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シャープは鴻海の「信賞必罰」式経営でよみがえるか(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/16/hasan112/msg/543.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 8 月 30 日 09:12:30: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

鴻海創業者テリー・ゴウの“アニマルスピリッツ”は、シャープに創造的破壊をもたらすのか Photo by Naoyoshi Goto


シャープは鴻海の「信賞必罰」式経営でよみがえるか
http://diamond.jp/articles/-/100262
2016年8月30日 真壁昭夫 [信州大学教授] ダイヤモンド・オンライン


■買収完了したシャープに持ち込む
台湾流“信賞必罰”の人事評価

 買収決定から4ヵ月が過ぎ、ようやく台湾企業である鴻海(ホンハイ)精密工業グループによるシャープの買収が完了した。そうした動きの中で、ホンハイが打ち出した人事制度が注目されている。

 基本的に、ホンハイは台湾流の“信賞必罰”で人事評価を進めるという。これは、相応の成果を出した人を評価し、そうでない場合は評価しない、言ってみれば、単純かつ古典的な人事管理手法だ。

 これまで、ホンハイは郭台銘(テリー・ゴウ)という猛烈経営者の下で、機敏な意思決定と厳しい信賞必罰型人事制度の下で飛躍を遂げてきた。それを、今回、シャープに持ち込もうとしている。そうした経営方針の行方が注目される。

 今まで、シャープの経営は自社の高い技術力を過信し、環境の変化に積極的に対応する姿勢が欠けていた。それが、“液晶一本足打法”と揶揄されるほどの液晶偏重の経営体制を作り上げてしまった。

 その結果、同社は経営環境の変化に適応しきれず、経営が行き詰まった。これは、ビジネススクールのケーススタディーとして扱われるような、典型的な経営の失敗と言えるだろう。

 問題は、そうしたシャープの企業文化を、環境変化対応型に転換できるか否かだ。今日の市場環境は短期間で変化しやすい。競争に勝ち残るためには、事業の流れを迅速に読み、それに果断に対応することが求められる。

 ホンハイがシャープにそうした企業文化を根付かせることができれば、シャープの将来に明るさを見出すことはできるはずだ。その意味でも、シャープのケースは、わが国企業に大きな示唆を与えることが期待される。

■液晶技術に固執しすぎた
シャープの経営陣

 シャープは、元々、液晶技術の実用化に世界で初めて成功した企業だった。同社が持つ高い技術力は決して軽視すべきではない。ただ、シャープの経営陣はあまりに液晶技術に固執しすぎた。そこに落とし穴があった。

“液晶一本足打法”と揶揄されるほど経営資源を集中させると、それだけ世界の液晶市場の動向がリスク要因になる。実際、2000年代前半、“亀山モデル”を中心にシャープは好調だった。

 米国の消費拡大や国内での地上デジタル放送開始に伴う買い替え需要が、大型液晶テレビの売上増につながったからだ。この液晶一本足打法の成功は、シャープの経営陣に“蜜の味”の成功体験をもたらした。

 ところが、米国の住宅バブル崩壊やリーマンショック以降、大型の液晶搭載のテレビに対する需要は落ち込んだ。そうした環境変化にもかかわらず、シャープの液晶ビジネスに集中するスタンスは変わらなかった。

 シャープは事業ポートフォリオの分散ではなく、むしろ液晶事業の強化を進めた。2007年から総額4200億円を投じて、大型液晶などを生産するための堺工場の建設を開始した。

 そうした液晶事業拡張の負担は、同社にズッシリと圧し掛かることになる。世界的に大型テレビへの需要が低下する中、ウォン安を追い風に、サムスンなどの韓国勢は中型テレビ市場で攻勢をかけ、わが国のメーカからシェアを奪った。

 中国でも液晶パネル生産が進み、世界的に液晶パネルの低価格化と過剰生産能力が顕在化した。こうした状況の中、堺工場への投資は想定通りの成果を生まず、財務内容や収益力が悪化した。

 ここで思い起こされるのが、旧帝国海軍が重視した“大艦巨砲主義”だ。日本海海戦でロシア艦隊を撃破して以来、旧海軍は大型の戦艦同士の対決が勝敗を決すると考えた。真珠湾攻撃で、航空母艦に搭載した航空機の運用が対戦を左右することを世界に示しながらも、わが国は過去の成功体験に固執し、環境変化への対応が遅れたのである。

■液晶事業の採算が悪化した段階で
経営戦略の妥当性を確認すべきだった

 本来であれば、シャープは液晶事業の採算が悪化した段階で市場環境を再確認し、経営戦略の妥当性、修正の必要性を確認すべきだった。当時であれば、それなりの余裕もあったはずだ。

 仮に市場全体の拡大が鈍化しているなら、それに対応した方針の転換が必要だったはずだ。新規投資の抑制、消費者ビジネスよりも対企業向けビジネスを強化する等、環境に応じた戦略を策定すべきだった。

 しかし、シャープは液晶一本足打法の経営方針を変えることができなかった。自らの技術力があれば成長は可能と過信した。その発想が環境変化への適応を遅らせた。

 世界経済の状況を振り返ると、リーマンショックを境に世界の液晶パネル市場の動向は、大型化から小型化にシフトしてきた。特に、スマートフォンやタブレットPCの普及は、パネルの小型化、高性能化につながっている。それと同時に、世界的な供給過剰から液晶パネルそのものの価格も下落してきた。

 スマートフォンの登場を受けて小型液晶パネルへの需要が高まる中、シャープは遅ればせながら対策を打った。一時は、中国のスマートフォンメーカー小米科技(シャオミ)などからの受注を受けて、シャープの業績が上向く時期もあった。

 そうした状況下、国内のライバル企業であったジャパンディスプレイ(JDI)は、コスト面で競争性がある、タッチパネル機能をディスプレイに内蔵したインセル型の液晶パネルでシャオミに営業攻勢を仕掛けた。これはシャープを低価格競争の消耗戦に巻き込んだ。

 また、堺工場の減価償却費が利益を圧迫するだけでなく、販売の低迷から工場の稼働率も上がらなかった。そのため、堺工場の減損も余儀なくされ、財務悪化が進んだ。これは環境変化への適応能力の低さが経営悪化につながった典型例といえるだろう。

 当時のシャープの経営を見ても、経営に最も必要な機能は、環境の変化に合わせて、新しい組織、販路などを整備開拓するイノベーション=創造的破壊を、勇気を持って進めることだと言える。それが経営陣の本当の意味での役割だ。

■テリー・ゴウの“アニマルスピリッツ”が
組織の創造的破壊をもたらすか

 今回、シャープの社長に就任したホンハイの戴正呉(たい・せいご)氏は“信賞必罰”主義を掲げ、成果を上げた人物に報いると強調した。

 企業文化や習慣の違いもあるため、そうした経営手法の効果は時間をかけてみるべきだが、経営環境が良好ならそれなりの効果を期待することはできるだろう。

 もう一つ見のがせないポイントは、経営者の環境変化に対応する能力だ。シャープの旧経営陣はそうした対応ができなかった。ホンハイの経営者であるテリー・ゴウは、敏感に世界市場の動向を迅速に予測しながら、経営を切り盛りしてきた。

 そうした先見性や経営判断は、電気部品の下請け企業から今日のホンハイを作り上げた最も重要なファクターだった。これからは、そうした経営者としての資質をシャープの経営に生かすことができるかが注目される。

 そうした経営者の資質は、今までのシャープに最も欠けていた部分かもしれない。それは、わが国の多くの企業にとって相応の反面教師の材料となるはずだ。

 ホンハイの創業者であるテリー・ゴウ氏は、自身の猛烈型の資質による信賞必罰を徹底し、世界最大のEMS企業(電子機器の受託生産を行う会社)に育て上げた。その経営は常に更なる成功を求める、猛烈そのものだ。

 そこには経営戦略を客観的に見極める視点に加え、成功への欲望、野心という“アニマルスピリッツ”がある。経営者としての“アニマルスピリッツ”が、わが国の組織の創造的破壊をもたらすかは冷静に評価すべきだ。

■環境変化に適応できない組織は
シャープのように新しい経営が必要になる

 専門家の中には、「成果主義だけでは十分な効果が出ない」という見方もある。しかし、シャープのように環境変化に適応できない組織では、いずれ、シャープのように新しい経営が必要になる可能性が高まる。

 世界経済の先行きの不透明感が高まる中、わが国の企業は、今持っている人材・技術力を生かして収益力を強化すべき時にある。その為には、さらに技術力を高め、それを収益につなげなければならない。

 そこで最も重要になるのは企業経営者の能力=経営力かもしれない。経営者が、当該企業の進むべき道を明示し、それを組織全体に分りやすく伝える。それによって、研究開発、マーケティングなど各分野に携わる、個々人のモチベーションが向上する。今、わが国企業は本当の意味でも経営力が試されていると考えられる。

 

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コメント
 
1. 2016年8月30日 22:15:11 : ww32uRWMoU : gzaSFuEFZaw[9]
罰だらけでシャープ社員はやる気をなくし、どんどん人材が流出するでしょう。崩れたら早いと思います。

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