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東京はどこもかしこも東京五輪に向けて建設ラッシュだ
「東京五輪後バブル崩壊」を予感させるこれだけの理由
http://diamond.jp/articles/-/99974
2016年8月26日 鈴木貴博 [百年コンサルティング代表] ダイヤモンド・オンライン
リオ五輪の閉会式は、次期開催地・東京をアピールする日本らしい演出で盛り上がり、2020年への期待を残してオリンピックは閉幕した。日本経済はこれから4年間、オリンピックに向けた盛り上がり経済を迎えるだろう。だいたいの人がそう口にする。
だとすればオリンピックバブル景気に期待したい。そう思ってマクロ環境を眺めると、確かに30年前に始まったバブル景気と今は類似点が多い。
類似点が多いということは、バブルがはじけ日本経済が暗転した1991年と同じ恐怖が、五輪後の2021年にも待ち受けているのではないか?という不安もよぎる。類似点から何が起こりそうなのかを予想してみよう。
■不動産上昇、一流ホテル開業…
バブル期に似た“浮かれた”状況
バブルとの類似点は、マイナス金利と量的緩和で街にマネーが溢れている点だ。不動産価格はつり上がっているし、都心にはオリンピックを見越して世界の超一流ホテルがつぎつぎと開業している。
タイミングを予想すると、天皇陛下の生前退位がこの時期に重なる可能性もある。もしそうなれば、新しい天皇陛下が即位して、元号も代わり、そこで一段と東京の街は浮かれた気分になっていく。
マネーが世の中にあふれること、時代が浮かれること、そして世間は「オリンピックまで景気はこのまま上がっていく」と根拠のない楽観主義で投資が広がる。こういった点は30年前のバブルとよく似た状況だろう。
30年前にはこのタイミングでバブルが弾けた。バブルを知らない世代のために当時のことをお話ししておくと、1989年の年末に株価が弾けても、世の中のわれわれはバブルが崩壊したとは気づかない。そこからしばらく、空走の時期が始まる。
実際1990年は「何かがおかしい」感じの1年間となった。1990年の3月に大蔵省による総量規制が始まり、不動産投資への資金源が止まる。そのためこの年の後半でずるずると今度は不動産価格が下がり始めて、ようやく皆がバブルがはじけたと気づく。バブル紳士とよばれた怪人たちが経済の表舞台から消えていくのは1991年以降の出来事だ。
東京五輪の閉会式は2020年8月9日。ちょうど30年前に世の中が「何かがおかしい」と感じ始めたようなタイミングでオリンピックが終わる。表面的には熱い夏。しかし何かが徹底的に冷え込んでいることが感覚的にわかる。
そのような夏に、30年の時間を経て2021年のバブル崩壊はどこから起こるのか?
■過熱投資プロジェクトの数々が
2021年以降、日本経済を停滞へ導く
2021年にふたたび経済崩壊が起きるとすれば、まず確実なことは不動産価格の下落だろう。何しろ今の時点で見ても、東京都心の不動産価格は異常である。新築の高級マンションの価格は一室1億円。以前は「億ション」と呼ばれてほんの一部の富裕層にしか手がだせなかった水準が、世の中の標準になっている。
中古物件も高騰している。私の自宅は15年前に購入した都心のマンションだが、先ごろ同じマンションのある部屋が売りに出されたのでチラシを持ち帰ってみたところ、新築の時よりも2割高い価格で値付けされていた。私の家も今売れば、15年分のローン金利と15年分の管理費・修繕積立金を差し引いてもまだ数百万円の利益があがるに違いない。
さすがに最近は不動産の売れ行きにブレーキがかかってきたという報道があるが、80年代にもこれくらいのタイミングで一時期ブレーキがかかり、調整を経てそこからまた市場が過熱していった。
とにかくみんなの脳裏に「2020年までは経済がよくなる」という思いがある。そこに加えて資金の借り入れも比較的容易だという金融事情から、まだ当面は不動産が上がり続ける方向に力が働く。
2020年には世界中から東京に人が集まるから、東京の街はにぎわうし、不動産は足りなくなると皆が信じている。皆が信じているから価格が上がるのがバブルの特徴だ。そして実際に世界中から人があつまるのは7月末から8月にかけての17日間。それが過ぎれば、不動産バブルが崩壊しないための支えはなくなる。
もちろん、歴史は単純には繰り返さない。1991年に消えたバブル紳士たちは地上げや物件ころがしで儲けていた人たちだった。法律などの前提が以前とは違う現在、2021年のバブルで消える人たちは、それとは違う儲け方をしている人たちだろう。
それはひょっとすると民泊経営で儲けていた人たちかもしれない。高額な資金を借りて、マンションを一棟買いし、民泊で儲ける。東京への観光客はどんどん増えるから借金をしても民泊は儲かる。ところが2020年が近付くと、どんどん同じことをやる人間が増える。退職金を全額つぎこんで民泊用のワンルームマンションを買う老夫婦など、新規参入者だらけになる。徐々に民泊でとれる単価も下がっていく。
2020年8月にオリンピックの宿泊需要を吸収できるだけの民泊が林立したところがビジネスとしてのピークで、それ以降、急速に民泊は儲からなくなるかもしれない。だとすれば借金をして民泊を始めた人や、老後資金をつぎこんで民泊を始めた人はここから先、地獄を見る。
実需に対応した投資が経済の原則だと私は思うが、投資が過熱をすればこういった経済のゆがみが必ず起きる。ホテルの開業、大規模小売店のオープン、景気をあてにした新工場の建設。
これらの投資を裏付ける根拠が実は実需ではなく過熱経済の幻だったとしたら?バブル崩壊後にさまざまな大企業の経営の足をひっぱったのは、こういった過熱投資プロジェクトだった。それが再び起きるとすればまさに2021年の恐怖。90年代に起きたように日本経済自体が長期停滞の時代を迎えることになる。
■長期停滞を避けるヒントが
ロンドン五輪にあった
そうならない未来はないのか?もちろんある。参考にすべきは2012年のロンドン五輪だと私は思う。
ロンドン五輪のメインスタジアムでおそらく五輪の歴史上初めて採用された設計思想がある。それが減築だ。8万人を収容できるスタジアムのうち、常設は2万5000席のみで、残りの5万5000席は簡単に取り除くことができる設計になっている。
ロンドンでは新しい建物は、その後50年間は存在することを前提に投資されるそうだ。五輪という一瞬のイベントだけでなく、その後50年間、維持管理ができ、経済的な需要をまかなえる大きさを想定して設計が行われ、だからこそ五輪後に大きな反動が起きない。ロンドン市民は五輪という世界的イベントを楽しむとともに、減築によって五輪後は通常の生活に戻ることができる。
日本経済も2020年に向けて目指すべきことはこのような、後戻りのできる投資ではないだろうか。
一方で、政府と東京都の事情を眺めると、これから先、バブルの頃と同様に「公共投資の無駄」が必然的に起きそうだ。大切なことは民間部門がそれに相乗りして投機的な投資をしないこと。これからの4年間、企業経営者にとっては投資の誘惑は増え続けるが、それにどのような形で乗るのかが問われる。そう私は思うのだが、どうだろう。
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