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買いのチャンスをうかがうリスクマネーが膨らんでいる
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160825-00133057-shikiho-bus_all
会社四季報オンライン 8月25日(木)19時31分配信
昨年1年間で日経平均の一日の下げ率が最も大きかったのはいつか?
答えは8月24日のマイナス4.60%だ。日経平均は同月18日から下げ始めて25日までの6営業日連続下落。トータルではマイナス13.64%という急落商状となった。
この急落局面での主役は委託売買シェアの7割程度を占める外国人投資家だった。
ヘッジファンド(HF)の一部は、2014年の秋から冬にかけて、パフォーマンスが良くもないのに高額のフィーを取っており、「間尺に合わない」と判断された欧米の年金基金などから資金の引き揚げの通告を下された。辛うじて償還請求(=解約)を免れたHFも明日はわが身と考えたのだろう、15年には生き残りをかけて勝負に出た。
ざっくりと示すと、彼らがまず向かったのは欧州の債券だった。「欧州中央銀行(ECB)は追加緩和に動く」、「欧州の社債・国債には上値余地がある」とのコンセンサスが自己実現的に形成された。4月にドイツ国債がひとまず天井をつけたとき、彼らの視線に入って来たのは「昇竜」の勢いの中国株である。
さまざまなルートを通じて中国株市場に彼らの資金は流れ込み、地政学的に近隣に位置し「インバウンド」が盛んにハヤされていた日本市場にも資金は振り向けられた。6月下旬に中国当局が信用取引の保証金率の引き上げへ動いて同国株の上げが止まると、HFの一部は軸足を日本に移すかのような動きを見せた。
彼らは中国政府・当局の手腕の拙さを見逃していたフシがある。株価下落への対応は弥縫策にとどまり、それでも一抹の強気心理は熾のようにくすぶっていたが、8月12日の中国人民銀行による元の2%の切り下げが水をかけた格好となって完全に鎮火した。株価下落に加えて為替差損も膨らむとの恐怖心も加わってHFは我勝ちに出口へ殺到した。年金などの出資者の怒りが収まるはずはなく、あきれて償還請求に動いたのが8月後半だったと想像されるのである。
■ 8月第2週は海外勢が4年ぶりの買い越し
では今年8月の海外投資家の動向はどうだろうか。
第1週(1〜5日)こそ、毎度おなじみの「日銀プレー」の後始末なのか、海外投資家は現物、先物ともに売り越しだったが、第2週(8〜12日)にはそれも一巡した感じだ。この時期、すなわちHFへの償還請求の時限が迫る8月第2週に海外投資家が買い越しとなるのは12年以来4年ぶりである。パフォーマンスの芳しくないHFの整理淘汰はすでに峠を越したのかもしれない。
そうした想像が確たるものであるかのような現象も見られた。
8月4日、ロイター傘下のリッパー・アナリティカルは、3日までの1週間で25億ドルと今年最大の資金がハイイールド債ファンドから流出した、との集計結果を発表した。いうまでもなくハイイールド債の発行体には資源関連企業が多く、同週には原油のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物当限が1バレル=39.51ドルと4月上旬以来の大台割れになるなど軟調で、解約が膨らんでも不思議ではない状況だった。
当然ながらハイイールド債は売られた(利回りは上昇した)が、利回りは7月27日の6.66%から8月3日の6.79%へと、わずか13ベーシスポイントの上昇にとどまった。その後、WTI先物など原油相場の持ち直しに伴ってハイイールド債は買い直され、最近は連日で今年の最低利回りを更新し続けている。
23日時点では6.32%。WTIが60ドル近辺で推移していた昨年6月中旬ごろの利回り水準である。ちなみに、当時の日経平均は2万円台、米国の10年国債利回りは2.3〜2.4%台だった。
例年になく静かな展開の下で今年の夏相場は終わろうとしている。9月下旬から月末にかけては日米欧三極の中央銀行が金融政策を決める会合を開催する。石油輸出国機構(OPEC)の非公式会合も予定されている。さまざまな思惑でリスク資産は波乱場面を迎えるかもしれないが、水面下で、行き場を失い好機をうかがう資金が膨らんでいることも事実である。
せがわ・つよし●新日本証券(現みずほ証券)に入社後、株式投信の運用業務、情報部門、自己売買部門のマネージャーなどを歴任。さくら証券にエクイティ部部長として勤務後、2001年4月に新光証券(現みずほ証券)にストラテジストとして入社。独立後は経済番組のコメンテーターとして活躍し、現在は瀬川投資研究所代表。市場関係者への丹念な取材や緻密なデータ分析に基づいた独自の相場解説で人気。
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
瀬川 剛
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