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少しボケるとすぐに餌食…(※イメージ)
浄水器、軽自動車…少しボケると、すぐに餌食「認知症喰いの手口」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160901-00000350-sasahi-soci
週刊朝日 2016年9月9日号より抜粋
認知症患者が500万人を突破したとされる日本。超高齢化社会に突入し、判断能力の衰えた老人を喰い物にする輩が増えている。
「ちょっとどうしたの、この浄水器」
埼玉県在住の佐藤りえ子さん(仮名・55)は、都内で一人暮らしをする父(87)の家を久しぶりに訪れて愕然とした。高級そうな浄水機能付き整水機器がキッチンに設置されていたからだ。
「お父さん、これいくらだった?」
「いくらだったかな……」
財布などをしまっている居間の引き出しをりえ子さんが開けてみると、25万円の領収書が見つかった。この前も15万円の換気扇を買ったばかり。居間やキッチンのLED照明のほか防犯灯も購入。すべて近所の同じ電器店で購入したものだ。
りえ子さんの父が認知症の診断を受けたのは2年前。週2回ヘルパーが訪れて、りえ子さんは姉と交代で様子を見に来ている。
「母が昨年末に亡くなったのですが、そこからの半年で父の認知症も買い物も進みました。昔から知っている電器店が、頻繁に家に出入りするようになって」
電球が切れたと父親が店に電話をすると、すぐに担当者が家まで来てつけ替えてくれる。だが来るたびに、頼んでもいない高額商品を薦められたというのだ。
元研究者の父親はプライドが高く、りえ子さんが注意すると「つきあいだからいい」とつっぱねた。りえ子さんは電器店の担当者を呼び出し、「判断がよくできない高齢者に物を売らないでほしい」と申し立て、家電攻勢は収まった。だが間髪いれずに次の問題が起きた。今度は父親が車を買ってしまったのだ。
「父は免許を持っていて、たまに車に乗っていた。危ないので免許を返納させようとした矢先、自宅の門柱にぶつけたんです。父から『車の修理代に128万円かかった』とメールが来ましたが、修理に出した日に新車を買ったことがわかったんです」
「修理代より買ったほうが得だ」と、担当者に言いくるめられたようだ。車は契約が成立し、クーリングオフは無効だった。りえ子さんはディーラーに納車をしないように頼み、新古車として80万円で売り、父を説得して自動車免許の試験場に連れていき、免許を返納した。りえ子さんの父のようなケースは珍しいことではない。
認知症の場合は当事者ではなく周囲(家族やヘルパー、近所の人など)が「おかしい」と気づくことでトラブルが顕在化するが、消費者庁の調べでは、2006年度の7058件(認知症等の当事者と他の相談者を合計した数)が、13年度には1万795件と7年で3737人も増えた。14年度では9708件、15年度は8826件と少し減ったのだが、消費者庁調査部に聞くと理由があった。
「13年度はとくに健康食品の送り付け商法(勝手に商品を送り付けて代金を請求する)が大流行しました。当庁でも業者を処分して注意喚起し、送り付け商法は収束しましたが、認知症問題は潜在化しやすく、数字が表に出にくい」
15年度の認知症等の高齢者に関する相談の販売購入形態は、「訪問販売」の割合が39.7%と大きく、「電話勧誘販売」18.9%、「店舗購入」13.0%等が続く。また高齢者が多く購入する商品には、時代を反映するものも多い。11年度に5位だったアダルト情報サイトの相談(未閲覧の高額請求)は15年度に2位になっている。国民生活センターの広報担当は言う。
「デジタル端末のトラブルが高齢者の方にも広がっています。でも一方で、高額な布団を売りつけるような古典的な訪問販売も続いています」
国民生活センターに直接寄せられた相談の中には、一人暮らしの認知症の父親(70代)が3年間に布団などを350万円分も買い、「公共料金を払えなくなった」という例もある。
11年度に1位だったファンド型投資を巡るこんなトラブルもあった。
介護・福祉系法律事務所おかげさまの外岡潤弁護士は、13年に「800万円もやられた」という認知症の男性(元自営業の80代)の妻からの相談を受けた。
「カンボジアやタイ、ベトナムのGDPがワールドカップ開催年に上昇するので、貯水ダム事業等に投資しないかと電話で持ちかけられ、その後同じようなパンフレットが送られてきた。言葉巧みに投資熱をあおり、同封した振込用紙で振り込ませたんです。その後振り込みがあり、食い付いたと判断したら、すかさず別の詐欺メンバーが『その債権をぜひ売ってくれ』と電話で持ちかけ、購買欲を焚きつける。複数の人が役割を演じる劇場型詐欺でした」
転換社債という名目で初めに100万、追加で200万……と出し、総額は800万円にのぼった。
無料相談ができる法テラス(日本司法支援センター)を通し、外岡弁護士が相談に応じた。騙された男性宅を訪問し、相手会社宛てに電話をかけたが、時すでに遅しだったという。
「パンフに記載された住所はレンタル事務所で、電話も応答がありませんでした。民事裁判をやっても相手方が出頭しないので、勝つことは簡単ですが(支払えと命じた金額は)紙切れ同然。会社の土地や預貯金が不明である以上、強制執行で押さえられないので、お金は取り返せず、結局は泣き寝入りでした」(本誌・藤村かおり、西岡千史)
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