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全国各地で大乱立「ゴージャスMICE施設」は必要か?
2016年08月29日(月)WEDGE編集部(浅野有紀、伊藤 悟),木下斉 (一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事)
「日本再興戦略」にて訪日外国人数拡大の重要ツールとして位置づけられた「MICE」。その名のもとに、多くの地方自治体で巨大施設の建設計画が進められている─。
福岡空港から車を走らせること約50分。久留米市の中心市街地にその巨大な施設は現れた。「久留米シティプラザ」という名のその施設は、「積極的にMICEを誘致し、久留米ならではの賑わいと文化、価値を、市民とともに創造・発信する場」(同施設パンフレットより)として、178億5000万円をかけて建設され、今年の4月に開館した。
久留米市の中心市街地にそびえ立つ、総額178億5000万円をかけて建設された「久留米シティプラザ」(写真・Wedge)
MICEとは、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字をとった単語であり、多くの集客が見込まれるビジネスイベントなどを指す。訪日外国人数の拡大を図るべく政府が誘致を推進する肝いりのプロジェクトだ。
久留米シティプラザに足を踏み入れると、大きなガラスの壁面から陽の光が差し込む快適な空間が広がっていた。施設内を歩いて回ると、約1500人を収容できる4階層の多機能ホールや300人以上を収容できる会議室、約430平方メートルの展示室など、大規模で多機能な会場を備えていた。取材班が訪れた日は、大きなイベントがないこともあり、施設内は閑散としていた。外は35度を超す暑さだったこともあり、高齢者数人が歓談スペースに設置されたイスに腰かけ、涼みながらお茶を飲んでいる姿が目立った。
この巨大施設を巡っては、地元でも批判の声が出ている。「既存の市民会館を改修すれば20〜30年は使えるのに、シティプラザ建設ありきで話が進んでいました。もちろん市民会館よりランニングコストもかかります」と、シティプラザ建設に反対していた久留米市民は話す。2005年の久留米市と周辺4市町村との合併により発生した合併特例債の使用期限が迫っていたことも、建設を焦った理由の一つだと指摘する。
これだけ巨大な施設が本当に必要なのか。久留米市でMICE誘致を行っている久留米観光コンベンション国際交流協会の辻文孝常務理事と池脇順一誘致担当課長に話を聞いた。
約1500人を収容できる最新鋭の多機能ホール
(写真・Wedge)
久留米シティプラザにおける今後の誘致状況について聞くと、16年から18年までの3年間で予定されている国際会議の数はわずか3件だという。国内の会議等を含めると、学会22件、大会3件の計25件であり、このうち、2000人を超える規模のものが4件、1000人〜2000人のものが8件、1000人未満のものが13件とのことであった。
3年間で25件ということは、単純計算で1年あたり8件程度ということになる。これは学会、大会のみの数であるため、他にも集客数を増やす催しもあるだろうが、178億5000万円もの巨額投資をした施設にしては低調な滑り出しだ。
「MICE誘致は周辺自治体との勝負でもあり、今後ますます厳しくなる。一度久留米に来た人たちに良かったと感じてもらえなければ利用者数は減少していく。最初の3年間が勝負だ」と誘致を担当する池脇氏は意気込む。
MICEの誘致や運営等を手掛ける業界大手・コングレの武内紀子社長も「国際会議の数自体はそこまで増えていない。最近では、国をあげて誘致をしないと、海外からの集客は厳しい」と指摘する。
久留米シティプラザのエントランス。ガラス貼りの壁面から、燦々と陽が差し込む
(写真・Wedge)
議論噴出する長崎駅西側の巨大施設建設計画
「長崎駅前に第二の軍艦島がつくられようとしています。いや、軍艦島はもともと稼いでいたことを考えると、軍艦島に失礼かもしれないですね」
生まれも育ちも長崎市内という長崎市民はそう嘆く。軍艦島とは長崎市の沖合に浮かぶ端島のことで、昨年7月に世界文化遺産に登録された炭鉱の島だ。1974年に閉山し、現在は巨大な廃墟の島として知られている。
長崎駅前を訪れると、駅の西側に広がる巨大な空き地が目に飛び込んできた。現在、一部が駐車場として利用されているその場所は、長崎市がJR貨物から約68億円で購入し、巨大な複合施設の建設を予定している場所であるが、その用地は長崎市が紆余曲折を経て購入した経緯がある。
購入にあたっては、田上富久長崎市長が中心となり、「MICEを念頭においた」交流拠点施設用地の取得という目的で予算案を市議会に提出したが、「現時点ではMICE事業による経済波及効果がはっきり見えない」、「市民が納得するような十分な説明がなされていない」などの理由により、14年9月の議会で否決された。
しかしその後、同年11月の市議会にて、「MICE施設に関わらず」将来の利活用について十分検討するとした条件付きで、予算案が可決された。この間、市長自ら市内の35カ所で市民説明会を行ったが、「市長自ら先頭に立って説明することは異例」と前出の長崎市民は話す。施設建設に対する市長の強いこだわりが感じられる。
こうした「こだわり」の謎を解き明かすため、長崎市長に取材を申し込んだが、業務で時間がとれないことを理由に断られてしまった。質問状への回答も難しいということであった。代わりに長崎市のMICE事業担当部署である文化観光部交流拡大推進室の牧島昌博室長に取材を行った。
「まだ事業が決定したわけではないので、何とも言えないですが」と前置きしたうえで、「現在の施設は、稼働率こそ高いものの、3000人規模の学会などになると収容人数の関係で取り逃しているのが現状です。駅西側エリアの土地は購入したので、今後そこにどのような施設をつくるのか決めていく予定です」。
(写真・Wedge)
巨大なMICE施設の建設にこだわる理由については、「地元経済界からの要望があったと聞いている」と話す。
施設利用者数見込み、消費効果、経済波及効果などについては「シンクながさき」というシンクタンクが作成したという。年間の施設利用者見込みは約59万人としているが、シンクながさきの役員名簿を見ると、地元経済界の重役たちが名を連ねていた。
「私はMICE施設反対の急先鋒なんです」と話す平野剛市議会議員に、長崎駅西側用地での交流拠点施設の建設効果、収支見込などについて質問すると、「市が出したデータはデタラメだった。年間2700万円の黒字見込みとし、市長が市内各所で説明に回ったが、そのデータはあくまで運営部分のみの内容で、建設費用(約137億円)などは含まれていなかったのです。その後、そうしたコストも含めて再度収支見込を出させたところ、年間約3億4000万円の赤字という結果が出ました。これに用地取得費用を含めると、年間で約5億円の赤字となったのです」と教えてくれた。
さらに「そもそも収支見込を作成する際に使用している施設利用者見込数の想定がおかしすぎます。年間59万人と想定していますが、この数値は、福岡のMICE施設の年間利用者数をもとに出した数値であり、根拠が不明確です。実現可能な数値かも極めてあやしいです」と続けた。
98年〜10年に長崎県知事を務めた金子原二郎参議院議員も「巨大なMICE施設が建設されると、その分これまで使用されてきたホテルや結婚式場の会議室などが利用されなくなる負の面も考えられます」と、計画について疑問を呈す。ただ「結局用地も取得したので、このまま施設建設へ向けて突き進んでいくはずです」と今後の見込みについて話した。
「市長は新たに新幹線の長崎駅が開業する22年までに施設を完成させたいと思っているはず」という声を長崎市内では耳にした。議論噴出のこの施設の今後に注目だ。
巨大な施設の建設が計画されている長崎駅西側の広大な用地(写真・Wedge)
九州では、今回取材した長崎市、久留米市以外に福岡市、熊本市、鹿児島市などでもMICE施設建設計画が進行している。こうした建設ラッシュには、すでにMICE施設をもつ自治体も戦々恐々としている。
95年に建設された別府市の別府国際コンベンションセンター(B-ConPlaza)の館長を務め、誘致も担当している井上薫氏に現状の開催実績について聞くと、「2000〜3000人が集まる大規模な会議、学会などについては、年に数回程度です」という。
「別府は温泉が売りですが、コンサートやスポーツなど色々な催しを含めて積極的に誘致活動をしないと厳しい状況です。九州各地で建設が予定されているMICE施設が完成した後はさらに競争が激しくなります」。MICEの誘致が厳しい状況にあることが強く窺えた。
また、九州以外にも、高崎市、横浜市、名古屋市、沖縄県など全国各地で計画が進行している。MICEを開催できる施設数が増えたところで、会議や展示会が急増するわけではない。世界各国で国際会議などのMICE誘致合戦が行われている状況において、日本の至るところでMICE施設が建設されていけば、「ゆくゆくは誘致競争に負けた施設が地元の催しものを行う公民館のような施設として使用される可能性も高い」(業界関係者)という。
巨大施設建設の必要性を説く黒幕≠ニ呼ばれる企業
取材を進める中で、複数の関係者から、「全国各地でのMICE施設建設ラッシュの背景には、業界では知らぬ者がいない、とある企業のトップの存在が大きく関係しています」と耳にした。曰く、そのトップが各自治体に対して巨大施設建設の必要性を説いて回っているという。
その企業とは、日本展示会協会の会長を務める石積忠夫氏が社長のリードエグジビションジャパンで、同社は国際見本市を主催する業界最大手だ。
国際見本市や国際会議など、MICEの誘致や運営を行う企業にとってみれば、巨大施設が多いに越したことはない。どれだけ建設されようが、建設費用もランニングコストも自治体が支払うため、自らはほぼノーリスクだ。
九州だけでもMICE施設が乱立
(出所)各種資料をもとにウェッジ作成 拡大画像表示
取材班は同社の石積忠夫社長に、こうした「疑念」について尋ねたところ、「国際見本市(展示会)が日本経済を復活させる」というタイトルの資料を用いて、国際見本市の経済効果がいかに高いかについて説明したうえで、「自ら自治体に売り込んだのではなく、高崎、名古屋、沖縄など、自治体から講演の要請があったところへ赴き説明を行ったまでです。当社は地方経済を活性化する手段の一つとして展示会のもつ可能性を訴えただけで、最終的に施設を建設するかどうかは自治体の問題です」と答えた。
また、「施設単体での収支を考えること自体がナンセンスで、施設の赤字は当然です。国際見本市の開催が可能な施設は港湾や空港、道路などと同じインフラで、稼働率を問うのもナンセンスです。供給が需要をつくるという考え方も海外にはあります。訴えたいのは、日本は大規模会場がなく、機会損失が多発しているということです。国際見本市の会場は大きければ大きいほど経済効果が高く、海外では地方にも5万平方メートルを超す大規模会場が多々存在します」とも話した。
国際見本市の開催が可能となる巨大施設の建設は、停滞する地方経済の起爆剤になり得ると説明してくれた。
一方で、人口減少、財政悪化が進む日本の地方の状況は、海外のそれと同じではないため、そうした日本の地方の特異な実情に沿った形で回収可能な投資をしっかりと検討する視点も各自治体に求められるだろう。
政府が旗を振って推進するMICE。昨今、様々な自治体がその名のもとに巨大施設の建設計画を進めているが、MICEの実施には、アクセス、宿泊施設、観光資源等の充実が必要であり、ハコモノ建設が目的となってはいけない。施設を建設すること以上に、建設後の運用についてもしっかりと検証するべきである。
高度経済成長期以降、地方自治体がこぞって要望し、建設が進められてきた地方空港は現在、そのほとんどが多額の税金を使って赤字を補填している。各地で建設される巨大なMICE施設が、近い将来「第二の地方空港」とならないことを願うばかりである。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7620
「中国式ハニートラップ」の裏側
2010年07月29日(木)有本 香 (ジャーナリスト)
戦後初の民間人大使として在中国日本大使に起用された伊藤忠商事元相談役の丹羽宇一郎氏が、大使館スタッフに、女性のいるカラオケ店への入店禁止令を出したと報じられた。俗にいう「ハニートラップ」による情報漏えいを警戒しての措置と伝えられている。
当コラムの執筆者は私以外、全員男性だ。今回のテーマは男性が書くほうがよいと思われそうだが、あえて女性の私が書かせていただこう。
「金のため」とドライに割り切る女子大生
7年前、中国南部の都市にある高級クラブで、Aさんというホステスに遭った。同省の大学へ通う現役女子大生の彼女は、東北部の出身。両親はともに公務員、特別に金持ちというわけでもないが、彼女の学費くらいは送金してやれる懐事情だそうだ。そんな彼女がホステスとして働いている。
「お金欲しいですから。ここにいるとお金持ちと知り合えますし」
カラリと笑いながらこういった。
金持ちと知り合うといっても、客の男たちは大半が相当年上の妻帯者。彼女のボーイフレンドや結婚相手にふさわしい相手ではもちろんない。
「彼氏とか結婚とかはまったく別の話ですよ。ここで知り合う人からはお小遣いをもらったり、何か買ってもらったり。友人の中には特定の人の愛人になった子もいますよ。私? そうですね、条件次第ではそれも悪くない」
「貧しくて農村出身」は過去の話
繰り返すが、Aさんは極貧の出ではない。金目当てという点は共通しているが、中国の水商売の女性というと、おしなべて貧しい農村出身の女子というステレオタイプの構図はとうの昔に変わっている。生活のための金に困っている訳ではないが、贅沢に育てられた世代ゆえ、自身の欲を満たすためにつねに金が必要、そういう女子も少なくないのである。
店の客からお小遣いをもらう場合、性的関係を迫られない? と聞くと、「へへ」と笑い、「関係しなくてもお金はもらえる」とAさんはいった。
今のところ彼女はお小遣い稼ぎのための「気まぐれ水商売」である。しかし、大学の寮に住むのが嫌で、親友と2人で新築アパートを借りて住み始めたといっていた。そのくらいの稼ぎはあるということだ。
Aさんのようなケースは近年珍しくはない。ほかの町でも女子大生ホステスに遭ったことがある。ホステスとして働くうちに町の有力者の愛人となった女子大生が、恋人と結託してその有力者を殺したという事件もあった。
生活に困らず、エリートでもある女子大生が水商売で働くという現象自体は、今から20年以上も前の日本でも、女子大生ホステスや愛人バンクに登録する名門女子大生が現れ、話題になったのと似た現象といえるかもしれない。
日本ではその後、女子高生の援助交際が話題となり、中学生、ついには小学生もという話までが伝わり、性意識の変化や性の商品化、その低年齢化の話題に人々が驚かなくなってさえいる。
中国の女子大生ホステスや女子大生愛人もいつか来た道、という見方をするのは、しかし早計だろう。中国では依然として、女子大生ホステスが働くその同じ店に、貧しい農村から出てきて文字もろくに書けない女子も大勢働いている。その延長線上には、昔ながらの構図で生きるために売春を行なう女性も、その予備軍もまだまだ大勢いる。
また、贅沢好きな女子大生の小遣い稼ぎ水商売についても、かつての日本では、「社会勉強」のひとつなどの動機をもつ女子もいたが、中国の女子にそういうノリはない。もっとシビアに「金」に焦点が絞られている。
経済開放とともに進む女性の性意識の開放
2009年、北京大学の教授を中心に行なわれた調査で、半数近い女子が16歳未満で性交渉を持ったとの回答があったと伝えられた。中国の農村部では今でも、性的暴行や15、16歳での結婚というケースもある。しかし、この調査が明らかにしたのは、そうしたケースに当てはまらない若い女子の性意識が、「過剰に」開放化されていることのようだ。
たしかに、某名門大学近くの路上の塀には「妊娠中絶」や「性病治療」を謳った病院の広告が山ほど貼られていたし、大学生と話すと、「親の世代はいざ知らず、自分たちの世代で結婚まで性体験のない女性など皆無」と口を揃える。
経済開放から30年、性の開放はそれに呼応して着実に、というよりむしろ経済成長以上の速度で進んでいるかのようだ。呼応して、性の商品化の広がりもますます盛んとなる。
「市中引き回しの刑」で取り締まるも効果なし
これに対して中国当局は、大勢逮捕した売春婦を市中引き回してさらしものにするという、人権無視の荒業に出てみたり、道徳教育の運動を進めてみたりするもののほとんど効果は見られない。
これらは滑稽ともいえる話で、地位にものをいわせて何人もの愛人をもち、性の乱れの助長役となっているかのような当局の関係者が、いくら「道徳」を訴えるパフォーマンスをやってみたところで一向奏功しないのは当然といえば当然だ。
中国の社会で女性の性意識の開放が進むこと自体は悪いことではない。
世界の歴史の例にもれず、中国でも伝統的に、性はつねに男性主導のものであった。見方によれば、他国以上に男本位の性の価値観が幅を利かせてきたといえるかもしれない。
たとえば、宋代頃から清の末期まで女性の纏足という旧習があった。これについて日本では、「小さい足が美人の条件だったため」などとその主旨が語られるが、実のところは、男性の性への価値観が色濃く反映された習慣であったようだ。
小さい足でよちよち歩く様はセックスアピールがあるとされ、小さい足で歩くため太腿の筋肉が発達するので、男の性感が高まると考えられたためだったとの説がある。
ともあれ、現代の「開かれた中国」で女たちも性を謳歌し始めた。それは悪くない。問題は日本以上に、女性の間で性に関する正しい知識がもたれていないことにある。
一人っ子政策という産児制限が長らく続いてきたにもかかわらず、避妊に関する正しい知識も普及しているとはいい難い。むしろ、時には政府による強制堕胎が進められてきたことの負の効果か、一般的に妊娠中絶、堕胎についての抵抗感が薄い。
学生など若年層の顧客獲得のため、最近では、クリニック等による中絶手術の「安売り競争」が盛んでその種の広告が氾濫している。一方で性感染症に関する知識も広まってはいず、HIVが日常的な接触で感染するのではないかとの誤解は今も根強い。
徹底されないHIV発症者への無料治療策
HIVに関して、中国政府は発症者への無料治療という策を打ち出しているというが、当然、全国で徹底して実施されているわけではない。中国では他の政策、たとえば義務教育の無料化などを首相が宣言しても全国で実施されることはなく、「国が大きいから政策が徹底されるには時間がかかる。仕方のないこと」というおきまりの言い訳がされる。
HIVについては、国民の間での知識不足もあって感染者は増え続け、とくに近年、女性の感染者増加は著しい。日本人の大使館員やビジネスマンは、中国での女性との接触に際して、従来のような情報漏えいや、金品を巻き上げられるといったリスクの前に、まず性感染症のリスクをより強く心に留める必要が出てきたのである。
これらの事情とあわせ、あらためて考えてみると、カラオケ店への出入り禁止令などほとんど無意味ではないかという気もしてきた。最大限好意的に考えれば、万事に緊張感をもて、という意味での「喝」であれば理解できなくもないが。
カラオケ店や高級クラブで知り合った女性と親密になったら云々……とか、マッサージを呼んだら云々……などの古典的な「手口」でのハニートラップよりもむしろ、現代で警戒すべきは別の筋ではないだろうか。
ハニートラップか、自由恋愛か?
かつてのように外国人と一般の中国人女性との接点が限られていた時代とは違うのだ。町のいたるところで中国人女性と自由に出会い、自由に恋愛に発展し得る現代では、それこそハニートラップは至るところに仕掛けられているともいえる。
何者かによって初めから差し向けられた女性ではなく、初めは単に男女として出会い、関係が深まったところで状況が変化するというケースが十分考えられる。
ハニートラップとは異なる例だが、2年前に長野で起きた、五輪聖火リレーの際の顛末を思い出してほしい。
あのときバスで長野に集結し、五星紅旗を振り回して奇声を上げ、騒ぎの後には「抗日勝利」を叫んだ在日中国人留学生の大半が、初めから「工作員」として送り込まれた若者であるわけではない。しかし、そこは独裁国家という体制下の国民たち。本人さえも意識しないうちに、何がどう転んで「国家のまわし者」となるかは知れたものではない。
初めは自由恋愛のつもりが、いつしかどこかからリモコン操作されていた。そんな女性がいても何ら不思議ではない。まして、金が絡めばその可能性はなおさら高まる。
私の周囲には、「1度でいいからハニートラップにかかってみたい」などという軽口をたたく日本人男性が結構多い。暗に「自分は引っかからない」と言いたいのだろうが、こと「男女のこと」に関する限り、男の自己評価ほど当てにならないものもない。
個人差があるとはいえ、世界標準で見れば、概してナイーブな御仁の多い日本人男性の皆さま、中国での女性との出会いにはくれぐれも気を引き締めて臨まれますよう。
※次回の更新は、8月4日(水)を予定しております。
◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新 : 毎週水曜
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/990
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