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グーグルCEOのサンダー・ピチャイ(Photo by Ethan Pines)
独占密着! グーグルの新CEOが描く「AI」で動くデジタル世界
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160820-00013266-forbes-bus_all
Forbes JAPAN 8月20日(土)9時0分配信
5月中旬に、ショアライン・アンフィシアターで開かれた開発者向けのカンファレンス「グーグルI/O 2016」。グーグルアシスタントや「Allo(アロ)」などが発表された。
新会社アルファベットの創業に伴い、グーグルCEOの座を退いた創業者のラリー・ペイジ。彼が後任に据えたのは、起業家的研究者とも称されるAI(人工知能)の旗手だった。
シリコンバレーにある2万2,000人収容のショアライン・アンフィシアター。ここは、音楽ファンにとっての憧れの地だ。ニール・ヤングやビージーズ、ブルース・スプリングスティーンらがステージを彩ってきた。5月中旬、弾むような電子音楽と巨大ビデオ映像に包まれながら一人の男性が登壇した。グーグルのサンダー・ピチャイCEO(43)だ。
毎年恒例の「グーグルI/O」カンファレンスでは、ピチャイが最大の出し物だった。客席を埋めるソフトウェア開発者たちから冷やかしや喝采を受けるうちに、彼の顔にもようやく笑みが浮かんだ。
「私たちはとても、とてもエキサイティングな時代に生きています。コンピューティングは素晴らし〜い進化を遂げました」と、インド南部の訛りでピチャイは言った。
さすがに、「スティーブ・ジョブズのように……」とはいかない。ピチャイは典型的な内部昇格のCEOで、控えめで理路整然とした頭脳派なのだ。新製品のデモで聴衆を沸かせるよりも、コンピュータ科学の未来をオタクっぽく語るほうが似合っている。グーグルの共同創業者のラリー・ペイジは昨年、まさにその点を買って経営をピチャイに委ねたのだ。
ピチャイの責務は重大だ。世界第2位に当たる約5,000億ドルの時価総額をもつグーグルは、検索やデジタル広告、モバイル、ビデオなど、IT業界のさまざまな分野を支配している。
だがペイジもピチャイも、IT業界の巨人たちがその絶頂期に道を見失ってきたことは承知の上だ。それにグーグルは、4つの強大なライバルに対して熾烈な多正面作戦を展開している。モバイルではアップル、広告と動画とコミュニケーションではフェイスブック。電子商取引ではアマゾン、業務用ソフトウェアではよみがえったマイクロソフト。さらにその両社とはクラウドサービスでも競っている。
こうした戦いの一方で、土台となる技術そのものが日々変わり続けている。グーグルがデスクトップからモバイルへの移行を続行するなか、コンピューティングはすでにマルチスクリーン化や、アマゾンのスマートスピーカー「Echo(エコー)」のような無スクリーン化へ動きだしているのだ。デバイスやアプリの操作は急速に双方向化が進み、マイクロソフトやフェイスブックなどは「ボット」を導入しつつある。
ピチャイは、新たなIT界がグーグルにはうってつけだと信じている。その理由は、人工知能(AI)だ。グーグルは何年も前からAIに力を入れてきた。大半のライバル企業に先んじて、音声認識や言語理解、機械翻訳といった基礎的な資材に投資してきたのである。そうした努力の甲斐あって、同社は競争に打ち勝つための魅力的なプロダクトを世に出す準備ができている。
「私たちはモバイルの世界からAIの世界への移行を、何年もかけて構想してきました」と、ピチャイはフォーブス誌に語った。
サンダー・ピチャイ◎グーグルCEO。インド工科大学カラグプール校卒業後、スタンフォード大学大学院にて物質科学と工学の修士号を取得。アプライド・マテリアルズに勤めた後、ペンシルバニア大学ウォートン校でMBAを取得。マッキンゼーのコンサルタントを経て04年にグーグル入社。ブラウザ「クローム」の開発に関わるなど、同社の中核的な存在に。15年より現職。
--{優秀さゆえの落とし穴}--
優秀さゆえの落とし穴
ショアラインのステージ上で、ピチャイはその最初の果実をお披露目した。アマゾンのエコーに対抗するためのスマートスピーカー「グーグルホーム」と、メッセージアプリの「Allo(アロ)」である。その両者を支える新サービスが、グーグル独自の対話型コンピューティング「グーグルアシスタント」だ。
これはいわば「検索3.0」である。すなわち、グーグル検索とコミュニケーションを取るための新たな方法なのだ。利用者はグーグルアシスタントを使ってチケットを取ったり、航空券を予約したり、音楽をかけたり、スケジュールを立てたり、メールに返信したりできるようになる。
また、グーグルアシスタントは母の日が近づけば花の注文を、出張の前には荷造りを促すようになるかもしれない。つまり、あなたの電話やスピーカー、テレビ、車、時計などの中に待機し、最終的にはあらゆる場所で助けてくれるのである。
「日常生活のなかで、周囲のモノが私たちの手助けをしてくれるのです」と、ピチャイは言う。この「アシスタント」が潜在力をフルに発揮するまでにはまだ何年もかかるだろう。それにこれを完成させるのは、ペイジと共同創業者のサーゲイ・ブリンが検索エンジンを生みだしたこと以上に難しい事業になるはずだ。ピチャイもこう言い添える。
「あらゆる面でこちらのほうが野心的ですよ」
とはいえ、アロの発表は、グーグルがメッセージサービスの分野で地歩を固められずにいることを浮き彫りにした。また、グーグルホームからわかるのは、同社の誰ひとりとしてスマートスピーカーの波が来ることを予期できていなかった現実である。だから、アマゾンの後追いになってしまった。
これらの問題は、ピチャイがグーグルのCEOとして直面する大きな困難のひとつを象徴している。グーグルがAIや機械学習(マシンラーニング)のような複雑なテクノロジーに長けているという点に異論はない。しかし、そうした技術をヒット商品に変えることにかけて、同社が必ずしもトップクラスでないのは確かだ。
「グーグルにとってのリスクは、高度なAIを扱う能力があるために、かえって『そこそこ良い商品』を生み出す機会を見逃してしまうことです」と、オライリー・メディアのティム・オライリーCEOは語る。
それに加えて、メッセージがボットやその他のデジタルサービスの新たなプラットフォームになるなら、グーグルはそうしたサービスを早急に用意する必要がある。フェイスブックやマイクロソフト、アマゾン、そしておそらくはアップルも開発に乗りだしている。
「外部開発者が皆、最後まですべてのプラットフォームを等しく利用するとは限りません」と、ハーバード・ビジネス・スクールでIT業界を研究するデビッド・ヨフィー教授は話す。
「どのサービスが最も成功するかー。それがカギになります」
ピチャイの仕事は、その答えがまちがいなく「グーグル」になるように努める一方で、約6万人の従業員と年間750億ドルの売り上げをもつ会社を切り回すことだ。グーグルのCEOにはこの膨大な責務が課せられているからこそ、ペイジは後継者の外見ではなく、中身を重視したのだろう。
ピチャイの「しなければならないことリスト」の筆頭にくるのは、検索やアンドロイド、グーグルマップ、ユーチューブ、グーグルプレイといった幅広い分野にまたがるデジタル帝国から、確実に収益を吸い上げていくことだ。ほかにも、「アンドロイドを導入している企業との結びつきを保つこと」「アンドロイドとクロームを統合すること」「欧州その他の地域で課される独禁法や税法上の調査に対処すること」などの項目がリストに並ぶ。
それでも、ピチャイは「グーグルを変身させる用意はできている」と言う。
「私個人の考えでは、あらためて我が社のミッション、それと機械学習やAIを通じて会社を変革することに集中したいと思っています」
--{「グーグル・ブレイン」内で進化するAI}--
「グーグル・ブレイン」内で進化するAI
ピチャイがAIで回る世界を築く拠点が、グーグル本社からひとつ通りを隔てた所にある目立たない2階建てのビルだ。そこに入る研究開発部門「グーグル・ブレイン」が、同社とそのプロダクトを未来に導くAIの開発に当たっている。
グーグル・ブレインは4年ほど前に設立された。ディープラーニングやニューラルネットワークと呼ばれるAIのプログラミング技法を研究し、実験するためである。じつは何年も前にコンピュータ科学者たちによって開発されていたのだが、膨大な演算能力が必要だったために適切なテストが行われてこなかったのだ。グーグルにはそれだけの設備があったので、大規模演算システム部門の主任エンジニアだったジェフ・ディーンが、AIの専門家たちと手を組むことになった。彼らがシステムの画像認識能力を高めると、その成果は直ちに実を結び、グーグルの既存の手法を大幅に改善した。
1年前にリリースされた「グーグルフォト」は、そうした改善点を生かした一般向けのプロダクトだ。画像を認識・検索し、自動的に整理する能力はIT業界をうならせた。グーグルフォトを使えば、ユーザーは特定の人物や動物などを検索できる。ライバル社との競争は激烈だが、グーグルフォトはすでに2億人のユーザーを獲得している。ピチャイにとって、これはよりよいAIがいかにグーグルの勝利に貢献するかの典型的な例だ。
「人々はほかの写真関連プロダクトを使っていたか? 答えはイエスです」と、ピチャイは話す。
「では、グーグルフォトに惹かれ、乗り換える人が大勢出ているか? それもイエスです」
グーグルのある実験チームは、グーグルフォトの画像認識技術を使って虹彩のスキャン画像を調べることで、失明に至る眼病の糖尿病網膜症を効果的に見つけ出している。
「これは重要な変化ですよ」と、ディーンは言う。
「会社中に噂が広まっています。このやり方(AI技術)で新たに問題が解決できるのではないか、と」
少人数で始めた研究プロジェクトが、今では数百人規模にまで成長した。
その結果、社内には現在、グーグル・ブレインの成果をさまざまなプロダクトに応用する計画が2,000以上も存在する。ディーンのチームは機械学習の勉強会を開き、グーグルの何千人にも及ぶエンジニアたちが何週間もかかる講義を受けてきた。AIの専門家で、ピチャイから検索部門のトップに指名されたジョン・ジャナンドレアは、「研究プロジェクトだったものが、エンジニアリング活動の本流になった」と語る。
ライバル社がこぞって「AIで回る世界」へなだれ込もうとしているものの、ピチャイにはグーグルが先行しているとの確信がある。彼は世界最強の棋士に勝った同社の人工知能「AlphaGo(アルファ碁)」を引き合いに、リードを守るための投資はぬかりなく行っていると語る。
「機械学習やAIに目を向ければ、今すぐできることと、2〜3年以内にできること、そしてさらに長い時間のかかることがあります」と、ピチャイは言う。前出のヨフィー教授のような外部の識者も、今の世界がAIで回る世界へ移行する過程で、グーグルがよい位置につけていると認める。
「サンダーは的確なカテゴリーに飛び込み、いくつもよい決断を下しています」とヨフィーは語る。ただ、こうも付け加えている。
「もっとも、彼はまだ本当の意味では試されてはいませんけれどね」
--{ テクノロジー大手の"最終決戦"}--
テクノロジー大手の"最終決戦"
アマゾン:ジェフ・ベゾス
オンライン小売とクラウドサービスでIT業界を牽引するが人工知能スピーカー「Echo(エコー)」が大きな話題に。一躍、AIでも脚光を浴びている。
フェイスブック:マーク・ザッカーバーグ
傘下のメッセンジャーアプリ「ワッツアップ」でAIを活用していくことを発表している。数百人からなるAI研究者チームを組織し、開発の速度を上げている。
マイクロソフト:サトヤ・ナデラ
機械学習の技術をプロダクトに盛り込むべく、AI専門のチームを設立。最近デジタルアシスタント「コルタナ」上で働く対話型ロボットを公開している。
アップル:ティム・クック
アップルは、次々とAI関連企業を買収している。「Siri(シリ)」の能力拡張に努めており、遠からず外部の開発者にもその業務を開放するものと見られる。
Forbes JAPAN 編集部
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