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交通弱者に自動運転は必要か 国民と離れ始めた金融政策 世界経済の現状 デフレ日本はロシアの先生 不法移民で損するのは誰か
http://www.asyura2.com/16/hasan112/msg/608.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 9 月 01 日 01:55:54: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

交通弱者に自動運転は必要か
記者の眼
2016年9月1日(木)
寺岡 篤志
 「自動運転よりも、乗り合いタクシーを税金でやってくれた方がうれしいねえ」
 自動運転に関する国の検討委員会に参加するある識者は、地方の高齢者へのヒアリングで出た意見に思わず頷いてしまった。
 日本は2020年に無人運転車両を用いた特定地域での輸送サービスの実施を目指している。ヒアリングはこのサービスへの需要を調べる目的があった。

無人輸送運転サービスが当面の具体的目標(警察庁の資料から抜粋)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/083100301/p1.png

 無人運転といっても、これは「完全自動運転を意味するレベル4ではなく、レベル2でしかない」(国交省関係者)。遠隔とはいえ監視がつき、ヒトのコントロール下に置かれるためだ。
 日本が加盟するジュネーブ条約は運転手のいない自動車を認めておらず、改正に向けた議論が進められている。今春には運転者は中にいなくてもよいとする解釈も示された。日本が示している未来像はあくまで条約が現状認めている範囲のものだ。2025年をめどとする完全自動運転車の市場化に向けて、弾みをつける狙いがある。
 地域の社会問題にスポットを当てて自動運転の利点をアピールする手法は、自動車産業が大衆車に軸足を置いている日本からすれば当然のことかもしれない。
 しかし、冒頭の高齢者の言葉が示すように当事者のニーズを適格に捉えているかは別の問題だ。もちろん交通弱者にとって、地域の足が充実することは大歓迎だが、それなら親しみ慣れているタクシーの方がよいという訳だ。
 将来的には無人運転輸送が有人タクシーよりもコストが下がり安全性も上がる見通しがあるからこそ、こうした施策が進められるわけだが、「運転手のいる車に乗っている方が安心」という思いがぬぐえない高齢者が多いのも頷ける話だ。
 こうした日本の国民性とも言える志向が自動運転普及の課題になると見る関係者は多い。国交省の関係者も「日本人は4000が2000になっても納得しないだろう」と話す。
 4000とは日本での交通事故による死亡者の概数。仮にこれがレベルを問わず自動運転の普及により実現したとしても「日本人は2000人死者が減ったのではなく、2000人が自動運転にひき殺されたと捉えるのではないか」
 自動車メーカーにとってこれは大きな足かせだ。極論を言えば、自らの技術力により2000人の命を救ったとしても、2000人の死亡に関わる過失犯になってしまう可能性すらあるからだ。「そのため4000を0にする確信ができるまで、自動運転と称して市場投入することにためらいを感じるメーカーも多いはずだ」(国交省関係者)
 こうした自動運転の「社会受容性」の問題は警察庁などの検討委員会でも大きな議論になっている。しかし、どうにもこの委員会が国民に議論を呼び起こすものにはなっていないように思う。
 例えば、8月に警察庁が開催した検討委員会では自動車工業会が自動運転の制度的課題について指摘。自動運転車と通常の車両が混合して道路を走っている場合「速度を守っている自動運転車が追突される恐れがある」などとして、速度規制の見直しを示唆した。
 これに事故の被害者支援に携わるメンバーらが反発して議論は紛糾した。しかし、この議事録は警察庁の公開資料には見あたらない。
 記者は自動運転の促進に反対なわけでも、ましてや2000人をひき殺してでも自動運転社会を実現せよと言っているわけでもない。問題視しているのは、国が自動運転の社会的ジレンマを明示していないことだ。社会的受容性などを課題として取り上げている資料はあるものの、上記のような生々しい具体的問題や議論を示していない。
 完全自動運転が完全に社会に普及すれば、車車間通信により交通流が整理され、4000人は限りなく0に近づくという理想が描ける。しかし、そこに至るまでには、ジレンマに向き合わなければいけない。
 向き合うのは国ではなく国民だ。ポピュリズムを唱えるわけではなく、自動車という極めて国民の生活に密着した問題だからこそ、1人1人にその問題を考える動機と権利があるのではないだろうか。


このコラムについて
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/083100301/


 
「国民への視座」を失い始めた金融政策

倉都康行の世界金融時評

日銀は「総括的検証」で独立性希薄化へ
2016年9月1日(木)
倉都 康行

2016年、ジャクソンホールでのシンポジウム開幕を前に行われた会合で話すデモ集団のメンバー(中央)。左はカンザスシティー連銀のジョージ総裁。右はクリーブランド連銀のメスター総裁(写真:AP/アフロ)
 真夏の米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティー連銀主催のシンポジウムは、毎年8月恒例の各国中央銀行幹部らの集会であるが、そこで常に注目されるのがFRB議長の講演である。今年もその例外ではなかった。

 イエレンFRB議長は「利上げへの論拠が強まった」と述べて、市場に高まり始めていた年内利上げへの観測を裏付け、早ければ9月にも利上げする可能性が浮上してきた。筆者は、もう少し物価動向を見極めてから12月に総合判断、との相場観を変えていないが、明日発表される8月の雇用統計の内容でその時期が早まることも有り得よう。

 この利上げへの前傾姿勢に、米国市場では為替、債券、株式ともにやや驚いたような反応を示した。少なくとも8月中盤までは「FRBは当面利上げしない」との見方が大勢であったからだ。そのムードは、米国主要株価指数の最高値更新、米国社債の活況、新興国市場への大量の資金流入といった現象にも表れていた。

 こうした運用資金の動向は、世界的な低成長とデフレ懸念の下で「超低金利状況は長期化する」との相場観に基づくものであった。ブレグジットの悪影響を懸念する英中銀は量的緩和を再開し、日銀は「総括的検証」で新たな緩和の枠組みを検討しているとの観測が強まっている。欧州中銀(ECB)も年内に追加緩和を行う確率が高い。米国の利上げ時期が遠のいたとの思惑で、ドル高圧力から解放された新興国にも利下げ余力が生まれている。

 そんな市場の安心感に厳しい牽制球を投じたのは、8月16日の講演で「9月の利上げは可能だ」と述べたFOMC主流派の一人であるニューヨーク連銀のダドリー総裁であった。その翌日に公表された7月FOMC議事要旨では、利上げに関してメンバー間で意見対立が生まれていたことが判明、続いてフィッシャー副議長も「物価や雇用は目標に接近している」と利上げへの支持姿勢を示したのである。

 そして真打登場となったジャクソンホールのシンポジウムで、イエレン議長が利上げに前向きな姿勢を示す決定打を放ち、市場は近々の利上げを意識せざるを得なくなった。因みに議長講演のテーマは「金融政策のツールキット:過去・現在・そして未来」という題目であり、利上げ時期に関するトピックスはあくまでその「前振り」に過ぎなかったが、市場の関心が主題よりもその序曲にあったのは明らかだ。

 利上げへのリード役となったダドリー総裁の強気な発言の裏には、ニューヨーク連銀が公表した最新の賃金分析があったと思われる。2009年以降の米国経済が期待されたほどの回復力を示せなかった一つの背景に、消費の原動力を担ってきた中間層の所得が伸び悩み、一部が低所得層に転落していったことが挙げられるが、ニューヨーク連銀の報告書ではその状況が徐々に改善し始めたことが示されているからだ。

中間層の復活という心強い材料

 同連銀が発表した賃金分析は、年収3万ドル未満の低所得層、3〜6万ドルの中間層、そして6万ドル以上の高所得者層それぞれにおける就業者の増加数を、2010〜2013年と2013〜2015年の2つの期間に分けて比較している。

 まず2010〜2013年までの期間で見ると、全米における約550万人の新規雇用者のうち、中間層が占める割合は22%で、低所得層が38%、高所得層が40%となっていた。だが2013〜2015年には中間層の新規雇用シェアが43%にまで上昇し、低所得層の28%や高所得層の29%を大幅に凌駕している。中間層の復活は、確かに米国経済への心強い材料だ。

 景気回復の初期に就業者数を増やしたのは、もっぱらレストランの給仕や高齢者介護など低所得の職であった。2013年以降は、教育、建設、運輸など比較的給与水準の高い部門での就業者数が増えているが、その他部門で目立っているのが西部のシリコンバレーや東部のブルックリンにおけるIT産業である。ダドリー総裁は、雇用市場における賃金体系の変化を「潮目が変わった」と表現し、米国経済に転機が訪れた可能性に期待感を表明している。

 またニューヨーク地区だけに限定してみても、雇用増の牽引役が従来の金融産業からテクノロジー産業に変化したことが読み取れる。2010年以降、同地域での雇用増加数はIT産業で5万3000人、金融産業では1万2000人と大差が付いている。

 同総裁はこれをより健全な持続的成長への証だと捉え、漸く雇用改善が賃金上昇に繋がるルートが見えてきた、と判断したのではないか。いずれ来るであろう景気後退期に備えて早く利下げ余地を作っておきたいと焦るイエレン議長やフィッシャー副議長も、雇用と物価の間の旧来の相関関係が復活してきた、との見方に賭けたのだろう。だがその認識は、あくまで金融エリートの視点からの現状把握に過ぎないのかもしれない。

利上げ反対のグループとFOMCメンバーが面談

 イエレン議長の講演が行われる前日、同じホテルでFRBの利上げ姿勢に反対するグループがフィッシャー副議長らFOMC主要メンバーと面談するという、異例のミーティングがセッティングされていた。

 2年前のジャクソンホールでの集会に、緑のTシャツを着たデモ集団が現れて、FRBの金利正常化に対する反対抗議を行ったことがあった。昨年、主催者であるカンザスシティー連銀は、デモを続ける彼らにFRB高官との面談を許可した。そして今年は、同副議長やブレイナード理事、ダドリー総裁、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁といった主役級のメンバーを含む11人の金融当局者と会談を行う運びとなった。

 その集団を構成していたのは、黒人やヒスパニック系などいわゆる「マイノリティ」の人々である。そして今回の異例の面談は、FRBがそんな「マイノリティ」の存在を無視する訳には行かなくなったという社会的風潮を反映している、とニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 誤解を恐れずに言えば、FRBは旧来型の「白人支配組織」の典型である。米国社会の多様化が進展する中で、企業は「人材のダイバーシフィケーション」への対応を積極化させており、政界でもオバマ大統領の登場のように、画期的な変化が生まれている。だが金融政策を司るFRBは、そうした社会変化とは無縁の世界にある。これに不満を抱く「マイノリティ」の人々が「FED UP」なるキャンペーン団体を組織し、ジャクソンホールに集まって抗議活動を始めたのである。

 「FED UP」は、黒人やヒスパニック系が17名のFOMCメンバーに皆無であること、過去において地区連銀総裁に一人として就任した事実が無いこと、現在の地区連銀理事の83%が白人であること、などを挙げ、金融政策が「マイノリティ」に対して配慮し得ない構造になっている、と指摘している。

 彼らはその面談において「FRBが存在しもないインフレとの闘いに明け暮れた結果として、我々はその犠牲者になっている」と不満を表明し、金融当局は利上げが低所得層や長期失業者への厳しい仕打ちになることが解っていない、と強く批判した。

 これに対してFRB側は「利上げは成長ペースを止めるためではなく、将来に禍根を残さぬようにするのが目的だ」と教科書的な回答で対応しているが、それが「FED UP」の人々を納得させ得るものでないことは明らかだ。

 利上げで企業業績が低迷し、給与が引き下げられ、就業機会も減少する、という彼らの現実的恐怖感を、FRBは誰一人として解消することは出来なかったのである。その翌日に、イエレン議長は「雇用は改善し個人消費は上向いている」として、利上げの必要性に言及したのであった。

 それは、英国の国民投票を前にしてエコノミストらが「EU離脱は英国経済にとって計り知れないダメージになる」と警告しながらも、移民問題に懸念を抱く大半の国民がそのメッセージを理解しえなかった構図と共鳴するものがある。

 経済学者はマクロな指標に基づいて物事を判断するが、格差が拡大する社会の中で分断されたミクロな社会現象を金融政策への判断に織り込むことは必ずしも得意ではない。それは日本にも当てはまる。

金融政策はどこに焦点を当てるべきか

 エリートの象徴であるFRBが、英国や中国などの海外要因に配慮することはあっても、マイノリティによる要請で利上げを断念することは無いだろう。但し、米国を含めて現代の各国中央銀行が、経済の「ニューノーマル」を踏まえて政策決定のための目標設定を変更すべき局面に直面している可能性は否めない。

 自然利子率の計測分析で知られるサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は「景気に中立的な実質金利である自然利子率」が米国だけでなく世界的に低下傾向にあり、その複合的要因は短期的に消滅しないと述べて、金融政策の目標もその構造変化に併せて修正されるべきだ、と述べている。

 同総裁は、今日の低い自然利子率のもとでの経済成長を目指すには、財政支出拡大に加えて金融政策のゴールを現在の物価目標を2%より高い水準(例えば4%)に変更するか、名目GDP水準の達成に切り替えるか、などの点に関して検討する必要がある、と主張する。

 ウィリアムズ総裁は、中世フィレンツェの外交官で現代ではその論説が誤解されることも少なくないマキャベリを敢えて引用しつつ、定期的に氾濫する河川への対応として「次の氾濫でより被害が少ないことを祈るか、次の氾濫での被害を最小に止めるべく修繕を行うか」の判断にいま中央銀行は迫られているのだ、と力説している。

 マキャベリはその「君主論」の第25章において、教皇ユリウス2世を引き合いに出し、変革期に「運命という女神」に果敢に立ち向かう必要性を論じていた。イエレン議長はジャクソンホール演説で現行の2%インフレ目標という「中銀の運命」に従順に従う姿勢を打ち出していたが、マイノリティによる切実な抗議を見るにつけ、果たしていま早期に引き締めを行う必要があるのだろうか、とも思いたくなる。

 米国は日本や欧州に比べて金融緩和策がより効果を発揮してきた、と言われているが、インフレ率やインフレ期待値は狙い通りには上昇しておらず、格差拡大構造は一段と悪化している。ウィリアムズ総裁が示唆したのは、金融当局は時代遅れのモデルや古い思考様式への執着を捨てるべきだ、との考えであり、その延長線上には金融政策はどこに焦点を当てるべきか、との本来的な問いかけも滲んでいるように思われる。

関心は依然として「円安・株高」

 それは、日銀が今月に行うであろう「総括的検証」のイメージにも重なってくる。非現実的とも思えるその物価目標が本当に国民の利益になるのか、一度立ち止まって再考するのが本来の検証の意味のように思えるが、黒田総裁と安倍首相との距離感を考えれば、その選択肢はなさそうだ。同総裁が白旗を挙げて方向転換するとは考え難く、むしろ追加緩和策のバージョン・アップを図るべく作業中と見て良いだろう。

 その関心は依然として「円安・株高」という特定の便益に集中しており、トリクル・ダウンの発想から抜け切れていないように見える。市場で話題になっている「ヘリコプター・マネー」という言葉を使うことは絶対に無いだろうが、日本政府と日銀の事実上の一体化運営に向かう道筋が「総括的検証」の名において敷かれる可能性は決して低くはないだろう。

 そのために考えられる方策の一つが、前述したウィリアムズ総裁が示唆する「名目GDP目標」である。安倍政権は「名目GDP600兆円」を目標として掲げており、日銀が「2年で2%の物価目標」に加えて新たに「600兆円」という数値目標を追加し、政府との連係プレー強化をアピールする手法も想定される。

 その際の具体策は、インフラ投資などのファイナンスに必要な新発超長期国債、財投機関債、地方債などを日銀が「市場からの購入で支える」というシナリオになるのではないか。そして、昨年秋に英国で話題になった「国民のための量的緩和」という表現を借用しながら国民の理解を求める、という筋書きになるのかもしれない。

 銀行を相手に国債をどんなに買い入れても、そのマネーは銀行に死蔵されてしまうのが日本の金融システムである。その失敗を踏まえて「国民のための量的緩和」と言い換えれば、「金融と財政の一体化」に対する反対論を封じ込めることが出来る、と官邸が考えてもおかしくはない。

国民との距離が広がりつつあるFRBと日銀

 ただそれは、マキャベリの言う「危機に備える修繕」ではなく「単なる時間稼ぎ」に終わる可能性もある。後者の確率は決して低くないだろう。仮にそうなった時は「円安・株安」という、新しいそして惨めな経済時代を日本にもたらすことも有り得よう。

 もちろん、「総括的検証」の結論は、マイナス金利の深掘りや購入資産対象の拡大などに限定され、物価目標達成時期の設定廃止といった見直し程度に終わる可能性もあるだろう。

 だがいまの日本は、株価や国債利回りが日銀に牛耳られているように、国家主義的な資本主義スタイルへと着実に傾き始めている。そんな「大きな政府」が日銀をコントロールしつつ、金融政策を財政政策に接近させる、という危険な実験を開始するのは時間の問題のように思われる。

 それが「国民のための金融政策」への模索の正しい姿であるかどうかは、甚だ疑問である。FRBと日銀の政策的方向性は全くの正反対にあるが、国民との距離が徐々に広がりつつあるという意味に限って言えば、両者は意外に共通しているのかもしれない。

『世界経済の新リスク』(ムック)好評発売中!

 世界的な低成長と広がる格差を背景に、ポピュリストが台頭し、労働者たちはエリートである為政者に怒りと不満をぶつけています。なぜ、これほどまで人々の怒りは増幅しているのでしょうか。経済のリスクは政治のリスクとなって、グローバル資本主義に新たな課題を突きつけています。
 その顕著な例がBREXIT(ブレグジット、英国のEU離脱)という国民投票結果でしたが、本書では、英フィナンシャル・タイムズの著名コラムニストのほか、世界的に著名な知識人や各分野の専門家の寄稿はじめ、企業経営者のインタビューや各地の現地リポートなどによって、英離脱で明らかになった新たな経済や政治のリスクについて分析します。
 

≪主な内容≫
■巻頭インタビュー イアン・ブレマー氏(国際政治学者)
■Chapter1 寄稿 世界の知の巨人が読む 英離脱後の世界
 ジョセフ・スティグリッツ (米コロンビア大学教授)
 ローレンス・サマーズ (米ハーバード大学教授 米元財務長官)
 マーティン・ウルフ (英フィナンシャル・タイムズ チーフ・エコノミクス・コメ ンテーター)
 ほか全7人。
■Chapter2 日本も直撃「失われる」10年
■Chapter3 寄稿 5つの論点で考える?来るべき新たなリスク
 ドイツ:強まるEU内の遠心力 ポピュリストを止められるか 熊谷 徹
 金融:日本にも波及しかねない「既知の未知」リスク 倉都康行
 政治:なぜ英国の有権者は「損」な選択を行ったのか 加藤創太
 ほか全5人
■Chapter4 世界を覆う「低成長」の雲
 激震 パナマ文書
 ほか
【発行:日経BP社 定価:907円+税】

このコラムについて

倉都康行の世界金融時評
日本、そして世界の金融を読み解くコラム。筆者はいわゆる金融商品の先駆けであるデリバティブズの日本導入と、世界での市場作りにいどんだ最初の世代の日本人。2008年7月に出版した『投資銀行バブルの終焉 サブプライム問題のメカニズム』で、サブプライムローン問題を予言した。理屈だけでない、現場を見た筆者ならではの金融時評。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/230160/082900016

 
世の中の経済サイクルから見た世界経済の現状
藤本誠之

 世の中は基本的にバブルが生じてそれが弾け、経済危機になって対応策を打つというサイクルになっています。アメリカは一度利上げを行っており、バブルのほぼ最終局面です。バブルをつぶしに行っているわけですが、できるだけ破裂させないようにしているのが現状です。
 一方、日本とヨーロッパはリーマンショック以降、またギリシャショック以降の対応策を講じ続けています。日本は今回、日銀がETFの買い入れ増額というさらなる金融緩和策を行いました。次回の日銀金融政策決定会合においてもさらなる緩和策が噂されるなど、まだまだ経済危機への対応策を必死に行っている状況です。ヨーロッパもBREXITもあったことで、今でも不透明感が漂っています。
 このところの動きとしては、まずヨーロッパではイギリスがEU離脱を国民投票で決めました。ただ、国民投票で決めたとは言っても法的拘束力はなく、実際にはまだEUを離脱するという通知すらしていません。本当に離脱するのかどうか、疑問も出始めています。ヨーロッパ全体としては、やはり今後も金融緩和が続いていくと思います。

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 一方、アメリカに関しては去年12月に利上げをし、次の利上げがどこで行われるのかと言われ続けていますが、まだ利上げには至っていません。ただ、足元では2ヶ月にわたりアメリカの雇用統計は非常に良く、利上げに向けた経済環境が整ってきた可能性があります。ジャクソンホールでのFRBイエレン議長の講演や、フィッシャー副議長の発言などでも利上げの可能性が示されています。中でもフィッシャー副議長は、年内3回のFOMCの内、2回で利上げを行うかもしれないと言い始めているので、少なくとも年内1回は利上げをするだろうと思われます。
 その1回は9月か12月か正直まだわかりませんが、これについては今週末のアメリカ雇用統計が鍵になるでしょう。内容が今回もよければ、9月利上げの可能性がかなり高まってくると言えます。逆に内容が悪ければ、さすがに9月利上げの説は一旦遠のき、年内の12月という形になると思います。
 そして日本に関しては、7月の金融政策決定会合において、結局追加緩和を行いました。ただしそこまで大きな緩和策ではなく、ETF、いわゆる上場投信の買い入れ額を、今までの3.3兆円から6兆円へと増やしました。株を買うのと同じ効果の買い入れをほぼ倍増としたことで、このことが今マーケットを少しゆがめていると言えます。
 買い入れについては機械的に買っていて、前場で大きくマイナスであれば、後場大引けにかけて買いが入ってくるのが通例となっています。逆に言うと、前場であまり下がっていなければ買いは入らないとなり買わない日が分かるので、その日は後場から急落するなど、日銀がどのタイミングでいくら買うのかを気にしての展開となっています。ただ、日銀は買う一方なので、最終的にはマーケットから株式を吸い上げていくことになり、マーケットにとってはプラスには違いありません。
 今後はさらなる追加緩和が期待されていますが、マイナス金利の深掘りもありそうです。銀行が痛むので難しいとは言われていますが、これ以上何か買うのも難しいと思います。国債を買えば流動性に欠けることになり、株をこれ以上買うのも難しいでしょう。他に大きく買える金融資産もあまりないので、マイナス金利の深掘りが考えられるでしょう。
今後の世界経済の注目ポイントは?
 注目となるのは、9月の日銀金融政策決定会合と、米FOMCのスケジュールが重なっていることです。もし今回のアメリカ雇用統計が良かった場合、日本で金融緩和としてマイナス金利の深掘りをし、そこで一気に円安が進み、その直後にFRBがFOMCで利上げを決めたとなれば、為替はさらに大きく動くでしょう。逆にそれを期待して買っていた場合、両方とも動かなければ失望も2倍になるわけです。ここに関しては、マーケットに非常に大きく影響が出ると思われます。
 日経平均を見てみましょう。前回解説をした5月12日のデータと今回の8月26日のデータを比べると、日経平均は51円安でした。一方、TOPIXは32ポイント安で、パーセントでみると日経平均よりかなり大きく下げています。日経平均の下げの比率が小さいのは、やはり日銀がETFで日経225ベースの組成のものを多く買っていると思われ、こうしたところにも歪みが出ているのです。

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 今後については、日本はさらなる金融緩和があるかが注目されています。ドル円は現状102円程度ですが、もし、BREXITで付けた99円08銭を超えて円高になる場合には、ここから一気に円高が進んでしまう可能性があります。それを止めるためにも日本は金融緩和をして日米の金利差を拡大させておく必要があるのです。
 そうしてみると、マイナス金利の深掘りとして、現在の-0.1%を-0.3%とするなどといった対応をする可能性はあると思われます。他に打つ手はなかなかないので厳しい状況ではあります。ただ、最近安倍首相の支持率が少し上昇してきていることは好材料です。リオオリンピックの閉幕式で安倍マリオに扮するなど、日本をアピールしたことも評価されているのかもしれませんが、安倍首相の力が強くなれば政策の動きも取りやすくなることが期待できます。
 日経平均の月足チャートをみると、結局今年に関しては年初に下がってからグダグダともみ合って本当に動いていないことがわかります。週足、日足で見ても同様で、下も上も大きくなく、本当のレンジ相場になってしまっています。

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 アメリカ株の注目も、次の利上げのタイミング次第と言えます。これはイエレン議長の言うように数字次第で、状況が整えばということになります。景気の良さが次の雇用統計で確認されるのかということになるわけですが、最近二回はポジティブサプライズになったものの、雇用統計は面白いほどマーケットの予想が外れます。
 ある意味これは当たり前で、何億人もいる国で、何十万人の増加や減少という予想が当たるわけがないと思えます。数字が出てからいろいろな理由付けがされますが、事前にはなかなかわからないものなのです。しかも数字は後から修正されることも多いのです。このように突っ込みどころ満載の雇用統計ですが、マーケットはとても気にしているので、影響度はかなり大きいのです。
 NYダウの週足チャートをみると、高値でのもみ合いの後一旦下がり、BREXITで再び下がったものの、前の高値を抜けてきています。日足で見てもBREXITでの急落も強烈でしたが、その後の急騰も強烈だったとわかります。上放れした後ももみ合いましたが更に高値を更新しています。ただ足元は利上げ懸念で少し下げてきています。
 ヨーロッパは英国のEU離脱という問題が出てきて不透明感が強まる中、景気もそれほど強くはなく、さらなる追加緩和の思惑が広がっています。ただ、イギリス経済はポンド安によって復活しつつあり、イギリスの株も堅調な動きになっています。ドイツDAX指数はBREXITで下落した後に戻してきたものの高値にはまだ遠く、アメリカ株ほどの強さはありません。来年にはドイツの選挙も控えていることから、やや不安もあるところだと思います。
講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 講師
SBI証券 投資調査部
シニアマーケットアナリスト
藤本 誠之
8月29日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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長いデフレを経験した日本はロシアの先生
久保田一竹コレクションを一括購入したオリガルヒが語る日露関係の今後
2016.9.1(木) 市野 ユーリア
パトフ・ショディエフ氏
パトフ・ショディエフという名前を聞いて、ぴんとくる日本人はそうはいないだろう。だが資源・エネルギービジネスの世界では、カザフスタンの鉱物資源で巨額の富を築いたウズベキスタン出身のオリガルヒ(新興財閥)として知る人ぞ知る大物だ。

このショディエフ氏、実はモスクワの大学で日本語を専攻して以来、日本に造詣が深く、在京ロシア大使館に勤務経験もある。「国際ショディエフ財団」を設立してからはロシアと日本の懸け橋としても幅広く活動している。

日本では、著名染色家、久保田一竹の着物コレクションを一括購入して話題になったこともある。

折しも日ソ共同宣言から60周年を迎える今年は、5月に安倍晋三首相がソチでウラジーミル・プーチン大統領と会談するなど、日ロ関係が大きく動く気配を見せている。そうした中、ショディエフ氏にモスクワのオフィスでインタビューした。

久保田一竹の所蔵品を一括購入して有名に

問2012年に(美術館の破綻に伴い)染色工芸家の久保田一竹氏の着物コレクションがバラバラに売られるのを防ぐために所蔵作品を一括購入するという前例のない行動に出た後、国際ショディエフ財団は日本で名前が知られるようになりました。

最近は、財団が手がける文化、出版プロジェクトの大部分が日本、そして日ロ協力と関係しています。両国の異文化コミュニケーションはまだ、政治やビジネスの関係よりも有望に思えますね。

答確かにそうです。財団のプロジェクトの大部分は日ロ関係に関連していて、すべてが同じ重要な使命によって結びついています。つまり、日本に関して適切かつ信頼できる情報を発信することです。

ソ連時代には、日本の伝統文化に対して関心が高まりました。1990年代後半には、ロシアで日本関係の一大消費ブームが起きました。ロシア人は数十年にわたり、魅力的な文化として日本を好んできました。

けれども今の時代の情報の質は時として、本当にお粗末なことがある。日本研究者として、私たちは一部の書籍に書かれていること、日本と日本人に関する歪んだ情報に同意できないことがままあります。

だからこそ、この数年、財団にとって重要な情報発信プロジェクトの1つが、モスクワで毎年開催される日本文化フェスティバルを後援することなのです。

他方、日本社会についても同じことが言えます。ロシアに対するステレオタイプな考え方がまだ健在で、残念なことに、北方の敵対的な国というイメージがあります。

私たちは、過去からのこうしたステレオタイプな考え方を克服する活動に貢献したいと強く思っています。

可能な限り機会をとらえて、ロシア人と日本人は文化面を含め多くの点でとてもよく似ていることを示していきたい。そのために、財団は日本で開催されるロシア文化フェスティバルの支援をもう1つの優先事項にしました。

問つまり、この数年間、ロシアでは「アジア・トレンド」が強くなっているということですね。ロシアが東方に目を向けるこの流れは、長期的な傾向か短期的な傾向か、どちらだとお考えですか。また、このトレンドは日ロの通商関係にどんな機会をもたすでしょう。

アジアに焦点合わせるロシアの政策

答アジアは常に、ロシアの外交政策と経済政策の焦点でした。これは長期的な傾向だと思います。安倍晋三首相が5月にロシアを訪問し、ハイレベルの対話を行った後、私たちは皆、これがビジネスの関係にとっても大きな弾みになることを期待しています。安倍首相がソチで提案したことは現実的で、近い将来、実現できるように思えます。

それに加え、安倍首相とウラジーミル・プーチン大統領とのこの会談で、2018年を「ロシアにおける日本年」「日本におけるロシア年」とすることも決まりました。

私たちとしては、今後1年半を、この重要なイベントに向けた準備期間にしたいと考えています。まず何より、出版活動の幅を広げます。

日ロ文化に関するテレビプロジェクトを立ち上げることもできるかもしれません。著名な日本研究家が参加するシリーズ番組を企画し、日本の今、最近の出来事について質の高い客観的な情報を提供してもいいでしょう。

これに呼応するプロジェクトとして、ロシアやロシアの国民、伝統、歴史、ライフスタイルに関するドキュメンタリー番組の制作について日本のテレビ局と合意できたら素晴らしいと思います。

私たちは心の底から、ロシア人と日本人をもっと近づけたいと思っているんです。

問最近ロシアでは、「カイゼン」や「カンバン方式」といった日本流経営に対する関心が再び高まっています。このテーマに関するセミナーや会議が幾度となく行われています。

一実業家として考えた時、日本企業のどの原理原則、アプローチを評価しますか。ロシア人やロシア企業にとって役に立ち、適用できると思うのは、どんな取り組みですか。

デフレを経験した日本に学ぶ

答過去数十年間の日本の経験を学ぶことは、非常に有益です。戦後に大きく躍進した後、「日本の奇跡」に取って代わり、深刻なデフレとそれによる不況が20年以上続きました。

そして今、日本は再度ブレークスルーを遂げるために、新しいリソースを見つけ、活用しています。だから、これを「ソフトパワー」と呼ぶのはぴったりかと思います。日本のポップカルチャー、アニメ、漫画、映画、和食を称賛する人たちの数は何千倍にも増えました。

個人的には、日本人の生き方を高く評価しています。宗教的なほどの清潔さへのこだわり、年配者に対する敬意、礼儀正しさ、勤勉さ。これと同じ伝統的な価値観がビジネスにも反映されています。

松下幸之助、盛田昭夫、今井正明が執筆した書籍はロシア語に翻訳されています。この偉人たちは、有名な日本企業の創業者であるばかりでなく、人間関係の構築方法、日本人の価値観に属する大事なことについて語っています。

ロシア国内で、とりわけ若い人たちの間で、このような知識を広めることが非常に重要だと思います。私自身、若い頃、日本に極めて大きな影響を受けました。今でも、全世界が日本人から学べることが多々あると思っています。

私が大学で日本語を専攻したことだけを取ってみても、私の将来を運命づけ、規律と勤勉さを身につける契機になりました。

だから、私は幸運が空から降ってくるような「アメリカンドリーム」よりも、粘り強さや長期的な目標といった日本のアプローチを信じています。私が楽に手に入れたお金は1ドルとしてありません。私が人生で築いた地位はどれも、自分自身の手で、額に汗した努力によって得たものです。

しかし、グローバル化は、西側に限らず東でも企業の標準化が進むことを意味しました。さもないと、評価が非常に難しいからです。グローバル化の過程において、日本の価値観の伝統的な制度が次第に曖昧になっていくかどうか。それが重大な問題だと思います。

問現在、日本でビジネスを手がける意欲、プロジェクトを開発する予定はありますか。

答私の主な事業はカザフスタンに集中しています。カザフスタンは、旧ソ連諸国の中で最も経済のダイナミズムが大きく、非常に有利な経営環境が生み出された国です。カザフからは数種類の原材料を日本に供給しています。

ソ連崩壊後、中央アジア諸国の中でもとりわけカザフスタンには最近、日本企業が強い関心を寄せています。近い将来、日本企業と協力関係を拡大できるのではないかと考えています。

ロシア留学のための基金を計画

問ビジネスと教育は切り離せないものです。歴史的に、日本企業は大学と密接に結びついています。

ショディエフ財団そのもの、そしてショディエフさん個人も、ロシアの教育プロジェクトに寛大な支援を与えてきました。教育の分野で日ロプロジェクトを立ち上げる計画はありますか。

答5月6日にソチで開催された日ロ首脳会談では、人的交流の重要性と交流を拡大する必要性が強調されました。これはまさに私たちが財団としてやっていることです。

私が今年4月からロシア日本研究者協会の活動に参加するようになって以来、新しい教育プロジェクトをいくつか開発しています。アイデアはたくさんあります。モスクワ国際関係大学のサマースクールを地理的に拡大すること、日本とロシアの大学の間で新たな機会を生み出すことなどがその一例です。

私たちはロシアについて学びたいと考える日本の若い学生たちを支援したいと思っています。ロシア留学を促すために奨学金を創設することも検討しています。

財団としては、こうした機会を模索するために日本の団体や大学とパートナーシップを組めないかと検討しています。

問最近のニュースで、特別な任務のために10月に訪日するロシア代表団のメンバーに入っていると聞きました。

答今年10月19日で日本とソ連が共同宣言に署名してから60周年を迎えます。両国間の大きな戦後問題をすべてカバーし、解決する文書です。

具体的には、外交関係が回復されました。賠償金の問題と日本人戦争捕虜の返還問題も解決されました。共同宣言は両国最高位の国家機関によって批准され、いまだに日ロ関係を規制する基本文書となっています。完全に解決されていないのは、唯一、領土の線引きの問題だけです。

今年10月17日に、ロシアと日本の政治家、社会学者、科学者が東京のシンポジウムに集まり、日ロ関係の戦後の発展に共同宣言が果たした役割を評価し、両国間の協力拡大に向けて共同宣言を活用する見通しについて議論することになっています。

経歴

パトフ・ショディエフ氏

カザフスタンにある世界有数の天然資源会社ユーラシアン・リソーシス・グループ(ERG)と鉱業投資会社IMRの共同創業者兼大株主で、同国大手銀行のユーラシアン・バンクの取締役会にも名を連ねている。

モスクワ国際関係大学で国際法を専攻し、優秀な成績で卒業。政治学の博士号を持ち、カザフスタン共和国自然科学学会の一員。日本の歴史、経済、政治に関して30本以上の学術論文を発表している。

1996年に国際ショディエフ財団を創設して以来、ロシアと日本の文化関係構築に多額の資金を援助を行っている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47714

 

大統領選の争点、不法移民で損するのは誰か
The Economist
賃金をめぐる戦い
2016年9月1日(木)
The Economist

 メキシコからの不法移民の歴史は100年に満たない。米国がメキシコとの国境の取り締まりについて初めて法を定めたのは1917年のことだ。その後は20世紀の終わりにかけて、繰り返し高まる反移民感情に合わせるように徐々に管理が強化されていった。
 米国が好景気に沸くと、メキシコの労働者たちは米国企業に誘われてリオ・グランデ川を渡る。景気の低迷期には不法入国者は悪者扱いされる。1930年代と1950年代には見境のない集団国外追放が行われた。1976年、当時のジェラルド・フォード大統領は「我が国の経済的繁栄を妨げるこれら600万〜800万人の外国人を排除する」ための最善の方法を模索した。
 トランプ氏が火をつけた最近の移民叩きも、ある意味でこの型に当てはまる。経済の停滞に続いて発生しているのだ。だが奇妙なことに、不法移民の数は2007年から横ばい状態にある。国境で逮捕されたメキシコ人の数は2000年には160万人に上ったが、2015年には18万8000人にまで激減している(図参照)。
不法移民の半数を占めるメキシコ人
 その理由の一つに、米国経済が後退し米労働市場の魅力が減退したことがある。同時に国境警備が以前よりずっと強化されたことと(国境警備員の数は1992年から2010年にかけて5倍に増えた)、メキシコの人口統計が変化したことも反映している。メキシコの出生率は1970年の前半以降、減少を続けている。

出所:The Economist/米国境警備隊、米国土安全保障省
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/083100099/01.png

 にもかかわらず、不法移民は今も米国の労働力の5%を占めている。不法移民が及ぼす影響を他の移民からの影響と区別することは難しい。不法移民を特定すること自体が至難の業だからだ。
 代わりに研究者は通常、移民の出身国に注目する。技術を持たず、米国人の親戚もいないメキシコ人にとって、合法的に米国に移住する方法はほとんどない。その結果、メキシコ人は不法移民全体の約半数を占めることになった。一方で、合法移民におけるメキシコ人の割合はわずか5分の1にすぎない。
 メキシコ出身の移民は他国からの移民に比べて教育水準が低い傾向にある。米シンクタンクのピューリサーチセンターによると、2014年の時点で高校教育を受けていない者の割合は6割近くにのぼった。非メキシコ系移民の場合は2割未満である。不法移民は合法移民に比べ、サービス業や建設業など熟練を要さない職に就く割合が高い。
移民が増えれば誰かが損する
 学者たちの間では、合法か非合法かを問わず非熟練の移民が賃金に与える影響について、活気あふれる(時には丁々発止の)議論が交わされている。最近ではカリフォルニア大学バークレー校のデイビッド・カード教授とハーバード大学のジョージ・ボルハス教授の論争が注目を集めた。
 1980年にキューバから大量の難民がフロリダ州マイアミに上陸し(いわゆる「マリエル難民事件」)、移民が予想を超えて急増した。これがもたらした影響について、両氏は意見を異にしている。
 カード氏は1990年、この難民流入がマイアミの非熟練労働者の賃金に何の影響も与えなかったことを明らかにした。しかしボルハス氏はこの分析を再検討し、実際には高校中退者の賃金が大幅に低下したと主張している。
 しかしながら、この2人の論争はさらに広く展開されている議論のほんの一部にすぎない。その他の研究の大半は、移民の流入が少なくとも一部の労働者に害を及ぼすことを示している。「移民が増加し経済における技能バランスが変わると、一部の労働者は損失を被る」という経済理論の予測どおりである。したがって議論の焦点は、「誰が」「どの程度」苦しむかとなる。
移民は移民と競合する
 研究の結果は2つの要素に左右される。第1は、「非熟練労働者」を何と定義するかだ。カード氏などの経済学者は高校の卒業者と中退者の両方を含める。2014年、米国にはこうした労働者が6400万人存在していた(25〜64歳が対象)。一方、ボルハス氏は自らの研究で高校中退者を別に扱った。その場合、技能を持たない移民が職を奪い合う労働者の総数は減り、2000万人と なる。

出所:The Economist/ピューリサーチセンター
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/083100099/02.png

 調査結果を左右する第2の要素は、同様の教育を受けている移民労働者と現地生まれの労働者が互いにとって代わる(あるいは補う)存在であるのかどうかだ。2011年、ジャンマルコ・オッタビアーノ氏とジョバンニ・ペリ氏が行った研究では、ほとんどの場合、移民は移民と競合するとみられることが明らかになった(年齢と教育について調整を行った場合でも)。
 考え得る理由の一つは、移民が増加した場合、熟練度の低い米国人労働者は英語力をより生かせる仕事に就くことで対応するということだ。両氏は、1990〜2006年の移民は米国人の非熟練労働者の賃金をわずかに上昇させたが、既に米国に移住していた移民労働者の賃金は6.7%低下させたと結論づけた。
 カード氏は、移民によって高校中退者の賃金が20年間で約5%下がったことは「最悪のシナリオ」だと言いながらも、テクノロジーの進歩やその他の動向がもたらす影響に比べれば大きなものではないとしている。
 これに対し、ボルハス氏はもっと大規模な影響が考えられると指摘する。それでも、労働者と新たな移民が職を競い合うケースが増すほど、移民が相対賃金に影響を与える可能性が高まることは、誰もが同意するところだ。
合法移民と不法移民の間にある格差
 メキシコからの不法移民と最も競合するのが合法的に入国したメキシコ人移民だとすれば、不法移民の影響で合法移民の賃金が下がる可能性が最も濃厚だ。同時に、隠れて不法移民を雇う企業は彼らに対して最低賃金も払わず、その他の規定も守らないため、状況はさらに悪化すると思われる。シカゴ、ロサンゼルス、ニューヨークの低賃金労働者を対象に2008年に行われたある調査では、不法移民労働者の中で賃金が最低賃金を下回る人々の割合は37%だった。これが合法移民労働者では21%にとどまった。
 また、不法移民は転職が難しい場合が多い。とりわけ従業員の身分証明書をチェックするよう雇用主に義務づけている州においてはそうである。移動の自由を欠く彼らの交渉力は低減する。このことは不法移民労働者の賃金上昇を確実に阻むと思われる。
 ピューリサーチセンターは2009年、渡米して10年未満の場合、合法移民の所得は不法移民に比べて18%多いことを突き止めた。在米期間が10年を超える移民の場合は実に42%の差が見られた。ただし、両グループとも米国人労働者の賃金よりさらに低かった可能性がある。
不法移民を厳しく取り締まると経済が減速する
 不法移民の賃金が低いということは、裏を返せば、彼らと職を奪い合うことのない労働者が受ける経済的恩恵が大きいことを意味する。不法移民が引き起こす影響を調べたある希少な調査によると、ジョージア州では企業が雇用する不法移民の割合が1ポイント増えると賃金が約0.1%上昇したという。
 こうした事象が起こる理由の一つとして、従業員が持つスキルが多様化したことで企業が恩恵を受けたことが考えられる。闇ルートで労働者を雇うことで削減したコストを従業員と共有したとも考えられる。
 もしもトランプ大統領が誕生し、全ての不法移民を国外追放したとしたら、米国経済は大きな痛手を受けるだろう。アリゾナ州の事例を見てみるといい。格付け機関の米ムーディーズがウォールストリートジャーナル紙のために行った研究によると、アリゾナ州では2007年に不法移民を厳しく取り締まった結果、経済が2%縮小したという。
 労働者の大半は所得を減らすことになる。だが面白いことに、不法移民を一斉に追放した時に、最も恩恵を享受するのは合法的に米国に渡ってきた移民たちなのだ。
© 2016 The Economist Newspaper Limited.
Aug 27th - Sep 2 2016 | From the print edition
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。


このコラムについて
The Economist
Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。
世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。
記事は、「地域」ごとのニュースのほか、「科学・技術」「本・芸術」などで構成されています。
このコラムではEconomistから厳選した記事を選び日本語でお届けします。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/083100099/ 

 

大統領選の争点、不法移民で損するのは誰か
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賃金をめぐる戦い
2016年9月1日(木)
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 メキシコからの不法移民の歴史は100年に満たない。米国がメキシコとの国境の取り締まりについて初めて法を定めたのは1917年のことだ。その後は20世紀の終わりにかけて、繰り返し高まる反移民感情に合わせるように徐々に管理が強化されていった。
 米国が好景気に沸くと、メキシコの労働者たちは米国企業に誘われてリオ・グランデ川を渡る。景気の低迷期には不法入国者は悪者扱いされる。1930年代と1950年代には見境のない集団国外追放が行われた。1976年、当時のジェラルド・フォード大統領は「我が国の経済的繁栄を妨げるこれら600万〜800万人の外国人を排除する」ための最善の方法を模索した。
 トランプ氏が火をつけた最近の移民叩きも、ある意味でこの型に当てはまる。経済の停滞に続いて発生しているのだ。だが奇妙なことに、不法移民の数は2007年から横ばい状態にある。国境で逮捕されたメキシコ人の数は2000年には160万人に上ったが、2015年には18万8000人にまで激減している(図参照)。
不法移民の半数を占めるメキシコ人
 その理由の一つに、米国経済が後退し米労働市場の魅力が減退したことがある。同時に国境警備が以前よりずっと強化されたことと(国境警備員の数は1992年から2010年にかけて5倍に増えた)、メキシコの人口統計が変化したことも反映している。メキシコの出生率は1970年の前半以降、減少を続けている。

出所:The Economist/米国境警備隊、米国土安全保障省
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/083100099/01.png

 にもかかわらず、不法移民は今も米国の労働力の5%を占めている。不法移民が及ぼす影響を他の移民からの影響と区別することは難しい。不法移民を特定すること自体が至難の業だからだ。
 代わりに研究者は通常、移民の出身国に注目する。技術を持たず、米国人の親戚もいないメキシコ人にとって、合法的に米国に移住する方法はほとんどない。その結果、メキシコ人は不法移民全体の約半数を占めることになった。一方で、合法移民におけるメキシコ人の割合はわずか5分の1にすぎない。
 メキシコ出身の移民は他国からの移民に比べて教育水準が低い傾向にある。米シンクタンクのピューリサーチセンターによると、2014年の時点で高校教育を受けていない者の割合は6割近くにのぼった。非メキシコ系移民の場合は2割未満である。不法移民は合法移民に比べ、サービス業や建設業など熟練を要さない職に就く割合が高い。
移民が増えれば誰かが損する
 学者たちの間では、合法か非合法かを問わず非熟練の移民が賃金に与える影響について、活気あふれる(時には丁々発止の)議論が交わされている。最近ではカリフォルニア大学バークレー校のデイビッド・カード教授とハーバード大学のジョージ・ボルハス教授の論争が注目を集めた。
 1980年にキューバから大量の難民がフロリダ州マイアミに上陸し(いわゆる「マリエル難民事件」)、移民が予想を超えて急増した。これがもたらした影響について、両氏は意見を異にしている。
 カード氏は1990年、この難民流入がマイアミの非熟練労働者の賃金に何の影響も与えなかったことを明らかにした。しかしボルハス氏はこの分析を再検討し、実際には高校中退者の賃金が大幅に低下したと主張している。
 しかしながら、この2人の論争はさらに広く展開されている議論のほんの一部にすぎない。その他の研究の大半は、移民の流入が少なくとも一部の労働者に害を及ぼすことを示している。「移民が増加し経済における技能バランスが変わると、一部の労働者は損失を被る」という経済理論の予測どおりである。したがって議論の焦点は、「誰が」「どの程度」苦しむかとなる。
移民は移民と競合する
 研究の結果は2つの要素に左右される。第1は、「非熟練労働者」を何と定義するかだ。カード氏などの経済学者は高校の卒業者と中退者の両方を含める。2014年、米国にはこうした労働者が6400万人存在していた(25〜64歳が対象)。一方、ボルハス氏は自らの研究で高校中退者を別に扱った。その場合、技能を持たない移民が職を奪い合う労働者の総数は減り、2000万人と なる。

出所:The Economist/ピューリサーチセンター
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/083100099/02.png

 調査結果を左右する第2の要素は、同様の教育を受けている移民労働者と現地生まれの労働者が互いにとって代わる(あるいは補う)存在であるのかどうかだ。2011年、ジャンマルコ・オッタビアーノ氏とジョバンニ・ペリ氏が行った研究では、ほとんどの場合、移民は移民と競合するとみられることが明らかになった(年齢と教育について調整を行った場合でも)。
 考え得る理由の一つは、移民が増加した場合、熟練度の低い米国人労働者は英語力をより生かせる仕事に就くことで対応するということだ。両氏は、1990〜2006年の移民は米国人の非熟練労働者の賃金をわずかに上昇させたが、既に米国に移住していた移民労働者の賃金は6.7%低下させたと結論づけた。
 カード氏は、移民によって高校中退者の賃金が20年間で約5%下がったことは「最悪のシナリオ」だと言いながらも、テクノロジーの進歩やその他の動向がもたらす影響に比べれば大きなものではないとしている。
 これに対し、ボルハス氏はもっと大規模な影響が考えられると指摘する。それでも、労働者と新たな移民が職を競い合うケースが増すほど、移民が相対賃金に影響を与える可能性が高まることは、誰もが同意するところだ。
合法移民と不法移民の間にある格差
 メキシコからの不法移民と最も競合するのが合法的に入国したメキシコ人移民だとすれば、不法移民の影響で合法移民の賃金が下がる可能性が最も濃厚だ。同時に、隠れて不法移民を雇う企業は彼らに対して最低賃金も払わず、その他の規定も守らないため、状況はさらに悪化すると思われる。シカゴ、ロサンゼルス、ニューヨークの低賃金労働者を対象に2008年に行われたある調査では、不法移民労働者の中で賃金が最低賃金を下回る人々の割合は37%だった。これが合法移民労働者では21%にとどまった。
 また、不法移民は転職が難しい場合が多い。とりわけ従業員の身分証明書をチェックするよう雇用主に義務づけている州においてはそうである。移動の自由を欠く彼らの交渉力は低減する。このことは不法移民労働者の賃金上昇を確実に阻むと思われる。
 ピューリサーチセンターは2009年、渡米して10年未満の場合、合法移民の所得は不法移民に比べて18%多いことを突き止めた。在米期間が10年を超える移民の場合は実に42%の差が見られた。ただし、両グループとも米国人労働者の賃金よりさらに低かった可能性がある。
不法移民を厳しく取り締まると経済が減速する
 不法移民の賃金が低いということは、裏を返せば、彼らと職を奪い合うことのない労働者が受ける経済的恩恵が大きいことを意味する。不法移民が引き起こす影響を調べたある希少な調査によると、ジョージア州では企業が雇用する不法移民の割合が1ポイント増えると賃金が約0.1%上昇したという。
 こうした事象が起こる理由の一つとして、従業員が持つスキルが多様化したことで企業が恩恵を受けたことが考えられる。闇ルートで労働者を雇うことで削減したコストを従業員と共有したとも考えられる。
 もしもトランプ大統領が誕生し、全ての不法移民を国外追放したとしたら、米国経済は大きな痛手を受けるだろう。アリゾナ州の事例を見てみるといい。格付け機関の米ムーディーズがウォールストリートジャーナル紙のために行った研究によると、アリゾナ州では2007年に不法移民を厳しく取り締まった結果、経済が2%縮小したという。
 労働者の大半は所得を減らすことになる。だが面白いことに、不法移民を一斉に追放した時に、最も恩恵を享受するのは合法的に米国に渡ってきた移民たちなのだ。
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Aug 27th - Sep 2 2016 | From the print edition
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Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。
世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。
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コメント
 
1. 2016年9月01日 02:10:10 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[2528]

>交通弱者にとって、地域の足が充実することは大歓迎だが、それなら親しみ慣れているタクシーの方がよい

そういう人は、有人車を使い続ければいい

ただし、技術が進歩すれば、いずれ高くて危険な有人車は、

よほどの道楽金持ち以外、誰も使わなくなるだろう

>自動車メーカーにとってこれは大きな足かせだ。極論を言えば、自らの技術力により2000人の命を救ったとしても、2000人の死亡に関わる過失犯になってしまう可能性すらある

その論理で言えば、現実には、今でも4千人の大量殺人に関与している過失犯?なんだが

全て運転手らの責任として、その刑事責任が問われていないだけだ


しかし原発同様、裁判で負けるリスクがあるとしたらメーカーは後ろ向きになるだろう

日本では、ありがちなパターンだなw



2. 2016年9月01日 02:27:01 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[2529]

>不法移民を一斉に追放した時に、最も恩恵を享受するのは合法的に米国に渡ってきた移民たち

確かに、合法移民は、トランプを支持する方が合理的で得だな

ただし、その後、自分たちが差別され追い出されない限りにおいてだがw

hayabusa3.2ch.sc/test/read.cgi/news/1456368127/
2016/02/25
米CNNが実施した投票者への調査によれば、ヒスパニック系の45%がトランプ氏を支持。他候補を圧倒 ... チリから合法的に移住したフリアン・オルテガさん(56)もトランプ氏に投票し、「米国は不法移民に侵略されてい


3. 2016年9月01日 02:38:17 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[2530]

>国民との距離が広がりつつあるFRBと日銀
>「FED UP」金融政策が「マイノリティ」に対して配慮し得ない構造

FRBメンバーに入るようなマイノリティは既に、FEEDUPが考えるようなマイノリティではなく

貧困層ばかりに特別な配慮などしないだろう


>金融当局は利上げが低所得層や長期失業者への厳しい仕打ちになることが解っていない、と強く批判
>FRB側は「利上げは成長ペースを止めるためではなく、将来に禍根を残さぬようにするのが目的だ」と教科書的な回答で対応しているが、それが「FED UP」の人々を納得させ得るものでない

「インフレになれば、名目賃金が上がっても、実質では下がり、労働生産性の低い底辺層が損をする」
「またバブルが拡大すれば、やはり最後は大きな損失になる」

などと説明した上で

「利上げで、名目賃金が伸びず、それが不満なら、再分配政策が必要だが
それは政府に要求しなさい
財政政策は、中銀の仕事ではない」

と、きっちり言うべきだが

政府が頼りにならないから、FRBに文句を言っているわけだから、

やはり納得しないだろうなw



4. 2016年9月01日 02:49:45 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[2531]

>銀行を相手に国債をどんなに買い入れても、そのマネーは銀行に死蔵
>その失敗を踏まえて「国民のための量的緩和」と言い換えれば、「金融と財政の一体化」に対する反対論を封じ込めることが出来る、と官邸が考えてもおかしくはない
>仮にそうなった時は「円安・株安」という、新しいそして惨めな経済時代を日本にもたらすことも

これは日銀というより政府(国民)の改革次第だろう


>「総括的検証」の結論は、マイナス金利の深掘りや購入資産対象の拡大などに限定され、物価目標達成時期の設定廃止といった見直し程度に終わる可能性も
>いまの日本は、株価や国債利回りが日銀に牛耳られているように、国家主義的な資本主義スタイルへと着実に傾き始めている。そんな「大きな政府」が日銀をコントロールしつつ、金融政策を財政政策に接近させる、という危険な実験を開始するのは時間の問題


政府・国民が変わらなければ、いずれは、そうなるだろう

>それが「国民のための金融政策」への模索の正しい姿であるかどうかは、甚だ疑問

底辺層から富裕層まで、国民の政治依存は強まりつつある一方だから

社会民主主義を実現するための国家資本主義と、さらなる衰退は、

大衆民主主義の必然、つまり愚民の自業自得ということになるだろうな



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