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アンダーグラウンドの取材を長らく続けてきた鈴木大介氏(写真左)と中村淳彦氏(右)
貧困とセックス、いずれ最底辺は銃を持つ 格差を放置すれば日本も銃社会に突入する
http://toyokeizai.net/articles/-/133608
2016年08月31日 中村 淳彦 :ノンフィクションライター / 鈴木 大介 :ルポライター 東洋経済
東洋経済オンラインで貧困に喘ぐ女性の現実を連載するノンフィクションライターの中村淳彦氏と「貧困報道」は問題だらけだを連載するルポライターの鈴木大介氏。この2人が、性産業の問題から教育・福祉・介護の悲惨な状況、日本社会の構造的問題にいたるまで、計12時間にわたる対談を行った。その全容は共著『貧困とセックス』(イースト新書)に収められているが、ここでは前後編に分けて、そのうちのエッセンスを紹介。今回は後編だ(前編はこちら)
■超高齢化社会による介護のラッシュ
鈴木:現在進行形の貧困問題は、過去に貧困をケアしてこなかった結果です。そのツケが、最近一気に噴出した。わかりやすいのは、戦災孤児。彼らが体験した貧困のその後のケアに、土木だとか港湾労働といった単純労働に就かせた。新しい産業を興して人手が不足の産業に貧しい人を誘導したわけです。その産業のラッシュが終わったら、彼らに対して次のケアをしない。その人たちは貧困老人になり、孫、さらにひ孫の層まで、何世代にもわたって貧しい状態が続く。
中村:今の混乱は、歴史的に底辺層のケアをしなかったことが根底にあるのか。労働力が必要なときにだけ使い、使い捨てにしたことが現在の貧困問題の根底にあると。
介護の職場の労働環境は社会問題になっている(写真:わたなべ りょう / PIXTA)
鈴木:今で言えば、超高齢化社会による介護のラッシュです。外国人介護職を入れて、超高齢化社会が終わったら、たくさん集めた人材をどうするつもりでしょう。外国にまで労働力を求めて、使い捨てですか?
中村:今、介護は儲けたい業界上層部が目の色を変えて外国に視察に行っている。彼らは「超高齢化社会がアジアで最初に訪れる日本で介護を覚えれば、自国で将来的に役立つ」みたいなことを言う。使い捨ては匂わせているかな。知るかぎりの悪徳経営者層の顔ぶれと今の介護の状況を見ていると、たぶんブラック労働させる。
鈴木:それは本当にヤバイ問題。開発途上国の人を自分たちの都合で使うなんて、怖い社会です。きちんと使うならいいけど、自国民すら使い捨てだし、期待できない。弱者、弱者と言うけど、どんな弱者でも、毎日毎日いじめられていたら、あるとき、突然、刃物を持って襲ってくる。人を搾取して捨てる行為は、最終的に残酷な結末につながることは、つねに認識したほうがいい。
中村:社会問題である介護は、とことん企業や教育機関、個人のセルフブランディングに利用されている。業界上層部は自分たちが儲かって、自分がチヤホヤされるためなら手段を選ばない。従業員を「家族」とか言って洗脳して、同じ日本人ですら使い捨てで、続々と精神疾患にさせているし。そこに外国人が来たら何をするか、簡単に想像がつくよね。ヤバイね。
鈴木:残酷です。僕は千葉の田舎に住んでいるので、近くに外国人が働いている産廃ヤードやスクラップヤードがたくさんある。彼らの話を聞くと、日本ではゴミ屋をやっていても、本国ではかなりの高等教育を受けていて、すごくハイスペック。そういう人たちを単純労働力に誘導して搾取するのは、その本国の社会資源を潰すことでもある。
中村:昔でいえば炭鉱労働者に当たるのかな。でも、炭鉱労働者は使い捨てでひどい部分はあったと思うけど、確か給料はよかったでしょう? 賃金をまともに払うつもりのない、今のブラック企業やブラック介護施設のほうがエグイ。ブラックの先端は居酒屋で、同じ労働集約型ということで、介護業界は大きな影響を受けている。居酒屋は独立をあおって、業界を挙げて「29歳定年制」を敷いているくらいだから、外国人はイキがよくて長時間労働に耐えられる20〜25歳くらいを狙っていると思うよ。
鈴木:単純に「昔はよかった」ではないんです。炭鉱労働にしても、港湾労働にしても、人を集めておカネを稼がせられる状況ができると、その人たちにおカネを使わせる産業が周りを囲い込んだ。過剰に消費させて、後に何も残らないというのを自己責任的に「それほどひどくなかったはず」とは言えません。ちゃんと働いた人間が、労働を売るだけでなく、その上に上がれるという道筋を誰も用意してこなかったことがよくない。
■昔の労働者にはオンとオフがあった
中村淳彦(なかむら あつひこ)/1972年東京都生まれ。アダルト業界の実態を描いた『名前のない女たち』『職業としてのAV女優』『日本の風俗嬢』『女子大生風俗嬢』『図解日本の性風俗』など著書多数。フリーライターとして執筆を続けるかたわら介護事業に進出し、デイサービス事業所の代表を務めた経験をもとにした『崩壊する介護現場』『ルポ中年童貞』が話題に
中村:炭鉱労働者と今の介護職を比較すると、日本の劣化を感じるね。多くの介護職は、低賃金や長時間労働で、遊びに行くおカネも時間も与えられない。精神疾患にさせられても、休暇どころか病院に行く時間もない。労働組合すらない。軍艦島の歴史なんかを見ていると、昔の労働者の街には繁華街があってオンとオフがあった。労働組合が機能してストライキもあっただろうし。今の労働集約型の末端にいる低賃金層は未婚、恋人なし、友達なし、低賃金と、経済的貧困だけでなく、関係性の貧困も抱えているから何もできない。
鈴木:もし過去の失敗に学ぶなら、まずは適正な労働対価と、経営者や資本家に極端に富が集中しない枠組みを作ることです。それにしても、介護事業というのは、そこまで人材難なのですか。
中村:かなり異常な人材難でしょう。特に都市部。介護職は2025年までに40万〜100万人足りないといわれていて、本格的に外国から連れてくる気でいる。日本人でその人数を集めるのは不可能だから。でも、外国人がわがままな団塊世代の高齢者を順調に介護できるとは思えないし、本当にどうなるのだろう。外国人を入れても地獄、入れなくても地獄だね。
鈴木:また使い捨てにするなら、いよいよ国家転覆みたいな話が現実的に感じる。国が産業で立国するに当たっては、必ず労働力が必要になる。けど、日本だけではなく、世界中の国でやってきたのが「使い捨て」。今現在で暴動が起こる国は、貧困のケアをしてこないで、ひたすら一部の者のために搾取を続けてきた国がほとんどです。
中村:多くの高齢者は気づいていないけど、日本は極端な世代間格差を生んでしまって、貧しい若者たちによるオレオレ詐欺が流行した。オレオレ詐欺に手を染めるのは、ポエムに簡単に騙されない現実認識のある、能力が高めの若者たち。どれだけ対策しても特殊詐欺が止まらない現象は、これから始まる悲劇の第一歩という見解だよね。
鈴木:詐欺の横行と世代間格差は、ずっと僕が言い続けてきていること。かつての社会では、階級の壁を越える裏技が「勉強」と「進学」だった。今はそれらの裏技が意味をなさなくなって、大卒の貧困がゴロゴロあふれている。その猛烈なルサンチマンが蓄積していった結果、おカネを抱え込んだ高齢者を狙う者を生みました。それが特殊詐欺犯罪だと。
中村:大卒どころか、弁護士や歯科医になっても貧困の可能性があるというのは、めちゃくちゃな状況。奨学金制度のような貧困世帯の若者をたたき落とす落とし穴をばっちり作っているし、どうすれば階層の壁を越えられるのか、誰もわからない。
鈴木:特殊詐欺犯罪の始まりは、2003年ごろにオレオレ詐欺が激増したところにあります。どんどん詐欺組織が会社組織化する中で、2008年ぐらいから大卒とか大学中退という層が詐欺の現場に入ってきた。その頃に上層部がやり始めたのが「詐欺をする理由」の正当化を、なかば洗脳的な研修で現場の子たちに植えつけていくことだった。「日本の金融資産の過半数が高齢者に集中している。そのうえ、年金の受給額は20代の給与より高くて、老人はそれを使い切れずに死んでいく。そこから奪うことは最悪の犯罪ではない」という内容です。
中村:恐ろしいね。その背景には教育に対する失望があるよね。2004年から本格的に奨学金の有利子貸し付けを始めて、10年で化けの皮が剥がれた。特殊詐欺は官製の犯罪とまでは言わないけど、国によって拍車がかかっていることは否めないね。
■高学歴詐欺プレーヤーに独特の怨嗟感情
鈴木大介(すずき だいすけ)/1973年千葉県生まれ。「犯罪する側の論理」「犯罪現場の貧困問題」をテーマに、裏社会や触法少年少女ら の生きる現場を中心とした取材活動 を続けるルポライター。近著に『脳が壊れた』(新潮新書・2016年6月17日刊行)、『最貧困女子』(幻冬舎)『老人喰い』(ちくま新書)など多数。現在、『モーニング&週刊Dモーニング』(講談社)で連載中の「ギャングース」で原作担当
鈴木:奨学金ルサンチマンではないけど、「こんなにおカネを払ったのに意味がなかった」という怨嗟感情は、高学歴詐欺プレーヤーに独特のもの。そう考えると、かつて労働力として搾取されてきた貧困層にも、自分の子ども世代に「勉強さえすれば、必ずこの階層から抜け出せる」と言い続けてきた人がいるし、今の国の子どもの貧困対策も、勉学の機会という部分にかなり集中している。
逆に言えば、もともと勉強が苦手な子は貧乏のままってことじゃないですか。労働者の自立には教育が必要と言っていました。それは、いわば知の格差の下層にいる人々の切り捨てですよ。
中村:勉強して上の階層に行くというのは、日本全体の共通認識でもあったよね。
鈴木:「貧=貧しい」「困=QoL(Quality of Life、生活の質)が極度に低い」となると、日本の貧困対策はQoLをあまり重視していない。「貧」を重視するのは国力の増強、「勉強すれば貧困から抜け出せる」とは「技術力を上げれば国力が上がる」というのと同じ。あまねく国民に広まるケアではない。そういう意味でも官製貧困かと。
中村:結局、おカネが足りないという話に帰結する。実際に売春する女の子たちの事情から、教育、介護、保育などの社会保障まで、どこを眺めても本当におカネが足りない。
このままでは貧困者が銃を持つ社会になっても不思議ではない(写真:Dragon Images / PIXTA)
鈴木:最悪の瞬間を迎える前になんとかしないと。
中村:不気味なことを言うね。最悪の瞬間って、何?
鈴木:貧困者が銃を持つ社会です。一日中、ツイッターなどでネガティブなツイートをする若者を見ていると怖くなる。虐げられた人が銃を持って反撃する構図が出ちゃうと、取り返しがつかなくなる。完全なる階級間対立で、日本人が富める者と貧しい者に分かれて徹底的に憎み合い、排除し合う世の中になるかも。そんな悲劇、見たくない。
中村:ほとんどの国民は日本では絶対にそんなことは起こらないと思っているから、まだまだ貧困層を苦しめるだろうね。日本にかぎらないけど、権力側は暴動が起こってからようやく考えるのかな。えーと、ちょっと古いけど、2014年の特殊詐欺(オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金詐欺)の被害総額は559億4355万円。警察が全力を尽くす中で前年度比2割増しとなっている。
鈴木:振り込め詐欺やオレオレ詐欺がこんなに流行しているのは、強制的な再分配だと僕はずっと言い続けているけど、これは日本固有の現象で、諸外国だったらここに銃と血が入ってくる。少なくとも日本では階層間の憎悪は出来上がっちゃっている。
中村:今の競争社会は、ほぼ全員が負けるしくみ。もちろん、競争によってクオリティーが上がって競争力がつくということもわかるけど、膨大な貧困予備軍の敗者を生んで、自己責任で片づけられて終わり。ほとんどの国民が貧困におびえながら生きるって、おかしいよ。
■資本家が労働力を選別すると、貧困が増える
鈴木:資本家が使いやすい労働力だけを選別したら、貧困は増えるばかり。そもそも貧困に陥っちゃう人たちは、使い方が難しい面がある。理想論だけど、人材を見きわめて、育てて、いちばん能力を発揮できる場所に配属してということが成立していけば、世の中はガラッと変わる。そこには、教育だけではなく、医療的な支援や発達支援のようなアプローチを含めてやれば、可能性はいっぱいある。
中村:貧困者を社会が排除してしまうと、それで終わってしまって、将来的に負担だけが残る。人手不足の産業は容易に外国人に頼るのではなく、国を挙げて自国民の有効活用を考えるほうがいいってことだね。今の社会が求める人材の許容範囲があまりにも狭いのは確かだから、すべての自国民をケアするべき、という理想論を捨ててはならないね。
鈴木:そうです。当然、障害の重い人は福祉の対象として保護していくとして、今の日本は障害のボーダーラインの人たちも、その許容範囲から外れて孤立して、働けなくなっている。きちんと精査すればそれほど人員は余らないはずです。
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