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40年国債増発≒「ヘリコプターマネー」 麻生・黒田の協調演出の思惑
http://www.j-cast.com/2016/08/19275602.html?p=all
2016/8/19 12:29 J-CASTニュース
日銀は9月会合で「緩和策の総括的検証を行う」と発表した。
麻生太郎財務相が2016年8月2日、政府の発行する国債の中で最も満期までの年限が長い「40年債」の増発を検討すると表明した。
このことが、金融市場にさまざまな波紋を投げかけている。「政府が国債を日銀に買ってもらったまま償還しない」――もっと平たく言えば「日銀が政府に返済不要のお金を渡す」――いわゆる「ヘリコプターマネー」に近いものとして意識してほしい、との政府の意図がにじみ出た、との解説も聞かれる。
■わざわざ「帝国ホテル」で会った理由
この日午後4時半。東京都千代田区内幸町の「帝国ホテル」の一室で、麻生財務相と黒田東彦日銀総裁が向き合った。政府の施設ではなく、プライベート感のある場所での会談だ。双方ごく限られた幹部しか随伴していない。極秘裏に行ってもよさそうなものだが、始まる数時間前にマスコミ各社に告知することで、冒頭の様子をマスコミが写真撮影するために準備する時間の余裕を作るという、なかなか宣伝色の濃い会談だった。
財務省(霞が関)と日銀(日本橋)の間に存在する格式の高いホテルを選んだのは、仮に財務省庁舎内で実施すれば政府が日銀を呼びつけたような格好になるからだろう。そうした印象を避け、あくまで政府と日銀の協調姿勢を演出しようとしたのは間違いない。
それにしても、協調を宣伝するにしてもなぜこのタイミングなのか。
答えの一つが、会談後の記者会見(財務相と日銀総裁は個別に実施)において、麻生財務相が記者団に聞かれてもいないのに自ら語り出した「40年債の増発」だ。会談内容を自ら説明するついでに、どさくさにまぎれて発表したとも言える。麻生財務相は「増発」について、「日銀の大規模な金融緩和策で生じた低金利環境を活用し、リニア中央新幹線のような長期にわたるインフラ整備にあてる資金を調達コストが低い中で手に入れる」との趣旨であると説明した。それはそうなのだろうが、あえて発表した理由は市場の動揺を収めることにあったとの見方が有力だ。
日銀が7月29日の金融政策決定会合で上場投資信託(ETF)の購入拡大という「小ぶり」の追加緩和を決める一方、次回9月会合で「緩和策の総括的検証を行う」と発表した。ETF購入拡大で「株価が下支えされる」として株式市場はある程度好感した。
だが、国債市場は、「日銀が大規模に国債の購入を続ける現状から後退し、9月会合以降に購入額縮小に動くのではないか」との観測から国債が売られた。長期金利の指標となる新規発行の10年債の利回りは、8月2日に一時マイナス0.025%と3月半ば以来、約4カ月半ぶりの高水準に急上昇(国債価格は下落)した。7月下旬に一時0.3%までマイナス幅が拡大していただけに、上昇のスピードはかなり急ピッチだった。
■9月の日銀会合に市場が大注目
これに慌てた政府と日銀が急遽、トップ会談の場を設け、市場にアピールしようとしたとみるのが自然だ。会談後の記者会見で黒田総裁は、「市場では緩和縮小に向かうとの観測がある」との質問に「そういったことにはならない」と述べ、緩和縮小を否定。これに先立つ麻生氏の記者会見で「40年債の増発」が飛び出した。会談とその後の記者会見を受け、長期金利(新発10年物国債利回り)は低下し、やや落ち着きを取り戻したため、それなりの効果はあったと言える。
40年と言えばかなり先だ。一方で日銀総裁は緩和縮小を否定した。そのため政府が日銀に返済不要の国債を引き受けてもらう「ヘリコプターマネー」政策、あるいはそれに近い政策の導入があるのではないか、との市場の期待を高めたと指摘するアナリストもいる。
ただ、ヘリコプターマネーは現行法令上の禁じ手で、日銀は否定し続けている。財政規律が緩むとみられ、財政や通貨の信認が揺らぎかねない劇薬でもある。日銀の9月会合は検証の結果、どんな結論を導き出すのか。多くの市場参加者が注視している。
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