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「チケット転売」は本当に悪か? 経済学的にはどう考えてもOKです 主催者には他に打つべき手がある
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49569
2016年08月29日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
■経済学では、答えが出ている
主要音楽団体がチケットの転売防止を求める共同声明を出したことで、話題になっている。
先週23日、一般社団法人日本音楽制作連盟(音制連)、日本音楽事業者協会(音事協)、コンサートプロモーターズ協会(ACPC)、コンピュータ・チケッティング協議会の4団体が「チケット高額転売取引問題の防止」を求める共同声明を発表した(http://www.tenbai-no.jp/)。
その声明には、国内アーティスト116組と音楽イベント24の賛同が加えられていた。国内アーティストには嵐、サザンオールスターズ、福山雅治さんら、音楽イベントにはフジロック・フェスティバルなどが含まれていた。
かつてアーティストの収益の中心だったCDをはじめとする音楽ソフトの売上は減少傾向であるが、ライブやフェスなどは、音楽をリアルに体験できるとして入場者数は増加傾向になっている。有名なアーティストのコンサートは、チケットを購入するのも至難の業であり、発売当日のネット予約には購入したい人が殺到する。
これがチケット転売の背景である。コンサートによってはチケットを購入できない人も出てくるので、ネット上でのチケット転売ビジネスが出てくる。
さて、チケット転売での倫理的問題として、次のようなことがいわれている。
@業者などがチケットを買い占めて、転売して不当な利益を上げている、Aチケット買い占めによってファンが正規料金で購入できない、B転売チケットを購入したファンが入場拒否される。
これに対する経済学からの解答はシンプルである。音楽とはいえ、商業ベースであることから高い価格を払った人を優遇すべきで、倫理的な問題などを除けば、転売は経済的には非難されることはない、ということだ。
そもそも転売が起きるのは、定価が市場価値を表していないからだ。コンサート主催者側の事情によって定価が決められているが、コンサートの市場価値はお客であるファンの主観的な評価で決まってくる。主催者がその市場を読み違えたことが問題である。
この問題に対する最も基本的な解は、オークションである。オークションにして高い価格から順次入札していけば、転売価格以上の入れた人は入場でき、アーティストの収入も大きくなる。
■図をみれば一目瞭然
これの経済学的な説明は、以下のとおりである。学生になったつもりで読んでもらいたい。漠然としていた、例のバッテンの需要と供給の図が、具体的な問題でより身近に感じられると思う。
ファンの需要曲線を青色、主催者側の供給曲線を赤色とする。問題を簡単にするために、コンサートの席は1種類しかなく、それを定価販売するとする。このため、赤色の供給曲線は水平線になる。
まず、定価が高すぎる場合、チケットが売れ残る。
一方、コンサートの場合では、会場の物理的な制約から、入場できる人に限りがある。コンサート主催者の決めた定価が低すぎると、入場できる人とできない人がでてしまう。
こうなると、転売が自ずと発生してくる。高いカネを払っても入場したい人がいるからだ。どうしてもコンサートに行きたい人はいるし、チケットを購入したもののコンサートに行けなくなった人や、おカネ(転売価格と定価との差額)がもらえるならコンサートをあきらめる人が必ずいるからだ。
■転売の美点
そこで、転売が発生する。
転売価格は実はバラバラであるが、最高転売価格は上図のようになる。チケット転売した人は転売価格と定価の差額を得られる。コンサートは、高い価格を払った人を優遇するのは当然であるので、倫理的な問題などを除けば、転売は経済的には非難されることはない。
転売が自由になると、チケットは定価販売ではなく、一部がオークションになる。究極的には全部オークションになる可能性もある。
オークションはかつて特殊な取引と思われていたが、今ではネットで誰でも参加できる。この方法のほうが、どうしてもコンサートに行きたい人とあきらめた人をうまく調整できる。
しかも、このオークション方式がもっともアーティストの収入を大きくするのだ。つまり、オークションの場合、冒頭に掲げた倫理的な問題はほとんど生じ得ないことになる。
オークションになると転売目的の人が加わって、価格が高くなるという意見もあるが、それは誤りだ。そもそも、転売目的の人が最終的な入場目的の需要を押し上げたら、転売できなくなる。
要するに、オークションは真のファンの需要だけを表し、転売しようとする人の利ざやをゼロに収束させる方向に作用する。つまり、オークションは今の定価販売よりはるかに転売目的の人の排除につながるのだ。
■アメリカでは徐々に「当たり前」に
なお、オークションに対し、反対するファンもいるだろう。しかし、こうしたファンは今の定価販売で安くチケットを購入できると思い込んでいる。本当のファンならば高いカネを支払ってもいい、と思うのではないか。オークションにすれば、転売はなくなり、高いカネを払うファンだけが聴けるようになる。
ただし、コンサートによってはオークションが最適解になると限らない。主催者にとっても、ファンを長期的に育成しようと思えば、低い定価にして、ファンにお得感を与えて、長期的な顧客関係を形成した方が利益になる。
そうであれば、主催者側で二次転売市場を整備したほうがいい。もともと、コンサート入場券を発売するとき、クレジットカードなどで本人属性を把握しているはずで、二次転売市場を適正に運営できるはずだ。
二次転売市場が整備されてくると、販売形態はオークションに近づいていくはずだ。何より、転売価格がわかるのであるから、定価はそれに近づけた方が、主催者とファンの両方にとって満足の得られる状態になる。そして、上に述べたように、そうなれば、転売者が自ずと排除されてくる。
これらは経済学を知らなくても、海外の情勢を見ていれば容易に推測できるだろう。アメリカの四大プロスポーツでは、チケット転売は既に導入されている。音楽関係でも、ネットでみるかぎり徐々に導入されている。
筆者が大蔵官僚時代にも似たような話があった。それは国債発行である。国債発行は、国債券を金融機関に売るわけで、チケット販売と似ている。
1966から1977年まで、主力の長期国債については、シンジケート団方式といって、金融機関にいわば「定価販売」していた。その「定価」は市場価格より高く、金融機関には不満があった。この点はチケット問題とは違うが、転売禁止の条件をつけていた点は同じだ。
金融機関としては、少しでも高く売りたいという要望があり、転売を希望していた。1977年になって、大蔵省は転売規制を緩和した。それとともに、1978年から、長期国債ではなく中短期国債については、入札制を導入した。1987年からは、長期国債についても入札制を段階的に導入して、2006年から完全入札となった。
役所のやることなので、長い時間をかけて、国債は定価販売からオークションに移行した。おそらく、チケット販売も、チケット転売自由となって、徐々にオークションになるだろう。
■ダフ屋の排除も可能
どうしても転売を規制したいなら、現在でも、転売規制の法律はある。今も生きている物価統制令「何人ト雖モ業務上不当ノ利益ヲ得ルノ目的ヲ以テ物ノ買占又ハ売惜ヲ為スコトヲ得ズ」(第14条)がそれだ。
この規定は、いわゆるダフ屋の取り締まりにも適用されたこともある。もっとも、「不当な利益」と判断するためにも、二次転売市場をしっかりと整備する必要がある。さらに、上に述べたように、二次転売市場を整備する過程で、いわゆるダフ屋の排除は可能である。
主催者側も、アーティストのことを思えば、転売禁止をいうのではなく、転売を正々堂々と認めて、二次転売市場を整備した方がより収益につながり、かつ高いカネを払うファンを大切にすることになる。
しかも、一次発券市場において顧客情報を把握しているはずの主催者が、二次転売市場に乗り出すほうが有効である。こうした実態をもっとアーティストは知ったほうがいいだろう。
転売を許しているのは、主催者の定価値付けの失敗なのだから、主催者自ら二次転売市場に乗り出し、同時に転売益の一部を手数料として取り戻すのが普通の商業行動であろう。
スマホであれば、クレジットカード情報も本人の顔認証も可能であるから、主催者が二次転売市場に出るコストは小さい。いずれ、こうした合理的な商業行動になるだろう。
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