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「お金持ちの役目」を果たすお金持ちが増えている ベンチャーフィランソロピーに向かい出した富裕層の投資スタイル 
http://www.asyura2.com/16/hasan112/msg/295.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 8 月 23 日 00:51:25: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

               世界の富裕層の投資スタイルが微妙に変化している(写真はイメージ)
    

「お金持ちの役目」を果たすお金持ちが増えている ベンチャーフィランソロピーに向かい出した富裕層の投資スタイル
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47663
2016.8.23 増渕 達也 JBpress


 トマ・ピケティが「21世紀の資本」を発表して世界に衝撃を与えてからが約2年が経った。資産家の資産は減りにくいと論じたこの本には賛否両論があるようだが、私自身はこのような定量的なアプローチにはあまり興味がない。★富裕層の個人顧客との定性的な会話の中で発見することのほうがよほど多く、現実の世界が見えてくるからだ。★

 その一例として、2016年になってからニューヨーク、シンガポール、日本で見聞きした「世界の富裕層の投資スタイルの微妙な変化」について紹介したい。

■2人の富裕層から持ちかけられた相談

「ファミリーオフィス」という言葉をご存じだろうか。一言でいえば、資産家一族の資産防衛のためのチームである。「弁護士や税理士、そのほかのコンサルタントなどがチームを組み、一族の問題解決に向けて徹底的な手を考える団体、会社」と捉えていただければよいと思う。日本にも資産管理会社というものが存在するが、もう少し本格的だ。

 今年2月にニューヨークで出会った、あるファミリーオフィス一族からこんな相談が持ちかけられた。

「アジアに投資したいマーケットがあるんだが、フィジビリティ調査をお願いできないだろうか。

 私の友人が農業で成功しているようなんだ。胡椒とかシナモンとかさ。そう、いわゆる調味料になるやつだね。調味料マーケットで買収できるような候補があれば、それもリストアップしておいてほしい。私の祖先もオリーブオイルで財を成しているからね。農業はある意味、ふるさとなんだよ」

 また、シンガポールのファミリーオフィス会合で出会ったスコットランド出身の女性投資家からは、次のような依頼を受けた。

「ねえねえ、私のまわりで、事業に寄付をするよりも、寄付型の事業をファミリーオフィスの中に組み込む人が増えているのよ。

 私は、スコットランドの古い教会を買ってリノベーションして、アジアの富裕層に結婚式とハネムーンに来てもらう寄付型の事業を考えているの。“デスティネーションハネムーン”っていうんだってね。ゴルフ場も近くにたくさんあるから日本の富裕層もマーケットしたいのよ。協力してくれない?」

 この2つの話は、単なる新規事業の相談としてはよくある話かもしれない。アイデアがあり、資金調達を段階的に実施し、事業展開をしていく、という普通の形であれば。

 ただし、「ファミリーオフィスが自らのアイデアをもとに事業を始めようとしている」と捉えると、とても珍しい話だ。なぜなら、「現在の資産を金融商品に投資して資産保全する」というのが、ファミリーオフィスがファミリーオフィスたる所以だからだ。

 ハーバードビジネススクールのウィリアム・カー教授はこのような動きを「ベンチャーフィランソロピー」と名付けている。私が実際に見聞きしている限り、世界の富裕層がベンチャーフィランソロピーという考え方を取り入れているのはほぼ間違いない。

■あらゆる産業で動き出す2兆円の新たな資本

 私はこの10年間、公益社団法人日本フィランソロピー教会の会報誌に「富裕層 あ・い・う・え・おの法則」と題した連載を執筆している。「愛・運・縁・恩 あいうえお」という副題をつけているが、いよいよ世界の富裕層が自分の資産の一部を「事業オーナーになるための投資」に振り向ける時代がやってきた、とみている。

 金融業界にとっては決して喜べない流れに違いない。だが、その他のほぼすべての産業に“善意の富裕層マネー”が流れ出す好機だと捉えたほうが建設的だろう。前述の2つの相談の話は、富裕層が「農業」や「旅行業」に「消費者でなく事業オーナーとして参加」する例である。

 世界では、約4000のファミリーオフィスが平均100億円の資産を運用していると言われる。そのうち5%がこのベンチャーフィランソロピーに向かいだしたら、2兆円の新たな資本があらゆる産業で動き出すことになる。なんとも痛快な話ではないか。

 私は今の富裕層ビジネスを初めてちょうど10年になるが、世界の富裕層が実施している資産保全のあり方で驚いたのは、財団法人と保険を使って実質的に相続税をなくしてしまう方法論だった。むしろ、相続税を支払っても残る財産が多くなってしまうのだ。要するに、総額2兆円の善意の事業投資が単なる善意で終わってしまっても、痛くもかゆくもない、ということだ。

 前述した「愛・運・縁・恩 あいうえお」は、「愛は運と縁と恩の総和である」という語呂合わせでもある。富裕層を富裕層足らしめるこの4つの言葉に異議のある富裕層はほぼいないだろう。

「今も昔も、お金持ちはお金持ちである」という定量分析を行ったピケティの論に加えるとするならば、「お金持ちには、お金持ちのお役目がある」。富裕層は4つの言葉に基づいて、事業資本投下に積極的に動き出している。

 もちろん雇用が発生するという意味においてはどんどん成功してほしいと思うし、願わくばこの数十倍の規模で「新たな資本」が生まれてくれればと思う。


 

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