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成年後見制度の落とし穴とは…(※イメージ)
成年後見制度の落とし穴 遺産相続狙いで制度悪用する新手の「認知症喰い」も〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160901-00000351-sasahi-soci
週刊朝日 2016年9月9日号より抜粋
判断能力の衰えた老人を狙い、家電や金融商品を押し売り…。彼らにとって、特に認知症患者はいいカモ。そんな認知症患者を守る“最後の砦”とされているのが成年後見制度だ。判断能力が衰えた人でも、後見人をつければ、財産管理や行政手続きなどを代行してもらえる。後見人は、後見を受ける人が結んだ不利な契約を取り消すこともできる。今年4月には成年後見制度利用促進法が成立した。
だが、この制度には落とし穴もある。成年後見制度には「任意後見」と「法定後見」の2種類がある。詳しくは後述するが、任意後見は、判断能力があるうちに本人が後見人を選任する。
一方、法定後見は判断能力の衰えた本人に代わって近親者などが家庭裁判所に申し立て、家裁が後見人を選任する。その場合、弁護士や司法書士が選ばれることも多い。ただ、弁護士や司法書士であれば第三者の立場で中立的に仕事をしてくれそうだが、実際には悪質な専門職の後見人に悩まされているケースが増えている。
東京都内に住む50代の大村純子さん(仮名)は、突如として降りかかった災難に、途方に暮れている。
事の発端は今年2月だった。何の面識もないA弁護士から突然、身に覚えのない通達が書面で届いた。そこには、大村さんの父親の財産管理を、今後はA弁護士が担当すると書かれていた。大村さんは言う。
「何でこんなことになったのかわからず、家裁にも連絡したのですが『弁護士と話し合ってください』と言われるだけ。その後は、父親の銀行口座からお金を引き出すこともできなくなってしまいました」
思い当たる節はあった。今年の正月、妹と会ったときのことだ。大村さんの父親は、所有するビルの賃貸料の収入で老人ホームの施設費や医療費などを支払っていた。ただ、父親が高齢になったこともあり、今後はビルの名義を法人化して管理したいと思っていた。それに妹が強硬に反対。法人化の話は棚上げになった。
「そのころから妹は、父親の財産管理をするために自分が後見人になろうとしました。両親が亡くなったときの相続財産が減ってしまうと警戒したようですが、法人化すれば節税効果も期待できますし、相続権も残るので、誤解なのに……」
大村さんは約20年前からビル管理の仕事を父親から任されていた。両親は大村さん夫婦を信頼しており、家裁に対しても「今までどおりのやり方で財産管理をしてほしい」と、A弁護士の後見人就任に異議申し立てをした。にもかかわらず、家裁はこれを拒否。6月には正式に後見人としてA弁護士が選任された。
「銀行口座もA弁護士の許可がないと使えません。きちんと支払いをしてくれず、両親の医療費や介護費なども払えなくなりました。面会の約束をしても当日の朝にドタキャンされ、会うこともできません。施設を強制退去寸前になったこともあります」(大村さん)
後見人についての苦情窓口を設けている一般社団法人「後見の杜」の宮内康二代表は言う。
「家裁に法定後見の申し立てをすると、申立人に有利な結果になりやすい。大村さんのケースでは、将来の遺産相続が引き金になっていて、妹に都合のいい後見人がついている。これは成年後見制度の趣旨に反することで不適切。家裁は提出された書類だけを重視するので、現状の把握ができていないのです」
大村さんは現在、後見人の選任の過程に瑕疵(かし)があるとして、裁判を起こしている。だが、大村さんのケースのように、後見人が一度選任されると、解任することは難しい。それが不正の温床にもなっている。
昨年7月には、90代の認知症の女性の後見人をしていた渡部直樹元弁護士が、計4100万円を女性の口座から着服していたとして逮捕された。そのほかにも別の認知症の女性ら2人も被害を受けていて、着服額の合計は1億1200万円にのぼった。そのカネは、キャバクラなどに浪費された。
この事件でも、女性の家族は家裁にたびたび後見人の怠慢な仕事ぶりを指摘していた。しかし、聞き入れられず、事件化したのは渡部元弁護士が警察に自首したためだった。成年後見制度に詳しい司法書士の中村圭吾氏は言う。
「今の制度は、後見を受ける人の自由意思を考慮しないものになっています。本来は、判断能力が衰えて困っている人を助けるのが後見人の役目。財産が減らないように管理していればいいわけではありません」
最高裁の調査によると、親族らを含めた成年後見人全体の不正は近年増加傾向にあったが、昨年は前年比で310件減少の521件(被害総額29億7千万円)となっている。一方、昨年の弁護士ら専門職の不正は前年より15件増え、過去最多の37件(同1億1千万円)となっている。
事件化まではいかなくとも、後見人を巡るトラブルは後を絶たない。
統計上は、家裁が強制的に後見人を外す「解任」は15年度に減少したが、一方で「辞任」は前年比で72%増の1万921件となっている。前出の宮内氏は、その背景をこう語る。
「家裁が後見人を『解任』すると、その人は二度と後見人になることはできません。そこで、最近では数十万円程度の不正が発覚した場合に家裁から返金を命令されると、その後見人は返金をした後に自ら辞任するケースが増えています」
それでは、認知症になる前に自分の意思で後見人を選ぶ「任意後見」にすれば、安心できるのか。
NPO法人「りすシステム」は、老後の生活から葬儀や墓などの死後の自己決定まで、家族の役割を果たしながら支援する組織だ。健康なうちに任意後見契約を結ぶ事業も展開している。一方で、最近はこんなケースも増えているという。
10年以上の会員だった前田弘さん(仮名)が認知症になり、自己決定ができなくなった。前田さんは80代の元経営者で、資産家だった。ただ、離婚していたため家族と離れて暮らしていたので、りすシステムと任意後見契約を結んでいた。前田さんは独り身の将来を案じ、自宅の荷物整理や財産管理、お墓の場所までりすシステムに一任していた。前田さんは契約後、「これですっきり安心してあの世に行ける」と話していたという。
だが、病に倒れ、実際に判断能力が失われた後に事情が変わってしまった。
離れて暮らしていた親族からりすシステムに連絡があり、「今後のことはすべて自分が選ぶ専門家に任せます」と言われ、契約を破棄せざるをえなくなったのだ。りすシステムの運営に携わる行政書士の黒澤史津乃氏は、こう話す。
「本人の意思である任意後見は、親族による後見人の申し立てより優先されるのが原則です。しかし、親族の意思は固く、前田さんの思いは伝わりませんでした」
任意後見契約について公言しておかなければ、自分の願いより、周囲の思惑が優先される危険性があるのだ。前出の中村氏は言う。
「後見人は申し立ての書類がそろっていれば選任されますが、本来は個々人のライフスタイルを理解した後見人が選ばれるべきです。後見人がつくことで、判断能力が衰えた人の人生がどれだけ豊かになったのか。そこに評価の基準を置くべきです」
いずれ65歳以上の3人に1人が認知症になるとされる日本で、誰が私たちの老後を守ってくれるのか。
「現状の制度は、主体が健常者であることを前提に作られているのがそもそもの問題。認知症がこれだけ増える中、地域の見守りや『気を付けましょう』という精神論だけではカバーしきれない時代になっています」(前出・外岡弁護士)
認知症社会に即したシステムを再構築することが急務になっている。(本誌・藤村かおり、西岡千史)
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