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もっと貪欲に、と米VC−借りる理由を言えない日本の起業家
中村友治、Pavel Alpeyev
2016年8月30日 07:15 JST
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• 日本のベンチャー投資は大企業中心、官僚的判断で成功例少ない
• 埋もれた優良ベンチャーを世界に、世界の投資家を日本に
ベンチャーキャピタリストのジェームズ・ライニー氏がシリコンバレーにいたころは四六時中、出資を求めて売り込む起業家たちに追いかけられていたものだ。しかし、東京に来て様相が一変した。日本の起業家たちはお金のことになると卑屈になり、口にすることさえ消極的という。
シリコンバレーに本拠を置くベンチャーキャピタル(VC)、500スタートアップスが日本向けVCファンドを立ち上げたのは昨年のこと。ライニー氏はその責任者を務めている。日本の起業家にはVC側から気軽に話す機会を作らねばならず、面会した後でも話はなかなか本題の出資には入らないという。
ライニー氏は「日本では起業家がVCにコンタクトする理由をわれわれが考えなければならない」とインタビューで話した。同氏は「あのお、ちょっと教えてほしいんですが、(声をひそめて)実はお金を調達する必要があるんですけど」と起業家たちの物まねをしてみせた。
日本ではベンチャーといっても大企業が関与している場合が多く、それが米国や中国のように大ブレークする成功事例が少ない一因ではないかとライニー氏はみている。調査会社のCBインサイツによると、今年上期の日本のベンチャー向け投資の68%に大企業が関与していて、米国の27 %を大幅に上回っている。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iz1TmiRVWRfI/v2/-1x-1.png
サラリーマンVC
世界に打って出るようなベンチャーの発掘を大企業に任せているのは問題があるとライニー氏はみている。投資判断をする企業幹部というのは自分の立場を守ろうとして、リスクを取らずに官僚的に判断するきらいがあるという。出資のための提案説明が形式ばっているのも健全ではないと話す。
「企業VCはしばしばサラリーマン的で、出資が成功しようがしまいが給料には影響ない」とライニー氏。同氏は日本のJPモルガン・チェースでキャリアをスタートさせた後、起業に踏み切り、シリコンバレーにあるディー・エヌ・エー(DeNA)のベンチャー部門で働いた経験もある。
こうした日本市場の特徴に加えて言葉の障壁もあって、ライニー氏には日本のベンチャーを取り巻く環境が「ブラックボックス」と映る。このため同氏は隠れた有望ベンチャーを発掘して、500スタートアップスのネットワークを通じて世界市場に担ぎ出すとともに、海外投資家に有望企業を紹介する、そんな懸け橋になりたいと考えている。
世界へのアプローチ
昨年、500スタートアップスが日本向けVCファンドを立ち上げてから、目標とする3000万ドル(30億6000万円)に近い資金を投資家から集めた。これまでに出資したのは土木用バーチャルリアリティー(VR)ソフト、会議室共有サービス、観光客向けのレストラン予約アプリなどを手掛ける6社で、1社当たりは10万−50万ドル。
仮想現実の中で風景や建物をつくることのできる土木ソフトウエアを開発したディヴァースの創業者、沼倉正吾氏は電話取材に、出資者として500スタートアップスが加わることで世界へのアプローチが容易になり、来年の製品発売後は提携もしやすくなるはずだと話した。
沼倉氏は、海外ではほとんどのVCが起業の経験を持っているが、「日本ではサラリーマン的VCが多い。起業を経験したVCはプロダクトに対する見方やアドバイスが違ってくる」と話した。
原題:U.S. Venture Firm Tries to Get Japan Startups to Pitch for Money(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-29/OCNS706JIJV301
ウォール街の強力支配に歯が立たず−米国債市場で命絶たれた新興企業
Matthew Leising、John Detrixhe
2016年8月30日 07:48 JST
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ダイレクト・マッチは銀行との提携迫られ、新規参入を断念
対照的に米国株市場ではIEXが13番目の取引所をスタート
13兆ドル(約1330兆円)規模の米国債市場を牛耳る銀行に代わる選択肢となることを目指した新興企業ダイレクト・マッチ・ホールディングスは、1件の取引もアレンジできないまま企業生命を終えた。
ダイレクト・マッチ(本社ニューヨーク)は、銀行や電子取引会社が長年独占してきた匿名の取引所形式のトレーディングシステムをヘッジファンドや資産運用会社に提供する意向だった。だが、米国債の決済を可能にするためには、これに現在携わる銀行のどこかと提携する必要があった。米銀ステート・ストリートは提携に当初同意したが、その後撤回し、ダイレクト・マッチの運命を決定づけた。
提携を撤回した米銀ステート・ストリート
米国債取引は引き続き銀行が支配し、競争相手になりそうな勢力を阻止できる。米国株市場はそのような状況にはなく、米IEXグループが米国で13番目となる米株式取引所をスタートさせて間もない。IEXが市場に切り込むのに、銀行と提携する必要はなかった。だが、世界を代表する資産の一つである米国債の市場では、ウォール街の大銀行が依然として幅を利かせている。
「米国債市場の仕組みにもっと注意が払われない限り、新興企業はこの市場にイノベーションを持ち込むのに苦労する」と、ダイレクト・マッチの共同創業者ジム・グレコ氏はインタビューで述べた。同氏はビジネス・インサイダーが今月23日公表したエッセーで、テスト取引完了前に閉鎖した同社での悪戦苦闘を語った。インタビューではさらに、「当局と話した際には、市場へのアクセスを増やし取引所間の競争を促すために、中央決済システムの公正かつ一貫したルールを確立するように求めた」と説明した。
ステート・ストリート広報担当のアン・マクナリー氏はコメントを控えた。
直接取引
米国証券業金融市場協会(SIFMA)によると、毎日約5000億ドル相当の米国債が取引される。この半分弱がディーラーと顧客の直接取引であることが、昨年のニューヨーク連銀報告書で明らかになっているが、コンサルティング会社グリニッチ・アソシエイツによれば、この市場部分は取引高の60%を握る銀行5行に支配されている。10年前の割合は44%だったという。同社は銀行名を挙げていない。
この直接取引では規模も価格もそのトレーディングに携わる参加者にしか分からないため、投資家の側では有利に取引されているのか分かりにくい。残る取引はICAPとナスダック、トレードウェブ・マーケッツの電子市場で行われる。ここでは、このシステムの利用者全てに取引の規模や価格が分かるが、その大半がウォール街のディーラーやジャンプ・トレーディングのような自動化取引を扱う会社だ。
投資銀行ジェフリーズや高頻度取引会社ゲトコでの勤務経験があるグレコ氏は、これまでにはない取引プラットホームをつくろうと思っていた。金融危機後のウォール街への規制が、投資家や取引会社向けのプラットホームを築くチャンスを生み出したと踏んだのだ。だが、これを実現させるには取引を決済する方法が必要で、債券取引決済機関であるFICCに加わる必要があった。ダイレクト・マッチのような新興企業がそのためにクリアしなければならない資本やその他の条件は厳しく、このため銀行との提携が必要になった。
原題:Demise of Direct Match Shows Bank Death-Grip on Treasury Market(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-29/OCNWDQ6K50Y901
アマゾンに挑む巨象・ウォルマート
企業研究
2016年8月30日(火)
篠原 匡、小平 和良
世界最大の小売業、米ウォルマートがリアル店舗とデジタルの融合を加速させている。商品の受け取りや決済アプリ、ネット通販システムの一新など総力を挙げて改革中だ。食品に狙いを定めたアマゾンが迫る。実店舗の巨象とネットの巨人の最終決戦の行方は?
(写真=AP/アフロ)
米コロラド州コロラドスプリングスに住むマーシャ・ソース氏。保険代理店に勤める彼女は、週3回は近所のウォルマートを使うヘビーユーザーだが、そんな彼女にも不満はあった。
店舗があまりに巨大なためお目当ての商品を探し回るのに一苦労。在庫切れで商品が買えないこともあった。だが、最近は同社が始めた新サービスのおかげで買い物のストレスが軽減したという。店内ピックアップサービスだ。
パソコンやスマートフォンで商品を注文後、店舗の準備ができ次第、メールで通知が届き、店舗に商品を取りに行く。商品は既に包装されているので、専用カウンターでの支払い以外ほとんど時間がかからない。商品の保管は7日間。買い物時間の節約になっている。
セービングキャッチャー。レシートのQRコードを専用アプリで読み取ると、近隣の競合他社の価格を提示、差額をクーポンで戻してくれる
加えて、同社のモバイルアプリ「セービングキャッチャー」も大のお気に入りだ。これは価格比較アプリで、レシートのQRコードを読み取ると周辺の競合他社と価格を比較、他社よりも高ければ差額をクーポンで戻すというものだ。「これまでに40ドル以上が戻ってきた。旦那のレシートももらって、バンバンスキャンしているわ」。
ウォルマート・ストアーズ。2016年1月期の売上高は4821億3000万ドル(51兆1057億円)で、日本の税収に迫る勢い。売上高では世界最大の企業でもある。純利益も146億9400万ドル(1兆5575億円)、従業員は世界で230万人と桁違いの規模を誇る。
こちらは店内ピックアップサービス用のカウンター。主に雑貨や日用品で使われる。すべてのスーパーセンターで利用可能
50以上の都市で利用可能なカーブサイドピックアップ。端末に注文番号を打ち込むと、店員が商品を車に積んでくれる
6月には米配車サービス大手のウーバーやリフトと提携、商品の自宅配送サービスをテストすると発表した(写真=ロイター/アフロ)
そのウォルマートがここ数年、強力に推し進めているのが、「シームレスショッピング」である。シームレスショッピングとは、店舗やネットの垣根をなくし、消費者がストレスを感じることなく買い物ができる環境を提供するというコンセプトのことだ。
「我々が目指しているのは、店舗もネットもなく『ウォルマートで買い物をする』ということだけを消費者が考えればいい状態を作ること」と、同社のダグ・マクミロンCEO(最高経営責任者)は語る。その実現のために、ウォルマートは店舗とデジタルの融合を急ぐ。
商品の受け取りについては、冒頭の店内ピックアップに加えて、専用ステーションで商品を受け取る「カーブサイドピックアップ」の運用を始めた。ドライブスルーのようなもので、オンラインで生鮮食品や加工食品を注文後、指定された時間に行けば、従業員が商品を車のトランクに積み込んでくれる。
また、6月には生鮮品の宅配事業で米配車サービスのウーバー・テクノロジーやリフトとの提携を発表した。あくまでもテスト段階だが、自宅への配送を希望する消費者のために、店舗から自宅までの配送をウーバーなどの運転手に任せる戦略だ。実現すれば、受け取りの時間帯指定がしやすくなる。
他にも、店内に受け取り専用の巨大ロッカーを置いて商品を受け取れるようにしたり、店舗の駐車スペースで商品を積み込むサービスを提供したり、消費者にとって最も都合のいい形で受け取りができるよう、様々な実験を繰り返している。
[1]米小売市場における売上高トップ10
注:売上高は2014年の数値
出所:Statista
[2]売上高の推移
注:ウォルマートの会計年度は2月から翌年1月だが、比較のため2016年1月期を2015年と表示した(他の年も同様)
[3]小売売上高に占めるEコマースの比率
注:データは四半期の推移
出所:米商務省
[4]食品&飲料市場におけるシェア推移
ウォルマートが強さを見せる食品・飲料市場でもアマゾンは存在感を高める見通し 出所:Cowen and Company
[5]時価総額比較
アマゾンの成長性が高く評価され、2015年7月以降、時価総額は逆転している
出所:FactSet
背後に迫るアマゾンの足音
シームレスショッピングに向けた取り組みは店舗内でも進む。
ウォルマートが開発したモバイル決済アプリ、ウォルマート・ペイ。様々な端末やカードで利用することができる
代表例は、同社が開発した決済アプリ「ウォルマート・ペイ」。会計の際にレシートのQRコードをスキャンすれば、クレジットカードを出さなくてもその場で決済が完了する。
「あらゆる端末、あらゆるカードで対応可能」とウォルマートで米国の金融サービスを担当するダニエル・エッカート・シニアバイスプレジデントは胸を張る。
ウォルマートの会員制スーパー、サムズクラブで展開されている「スキャン&ゴー」もそうだ。専用アプリで商品バーコードをスキャンすれば、レジを通さず帰っても構わない。
「買い物で、レジでの支払いを楽しいと思う人はまずいない。その部分の改革に力を入れる」。グローバルEコマース&テクノロジー部門のニール・アッシュ社長兼CEOは力を込める。
商品バーコードをスキャンするだけで支払いが完了する「スキャン&ゴー」。サムズクラブや米国の一部店舗で導入されている
なぜウォルマートはシームレスショッピングの構築を急ぐのか。背景には、ウォルマートの領域を侵食し続けるEコマースの巨人、米アマゾン・ドット・コムの存在がある。アマゾンは既にウォルマートを射程に捉えている。
売上高を見ればウォルマートは米小売市場でダントツだが、2016年1月期の総売上高が0.7%の減収になるなど成長鈍化が著しい。Eコマースによる収入も伸びてはいるが、まだ全体の売上高の3%にすぎない。
一方のアマゾンはどうか。売上高こそ1070億ドル(約11兆3420億円)とウォルマートの4分の1以下だが、この10年、売上高は20%以上の伸びを続けている。ウォルマートとの勢いの差は歴然だ。
最近は企業向けクラウドサービスAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の急成長が注目を集めるが、従来の書籍や雑貨、生活家電だけでなく、アパレルや食品・飲料など全方位で戦線を拡大している。また、独自のPB(プライベートブランド)を展開する一方で、マーケットプレイスとしての存在感も高めており、カルバン・クラインやラコステなどのファッションブランドもアマゾンで販売を始めた。
現に、百貨店業界はアマゾンによって、大打撃を受けている。メーシーズ、コールズ、ノードストローム、JCペニー、ディラーズの上場百貨店5社の売上高は約800億ドル(約8兆4800億円、2016年1月期)と、現時点でアマゾンの北米売上高(637億ドル)を上回っている。だが、第1四半期の伸びを見る限り、今年度中にもアマゾンが百貨店5社の合計を上回る可能性が高い。
米国の小売売上高に占めるEコマースの比率は8%弱とそれほど大きくなく、アマゾンが既存小売りをのみ込む余地は大きい。その中でも、アマゾンの伸びしろとして注目を集めているのは食品・飲料市場だ。
米投資銀行コーウェン・アンド・カンパニーによれば、食品や飲料のEコマースは現時点で4%だが、20年後の2036年には市場全体の18%に達するとみる。このフロンティアをめがけて、アマゾンは食品・飲料市場の攻略に向けて着々と準備を進めている。
「アマゾンに挑む巨象・ウォルマート(後)」へ続く
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/082900070
アマゾンに挑む巨象・ウォルマート(後)
企業研究
2016年8月30日(火)
篠原 匡、小平 和良
「アマゾンに挑む巨象・ウォルマート(前)」から続く
「Saving Time」という付加価値
例えば、プライムナウ。これはアマゾンのプライム会員向けに、2時間以内に商品を配送するという地域限定サービスだ。自社倉庫の商品を届けるだけでなく、マンハッタンの高級食材店、イータリーなど外部企業とも連携しており、オーガニック商品やこだわりの逸品をアマゾンで買うことができる。
また、加工食品や生鮮品の同日配送サービス、アマゾン・フレッシュもロサンゼルスやサンフランシスコ、ニューヨーク市などの大都市で利用可能だ。このほかにも、食品や日用品などを一箱にまとめて送るアマゾンパントリーというサービスも展開している。
こういったアマゾン自身のチャネル拡大や、食品のオンライン購入に抵抗がないミレニアル世代(1981〜98年生まれの世代)の台頭によって、2019年にもアマゾンが食品・飲料市場でトップ10に入るとコーウェンは予想する。
もちろん、アマゾンにも越えなければならないハードルはある。
日本とは違って米国は、日本の宅配ほどのきめ細かさがなく、「ラストワンマイル」のインフラが未整備だ。実際、2013年のクリスマスシーズンでは配送業者が大量の商品をさばけず遅配が相次いだ。また、生鮮品をはじめとした食品には消費期限があり、温度管理を必要とするものが少なくない。当然、保管や配送など物流のオペレーションは従来よりも複雑になる。
アマゾンもトライアンドエラーを繰り返しながら対象都市を広げているが、生鮮食品やグロサリーの配送網を全米規模で構築するには、もうしばらく時間がかかる。その猶予期間に、どれだけアマゾンと戦うための武器を手に入れるか──。それが、既存の小売業者の生き残りのカギを握る。この問いに対して、ウォルマートが提示した回答がシームレスショッピングだった。
米国のネット通販では一般的に、家で待っていても、希望の時間通りに商品が届くとは限らないのが実情だ。一方でウォルマートは全米に約4600店を展開しており、人口の90%が店舗から10マイル(約16km)以内に住んでいる。ならば、ウォルマートの店舗網を受け渡しの拠点として活用してもらえば、消費者に「時間の節約」をアピールできる、という発想だ。
「買い物の時間が短縮できるのがいい。今の競争社会では少しでも時間を節約して働く方がいいでしょ」。カーブサイドピックアップを利用していた若者がそう語っていたように、大手小売りは品ぞろえやサービスだけでなく、別の付加価値を与えないと競争に勝てない。ウォルマートはその付加価値として、従来の「Saving Money(お金の節約)」に「Saving Time(時間の節約)」を加えようとしている。
経営陣も手応えをつかんでいるようだ。「新規顧客の開拓はかなりの挑戦。ただ、ある店舗で自動チェックアウト(精算)の実験をしていたところ、別のスーパーを使っていた顧客がウォルマートでのオンライン購入を増やした。新しいお客様を引き入れることは十分に可能だ」とグローバルEコマース&テクノロジーのアッシュCEOは語る。
円滑なシームレスショッピングを実現するためにデジタル関連投資も加速させている。
2011年にシリコンバレーのデータ分析ベンチャー、Kosmixを買収、アット・ウォルマートラボに改称後も矢継ぎ早にM&A(合併・買収)に乗り出している。これまでに買収した企業は15社。エンジニアなど技術者の数は3000人を超える。昨年10月には、Eコマース関連に今後2年間で20億ドルを投資すると発表した。
自前のIT部隊、ウォルマートラボを通じて進めているのは、オンラインショッピングシステムそのものの一新だ。
それまでEコマースのシステムは外部ベンダーの技術の寄せ集めだった。だが、それでは修正や変更に時間がかかりEコマースの世界では戦えない。そこで、2012年に「パンゲア」と呼ばれるプロジェクトを開始、Eコマースのシステムそのものを自前で作り上げた。結果として、扱う商品が200万から1000万まで拡大、消費者へのレコメンド機能も大幅に改善した。
6月3日に開催されたウォルマートの株主総会は相変わらずの盛り上がりを見せた
米国事業は最悪期脱したが…
もちろん、マクミロンCEOが認めているように、Eコマース売上高の伸び率は四半期で鈍化しており、期待ほどの伸びを見せていない。オンラインで扱う商品数はまだまだ足りず、マーケットプレイスとしての魅力を高めるため、自社以外の商品を強化していくことも必要だろう。
また、顧客の囲い込みでもアマゾンに後れを取っている。
ウォルマートはアマゾンプライムと同様の無料配送サービスを限定的ながら始めている。今年5月には、3日間以内だった配送期間をアマゾンプライムと同等の2日に短縮、年間利用料も49ドルとプライムの半値に下げた。
もっとも、プライムの会員数は全米の全世帯数の約3割に当たる約3500万世帯に達している(コーウェンのデータ)。また、ジェフ・ベゾスCEOが「会員にならないのはばかげていると思うくらいにプライムの価値を上げたい」と株主へのレターに書いているように、アマゾンは無料配送だけでなく動画や音楽の無料配信など様々な付加価値を提供して、会員をつなぎ止めている。
それでもウォルマートの、既存の店舗や従業員を活用して消費者に商品を届けるという方向性は間違いではない。たとえシームレスショッピングという戦略自体が、膨大な店舗や従業員を抱えるがゆえの苦肉の策だとしても。
ダイワ・キャピタル・マーケッツ・アメリカによると、2000年代前半には、ウォルマートの米国の既存店売上高は前年比伸び率が5%を超えていたが、その後は徐々に下落、金融危機後はマイナスになることも増えた。
在庫管理の改善や店舗の整理整頓、値下げ、生鮮食品の強化などの改革を進めているが、直近の四半期はわずか1%増。この2年で賃上げなど従業員の待遇改善に27億ドルを投じているのも、短期的には利益圧迫要因だ。
実際、店舗をベースにした成長は限界に達しつつある。
ウォルマートは今年1月、米国で154店を閉鎖すると発表した。その3分の2は小型店の実験フォーマット「エクスプレス」である。スーパーセンターの出店余地が限られる中で、新たな成長の柱と期待されたが、巨大なスーパーセンターと小型店の物流が異なることもあり、事実上、撤退を余儀なくされた。Eコマースに経営資源を投入する方が得策という判断だが、裏を返せば店舗とデジタルの融合以外に成長の伸びしろがないということだ。
「我々はウォルマートの未来を楽観視している」。6月3日に開催された株主総会で、創業一族で取締役会長のグレッグ・ペナー氏はこう述べた。確かに、アマゾンと対等に戦えるだけの基本装備は手にしつつある。後はそれをどこまで深化させることができるか。残された時間はそれほど多くない。
(ニューヨーク支局 篠原 匡)
もう一つの成長エンジン、海外事業も曲がり角に
この20年を振り返れば、米国事業と海外事業が両輪となってウォルマートの成長をけん引してきた。事実、海外事業を統括しているウォルマート・インターナショナルは世界2位の小売業者である。だが、中国経済の減速やドル高の影響は大きく、足元の業績は停滞している。
海外事業が成長を牽引してきた
●ウォルマートの店舗数
出所:Statista
5月28日、ウォルマートの中国法人は広東省珠海市に、同社としては中国初のコミュニティー型と言われる中規模のSC(ショッピングセンター)を開業した。核店舗として入るのは、会員制スーパーのサムズクラブだ。
中国の経済メディアはウォルマートが中国でSCの開発、運営を手がける「不動産開発業者」になったのは大きな戦略転換だと報じている。珠海市のSCでは、テナントに占める飲食の比率を4割にまで高めたほか、フィットネスクラブやブックカフェも取り入れた。生活に密着するサービスや体験型テナントを増やし、来店を促す。
ウォルマートはこうしたSCを今後、江西省の南昌市や広東省の恵州市などに建設する計画。「サムズクラブのフォーマットは中国向き」と国際部門のデイビッド・チーズライト社長兼CEOが語るようにサムズクラブを戦略の一つの核とする方向だ。
こうした戦略の背景には、米国と同様、ネット通販との激しい戦いがある。
ウォルマートは1996年に中国に進出し、昨年末の段階で25の省・自治区・直轄市の169の町に433の店舗を出している。これまで出店してきたのはウォルマートの主力業態であるスーパーセンターだ。仏カルフールなどとともに大型店で新たな消費スタイルを作り出してきた。
中国ではアリババが壁に
だが、米国や日本と比較しても急激に発展している中国のネット通販市場が、ワンストップショッピングが強みだったスーパーセンターから顧客を奪っている。
ウォルマートはネット通販分野の強化を狙い出資していた中国のネット通販中堅企業、「一号店」を昨年、完全子会社化した。ただ、ネット通販分野には最大手で6割超のシェアを握るアリババ集団が立ちはだかる。アリババは農村でのネット通販利用を促す戦略を加速しており、地方市場ではウォルマートとの戦いがさらに激しくなるのは間違いない。
ウォルマートにとって中国以外のアジア事業は、日本とインドだけだ。2002年に進出した日本では、苦戦続きだったが、足元の業績は堅調に推移している。
買収した西友の2015年12月期の既存店売上高は前の期比2.8%増と2期連続で増加した。2016年1〜3月期も前年同期から4.1%増だ。消費増税後の消費者の節約志向をとらえたとみられるが、進出当初に構想していた「西友をプラットフォームにしてM&A (合併・買収)を展開する」という戦略は一向に進まない。
南半球の人口大国であるブラジルも同様に苦戦している。1995年の進出以来、店舗網を拡大し、ブラジルで3番手の小売りチェーンになった。だが深刻な不況には抗しきれず、同国で60店の閉鎖を発表した。「昨年は本当に厳しい年だった」(国際部門CFO=最高財務責任者=、リチャード・メイフィールド氏)と打ち明ける。
ウォルマートの世界戦略は、米国内での圧倒的なシェアと高収益を前提として進められてきた。仮に米国で「本丸」の食品を巡るアマゾンとの競争で劣勢になるようなら、アジアを含む国際戦略の大幅な見直しが不可避になるだろう。
(上海支局 小平 和良)
(日経ビジネス2016年6月27日号より転載)
このコラムについて
企業研究
『日経ビジネス』に掲載された、企業にフォーカスした記事の中から読者の反響が高かったものを厳選し、『日経ビジネスオンライン』で公開します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/082900071
シカゴ−東京の高速トレーディング網構築で高頻度会社が協議−関係者
Brian Louis、Annie Massa
2016年8月30日 10:02 JST
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「ゴー・ウェスト」はマイクロ波通信塔と海底ケーブルを活用する
シタデルやバーチュ、ジャンプが協議に関わっている−関係者
ライバル同士の複数の高頻度取引会社が、環太平洋地域の超高速トレーディングを可能にするシカゴと東京間の通信網の共同構築で協議中だ。事情に詳しい関係者が明らかにした。
数カ月前に始まったこの協議は非公開だとして匿名で語った同関係者によると、このプロジェクト名は 「ゴー・ウェスト」。シカゴ地域から米西海岸のシアトル近郊まで一連のマイクロ波通信塔を建て、そこからアジアまでは海底ケーブルでつなぐという。協議に関わっているのはシタデルとバーチュ・ファイナンシャル、ジャンプ・トレーディングだが、最終的な参加者は決まっておらず協議も最終段階ではないと、関係者は説明した。3社はコメントを控えた。
ネットワークケーブル
ネットワークケーブル Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
このようなネットワーク構築での協力は、トレーディング時間の短縮をミリ秒単位で長年競い合ってきた大手取引会社の休戦を示唆しているかもしれない。この話題に詳しいエール大学のグレッグ・ローリン教授(天文学)の試算によると、米国株取引が行われるニュージャージー州データセンターとシカゴ間には高速取引を支える別々のマイクロ波ネットワークが6から10あるもよう。ライバル同士の取引会社が手を組めばインフラコストを削り、単にスピードを競うだけではなく取引戦略で勝負することができるようになるかもしれない。
大手電子取引会社はこれまで大陸間の注文を処理するのに光ファイバー網を主に利用してきたが、マイクロ波の方がスピードが速い。シカゴからシアトルまでラインが一直線だと仮定すると、光ファイバーでおよそ14ミリ秒かかるのがマイクロ波なら9.5ミリ秒前後で済む。自動取引を手掛ける多くの会社は裁定取引を扱うが、日経平均先物が米シカゴ先物市場(CME)と日本取引所グループの市場で取引されるなど、日米間にこうした裁定取引の機会がある。
原題:Traders Said to Discuss Data Superhighway From Chicago to Japan(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-30/OCP43S6K50Z601
ゴールドマンとMスタンレーが取り組む自己改革
中間層向け銀行事業に軸足
ENLARGE
NY証取のゴールドマンのロゴ PHOTO: BRENDAN MCDERMID/REUTERS
By
LIZ HOFFMAN
2016 年 8 月 30 日 07:01 JST
金融危機のどん底で、米金融大手ゴールドマン・サックス・グループとモルガン・スタンレーは信頼を強化し、米連邦準備制度理事会(FRB)の暗黙の支援を獲得するために銀行持株会社となった。
しかし、ウォール街の大手金融機関が根本的に変わると信じた人はほとんどいなかった。トレーディング事業、投資銀行事業が再び活発化するまで銀行のふりをするのだろうと考えていたのだ。
ところが、そうはならなかった。トレーディング収入は世界的に縮小し、より厳格な規制によって両社はかつてのドル箱事業からの脱却を余儀なくされ、高まった自己資本比率規制はリターンを抑制してきた。ゴールドマンの2015年の株主資本利益率(ROE)は7.4%、モルガン・スタンレーのそれは8.5%だった。こうした数値は、両社の理論上の資本コストである10%を下回っており、それぞれの金融危機前のピーク、32.8%と23.6%からもかけ離れている。
そうした状況を受けて、両社はより基本的な銀行事業に軸足を移してきた。米国の中流層の預金や融資を扱う上での相対的な経験不足はそのブランド力で克服できると見込んでいるのだ。
その戦略は多くの人々を驚かせ、資本市場事業が転換期に来ているということを示唆している。ウェルズ・ファーゴの元会長兼最高経営責任者(CEO)リチャード・コバセビッチ氏は「数年前、両社がこうしたことをするとは夢にも思わなかった」と述べた。しかし、規制と顧客活動の低迷でトレーディング収入が落ち込むと、「縮小するか、(失われた利益を)他の事業で置き換えるかのどちらかになる」という。
銀行事業を受け入れることで、両社はやり方こそ異なるが、後者に取り組もうとしている。ウェルスマネジメント事業を重要な事業としてすでに位置付けていたモルガン・スタンレーは、概ね既存の富裕層顧客たちからさらなる収入を搾り取ろうとしている。一方のゴールドマンはより広範に顧客を取り込むことを目指しており、一般庶民の預金・融資需要に応えるためにインターネット銀行を起ち上げた。同社がかつて避けていた中流層以下の顧客にも大きく門戸を開いた格好だ。
標準以下のバリュエーションと向き合うことを余儀なくされてきた両社の株主たちはこうした戦略を注視している。ゴールドマンとモルガン・スタンレーの株式は現在、純資産よりも割安で取引されている。今月初め、物言う投資家として知られるヘッジファンドのバリューアクト・キャピタル・マネジメントはモルガン・スタンレーの株式約2%を取得したと発表した。その主な理由は、同社がモルガン・スタンレーのジェームズ・ゴーマンCEOが推進しているリテール(小口顧客向け)ウェルスマネジメント事業を評価したからだという。
銀行事業への進出のタイミングはある意味良かったのかもしれない。現在、低迷している銀行株に目を付けている投資家たちは、金利が上がれば、そうした株も上昇すると見込んでいる。
今のところ、ゴールドマンとモルガン・スタンレーは大口の貸し手ではないので、ライバルと比較すると利上げの恩恵は大きくない。米国の平均的な大手銀では、1%ポイントの利上げで収益が11%増加すると言われているが、野村證券によると、ゴールドマンでは4%、モルガン・スタンレーでは8%の増益にしかならないという。
他行に後れを取らないように、両社は過去数年間で預金や融資の残高を急伸させてきた。モルガン・スタンレーの融資残高は2012年から3倍以上に増加し、930億ドルとなった。ゴールドマンの融資残高は同期間に250億ドルから640億ドルに増えた。
とはいえ、両社にとってまだ先は長い。6月30日時点の両社の預金残高の総額2760億ドルはJPモルガン・チェースの預金残高の約5分の1でしかない。融資残高の総額もやはり、総資産で米銀最大手のJPモルガン・チェースの融資残高の約20%にしかならない。
預金は規制当局への受けがいい。というのも、次の金融危機を防ぐのに必要な資金源として安上がりだからだ。預金は融資に転用することもできる。
ゴールドマンは預金と融資の両方でインターネットを活用している。金融危機後の数年間、トレーディング事業に固執し続けた同社だが、今では庶民にも門戸を開くようになった。預金160億ドルを含むゼネラル・エレクトリック(GE)のインターネット銀行事業とアイオワ州シーダーラピッズにあるコールセンターを買収した後、ゴールドマンは4月に消費者の預金を受け入れ始めた。基本的には誰でも1ドルから口座が開設できる。それまでは口座を開設するに約1000万ドルの資産が必要だった。
ゴールドマンは今秋、19世紀に同社を創業したマーカス・ゴールドマン氏にちなんで名付けられたオンライン消費者向け融資事業「マーカス」もスタートさせる。その計画に詳しい人々によると、この融資事業のターゲットは低金利での債務処理を望んでいる多額のクレジットカード債務を抱えた個人だという。
ゴールドマンとMスタンレーの預金と融資残高
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そうした消費者向け融資事業の推進は、ゴールドマンのより広範な融資事業のごく一部である可能性が高い。同社は社員がまとめた合併のためにより多額の融資を行ったり、そのプライベートバンキングの超富裕顧客への貸し出しを強化してきた。
その一方でモルガン・スタンレーは先月、証券取引口座に入金した顧客に、ATM手数料を返金したり、無料で個人情報の盗難を防止するなど、新たな特典を提供し始めた。その計画に詳しい人々によると、同社は近々、年利約0.45%の普通預金口座を提供し始めるという。これは既存のモルガン・スタンレーの顧客の預金につく年利の30倍だが、ゴールドマンが新しい普通口座で支払っている年利の約半分である。
モルガン・スタンレーがそのリテール戦略を定着させたのは7年前だ。金融危機の最中にゴールドマンよりも大きな損失を被った同社は、路線変更を不可欠なものと捉えていた。2009年の初め、同社は1990年代に買収したディーン・ウィッター事業とシティグループ傘下のスミス・バーニーを合体させて合弁証券会社を設立した。
それでもモルガン・スタンレーのゴーマンCEOは6月に、同社が「融資では限界に程遠い状況にある」と述べ、同社に大勢いるファイナンシャルアドバイザーたちには、顧客に住宅ローンや証券担保ローンを宣伝することが推奨されているという。
そうした事業はモルガンにとって収益性が高い可能性がある。というのも、ローンを通じて生み出された売上高は通常、取引手数料や口座管理料を通じて生み出された売上高ほど気前よく個々のブローカーに分配されないからである。
それでも、ゴールドマンとモルガン・スタンレーが本当に銀行事業を受け入れられるのかと疑っている人たちもまだいる。前出のコバセビッチ氏は両社のことを異なるスポーツの「スーパースター」に例える。「プロフットボールリーグ(NFL)でバスケットボール選手をプレーさせるようなものだ」
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