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「独居老人600万人」の衝撃!5000件の遺品整理をした専門家が緊急レポート ニッポン「多死社会」の真実
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49456
2016年08月27日(土) 赤澤 健一 現代ビジネス
■多くの人が片づけられない現実
「独居老人600万人」「孤独死年間3万人」の衝撃──。団塊世代の高齢化が進み、子どもと離れて暮らす夫婦が連れ合いを亡くして一人暮らしとなり、やがて気づかれず一人亡くなる……そんなケースも珍しいものではなくなってきています。
遺品整理業をスタートさせて4年で業界トップクラスの5000件を扱ってきた株式会社リリーフと、その経営者である赤澤健一氏は、さまざまな現場で、そうした事例を無数に見てきました。その記録をまとめた『遺品は語る』から、その一部を公開します。
私どもの遺品整理サービスが急成長したのは、第一に社員教育、次いで明快な料金設定、さらには遺品を自社で海外までリユースで輸出し、利用者の料金負担を軽減する仕組みのシステム化、こうした一連の積み重ねがあって、多くのご依頼主に評価していただけたからだと自負している。さらには、行政からも多くの依頼をいただいているが、これはまさに、社会的な問題の解決に貢献できているからだと実感している。
ただ、振り返って感じるのは、「私どものスタッフのサービスマインドやマナーのレベルが高いからこそ、リリーフの仕事が受け入れられた」というのは理由のひとつに過ぎず、その根本には「遺品整理がたいへんだから」という現実が大きく横たわっていた、ということだ。
世の中では、一時期「片づけ」がブームだったが、きちんと身の回りを片づけて暮らされていた方が亡くなられた場合、遺族も「ありがとう」と感謝しながら、自分たちで整理できるはずだ。しかし残念ながら、私どもがお伺いすると、ご依頼いただく方は膨大な荷物の量に途方に暮れていて、私どもを頼られるのだ。
つまり、現実には「片づけられない人」が多いということだ。その結果、多くのものを遺したまま亡くなられてしまう。それを片づけるサービスが必要な社会なのだ。
私どもは、そう考えざるを得ない現場に数多く遭遇している。
■訪問すると、すでに亡くなっていた依頼主
「祖母が一人住まいしている家を片づけて欲しい」と女性から依頼された案件も、そのひとつだった。90代の高齢で、遠方の山間部にお住まいだという。その家の中のさまざまな荷物の整理を、お孫さんが頼んでこられたのだ。
見積もりのために、40歳くらいのご依頼主と現地を訪ねた。大きな家ではないが、立派な造りの、歴史を感じさせる民家だった。
ところが、声をかけても応答がない。不審に思って中に入ると、玄関の次の間で、ご依頼主のおばあさまはお亡くなりになっていた。
きちんと正座をされて、そのまま前に倒れ込むような体勢だった。その手には洗濯物があった。おそらく、「見積もりに来る前に少し片づけておこう」と考え、作業をしているうちに亡くなられたのだろう。
もともとは今後の暮らしのために家の中の片づけを相談されたのだが、結局は後日、遺品整理にお伺いすることとなった。
遺品整理の作業を進めていくと、タンスの奥からノートが出てきた。タイトルは「10歳になった○○へ」だ。「○○」とは、ご依頼主の女性の方の名前なので、ご本人にお見せした。
「見覚えのないノートだわ」
ノートを開くと、そこにはお味噌汁など簡単な料理の作り方が記されていた。ご依頼主のお母さまが、娘のために作成したノートだった。
お母さまは、ご依頼主が小さい頃に他界されている。亡くなられたお母さんが「10歳になったら読んで欲しい」と考えて記したものの、渡せずに遺したノートを、おばあさまが保管されていたのだろう。なぜそのままになっていたのか、いまとなってはわからない。
「大切にします」
ご依頼主は、そう言ってノートを胸の前で抱きしめた。
■遺品が伝える「わが子への思い」
孤独死の案件では、故人に身寄りのないケースも多いが、家族がいる場合は、それはそれで切ない場面に遭遇することになる。
しばらく前のことだが、田舎の実家に一人暮らしをしていて、88歳で亡くなられた方の遺品整理を60代の娘さんから依頼されたことがある。高齢のお母さんが心筋梗塞で急に倒れ、救急搬送されたものの病院で亡くなられたという。住み慣れた田舎で暮らしたいという母親に対し、仕事があって都会に住まねばならず、離れて暮らしていた娘さんが、お母さんの住んでいた実家の片づけを頼んできたわけだ。
母親の様子を見に、しばしば実家に顔を出していたらしく、「最後に会ったのは3日前で、あんなに元気だったのに……」と、娘さんは気落ちしていた。一人暮らしは母親本人の希望だったとはいえ、結果として寂しい思いをさせていたのではないかと、娘さんなりに思うところがあったのだろう。
娘さんによれば、元気なころ、お母さんはものを大切にし、なんでも古くなるまで使い切る方であったらしい。こうした故人の生活ぶりを話していただくことは、遺品整理をするスタッフには非常に学びになるものだ。
ところが遺品整理をしているうち、箱に収められたままの真新しいタオルが大量に出てきた。それは、娘さんがお母さんのために毎年プレゼントし続けてきたものだった。
新しいまま手をつけずに、几帳面に年ごとに整理して並べられていた。大切に取っておいたお母さんの気持ちが偲ばれる。
それを見た娘さんは、「使い古したものばかり使わずに、新しいのを使ってくれてたらよかったのに……」と涙声だった。作業スタッフも、思わずもらい泣きしそうだった。
■ご依頼主の気持ちも片づける
孤独死や自殺などの案件になると、当社の現場スタッフにとっても精神的にきつい面がある。一般の遺品整理以上の配慮がいる。たとえば作業も、室内や建物に血がつかないように運び出したりする細心の注意が必要とされる。
なにより、故人のご家族との接触に、きわめてセンシティブな配慮をしなくてはならない。たとえば、自殺した故人の母親といっしょになって室内で見積もりしたり作業をしたりすることがある。ご遺体の発見が遅れ、腐敗して室内中に悪臭が充満していたとしても、遺族の前ではスタッフ同士で臭いの話などは禁物だし、臭いの辛さを態度でさとられないようにする配慮も必要だ。それがプロの心構えというものだろう。
しかもそのあとで、悲しみの中にある母親に見積金額を提示し、内容を理解してもらわねばならない。もちろん、それによって母親の気持ちの整理に寄り添うという一面もある。専門用語で、これを「グリーフケア」という。悲しみを乗り越えて立ち直るのを手助けするという意味だ。
ご依頼主は遺品を片づけ、それとともに気持ちを片づける必要があるのだ。それをサポートするのが、この仕事だと思っている。
■父と子の「剣道セット」
孤独死したある父親の遺品整理の案件を思い出す。
依頼してきたのは故人の長男だった。だが彼は、当初は硬い表情だった。迷惑顔で、
「なんで、オレが片づけなくちゃいけないんだ」
というその心中が、ありありと透けて見えていた。
孤独死した父親との関係が、あまりうまくいっていなかったのだろう。辺りを冷えた空気が包んだ。
ところが、作業中にスタッフがあるものを見つけた。剣道の竹刀、面、小手のセットだった。その瞬間、長男の表情がみるみる明るいものへと変わり、
「父が大事にしていたものです。小さいころは、この剣道セットで、親子でいっしょに練習してました」
そう言って、スタッフへ感謝の気持ちを伝えてくれた。剣道セットとともによみがえった父親との思い出が、彼の凝り固まった心情を【片づけて】くれたのだろう。こうしたときこそ、遺品整理の仕事にやりがいを感じる瞬間だ。
■死に方は生き方
「孤独死」「自殺」「ゴミ屋敷」「夜逃げ」などの特殊案件は、片づけられない人の中でも特別なケースだが、だからといって、そんなに数が少ないわけでもない。弊社で受託した5000件の案件のうち13%もの割合を占めているのだ。そうした現場にこそ、いまの日本社会の断面が露呈していると感じている。
こうした現実を知ると、「片づけなければいけない」と思う読者は少なくないだろう。その一方で、「思っているけど、できない」という現実がある。そんなとき、故人の家を整理していて感じるのは、「どう生きるのがいいのか、との思いの積み重ねの先に、亡くなり方は存在する」という事実だ。
というのも、私たちは故人のことを知らないのだが、知らないがゆえになおさら、人気がない現場で故人の「生き方」をビビッドに感じるからだ。遺品整理の現場には、故人が生きていたときの「生きる形」が、そのまま残される。
片づけブームなどというが、「どう片づけるか」の方法論のみが注目されすぎてはいないだろうか。遺品整理業者が申し上げるのは口幅ったいところがあるが、むしろ、「どう生きるか」に思いを向けることのほうが大切だと思う。要は、生き方の問題だ。片づけだけを論じても始まらないのだ。
特に、親が片づけられなかったりすると、片づけるように子どもが忠告したとしても、なかなか聞き入れてもらえないものだ。人は、高齢になると片づけることが難しくなる。そこを突ついて自尊心に触れると、かえってゴミの山を捨てなくなったりする。
遺品整理の現場がどうなるかも、本人がどう生きたいと思うかにかかっていると私は思う。
誰もが一人で死んでいく時代。「最期はきれいサッパリと」とお考えの方に、遺品整理の現場からのアドバイス。
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