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岡部聰氏。現在は、豊富な海外勤務の経験を活かし、各地で講演会を精力的に行っている
そこまでやるかトヨタ!新興国を席巻する破天荒な新車、徹底した現地化の神髄
http://biz-journal.jp/2016/08/post_16399.html
2016.08.22 構成=田中 圭太郎/ライター Business Journal
大きな成長が見込める一方、ほかの先進国とは商売の勝手が違うといわれる新興国でのビジネス。グローバル企業では新興国の開拓は、今後さらに重大なミッションになるはずだ。そんな新興国ビジネスを成功させるにはどんな人材が必要なのか。その答えを誰よりも知っているのが、トヨタ自動車元専務の岡部聰(おかべ・あきら)氏だ。
トヨタといえば、日本を代表するグローバル企業。新車販売台数は4年連続世界一の座を守っている。その成長を牽引してきたのは、ゼロから立ち上げてきた新興国市場といっても過言ではない。
岡部氏は、トヨタが世界のトップへと成長カーブを描いた時代に新興国展開を率いてきた。40年間で駆け巡った国はアジア、中近東、豪州、中南米、アフリカなど世界七十数カ国に及ぶ。まさに「世界でトヨタを売ってきた」人物だ。
その岡部氏が7月に著書『世界でトヨタを売ってきた。』(開拓社)を上梓した。同書では、岡部氏が取り組んできたトヨタの海外事業の事例や、現地パートナーとの付き合い方、新興国で成功するポイントなどを惜しげもなく披露している。
新興国ビジネスを知り尽くした岡部氏に、新興国で活躍できる人、できない人について話をうかがった。
■成功の秘訣は“明るく楽しく元気よく”
--新興国ビジネスに取り組む時に、大事なことはなんですか?
岡部聰氏(以下、岡部) まずは“明るく楽しく元気よく”をモットーにすることです。日本人が外国人からよく言われる言葉は「何を考えているのかわからない」です。顔の表情はないし、普段はあまり笑わない。ノーとはっきり言わない。これだと相手はよくわかりません。
異文化と接触するときは、まず相手にストレスを与えないように明るく振る舞うことが大事です。「あいつ、なんだかわからないけれど、一緒にいるとおもしろいぞ」という感じでいいのです。批判ばかりしても誰も寄りつきません。和気藹々と付き合うことが重要なポイントです。暗くて理屈っぽい人は海外では駄目です。相手も一緒に仕事をしたくないと思いますよ。
中近東を担当したとき、ある国の販売店のオーナーが重要な人物で、気難しいから挨拶に行けと上司から言われました。会ってみるとそのオーナーはほとんど喋らない。名刺交換の後、どうしていいのかわからなくなりました。その時とっさに思いついたのは、面談中に3回笑わせて自分を印象づけようということ。必死にギャグを繰り出したら、その人はついに笑ってくれて、それからずっと仲良く付き合ってくれました。“明るく楽しく元気よく”を心がけることで、交渉もうまくいくのです。
■常識はいらない! 現地目線で考える
--新興国で活躍できる人の特徴は?
岡部 新興国ビジネスでは、今まで経験していないことが次々に起きます。非日常の連続といってもいいでしょう。そこで必要なのは、“問題解決型”の思考です。
問題解決とは、何か大きな問題が起きて対処するという意味ではありません。教科書やマニュアルに書いてあるようなこととも違います。私が言う問題解決型の思考とは、まったく経験がない未知の世界であっても、「何かを成し遂げたい」と思い、自分から問題に挑んでいく姿勢のことです。
一番重要なのは、「問題を解決したい気持ち」があるかどうかなのです。知識と体力、それに頭脳も必要ですが、そういうものはあくまで道具です。「この国で、このプロジェクトをなんとしてでも成功させたい」「新しい製品を絶対に完成させたい」など、なんでもいいのです。問題を乗り越えたいという気持ちさえあれば、あとはその領域を勉強するなり、知識を総動員して考えるなり、一生懸命取り組むでしょう。乗り越えたいという気持ちが大前提ですね。
--実際に新興国では、どう行動すればいいのですか?
岡部 仕事のテーマについてその国の人たちの中に入っていかなければなりません。私はこれを「インサイダー化」と言っています。
その国にある資源を使い、現地のパートナーの協力を得て、その国の人たちと利害を分かち合うことが大事です。価値観や文化、歴史などを共有することも重要です。
私が新入社員の時から関わったプロジェクトに、アジアカーの開発があります。トヨタは1977年にアジアカー「キジャン」の生産をインドネシアで始めました。この車はドアの代わりに鎖を乗降口に架けただけ、ボディは鉄板を折り曲げただけ。トヨタの商品基準にはとても合わない代物です。そんな常識破りの車をなぜつくったのかというと、徹底した現地調査の結果でした。
当時インドネシアは稲作農業が経済活動の中心で、トラクターを保有する華僑が現地の農民に稲をつくらせて、販売利益をほぼ独占してしまうのが実態でした。農民から話を聞くと、経済的に自立するため、農耕にも運送にも使える安価な農業機械を求めていることがわかりました。それでニーズにマッチした、多目的で安価な車両を開発したのです。
しかも、キジャンは当時としてはあり得なかったのですが、すべて現地の部材や部品を使ってつくりあげました。結果、当時のインドネシアの大統領から「国民車だ」と絶賛されるほどのベストセラーカーとなり、現在は6世代目がインドネシア国内を走っています。
このように「インサイダー化」を常に心がけて、現地と同じ目線で考えるようにすると、かなり答えが見通せるようになってきます。
その過程で大事なのが、体を使うこと。今はスマートフォンで検索すればすぐに答えがわかった感じがしますよね。もうわかったからと、それ以上の関心が持てなくなる。検索イコール答えになっている感じがします。
現地で体を使うと、理解するまでのプロセスでいろんなことを自分で考えます。続けることでこの場合はこうすればいいというのもわかってくる。身についてくるわけです。体を動かし続けていれば、必ずなんらかの成果を得ることができます。
「トレンドをつかむ力」が成否を左右する
--新興国では、事業をするうえで十分なデータがなく、極端な話をすれば、明日法律が変わってしまう可能性もあると思います。どうやって将来性を判断するのですか?
岡部 物事を予測するときに重要なのは、TCIという3つの要素です。Tはトレンド(Trend)、Cはサイクル(Cycle)、Iはイレギュラー(Irregular)。トレンドは10年、20年単位で、上がっているのか、下がっているのかをみます。サイクルは循環、イレギュラーはリーマンショックなどの社会的なショックのことです。
日本、アメリカ、ヨーロッパの国々は成熟しているので、トレンドは右肩上がりではなく、成長が止まっています。
一方、新興国はトレンドが上に向いています。人口も増えるし、経済規模も上がってくる。いろんな変化があるけれども、どの変化も成長のプロセスです。
新興国市場につきものの景気の善し悪しを机の上だけで考えていたら、上がっている時には「もっとやれ」といい、下がっているときには「やめろ」という判断になってしまいます。しかし、景気は常に上下しながら成長していくのですから、その時その時の評価ではなく、時系列で判断する能力が必要なんです。良いとき、悪いときがあっても、トレンドは見失わない。そういう人材や組織じゃないと、新興国で事業をするときには失敗します。
ところがトレンドはなかなか見えません。私が会社に入った1970年代は、日米欧が先進国で、東欧と中南米を中進国、アジア・アフリカを後進国と呼んでいました。アジアが現在のようにトレンドを押し上げるなんて、当時は誰も言っていませんでした。
ではトレンドをつかむにはどうすればいいかというと、過去を知ることです。過去との時系列比較と、相対比較をする。今の状況は過去最低なのか、過去最高なのか。どれくらいなのかを見ると身の丈がわかります。そうすると、まだまだ伸びる、あるいはこのまま伸び続けていくわけがないと判断できるのです。40年間新興国と仕事をしてきて、時系列で判断することが非常に重要だと実感しています。
合わせて強調したいのは、異端児になることを恐れないことです。新興国担当は社内では少数派です。その意見は先進国の常識に照らすと奇異に映ることもしばしばです。そうだとしても、声を上げることを恐れてはいけません。小さな国を担当していると、本社の会議でほとんど話題にしてもらえないかもしれません。しかし、問題点や必要なことはしっかり主張しないと、会社は重要な情報がわからないまま判断を間違ってしまいます。実は私もトヨタで異端児と言われたものですが、新興国担当としてがんばった証のように感じています。
配属されたのがアメリカやヨーロッパじゃないから、自分はメインから外れたなんて感情を持ったらそれまでです。規模が小さいほうがいろんなことを経験できます。販売からマネジメント、政府との折衝まですべてやりますし、大統領に会えることもあります。マイナーであるがゆえの強みを出していけば、それが自分の力になります。
本社も新興国でがんばっている人を人事で引き上げることが必要です。そうすれば社員のモチベーションも高まりますし、人材も集まるでしょう。
--新興国ビジネスの魅力は?
岡部 感動の連続ですね。今まで自分が体験していないことばかりで、すべてが探検のようなものです。
私は75の国と地域を回ってきて、それぞれの国の人々と親しくなりました。問題が起きると会いに行って、当事者とじっくり話します。同じテーブルについてとことん話し合えば、だいたい解決します。大変だったけれども、未知の国の人とともに汗を流すのは、やりがいがすごくありますよ。
今は、世の中全体で“指示待ち族”が多くなった気がします。しかし、「自分がやらなきゃ」「体を動かさなきゃ」と考えて汗をかくことが生きている証だと思います。そうでなければ、コンピューターと比較してどう違うのかということになってしまいます。
ぜひ新興国に飛び出して道をつくる仕事、“パイオニアワーク”にチャレンジしてほしいですね。
--ありがとうございました。
本書では成功体験ばかりでなく、現地のパートナーが殺害されたケースや事業の失敗など、苦労したエピソードも満載で、新興国ビジネスの真実が語られている。新事業やベンチャービジネスに取り組む企業から個人まで、自分で道を切り拓きたいと願うすべての人に参考になるだろう。
(構成=田中 圭太郎/ライター)
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