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夜のスイス国立銀行(左)と連邦議事堂(右)。 Photo by Hpschaefer.
スイスフラン相場の不気味な静けさ 避難通貨がブレグジットに反応しない理由
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47708
2016.8.25 Financial Times :JBpress
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年8月24日付)
安全だが、まだ余震にもろいスイスは、欧州連合(EU)離脱を決めた英国の国民投票など、金融市場の地震を観察するのに格好の場所だ。
世界屈指の資産家一族や裕福な起業家の富の多くは、チューリヒやジュネーブの銀行を経由して動く。「避難通貨」であるスイスフランは、世界の投資家の緊張度を測る尺度になる。2007年以降の世界危機およびユーロ圏危機の最も緊迫した局面では、スイス国立銀行(SNB、中央銀行)によって対ユーロ相場に上限が設定された2011年9月から昨年1月までの期間を除き、スイスフランが急騰した。
だが今のところ、多くの人にとって意外なことに、「ブレグジット(英国のEU離脱)」決定はスイスの通貨と同国の裕福な経済に予想されたような影響を及ぼしていない。これは世界の投資家にとって朗報かもしれないし、中央銀行の行動がボラティリティー(市場の振れ)を抑制し、市場のシグナルを歪めているという最新の不吉な警鐘かもしれない。残念なことに、後者である可能性のほうが高い。
当初、6月23日の英国国民投票は、重大かつ予想外のマイナス材料になるか、あるいは動転した顧客のために売買することから得られる短期的な収益増を期待したスイスの銀行にとって予想外のプラス材料になると思われた。
実際、スイスの銀行家らは今年1〜3月期に世界的な市場の混乱が活動をまひさせたと不満をこぼしていたが、銀行各行の第2四半期の業績はブレグジット決定を取り巻くボラティリティーによって底上げされた。
違いは何だったのかと言えば、ブレグジット決定は当初、欧州にとって明白な凶報と見なされていたことだ。「下げるにせよ上げるにせよ、市場に明確な方向性を与える出来事があれば、その瞬間に売買高が増える」。ジュリアス・ベアのボリス・コラディ最高経営責任者(CEO)はこう説明する。だが、その後は、ブレグジット決定の余波はさほど危険ではないように見えた。
確かに、スイスフランは英ポンドに対して急騰した(あるいは、ポンドが他通貨に対して急落したと言ったほうが適切かもしれない)。英国のテリーザ・メイ首相は休暇でスイスを訪れたものの、今ではスイスの山でハイキングする英国人観光客を見つけるのが難しくなっている。だが、スイスフランはユーロに対してほとんど上昇せず、今年4月の水準を下回っている。
スイスの大手銀行BSIのチーフエコノミスト、シュテファン・ゲルラッハ氏は「為替がもっと大きく反応し、SNBがもっと大規模な介入を強いられるなど、ずっと大きな動きがあると予想していた」と認める。
見込みが外れた1つの理由は、ブレグジットの影響に関する当初のネガティブな仮定が見直されたことだ。スイスでは、英国のブレグジット派への共感を容易に見つけられる。何しろスイスは頑なにEUに加盟することを拒んでおり、スイス企業はEU市場へのアクセスについて2国間協定を頼りにしている。また、スイスの保守的な政治家は、独立した国民国家、自由度の高い市場、規制緩和を好む。
一方、世界の投資責任者は、アングロサクソン系の政治家は経済成長を不要に脅かすような対策を取らないと考えている。
だが、スイスの銀行家らによれば、ブレグジットが英国や欧州、世界にとって明らかな朗報だと考える海外クライアントを見つけるのは難しいという。「ブレグジットがプラス材料になると積極的に考える人は多くない」。大手銀行UBSのグローバル最高投資責任者、マーク・ハーフェレ氏(チューリヒ在勤)はこう話す。「その理由は、なぜブレグジットが英国を従来より高い経済成長の軌道に乗せるのか、理路整然とした根拠を示した人がまだ誰もいないからだ」
同氏によると、むしろ、6月23日の国民投票以来、欧州の経済見通しに関する不安にもかかわらず、金融市場が穏やかなままだという「パラドックス」は、中央銀行の行動が政治より「勝る」新たな事例だという。
SNBが今月公表したある調査報告は、スイスフランの動きは大して実際の資本移動を反映していないことを示している。フラン相場の動向はむしろ、世界や地域の市場の不確実性の指標との相関関係が高い。
これはブレグジット決定以降のパターンと一致している。米国株式市場の予想ボラティリティーを示すVIX指数――広く「ウォール街の恐怖指数」として知られているもの――や、欧州版のVIXに相当するVSTOXX指数といった指数は落ち着いている。
そしてこれはほぼ確実に、中央銀行の行動による対抗措置がもたらした結果だ。SNBはこの物語の一部だった。SNBの戦術的な為替介入は、フラン上昇を制限するのに効果を発揮した。ボラティリティーを抑制するうえでそれ以上に効果的だったのは、イングランド銀行が発表し、欧州中央銀行(ECB)が示唆したような追加の経済刺激策だった。それが――今のところは――スイスの落ち着いたムードを維持してきたのだ。
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