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「アラフォー会社員が死ぬほど忙しい」のは日本企業の特殊な人事制度が原因
http://nikkan-spa.jp/1188796
2016.08.30 日刊SPA!
誰もがふと口にする「死ぬほど忙しい」というセリフ。単なる挨拶代りのこともあれば、実際に過労死寸前という場合もある。週刊SPA!が35〜45歳の男性サラリーマン1979人を対象にアンケートを取ると、実に8割以上が忙しさを実感していることが判明。では、なぜこんなにもアラフォー会社員は激務を強いられるのか?
「終業時刻後に管理職がブラリと視察に来て『まだ居残ってる奴がいるじゃないか!』とチクチク言ってくるんです」(田中さん)
◆かつての「窓際族」が「逃げ切り族」として羨望される現代。
特殊な企業体質が生み出す“激務”の構造を解き明かす
「5年前から社長提案で残業削減運動が始まり、非管理職の部下はほぼ定時で帰るようになりました。ただ、そのしわ寄せが中間管理職に集中して……。経理処理やら仕事が山積みになる決算月は、休日を全部返上して、月の労働時間は300時間を超えました。しかも、若手に残業を命じられないので、重要な仕事を任せることができず、まったく育たない。この状況がいつまで続くのかと思うと、心底憂鬱になります」(田中健吾さん・仮名・42歳・流通)
とりわけアラフォー世代が背負わされる過重な業務。その原因は、「日本企業の特殊な人事制度にある」と人事コンサルタントの城繁幸氏は指摘する。
「海外では『職務給』といって、仕事に値札がついている。同じ仕事なら20代がやっても50代がやっても給料は一緒で、業務内容も細分化・明確化されている。一方、日本企業は『属人給』といって、個人に値札がついているんです。つまり、大卒かどうかや勤続年数で給料が決まり、その個人が何の仕事をするかは明確化されていない。業務内容が曖昧であれば、効率化は難しく、おのずと誰かが穴埋めをしなくてはなりません」
加えて、「業務が広範になるほど社畜化しやすい環境になる」とは組織人事ストラテジストの新井規夫氏。
「専門性が育たないので市場価値が高まらず、企業も中途採用に消極的。結果、労働力が非流動的で固定化するので、雇用契約がそのまま隷属的な身分制度になってしまうのです」
この「労働力の非流動性」は“解雇されにくい”という盾にもなるわけだが、アラフォー世代にとっては、歓迎できる話ではない。
「解雇されにくいがゆえに、バブル世代である40代後半以上がだぶついています。彼らの多くは生産性以上の給料を得る。しかし、企業の人件費のパイは一定なので、働き盛りのアラフォー世代が給料以上の生産性を要求されるのです」(新井氏)
◆長時間働くことが会社に尽くした証
「属人給」という特殊な人事制度によって、社内報の作成と10億の案件を取り続ける人間が同じ給料というのが日本企業の特徴。
「評価の目安が業務内容ではなく『どれだけ会社に尽くしたか?』となれば、アリバイづくりの無駄な仕事も増えるし、わかりやすい自己表明として長時間労働合戦にもなりやすい」(城氏)
「あれで自分より給料が高いんだからやりきれない。『そこを目指せ』と言われても、モチベーションになりません」(葛西さん)
その典型例が、老舗電気メーカーに勤める葛西弘明さん(仮名・41歳)の怒りだ。
「50代以上が完全に余っていて、“名誉部長”の揃い踏み状態。昨年末、取引先へのお歳暮のリストを総務部に送ったら、ある名誉部長から『そういう案件は俺を通さないと困る。稟議書を出せ』とのお達し。年末でただでさえ忙しいのに余計な仕事増やすなって、内心ぶちギレでしたよ」
“逃げ切り世代”に仕事を増やされ、かといって自分たちが逃げ切れるわけでもなし……。
「そもそもアラフォー世代が置かれるプレーイングマネジャーという立場が、本来ならば非常事態。プレーヤーとマネジャーの業務はまったく別であり、『どっちもやれ』と社内の帳尻合わせに都合よく利用されているにすぎない」(新井氏)
果たして不遇のアラフォー世代の激務が報われる日は来るのだろうか?
8/30発売の週刊SPA!に掲載されている特集『「死ぬほど忙しい」の正体』では、我々を取り巻く激務の謎を徹底調査。また、「休日に仕事を家に持ち込む?」「平均睡眠時間は?」「忙しくても頑張る理由は?」「家事や育児は負担になってる?」などのアンケートも敢行し、激務の実態に迫っている。さらに、識者による「激務に忙殺されないための処方箋」も掲載。なぜアラフォーだけが割を食わなければならないのか。さまざまな見地から検証している。
【新井規夫氏】
組織人事ストラテジスト。大手ホテル、ベンチャー2社、慶応大学MBA、楽天の人材戦略室長などを経て、‘14年に独立。みぜん合同会社CEOとして活動中
【城 繁幸氏】
人事コンサルタント。キャリアデザインを中心としたコンサルティング、執筆を手掛ける。近著に『「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話』
<取材・文・撮影/週刊SPA!編集部>
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