模である。
一方、東芝の投資額は冴えない。ここ20年間は10〜20億ドル程度であり、最大でも2007年の35億ドルである。2009年以降はSK Hynixに、2011年以降はマイクロンにも抜かれてしまった。
■設備投資額と売上高の相関関係
設備投資額と売上高の間には相関関係があるだろうか。それを検証するために、1991年から2015年まで、5年ごとに平均の設備投資額と売上高を、メモリメーカーごとに算出した(表1)。
表1 メモリメーカー4社の5年平均の設備投資額と売上高
Electric Journal 『半導体データブック』を基に筆者作成
5年ごとの平均値を計算した理由は、設備投資額は毎年乱高下すること、設備投資が売上高に結びつくには時間がかかることによる。そして、この表のデータを、横軸に5年平均の設備投資額、縦軸に5年平均の売上高としてプロットしてみた(図5)。
図5 メモリメーカー4社の5年平均の設備投資額と売上高の関係
Electric Journal 『半導体データブック』を基に筆者作成
この図からは、設備投資額と売上高はほぼ直線関係になることが検証できた。また、各社のグラフの傾きが、似通っていることが明らかになった。これは、半導体メモリが典型的な設備産業であることを意味している。
■東芝の設備投資効率は抜群
ところが、メモリメーカーによって異なる点があることが判明した。設備投資額と売上高はほぼ直線関係にあり、その傾きも似通っているが、同じ額の設備投資をしても同じ売上高にはならないということである。
例えば、図5に赤い点線で示したように20億ドルの設備投資をしたとすると、その際の売上高は、SK Hynix、サムスン電子、マイクロン、東芝の順で高くなる。そしてその差は、SK Hynixと東芝では、倍以上も違うのである。つまり、東芝の設備投資効率は、SK Hynix、サムスン電子、マイクロンよりも高いと言える。
このことを次のように再確認した。メモリメーカーごとに、1989年から2015年までの総売上高と総設備投資額を算出する。そして、総売上高を総設備投資額で割り算した。つまり、1億ドルの設備投資でいくらの売上高が得られたかを算出したわけだ。その結果を図6に示す。
図6 メモリメーカー4社の設備投資1億ドル当たりの売上高(1990〜2015年までの総売上高÷総設備投資額)
Electric Journal 『半導体データブック』を基に筆者作成
1億ドルを投資した場合、その売上高は、東芝6億ドル、マイクロン3.5億ドル、サムスン電子3.1億ドル、SK Hynix2.8億ドルとなった。ここから東芝は、抜群の設備投資効率でメモリを生産していると言える。
■メモリメーカーとしての東芝の生きる道
これまでの分析で、東芝のメモリの問題点と長所が明らかになった。
問題は、1995年以降、売上高がほとんど成長していないことにある。その原因は、設備投資を増やすことができなかったことにある。
一方、東芝のメモリの強みは、競合他社に比べて、設備投資効率が抜群に高いことである。つまり、同じ額の設備投資を行えば、東芝のメモリは他社よりも高い売上高を上げることができる。
では、東芝のメモリが生き残るためには、どうしたら良いのか? 答えは簡単だ。設備投資効率が抜群なのだから、少なくとも他社と同じ規模の設備投資をすれば、勝てる。
こんな簡単なことが、なぜこれまでできなかったのか? それは、メモリで稼いだ利益を他の事業が食いつぶしていたからである。粉飾会計で明らかになった通り、原子力もテレビもPCも、同じ半導体のSOCも大赤字だった。これら赤字体質の事業がメモリの足を引っ張っていたのだ。
ここから、メモリが生き残る道が見えてくる。メモリで稼いだ利益はメモリの設備投資に使う。それ以外の赤字事業には使わないようにすることだ。
それには、「メモリが東芝から独立する」ことが最も手っ取り早い方法だ。いかがであろうか?
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