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中国が着々と打つ陸と海のシルクロード経済圏の布石
http://diamond.jp/articles/-/100497
2016年9月1日 莫 邦富 [作家・ジャーナリスト] ダイヤモンド・オンライン
今世紀に入ってから、中国企業は海外進出を「走出去戦略」と名づけ、規模を急速に拡大し始めた。その対象は必ずしも先進国だけではなく、市場規模が小さく、所得水準も低い地域や国々にも猛烈な勢いで進出している。
その海外進出ブームが起こる中で、特に注目されたのがアラブ首長国連邦のドバイだった。
ドバイは、中東のほぼ真ん中に位置し、フリーポートであることから交易の中心地として昔から栄えている。UAEは1980年代から、将来地下資源が枯渇した場合に備え、石油産業依存からの脱却を目指して、香港のように、中東における金融と流通および観光の一大拠点となるべく、ハードとソフト双方のインフラの充実に力を入れている。それが世界各国の大手企業から評価され、進出先として注目されるようになった。いつしか、ドバイは「中東の香港」とささやかれるまでに評価が高まった。
このドバイの成功を見て、アメリカにより経済封鎖などを強いられたイランは1991年に、中国の経済特区のようなエリアを国内に作った。それはホルムズ海峡の北に位置し、ドバイとはペルシャ湾を隔てて約180kmという近さにあるケシュム島だ。
ケシュム島は面積が1491平方kmで、イランないしペルシャ湾で最大の島として知られる。ケシュム島の他、キシュ島、チャーバハール港を含むエリアが自由貿易地区となっており、「イランの深セン」と呼ばれ始めた。
走出去戦略が始まって早々の頃だった。取材活動を進めているうちに、「イランの深セン」と呼ばれる同島の存在を知った私は、飛行機でケシュム島に向かった。当時、すでに中国の大手家電メーカーだった「康佳集団」などの中国企業がUAEを拠点にして、イランなどに進出しており、ケシュム島では「康佳」の広告も見られた。
島には、ペルシャ湾独特のスタイルの舟が、ドバイから仕入れた多くの商品を運んでくる。イラン本土と島は最も近いところで約2kmしか離れていない。これらの商品はイラン本土に渡り、やがて長い陸運を経て、首都テヘランの商店の店頭に飾られるのだ。
■15年ぶりに話題になった
「イランの深セン」ケシュム島
あれから15年近くの歳月が経った。しばらく前に、このケシュム島という地名がにわかにまた中国のメディアを賑わした。中国とイランがペルシャ湾南部の「ケシュム・オイルターミナル」を共同で建設することで新たな契約を結んだからだ。
イランの国際ラジオ放送「pars today」の中国語サイトが6月12日に報じたところによると、契約金は5.5億ドルで、ケシュム島を湾岸地域の石油生産と石油製品貯蔵の重要な拠点に築く、という。
イラン国営テレビもその日、このことを取り上げた。これによると、このプロジェクトの主な目的は、ケシュム島をイラン最大の石油生産・石油製品貯蔵の要衝とすることであり、全長140mのタンカーが収容でき、少なくとも3000万バレルの原油を貯蔵しておくことができる。プロジェクト第一段階が終了すると、1000万バレルの原油を貯蔵できるようになる。
ケシュム島はバンダレ・アッバース付近の特殊な地域であり、ペルシャ湾を頻繁に往来するオイルタンカーが必ず通るルートにある。その意味では、この巨大なオイルターミナルの建設はイラン南部の発展のために重要な戦略的意味を持つ。
このオイルターミナル建設によってイラン南部に発展するチャンスがもたらされる、とイラン産業界は受け止めている。ケシュム島のオイルターミナル建設によって、イランに期間を10年とするリース契約をもたらすことにもなる。
イランのアラーク機械製作所のアミール・フセイン・リサイ会長は、石油タンクのリースによって、イランは毎年1.2億から1.5億ドル、最高で3億ドルもの収入を得られる、と述べている。
■中国が作り始めるという
マレー半島を横断する運河
先日、このコラムでも「中国が確保したパキスタン港湾運営権の戦略的重要性」と題して、中国は海上シルクロードの構築に合わせてエネルギーの安全保障のための基地を作り始めた、と取り上げている。
そのパキスタンのグワダル港はイランに近く、インド洋のアラビア海に面し、ペルシャ湾の喉元に位置し、アフリカやヨーロッパから、紅海・ホルムズ海峡・ペルシャ湾を経て、東アジアや太平洋エリアに向かう海上の重要な航路を押さえる位置にある。
さらに最近、中国がタイでマレー半島を横断する運河を建設しはじめるといったニュースが流れている。実際の進捗状況はまだ不明だが、この「クラ地峡運河プロジェクト」が注目を集めていることは事実だ。
タイランド湾とアンダマン海に挟まれたマレー半島に、比較的細くなっている地域がある。人々はその一帯をクラ地峡と呼ぶ。このクラ地峡の最も狭い部分は44kmでしかない。海抜の最高地点も75mだ。ここに運河を作れば、マラッカ海峡を経由せずにヨーロッパ、中東、インドと太平洋を直接結びつけることができる。
「一帯一路(陸と海のシルクロード経済圏)」戦略を展開させている中国にとっては、このクラ地峡運河の戦略的な価値は言うまでもないものだ。
以上の事例などを見ると、中国がその陸と海のシルクロード経済圏の布石を打っていることは一目瞭然である。
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